肥満細胞と遺伝子

肥満細胞と遺伝子

マスト細胞に関与する遺伝子は現時点でほぼ全容が明らかにされている。

転写因子MITF(microphthalmia transcription factor)は、 ヘパリンの硫酸基を増加させる酵素であるN-deacetylase N-sulfotransferase 2をコードする遺伝子であり、MITFの異常はヘパリンに十分な硫酸基を付加する ことができなくなるため、ペプチドグリカン構造が崩れて肥満細胞の数が正常の3分の1に減少する。

ただし、皮膚のマスト細胞は、他の組織における結合織型マスト細胞と異なるMITF非依存性の分化様式をとる

転写調節因子GATA-1とPU.1は共に多分化能を持つ造血幹細胞において認められる、血球系の分化制御に必須の転写調節因子で、 GATA-1は赤血球・巨核球の分化に、PU.1は単球・顆粒球系列やリンパ球系列細胞の分化に必須である。

この両者は通常対照的な位置に存在してお互いを阻害し合う、よって、造血幹細胞からの分化に伴って赤血球であればGATA-1発現が維持されて、PU.1発現が消失することで 両者の拮抗をなくし、自身の機能をさらに優位にする。

しかし、マスト細胞内においては、このような相互が阻害し合う状況ではなく、GATA-1とPU.1両者が共存するばかりか、強調的に遺伝子を転写活性化する。

なお、このマスト細胞特異的な機構については明らかにされていない。

第二の肥満細胞特異的転写調節機構としてFOG-1による制御がある。FOG-1はそれ自身がDNAに結合することはないが、 GATAファミリーの転写因子への結合を介して遺伝子発現を制御する転写共役因子である。

GATA-1は前述の通り、赤血球・巨核球・肥満細胞特異的に発現している転写調節因子であり、GATA-1を制御するFOG-1はこれらの幹細胞からの 分化を正・負にコントロールする働きを持つ。

FOG-1は赤血球と巨核球の分化に対しては促進的に働くが、マスト細胞FcεRIβ鎖プロモーターに対しては、GATA-1による転写活性を抑制する。

マスト細胞においては、その後分化していくに従ってGATA-1の発現は維持されるが、FOG-1の発現は低下し、GATA-1の抑制が外れて転写が活性化する。 つまり、マスト細胞でのFOG-1は転写に対して抑制的に働く。

また、マスト細胞特異的な遺伝子発現の場合、FOG-1は赤血球・巨核球系列特異的に抑制的に働く。つまり、マスト細胞に分化する時には、マスト細胞内のFOG-1発現低下による自身の転写活性化 に加えて、通常、赤血球などの分化に促進的に働くFOG-1を、抑制的に制御することで、マスト細胞への分化をさらに促す。


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