アトピーは完治する?

アトピーを完治させるためには、アトピーの原因の項で述べた、『アトピー素因』『皮膚の免疫学的異常』の2点を完全に改善することが 必須です。

アトピー素因の改善

『アトピー素因』とはアレルギーを起こしやすい体質を指し、一般には”Th1/Th2バランス”に起因すると思ってよいです。

Thというのはリンパ球の一つであるヘルパーT細胞の事を指し、このヘルパーT細胞には1型と2型の2種類あります。このTh1(ヘルパーT細胞1型)とTh2(ヘルパーT細胞2型)の量的バランスが、 Th2側に傾くとアレルギー体質に、Th1に傾くと乾癬などの自己免疫疾患になります。

Th1とTh2の関係は天秤の関係であり、Th2に傾けば必然的にTh1の量が減り、Th1に傾けばTh2の量が減ります。

よって、アトピー素因を改善するためには、Th1を活性化して、Th2とのバランスをとってあげる必要があり、具体的には以下の方法が効果的だと思われます。

  • 納豆菌、乳酸菌(キムチ含む)、キノコ類などをなるべく摂取する。菌を殺してしまう抗生剤の服用を減らす。
    →Toll-like受容体を介したTh1の活性化、腸内細菌叢の是正
  • ストレスをためない →ストレスはTh1の働きを抑制して相対的にTh2を活性化する。
  • バランス改善までは行かないまでも、Th2が活性化する肥満細胞の膜を強化してヒスタミンなどの放出、Th2サイトカインの合成を抑える抗アレルギー薬、Th2の産生するサイトカインIL-4,5を抑制する IPDらの定期的な内服
  • 減感作療法 →抗原の内服など

このように、生活の仕方によってアレルギー体質、アトピー素因は改善する可能性はないとはいえません。

ただ、AD患者さんの多くはダニ、ハウスダストなどのアレルゲンに対して健常人の何百倍、何千倍といった反応性を持っているのが普通です。

全ての人が、全てのアレルゲンに反応するわけではないということを考えれば、ただ単に頻回暴露とは別に、それぞれ人が 抗原特異性も持っている(抗原が多いから強い反応が起こるとも言えるし、数が少なくてもその抗原が特異性を示す場合は強い反応が起こる)のではないかと考えます。

もし、この抗原特異性自体がTh2とは独立した体質であるのであれば、Th1/Th2のバランス改善、すなわち菌類の摂取は一生にわたって行わなければならなくなるのではないだろうか。 つまり、ダニに対して特異的に反応する体質が変わらなければ、菌接種などでTh1優位な体質に変えたところで、ダニがTh2を誘導するため、Th1/Th2バランスを常にTh1に傾け 続けなければならない)

皮膚の免疫学的異常の改善

次に『皮膚の免疫学的異常』ですが、これは『表皮内のセラミド不足』に起因すると考えてよいでしょう。

皮膚の構造

セラミドは角質の細胞間脂質としての作用を担っている物質で セラミド1~6まであります。

セラミド1は、バリア機能の大部分を担い、2~6は水分保持に大きくかかわります。アトピーっ子では全てのセラミドにおいて健常人に比して 低下が見られ、特にセラミド1は1/8程度にしかすぎません。

このセラミド不足は、遺伝的な要因に大きく左右されるために、遺伝子をいじり塩基配列でも変えない限りは治りません

皮膚のバリア機能の低下は、アトピー素因に比して重要であり、IgE抗体が1000以上(正常250)のアレルギーの人でも皮膚さえ強ければ、炎症は起こりません。ただ、 皮膚が強くても気道粘膜が弱ければ喘息になってしまいますが・・・。

そのくらい重要なウェイトを占めるセラミド不足を治す方法がいまだないということが、アトピー性皮膚炎が不治の病と言われる所以です。

アトピーは完治するのか

ここまでをまとめてみると、アトピーが完治したと言える状態にはいくつかのパターンが存在することが見えてくるはずです。

一つ目のパターンは、皮膚という防御機能を回復させることで、セラミドが十分にあって皮膚が潤いで満たされている健康な肌にすることができれば、ダニやその他の抗原 に対するアレルギー指数が限りなく大きかったとしても、Th1/Th2バランスが限りなくTh2に傾いていたとしても、IgE抗体が1万だとしても、 皮膚が強ければへっちゃらです。 アトピー悪化の原因の一つとして黄色ブドウ球菌などの細菌類がありますが、これの攻撃も肌が強ければ全く問題ありません。

二つ目のパターンは、アレルギーを起こすアレルゲンとの接触を完全に絶つことです。花粉がない時期に花粉症が治まるのと同じ原理です。皮膚がいくら弱くても アレルゲンがいなければアレルギーは起きません。ただ、冬の乾燥した風や衣服などの刺激が皮膚を刺激して痒みが出て悪化することはあります。よって完治といえるには 肌を強くすることも必要です。

三つ目のパターンは、Th1/Th2バランスをTh1側に傾けることです。Th2に傾けば好酸球や好塩基球、肥満細胞などの痒みや炎症に密接に関係する細胞の活性化を抑えることが できます。人に害のある細菌への抵抗力を活性化させ、別に特別悪さをしない花粉などに対しての抵抗力は低下させます。 これも、やはり完治と言えるためには肌を強くする必要があります。

この3つのパターンが”アトピーが完治した”と言える条件です。全てに共通しているのは”乾燥肌を治すこと”で、これを治す方法は今現在ありません。 よって、”アトピー完治は不可能”と言えます。

アトピーはコントロールする病気です。肌の防御力を上昇させるためには、保湿剤を使用していくこと、だだし、湿度が高いと細菌繁殖が高まるというデメリットもあるので、 皮膚は清潔にしておくこと。この時、消毒を使用する場合は自分の皮膚細胞にも作用していないかどうか十分に検討すること。また、消毒は洗浄に勝てないことを理解する こと(使い終わったメスを消毒だけするのと、石鹸できれいに洗うのとでは後者のほうがきれい)。

アレルゲンを絶つためには、布団はこまめに干して、掃除機も使用し、じゅうたんの部屋を避ける、なるべく家の中にいないなどがあげられます。

Th2に傾けるのには、先に述べたとおり菌類の摂取が効果的です。

湿疹の具合に応じてたまにステロイドやプロトピックを使用するのは全く問題ないと思います。

このように、アトピーと一言に言っても、その人の特徴によってその病態は全く異なりますので、まずは自分の体をよく知って自分に最もあったコントロールの方法を 見つけてください。


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