マスト細胞のシグナル伝達

マスト細胞のシグナル伝達機構はIgE-FcεRIの凝集時間の差により2つの経路(Lyn-Syk-LAT経路とFyn-Gab2-PI3K経路)が存在することがわかっている。

Lyn-Syk-LAT経路でのシグナル伝達進行は、IgE-FcεRI複合体の持続的な凝集が必要であるが、この経路がマスト細胞の伝達経路のおよそ9割を占める。

FcεRIの架橋によりLynが活性化するとβ鎖ITAMと結合し、Syk(spleen yrosine kinase)及びγ鎖ITAMのリン酸化が誘導される。

その後、Sykがγ鎖ITAMと強く会合し、LAT(linker for activation of T cells)を介してGRB2やGADSが活性化されて、PLA2やサイトカインの産生及び脱顆粒が 促される。

PLA2からはアラキドン酸代謝物が産生され、サイトカインとしては、TNF-α、IL-13などの炎症性のものが多く産生される。

一方、Fyn-Gab2-PI3K経路はLAT非依存の経路であり、IgE-FcεRI複合体の少量の凝集でも活性化される(残り1割)。

この経路では、Lynではなく別のSrcPTKであるFynによってGab2がリン酸化されて、PI3Kが誘導されるところから始まる。

脱顆粒にはPLD(phospholipase D)やSK(sphingosine kinase)、S1P(sphingosine-1-phosphate)を通る経路が、サイトカイン産生にはAktらを通る経路 が示唆されている。

サイトカインは、ケモカインとしてMIP-1α/β、MIP-2、MCP-1などのマクロファージを遊走させるものを多く誘導する。


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