CD4+T細胞亜群(NKT、Treg、Tr1、Th3他)

なお、ナイーブT細胞が分化しえるT細胞のサブセットにはエフェクター/メモリーT細胞以外にも以下のように様々な亜群が存在する。

まず、セントラルメモリーT細胞(中枢メモリー)ですが、これは、リンパ系組織においてスペースが生じたときにホメオスタティックな増殖を介してナイーブT細胞より作られる CD62L+、CCR7+と主としてリンパ組織に長期間とどまる細胞である。

その他のメモリーT細胞はCNS2+のものとCNS2-のものに分けられる。CNS(conserved noncording sequence)とはDNA分解酵素DNaseⅠ高感受性領域のことで、 この内CNS2はIL4遺伝子の3’下流約6.5Kに存在する領域で、CNS2エンハンサー活性を示すことはIL-4を産生することを意味する。

CNS2エンハンサー活性を示すIL-4を産生する細胞にはこのような一部のメモリーT細胞に加えて、NKT細胞もあり、これらのCNS2を介したIL-4産生制御は、エフェクターT細胞であるTh2細胞の産生機構とは異なり、Notchシグナルによって活性化された転写因子RBP-J(rcombination signal sequence binding protein J:Notchシグナルの下流に存在する)がIL-4遺伝子上のCNS2領域に結合することによる。

また、この高濃度のIL-4を産生するメモリー型T細胞の生理学的意義は、ナイーブT細胞がTh2へと分化する際に必要とされる初期IL-4を供給することにある。

CNS2-のメモリーT細胞群にはTh1と同程度のIFN-γを産生するサブセットとTh17と同程度のIL-17産生能を有するサブセットが該当する。

NKT(ナチュラルキラーT)細胞は、NK細胞マーカーを発現するT細胞であり、Th1サイトカインのIFN-γとTh2サイトカインのIL-4の両者を産生し、かつ細胞障害活性も持つリンパ球で、抗原認識に関してはペプチド+MHCを認識する他のT細胞とは異なり、 TCRα鎖に固定鎖(Va24JaQ)を発現し、多型性のないCD1d分子により提示されたα-ガラクトシルセラミド(α-GC)などの糖脂質をリガンドとして認識する。

NKT細胞は抗原刺激によりIL-4よりむしろIFN-γを産生しやすい。アトピー性皮膚炎患者の末梢血NKT細胞数は著しく減少している。NKT細胞はIFN-γを産生することによりTh2細胞の活性化を抑制しうる。

CD44hiCD62L(Lセレクチン)loのCD4T細胞の中で唯一CCR7陰性であり、リンパ節へのホーミング能を持たない。

CD25+CD4+制御性T細胞(regulatory T cell:Treg)はCD44hiCD62Llo細胞の一つで、転写因子FoxP3はこの細胞群の分化・機能のマスター制御分子である。

また、抑制性T細胞(サプレッサーT細胞→現在存在が不明とされている)とも、ナイーブT細胞からではなく胸腺から産生される点において Tr1(T regulatory 1)とも区別される。

TregはIL-10やTGF-βを産生し、抑制活性を示すが、この抑制活性にはTCR刺激が必要(CD4+T細胞から制御性T細胞を誘導するのに必要)で、抗原提示細胞(APC)は不可欠である。

IL-10はCD28のチロシンリン酸化やPI3K結合の抑制などを介して、この共刺激(CD28/CD86)によるシグナル伝達をブロックすることからナイーブT細胞とAPCの間のコネクションが成り立たず、 T細胞の活性化が抑制される。

Treg活性化にはAPCは必要である反面、Tregが産生するIL-10によりAPCの成熟化が抑制されるという複雑な関係があるといえる。

抗原存在下においては、制御性T細胞は樹状細胞のMyD88を介したIL-6などの炎症性サイトカインを産生する経路(炎症性サイトカインはT細胞抑制活性を消失させる)にて抑制を受け ているが、抗原がまったく存在していない場合は、樹状細胞の活性化及び樹状細胞によるサイトカインの産生は起こらないため、Tregは活性化し、増殖する。

つまり、制御性T細胞は抗原を処理する際にはその免疫抑制能が弱まるが、抗原を処理し終えると、活性化されるという免疫のフィードバック機構として働いていると考えられる。


コメントor補足情報orご指摘あればをお願いします。

(件名or本文内でキーワード検索できます)



  • << 前のページ
  • 次のページ >>
ページトップへ