アロマテラピー・精油
精油の作用経路~アロマテラピー
精油の吸収経路は、皮膚、鼻腔、内服が知られていますが、内服の専門家の元以外での使用だけは避けるようにしてください。
皮膚からの吸収は、精油成分の分子サイズが小さいために、真皮から皮下組織、そして毛細血管へと移行し、血液に入ることで、血管拡張・収縮、心悸亢進、抗菌 など、その精油の特徴にあった作用を示す。
鼻腔からの吸収は、精油成分が嗅上皮に吸着することから始まる。
嗅覚を引き起こす匂い物質が鼻腔上部の嗅上皮の粘膜に付着すると、匂い刺激は嗅細胞から伸びる、複数の軸索が集まった 嗅糸(嗅神経)と呼ばれる神経を介して、大脳内の嗅球に入り、僧帽細胞の樹状突起とシナプスを形成する。
嗅球にてシナプスを形成した嗅神経は、大脳皮質嗅覚野に投射されて匂いが認識される。
大脳というのは、大脳皮質(新皮質・古皮質・旧皮質)、大脳髄質、大脳基底核に分けることができ、匂いの認識は、大脳皮質の新皮質の嗅覚野 で行われるが、嗅神経は大脳のほかの部分や視床下部・下垂体にも投射しており、匂いを認識する以外にも、いろいろな作用を示す。
古皮質・旧皮質・大脳基底核をひっくるめて大脳辺縁系と呼ぶが、精油はこの大脳辺縁系に特に作用することで薬効を示す。
大脳基底核の扁桃体は感情の中枢として、海馬は記憶の中枢として働いており、これらを刺激することは、精神を高揚させたり、頭脳を明晰にしたり 、また逆に集中力を減退させたりと数々の作用が起こる。
視床下部・下垂体系はいわずとしれたホルモン分泌系ですが、精油成分は、嗅神経を介してここにも作用し、いろいろなホルモン(性ホルモン、成長ホルモン、 副腎皮質ホルモンなど・・)の分泌を促す。
精油をタバコと考えるとその効果はわかりやすいのではないだろうか、タバコの代わりに精油を吸ったり嗅いだりすることで精神がリラックスするのであれば 越したことはない。
テルペン系合成経路
アセチルCoAが2つでアセトアセチルCoAとなり、さらにアセチルCoA(合計三つ)が縮合して、HMG-CoA(3-hydroxy-3-methyl-glutaryl-CoA)が合成される。
HMG-CoAは、NADPHによる還元、ATPによるリン酸化を受けて、メバロニル二リン酸が合成される。
さらに脱水、脱炭酸を経て炭素数5個のIPP(イソペンタニル二リン酸=イソプレン)となり、イソメラーゼにより異性化され、DMPP(3,3-dimethylallyl diphosphate) ができる。
IPPとDMPPが縮合し、炭素数10個のGPP(geranyl diphosphate:ゲラニル二リン酸)が合成され、モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20) 、トリテルペン(C30)、ステロイド(C18-29)が合成される。
精油成分分類
大分類 | 小分類 | 成分名 | 含有精油 | 薬理作用 | 注意点 | アトピー |
モノテルペン系 | モノテルペン炭化水素 | リモネン | ベルガモット・レモン・オレンジスイート・ネロリ・フランキンセンス・ユーカリラジエタ・レモングラス | 抗菌・組織再生・消化・食欲増進 | ||
α-ピネン | ジュニパー・フランキンセンス・ユーカリラジエタ・レモン・ローズマリー | 抗菌・抗炎症・強壮 | ||||
サビネン | 含有精油 | 薬理作用 | ||||
カンフェン | ローズマリー | 抗炎症・抗菌・抗ウイルス | ||||
テルピネン | ティートリー・ネロリ・レモン | 抗菌・抗炎症・組織再生 | ||||
モノテルペンアルコール | ネロール | 含有精油 | 薬理作用 | |||
リナロール | ラベンダー・ベルガモット・イランイラン・クラリセージ・ゼラニウム・ネロリ | 抗菌・抗ウイルス・免疫調整・鎮静・血圧降下 | ||||
