赤ちゃん/乳児をアトピーにさせないために

アトピー性皮膚炎や喘息、花粉症といったアトピー素因をもつ親から生まれる子供は、遺伝的要因によりどうしてもアレルギーになりやすい体質を持っているため、 100%アレルギーにさせないようにすることは不可能と言えます。

しかし、100%とは言わないまでもアレルギー体質を緩和させることは理論的には可能です(注:万人に当てはまるわけではありません)。

Farooqiらが行った研究によれば、アトピー性疾患のリスクファクターとして、『母親のアトピー素因』、『百日咳ワクチン接種の既往』、 『生後2歳までの抗生物質投与の既往』の3つが挙げられている。 このうち、最も重要な要因となっているのが、抗生物質の投与の既往の有無である。

一般に子宮内は外部菌と隔離された状態に置かれているために、子宮内はもちろん、内部の胎児も無菌状態である。これは胎児の腸管が無菌状態であることを同時に意味する。

胎児の存在は母体にとって異種抗原とみなせるため、Th1主体の細胞性免疫よりTh2主体のであるほうが好都合であることと、無菌状態のため細菌に対して免疫機構を稼動する 必要がないことから、子宮内は無菌状態であると共にTh2優位の状態である。

このように無菌状態で生まれてくる新生児は、生後、数々の外部細菌に冒されることで腸内フローラを形成していくと共に、Th1を活性化することで Th1/Th2バランスを是正していく。

このように生後間もない新生児はどんな子供であってもTh2に極度に偏った(アレルギー体質)状態で生まれてくるため、食物アレルギーや湿疹(乳児湿疹)を起こしやすいのは やむをえない。

新生児の腸内フローラはTh2優位であり、抗体を作る体液性免疫が活性化していて分泌型IgAを産生し易い外部抗原排除に対して好都合の状態で あるように思えるが、実際は新生児の腸管での分泌型IgA産生能がまだ未熟であるため、IgEが優先的に作られ、食物アレルギーの原因の一つとなる。

食物アレルギーに関しては、新生児では消化機能が未熟なせいで食物蛋白が正常に消化されずに高分子蛋白のまま腸管に達っして抗原として認識されることも要因の一つ となる(くわしくは経口免疫寛容の項参照)。

正常であれば、この後、たくさんの感染症に曝露されることでTh1/Th2バランスを整えると共に、経口免疫寛容が誘導されて2歳を超えるあたりからは食物アレルギーや湿疹 は起こらなくなる。

そして、3歳ごろまでにはほぼ、成人の腸内フローラに近づく。

しかし、2歳くらいまでの新生児期、乳児期に抗生物質を投与された機会が多いほど正常な腸内フローラや Th1/Th2バランスが誘導されず、Th2優位かつビフィズス菌などの有用菌(嫌気性菌)の比率の少なく、大腸菌、黄色ブドウ球菌などの好気性菌の多い 腸内フローラが形成されてしまい、アレルギー体質が助長される。

こうした、「アレルギー性疾患の増加が乳幼児期に種々の感染症に曝露される機会が減ったため」という考え方を衛生仮説(Hygiene Hypothesis)と呼び、 この考えの上では乳幼児期(生後すぐから2歳くらいまでにかけて)の抗生物質服用はなるべく避けて、感染症への曝露や乳酸菌などの菌を積極的に摂取する事で アレルギーが起きにくい腸内環境を整えることが非常に重要である。

これはできるだけ早い方がよく、すでにアレルギーを発症している成人に対してプロバイオテックスを摂取させても、その有効性は乳幼児期に比べると一過性かつ天と地の差が ある。

兄弟が多い方がアレルギー疾患の罹患率が下がるというデータ、子供の集まる保育園で幼児期を過ごしたほうが罹患率を下げるというデータは、お互いに感染しあうことで 感染機会が増えるためだと考えられている。

抗生物質の投与は避けた方がよいとは言ったものの、場合によっては抗生物質を使用した方がよい場合もある。

その代表が、RS(respiratory syncytial)ウイルス,EB(Epstein-Barr)ウイルスに罹患した場合である。これらのウイルスはTh2免疫を活性化してIgE産生を増加させるため、 マクロライド系のような抗ウイルス作用のある抗生剤を使用して重症化を抑えた方がよい(咳のある場合は注意が必要)。

また、40度以上の熱が1週間下がらなかったりして死にそうなくらいぐったりしていたりしていた場合も脳がおかしくなるのを防ぐために抗生物質を乳酸菌製剤と一緒にして服用させた方がかえってよい。


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