交流のインピーダンス

インピーダンスとは、抵抗のレジスタンスRとコイルの誘導性リアクタンスXL、コンデンサの容量性リアクタンスXCを合わせた合成抵抗Zのこと。

リアクタンスは後で述べるように仕事をしないので、厳密には抵抗のようにふるまうが抵抗ではない。そのため、疑似抵抗もしくは、電流と電圧の比といった呼び方をする。

直流では電圧が一定なので、コイルをぐるぐる回る電流も一定で、それにより生じるコイル中心を貫く磁場も一定だから、磁場の変化を打ち消すような電流は流れない。すなわち、コイルは普通の導線と同じように扱える。なお、スイッチを入れた瞬間や切る瞬間だけは磁束密度の変化が生じるので、電圧の変化が緩やかになる状態は起こる。

コンデンサでは、直流の場合、コンデンサに蓄えられる電荷Q=CVを超えた時点で電流は流れなくなるだけで、直流電流を妨げるような逆向きの電流を流すようなことはない。

しかし、電圧が絶えず変わる交流の場合、コイルにおいては逆向きの誘導電流が流れ、コンデンサにおいては電流が下がると蓄えられた電荷が電流として放出され、それが疑似抵抗として作用するといった複雑な状況を考えなくてはならなくなる。

それを考えることこそが、インピーダンスを求めることである。

抵抗とコイルとコンデンサのリアクタンスは、それぞれ

  • レジスタンス・・・R=R[Ω]
  • 誘導性リアクタンス・・・XL=jωL[Ω]
  • 容量性リアクタンス・・・XC=\(\large{\frac{1}{jωC}}\)[Ω]

と表すことができる。

jは虚数単位(2乗すると-1になる数で普通はiだが電気系は電流がIなのでjを使用)、ωは角速度[rad/s]で振動数がfなら2πfに等しい。Lはコイルの自己インダクタンス、Cはコンデンサの静電容量。

インピーダンスを複素数平面で考える事に対して疑問があったり、リアクタンスがなぜこの値になるのかを知りたい場合は、別ページ(インピーダンスと複素数)を見てほしい。

交流のインピーダンスを複素数座標で考える理由は、コイルとコンデンサに流れる電流が、電圧の変化に対してずれている、位相がずれているためである。

コイルもコンデンサもなく、抵抗だけが接続された直列回路では、電圧が変化すれば、抵抗を流れる電流は電圧の位相と同じように(オームの法則で)上がったり下がったりする。

ところが、コイルだと、流れる電流が増加しているときは減少させる方向に、減少しているときは増加させる方向に誘導電流が流れてしまうため、コイルに流れる電流がMAXになる時間が、普通の抵抗だった場合に比べて遅れてしまう現象が起こる。

シンプルにコイルだけの回路を考えた時に、交流の電圧が変化していき、コイルにかかる電圧Vが最大の時、電圧の変化が止まるので、逆起電力が0になり電流が流れなくなり、電圧を徐々に下げて0になった時、逆起電力が最大となり流れる電流が最大となる。電圧をさらに下げてマイナスの最大値になれば、また電流は0になる。

このような電圧の変化に比べて電流が遅れて変化することを、遅れ電流という。

コンデンサだと、かかる電圧が最大の時は、電荷で十分満たされているので電流は流れないが、電圧を下げていくと、コンデンサの電荷が徐々に戻されていき、電圧が0になると、コンデンサから戻される電流は最大となり、電圧がさらに下がってマイナスの最大値になると、またコンデンサに電流が流れなくなる。

このように電圧の変化を後押しする=電流が進んで変化することを、進み電流という。

コンデンサが電荷を蓄えるのは直感でわかるけど、コイルも電磁エネルギーを蓄えるというイメージを持つこと。

コンデンサの進み電流やコイルの遅れ電流は、難しい計算式を省略すれば、

電圧の変化に比べて電流の変化の位相が\(\large{\frac{π}{2}}\)だけ、ずれているということになる。

なお、この90度のズレは、コイルやコンデンサ単体で考えた時で、他に抵抗があったりすると、それらとのベクトル和で考えるため、回路全体での位相のズレ値は変化する。

こうした位相がずれた波を表現する方法として、複素数座標は最も適していて、

複素数の実数部分RがレジスタンスでX座標、虚数部分j(ωL-\(\large{\frac{1}{ωC}}\))がリアクタンスでY座標にプロットされる。

そして、合成抵抗(インピーダンス)Zは実数部分のベクトルと虚数部分のベクトルの和で求められる。

位相がちょうど90°ずれていることから、直角三角形の斜辺を求めるために三平方の定理を使い、

Z2=R2+(XL-XC)2

で求めることができる。

複素数平面から、誘導性リアクタンスはY座標の正側に、容量性リアクタンスはY座標の負側にプロットされるので、コイルとコンデンサは互いのリアクタンスを打ち消しあう存在で、両者のリアクタンスが同じならば、インピーダンスは抵抗のみを考えればよいということになる。

この誘導性リアクタンスと容量性リアクタンスが等しくなる周波数(ωL=\(\large{\frac{1}{ωC}}\))を共振周波数と呼び、

ωを2πfとして方程式を解くと、

f=\(\large{\frac{1}{2π\sqrt{LC}}}\)[Hz] となる。

また、コイルやコンデンサの抵抗は、仕事をしない(=エネルギーを熱として消費しない)疑似抵抗と呼ばれる。

これは、これらがエネルギーを消費せずに蓄えたり、そのまま電源に戻すためであり、 1周期で考えれば、位相のずれた波のプラスとマイナスが打ち消しあって、電流×電圧=電力消費の合計が0となることから、電力も消費しないとされる。

仕事もしない、電力も消費しないならデメリットはないのでは?

という疑問がわくわけで、これを解決するには力率を考えなくてはならない。

ページトップへ