変圧器(トランス)の仕組み

変圧器はコイルの電磁誘導を利用していて、電流が流れると発生するコイルの磁束が中を通る鉄心を通って別のコイルを通り、その磁束の変化が別のコイルに誘導起電力(V=-L\(\large{\frac{dI}{dt}}\)、V=-N\(\large{\frac{dφ}{dt}}\))を発生させる。

鉄心には鉄損(ヒステリシス損失と渦電流損失)を少なくするために、互いに絶縁されたケイ素鋼の薄板を積み重ねた形状のものが使われる。

それでも漏れ出る磁束はあるので、損失は0にはならない。

変圧器の形状

変圧器は大きく、

  • 内鉄形・・・鉄心をコイルで包み込む形状
  • 外鉄形・・・コイルを鉄心で包み込む形状
  • 交差鉄心形・・・外鉄形の変形で、外鉄形が左右2方向からに対して、上下を加えた4方向から包み込む形状

に分類される。

内鉄形は鉄心が除去しやすい形状であるゆえ、メンテがしやすいメリットがある。外鉄形は逆にメンテがしにくい上に、高圧で使えないので、低圧のものに使用される。

高圧側(H:一次側)と低圧側(L:二次側)の配置もまた、いくつかのパターンがある。

よく変圧器の説明で使われるのは、高圧コイルと低圧コイルが別の鉄心に巻き付けられているパターンで、このパターンが一番わかりやすい。

実際よく使われているのは、上図のような鉄心側に低圧コイルLを置き、その外側に高圧コイルHを置くというもの。 使用電圧が高い場合は、高圧コイル(H)を円形板としてコイルの絶縁に留意している。

三相三線変圧器の場合は特に、両脚に高圧及び低圧コイルを設置して必要に応じて2個のコイルを直列又は並列に接続して使用する。

変圧器の冷却

変圧器の鉄損ででたエネルギーが全て熱に変えられるため、冷却装置が必要となってくる。

  • 乾式自冷形・・・空気の自然対流によって冷却(3000V以下)
  • 油入自冷形・・・鉄心とコイルを絶縁油に浸して冷却、コイルの絶縁も兼ね備えたもの。
  • 油入循環形・・・変圧器内の油を別の冷却器から送り込み循環させる。
  • 油入水冷形・・・変圧器の中に油を満たした状態で、冷却水の管を油内に入れて外から冷却水を流して冷却
  • 強制通風形・・・送風機で冷風を吹き付けて冷却

うち、油入自冷形が最も多く用いられている。

電線の需要家への引き込み

電柱の一番最上部を通る高圧架空電線には、3本それぞれに6600Vの交流が、それぞれ120°位相がずれた状態で流れている(三相三線)。

この120°位相がずれた交流は、3か所に配置したコイルの中を回転する磁石により生み出されている(発電機)

通常一般家庭ではエアコンとIHで200Vを、他の機器で100Vを使用するので、高圧電線の内の2線(電位差6600V分)を電柱に備え付けられた柱上変圧器(トランス)で3本の低圧線に変えて、そこから引き込み線で分電盤へとつなげている(単相三線)。

ちなみに、配電するときにきちんと100Vがどの家庭でも取れるように(距離とかによる誤差を補えるように)、単相の定格電圧は105V-210V、三相は210Vであるが、説明では100Vや200Vとしている。高圧の定格一時電圧は6600Vである。

似た言葉に定格容量というものがあり、これは単位が[W]で、変圧器が出せる最大出力である。定格二次電圧、定格周波数、力率100%の時の二次端子間の皮相電力。

柱上変圧器に限らず、各電子機器は100Vの電圧をその危機が必要な電圧に調整するために変圧器を大抵組み込んでいる。

(動画)

先の鉄心とコイルの構造による分類をさらに変圧の方法によっていくつかの種類に分けている。代表的なものだけ抜粋すると、

  • 単相複巻変圧器
  • 単相単巻変圧器
  • 三相変圧器
    • Y-Y結線・・・使用率低い
    • Δ-Δ結線・・・相電流が1/√3になるため電流が大きい回路に
    • Δ-Y結線・・・昇圧用、1次と2次で位相が30°ずれる。
    • Y-Δ結線・・・降圧用、1次と2次で位相が30°ずれる。
    • V結線
  • スコットトランス(T結線)

単相複巻変圧器

一番簡単な変圧器で、変圧器の説明サイトの多くがこの変圧器で説明している。最初の説明に使った下図がその複巻変圧器である。

2つのコイルを使って変圧を行うというものだ。

単相変圧器の場合は鉄心の形の関係上、高圧コイルの中に低圧コイルを入れる形状はとれないのではなかろうかと思っている。

単相複巻変圧器は、主に100Vのみを取り出せる単相二線式と、100Vと200Vを取り出せる単相三線式があるのでそれぞれ説明していく。なお、単相のことを1φ、三線のことを3W(ワイヤー)と呼ぶ。

