塩の作用

脱水作用

脱水作用は、食塩濃度が0.9%(w/v=g/dl=g/100ml)以上の高張液のみで、この場合は外液の濃度を薄めようと体の中から水分が放出されることによる。

ただ、高張食塩液でなく低張食塩液でも、表皮に付着した後にそのまま乾燥させた場合は濃度が高まるため、同様の作用が期待できる。

また、浸透圧は脱水以外にもミネラル分の吸収にも関与していて、これは、体内のナトリウム濃度が外液に比べて高い場合に浸透圧の作用で水やミネラルを体の中に 吸収することを意味する(水の吸収=保湿)。

食塩濃度に関して分かりづらい場合は例で考えるとよい。 例えば、ラーメンの汁まで飲んだ(塩分を取りすぎた)時、のどが渇いた経験はないだろうか?これは、体液のナトリウム濃度が0.9%を 超えてしまうのを防ぐために水を体内へと取り入れて濃度を薄めようとする無意識反応である。 食塩を取りすぎると高血圧になるのは、血液中のナトリウム濃度が高まると、薄めようとするために水分が血管内へと移行することで 血管がパンパンになって血圧が上昇するためである。

こうして体内へと移行したNa+は、二酸化炭素、乳酸などと結合して重炭酸ナトリウムや乳酸ナトリウムになることで血液が酸性になるのを 防いだり、細胞外液の成分のひとつとして、興奮伝導にも関わることとなる。

角質剥離作用

角質剥離作用は、一般にはエステなどで肌をすべすべにするために使用されていますが、これは強電解質であるNaClが電離することで生じるNa+、Cl-がタンパク質 の電荷平衡をくずして変性させることによる。

よって、いくらアトピー性皮膚炎の人では表皮が過剰に増殖しているとはいえ、 塩もみのしすぎは角質のみならず、下部の表皮まで傷つけることになり、それが返って刺激となり皮疹を増悪させることを認識しておく。

防腐作用

防腐作用は、言い換えれば抗菌作用とも言え、人の角質のタンパク変性と同時に表皮常在菌であるブドウ球菌などの細胞タンパクを変性させることによる。

この塩による抗菌作用を使った例には、鼻中の塩水洗浄があります。また、抗菌作用+脱水作用+発酵作用を使って梅干や漬物に使用される こともあります。

電解質調整作用

最後の電解質調整作用は、神経の伝達、細胞の活動等様々な生体反応に関わるNa+、Ca+などの電解質バランスを調整する作用のことである。

人間の体液の組成は大気や土壌とは大きく違ってはいるものの、海水の化学組成に近いことからも、塩水に体をさらすことは生体調節作用としては有用である。 この作用を期待する場合は、浸透圧が必要なため、0.9%以上の高張食塩液で刺激的に作用させる必要がある。

運がよければ、これによって今まで鈍くなっていた神経系や細胞が賦活されて、痒み条件反射や冷えの是正がなされる。

最後に

まとめると塩のアトピー性皮膚炎への効果は、抗菌と神経機能、体水分調節機能の不具合の改善あたりが作用となります。塩療法は1日1回入浴時に湯船の中で 塩を体に塗ってマッサージするのが一般的で、もちろん湯船から出る際はシャワーで塩を流します。

塩の角質剥離作用により落屑が起こるとともに非常に肌が痛みますので、高濃度の塩ですとヒリヒリ感が半端ではないです。この作用が塩療法が著効する人と逆に悪化させてしまう人の 違いを決定付けるといっても過言ではありません。

塩療法には一般的に売られている塩でもよいですが、ミネラルをたっぷり含んだ死海の塩などがどうやら人気のようです。

塩療法を実行する場合は、ドライヤー温熱法(皮膚に塩を塗り、ドライヤーを20センチ離して数分間当てる方法)を局所で行って様子を 見るという手がいいかもしれません(この方法は効果が高いと言われるので一石二鳥?かも)。

なお、これらにはいずれもきちんとしたデータ(アトピー性皮膚炎に対しての)はなく、信用に値するものではありませんので注意してください。


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