間質性肺炎の症状と治療

間質性肺炎の病理

間質性肺炎は、肺胞の周囲にある間質の炎症や線維化によって、肺の弾力性が失われ、ガス交換がうまくできなくなる病気です。咳や息切れ、倦怠感などの症状が現れ、重症化すると呼吸不全に陥ることもあります。

肺胞の壁には間質と呼ばれる薄い組織が有り、ここに傷ができると、その修復のためにコラーゲンなどが増加して壁が厚くなる。これを線維化といい、スポンジ状が固くなってしまう。進行すると硬く縮んでいき、蜂巣肺になる。

肺炎やCOPDと言った肺疾患は肺胞と間質がともに傷害されているのに対して、間質性肺炎では肺の間質のみが傷害されてしまいます。コップに入った水の例だと水(肺胞内)であれば替えがききますが、コップ自体(間質)がダメになると治療がしようがないということがわかります。

このような肺の間質に影響を及ぼす疾患をまとめてびまん性肺疾患と呼んだりします。びまん性肺疾患には間質とともに肺胞も傷害されている肺疾患も含むので、間質だけ傷害されている間質性肺炎はびまん性肺疾患の一部と言えます。

間質性肺炎の原因は、大きく分けて「特定できるもの」と「特定できないもの」の2つがあります。

特定できるものには、以下のようなものがあります。

  • 膠原病:関節リウマチ、強皮症、線維筋痛症、多発性筋炎・皮膚筋炎、全身性エリテマトーデス、全身性血管炎性疾患など
  • 薬剤性肺炎:抗がん剤、抗生物質、免疫抑制剤、抗リウマチ薬、降圧薬、抗てんかん薬など
  • 過敏性肺炎:カビ、鳥、ホコリ、化学物質、動物の毛など
  • 塵肺:石綿肺、珪肺、アスベスト肺、炭じん肺など
  • 感染症:肺炎球菌、マイコプラズマ、結核、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)など

特定できないものは、「特発性間質性肺炎」と呼ばれ、間質性肺炎の約50%を占めるとされています。特発性間質性肺炎の原因は、現在のところ完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境要因の複合的な影響で発症すると考えられています。

特発性間質性肺炎の原因となる主な要因は、以下のとおりです。

  • 遺伝的要因:間質性肺炎の家族歴がある場合、発症リスクが高まります。
  • 環境要因:喫煙、職業上の粉塵や化学物質の曝露、感染症などが原因となることがあります。
  • 自己免疫疾患:関節リウマチ、強皮症、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、全身性血管炎性疾患などの自己免疫疾患に伴って間質性肺炎を発症することがあります。
  • 薬剤:抗がん剤、抗生物質、免疫抑制剤、抗リウマチ薬、降圧薬、抗てんかん薬などの薬剤が間質性肺炎の原因となることがあります。

間質性肺炎の診断

胸部X線やCTではスリガラス陰影、血液検査ではKL-6(クレアチニンキナーゼ6)の上昇が特徴です。

スリガラス陰影は間質性肺炎以外のびまん性肺疾患の一部(非定型肺炎、結核、ニューモシスチス肺炎、コロナなど多数)でも起こりえるためこれだけで確定診断は出来ません。

間質性肺炎患者では、肺の炎症や線維化が進行すると、KL-6のレベルが上昇することが一般的です。KL-6の上昇(500U/mL以上)は間質性肺炎の96%に特異的ですが、他の肺疾患(がんや結核、ニューモシスチス肺炎等)でも見られるため、この数値だけで確定診断は出来ません。

間質性肺炎の治療法

間質性肺炎の原因が特定できる場合は、原因となっている病気の治療を行うことで、間質性肺炎の症状を改善したり、進行を遅らせたりすることができます。

原因が特定できない特発性間質性肺炎の場合は、現在のところ完全に治す方法はありません。そのため、症状の進行を遅らせ、患者さんのQOL(生活の質)を維持することを目的とした治療が行われます。

特発性間質性肺炎の治療には、以下のようなものがあります。

  • ステロイド薬:炎症を抑える効果があります。
  • 免疫抑制薬:免疫の過剰な反応を抑える効果があります。
  • 対症療法:咳止め等
  • 在宅酸素療法:低酸素血症の改善のために行われます。パルスオキシメーターや血液ガス検査で酸素濃度が88%以下の場合に使用。費用が月2,3万円かかることや鼻カニューレが邪魔だし、鼻出血の原因となることがある。
  • 抗線維化薬:肺の線維化を抑える効果があります。ピレスパ(ピルフェニドン)とオフェブ(ニンテダニブ)があり、ピルフェニドンは線維化促進を抑制する作用の他に、抗炎症、抗酸化作用もある。光線過敏症と消化器症状に注意。ニンテダニブは線維化に関わる分子を選択的に阻害して、線維化の進行を抑制する。消化器症状(特に下痢)に注意する。

これらの治療を組み合わせて行うことで、症状の進行を遅らせ、患者さんのQOLを維持することができます。

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