単相二線(1φ2W)

単相二線式は構造が簡単なので理解もしやすい。

単相なので高圧側から2本(6600V)を引いてきて、複巻変圧器で100Vまで降圧する。

変圧はコイルの巻き数Nと電圧Vが比例関係にあり、コイルの巻き数Nと電流Iが反比例関係にあることだけ理解していればよい。

\(\large{\frac{N_1}{N_2}}\)=\(\large{\frac{V_1}{V_2}}\)、\(\large{\frac{N_1}{N_2}}\)=\(\large{\frac{I_2}{I_1}}\)

つまり、1次側から2次側で電圧が66分の1になっているということは、コイルの巻き数が1次側から2次側で66分の1になっているという事。

コイルの電気記号を巻き数に合わせて書いた方がいいのかもしれないが、現実的に不可能なので同じ巻き数の記号は使っているが、たぶんみんなそうなんじゃないかなと思う。(ここら辺は素人なので躓くまではとりあえずそれでいいという感じですすめてる)

また、流れる電流は、1次側と2次側の電力は同じという事実から、電圧が66分の1されれば、P=EIより、電流は66倍になるということだ。

この回路において、Rはコイルやコンデンサのない抵抗のみとすれば、電流Iは100V/R2で求めることができる。

単相三線(1φ3W)

単相三線式では、100Vしか抵抗につなげない場合と、200Vも抵抗につなぐ場合を分けて考えてみる。

まず、100Vに電子機器(抵抗)を1つずつつなげた場合

2次側の2本の電圧線の間に、ちょうどコイルの中間地点で中性線を引いて3線として、中性線を接地(アース=0V基準)している。

そして、電圧線と中性線の間を100Vずつ区切り、上下の電圧線の間の電位差を200Vとしている。(上図ではわかりやすいように、200Vの抵抗は外してある。)

中性線を0Vとしているので上の電圧線は100Vであり、下の電圧線は-100Vとなっている。中性線を接地して0Vとする理由に、200V機器の漏電時でも200Vの電圧が体に流れないようにするため。下の電圧線をアースした状態で漏電すると200Vの電圧が体にかかってしまう。→対地電圧150Vを超えるものを引き込んではいけないとされている。

上図の例では点線で囲まれた2つの回路を合成した回路とみなすことができ、R1とR2のインピーダンスが等しいときは中性線に流れる電流は相殺され、0とみなすことができる。この状態を平衡負荷という。

R1とR2のインピーダンスに差があると、それぞれに流れる電流が異なり、中性線を流れる電流はインピーダンスの低い方の回路の電流の向きとなる。

また、中性線が万が一断線してしまった場合、不平衡負荷(インピーダンスが等しくない状態)となり、抵抗値が高いほうの電子機器により負担がかかるようになり、破損リスクを高める。→多線式電路の中性線には過電流遮断器(ヒューズ含む)を施設してはならないとされている。

つづいて、100Vと200Vの抵抗をつなげた場合

流れる電流がどうなっているかがわかるかどうかがポイントではないかと思う。

わかりやすくするために実際に数値を入れたのが以下図(不平後負荷の例)

抵抗R1に流れる電流は100/10で、抵抗R2に流れる電流は100/20で、抵抗R3に流れる電流は200/20で求まる。

そしたら、2本の電圧線と1本の中性線に流れる電流と向きが求まるはず。

単相単巻変圧器

一次側と二次側で1つのコイルの一部を共有して使う変圧器。

複巻よりも、低コストで軽量だが、一次側と二次側が絶縁されておらず、二次側を接地するときにショートの危険を伴うということから、高圧を扱う場合や、変圧の電位差が高い場合は用いられない。

降圧でも昇圧でも基本的な構造は変わらない。

単巻でも複巻と同じく、一次側と二次側のコイルの巻き数の比が電圧の比になり、電流はコイルの巻き数に反比例する。電力は保存される。

そのため共有部分(分路巻線)では電流が相殺されて向きが変わる場合がある。

二次側の上側の電圧線に接地すると、漏電した時に地面を介してショートが起こってしまい大変危険である。

三相変圧器

三相変圧器は、発電所で作られた位相が120度ずつずれた三相交流を、3本の電線で送り、変圧器でそのままの三相のまま変圧する。

三相交流は、常に3つの電圧のベクトル合計が0となるため、電力も0となり、帰りの電線を省くことができるメリットがある。

三相変圧器で使われる結線は、大きくY(スター)結線、Δ(デルタ)結線の2つがあり、組み合わせで4通りの結線が重要である。

二つの結線の構造については、上記動画からの抜粋した下記画像がわかりやすい。

相電圧や相電流は1つのコイルや負荷の間にかかる電圧や電流のこと。線間電圧は2本の線の間の電圧、線電流は3本の電線にそれぞれ流れる電流。

コイルがY字型に配置されたY結線では線間電圧が√3倍(コイル1個+α分の電圧)され、コイルが三角型に配置されたΔ結線では線電流が√3倍(分岐した相電流の合計)されるのが特徴。この√3に位相差120°が加味されているので、各負荷にかかるインピーダンスの計算の際(力率使用等)は、120°は気にしなくていい。

