エフィエント(プラスグレル)の作用機序と特徴

プラスグレル(エフィエント)は小腸細胞でカルボキシエステラーゼによってR-95913に代謝され、ついで小腸及び肝臓の複数の薬物代謝酵素(CYP3A、CYP2B6、CYP2C9、CYP2C19)で活性代謝物であるR-138727へ変換され、活性を発現する。R-138727のSH-基が血小板の膜に存在するP2Y12受容体のADP(アデノシン二リン酸)結合部位で共有結合を形成し、ADPの結合を不可逆的に阻害する。

共有結合を形成することから阻害作用は強力で持続的であるが、生体全ての血小板のADP受容体を阻害してしまう危険性があるため、投与開始時には多くの血小板にプラスグレルを結合する必要が有るため、投与量が多め(初回投与1日目:20mg)で、その後は少ない維持量(初回投与2日目以降:3.75mg)を投与することになる。

※H27.6現在、エフィエント錠は経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される(=心臓冠動脈にバルーンカテーテルを挿入する治療を受けた=バルーン単独orステント留置)人だけの適応です。また、適応上アスピリンを必ず併用しなければなりません。安定してきた時にバイアスピリンを切ってエフィエントだけを残すというのは×。

クロピドグレル(プラビックス)との比較

プラスグレル(エフィエント)はクロピドグレル(プラビックス)と比較して代謝活性化反応が速く、効果の発現が速やかである点で優位である。

プラスグレル、クロピドグレル共にプロドラッグなので、未変化体での活性はなく、活性代謝物が作用を示す。

クロピドグレルは、活性体になるために肝臓にてCYP(1A2、2B6、2C19)による2回の代謝を受け、チオフェン環のSが酸化されて酸素原子が導入される必要がある。この反応が遅いため活性体の生成に時間がかかる。また、クロピドグレルの肝臓での代謝の大部分はエステラーゼによるものであり、エステラーゼにより代謝を受けたものは非活性体へ、残りがCYPによる代謝を受けて活性体へとなるため、非効率的である。

一方、プラスグレルは小腸のエステラーゼで代謝されて中間体になり、肝臓でCYPによる代謝を受けて活性代謝物になる。プラスグレルの活性化にはエステラーゼによる加水分解が必要であるが、この反応は瞬時に起こることから、既に酸素原子が導入されたプラスグレルの活性化は速やかに生成される。

PCI後のステント血栓症の発現はステント留置後早期に集中しているため、両者の抗血小板作用自体はほぼ同等とされているが、効果発現が早いプラスグレルの方に分があるといえる。

さらに、クロピドグレルの代謝活性化のSR25552(中間体)→H4(活性代謝物)の反応は主にCYP2C19のみによって行われるため、CYP2C19の遺伝子多型によって、効果が大きく変動する一方、プラスグレルは複数のCYPで活性化されるため、CYP2C19の遺伝子多型によって血小板凝集能への影響が少ない。

プラスグレルではCYP2C19の影響を受けにくいため、クロピドグレルのようにCPY2C19阻害作用のあるオメプラゾールとの併用で抗血小板作用が減弱することもない。

日本人では、CPY2C19による代謝が正常な人が37%、中等度の人が44%で低度の人は19%と言われる。そのため、最近では他にも既存PPIとP-CAB(タケキャブ)のようにCPY2C19の影響を受けにくい薬剤が販売されている。

(PharmaTribune 2014.10、エフィエント資料:第一三共)

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