ともに、鉄心の中に低圧コイルと高圧コイルを重ねて入れて、3つ並べる形で、高圧なので、コイルは円盤巻線をつないで作ったものとなる。

Y-Y結線

変圧器の一次側がY結線、二次側がY結線のケース。トランスにおいてコイルの巻き数の比で電圧が変更されます。

Y-Y結線でのみ少し詳しく、さらに抵抗を加えたY-Y-Y結線(青枠)と、Y-Y-Δ結線(赤枠)を示す。

三相交流なので、各電線間の電圧は同じで、3本が合わさる点での電圧は0となり、交わる点は中性点といい、接地(アース)が可能です。

Y結線での特徴は、線間電圧と相電圧が異なることや、励磁電流(鉄心入りコイルに磁束を発生させるための電流)の中に含まれる第三次高調波(振動数が3倍の波)を除去できないので歪んだ波になること等。

第三次高調波を除去できるのがΔ結線。Δ結線では相電流を流れる第三次高周波は、位相や振幅が同じなので外部へは出ていかず、第三次高調波を除去した綺麗な正弦波を取り出すことができる。

赤枠は抵抗にΔ結線を使っているので、第三次高調波は除去できる。また、Δ結線では電圧は変わらず、負荷に流れる相電流が線電流の1/√3倍となる。

電力は、1つの負荷の電力を計算してから、それを3倍して求める。

青枠なら、P=VI[W]で、赤枠なら、P=√3VIとなる。

これは抵抗のインピーダンスを加味しない皮相電力なので、有効電力を求めたいならこれに力率のcosθをかけるし、無効電力を求めるなら、これにsinθをかける。

P=I2Rでも求めることができ、この式では力率はかけなくていい。直列なので電流は等しいためである。ただ、ここでのRはインピーダンスZなので三平方の定理で求める必要がある。

Δ-Δ結線

Δ-Δ結線は、線間電圧と相電圧は同じで、相電流は線電流の1/√3となり、変圧器のコイルを細くできることや、第三次高調波を除去できるという特徴がある。

Δ結線には中性点がないが、高圧→低圧における対地電圧300V以下の時、二次側の1線を接地でき、300Vを超える場合はコンデンサ使用等の条件がある場合に接地できる。

Y-Δ結線

降圧用。√3分だけ余計に降圧される。一次側と二次側に30°の位相差(遅れ位相)がある。

Δ-Y結線

昇圧用√3分だけ余計に昇圧される。。一次側と二次側に-30°の位相差(進み位相)がある。

V結線

V結線はΔ結線の1相が省かれた結線で、送電中の1相の変圧器の故障の臨時処置や、将来の電力増加の見込みがある場所等に使用する。

V結線の特徴は、線間電圧と相電圧、線電流と相電流が等しいことである。また、相電流は相電圧に対して30度あるいは150度だけ位相が遅れている。

上図で注目するのは、真ん中の2次側V結線である。

二次側をV結線の場合と、Δ結線の場合を下図で比較してみると、三相定格容量は√3VLILで計算できることから、ともに計算すると、1/√3倍だけV結線の方の出力が下がるということがわかる。

そして、変圧器1台分の容量はΔ結線の時はVpIpとなるが、V結線の時は√3/2×VLILとなる。

√3/2=0.866のことをV結線の利用率という。

V結線の欠点は単相変圧器2台を使用するが、2台分の働きをしないことや、三相の中で変圧器がない相での電圧降下が大きく、出力電圧に不平衡を生じることである。

スコットトランス

スコットトランスはT結線の一種であり、三相から単相を取り出すことのできる結線である。

スコットトランスではT座とM座の2つの変圧器を使用する。

T座の二次の巻き線は、M座の二次の巻き線の√3/2倍にしなければならない。しかし、一般的には同じ巻き数の変圧器を使用するので、T座変圧器の二次側の巻き線が全体の√3/2のところでタップを出して使われる。

変圧器の利用率は0.866でV結線と変わらない。

細かい説明は、他サイトが分かりやすく書いてくれているのでそちらを見るとよい。

ページトップへ