αテルピネオール | ユーカリラジエタ | 抗菌・免疫調整・抗炎症・収斂 | ||||
ゲラニオール | ゼラニウム・ネロリ・ローズオットー・レモングラス | 鎮痛作用・抗菌・鎮静・抗炎症・防虫 | ドパミン分泌+ | |||
テルピネン-4-ol | ティートリー | 抗菌・免疫調整・抗炎症・鎮痛・鎮静 | ||||
シトロネロール | ゼラニウム・メリッサ・ローズオットー | 抗菌・筋弛緩・血圧降下・防虫 | ||||
ボルネオール | ローズマリー | 胆汁分泌 | ||||
メントール | ペパーミント | 殺菌・抗菌・抗ウイルス | ||||
セスキテルペン系 | セスキテルペン炭化水素 | クルゼレン | ミルラ | 強壮 | ||
リンデステレン | ミルラ | 強壮 | ||||
ゲルマクレンD | イランイラン・ジュニパー | 鎮静・抗炎症・通経 | 妊娠初期× | |||
βカリオフィレン | メリッサ・ラベンダー・ローズマリー | 抗炎症・抗ウイルス | ||||
カマズレン | ||||||
カジネン | イランイラン | 強壮 | ||||
セスキテルペンアルコール | キャトロール | |||||
セドロール | ||||||
エレモール | ||||||
カジノールン | ||||||
スパスレノール | ||||||
パチュノール | ||||||
サンタロール | サンダルウッド | リラックス・抗炎症・心臓強壮 | ||||
ジテルペン系 | ジテルペン炭化水素 | ゲラニルゲラニオール | ||||
ゲラニルリナロール | ||||||
フィトール | ||||||
ジテルペンアルコール | スクラレオール | クラリセージ | ホルモン調節(エストロゲン作用) | |||
トリテルペン炭化水素 | スクアレン | |||||
フェノール類 | チモール | |||||
オイゲノール | ||||||
カルバクロール | ||||||
ケトン類 | カンファー | ローズマリー | 去痰作用 | 神経毒性 | ||
メントン | ゼラニウム・メントール(30%) | 粘膜溶解・瘢痕形成・鎮静 | 神経毒性 | |||
メチルイソブチルケトン | ミルラ | 去痰・脂肪溶解・瘢痕形成 | 神経毒性 | |||
アルデヒド類 | シトラール | レモングラス・レモン | 虫除け・殺菌・抗ウイルス | 皮膚・粘膜刺激 | ||
シトロネラール | レモングラス・メリッサ | 虫除け | 皮膚・粘膜刺激 | |||
ネラール | ||||||
ゲラニアール | メリッサ・レモングラス | 抗ヒスタミン・抗炎症・鎮痛・鎮静 | ||||
フェノールメチルエーテル類 | パラクレゾールメチルエーテル | イランイラン | 鎮痙・鎮痛・抗炎症・抗菌・抗ウイルス | |||
ラクトン類 | クマリン | ベルガモット・レモン | 光毒性 | |||
フロクマリン | オレンジスイート | 血液流動化・鎮静 | 光毒性 | |||
ベルガプテン | ベルガモット・レモン・グレープフルーツ | 薬理作用 | 光毒性 | |||
エステル類 | 酢酸リナリル | ラベンダー・クラリセージ・ネロリ・ベルガモット | 鎮静・鎮痛・抗菌 | |||
アンゼリカ酸イソブチル・メチル | カモミールローマン | 鎮静・鎮痙・抗炎症 | ||||
酢酸ゲラニル | イランイラン・レモングラス | |||||
酢酸ベンジル | イランイラン | 興奮 | ||||
安息香酸ペンジル | イランイラン | 鎮痙・鎮静・鎮痛・神経バランス改善 | ||||
オキサイド類 | 1.8-シネオール | ペパーミント・ローズマリー・ユーカリラジエタ・ティートリー・ラベンダー | 去痰作用・鎮咳 | 皮膚・粘膜刺激 |
酢酸リナリルは35%以上の含有で、強力な鎮静効果が期待できる。
1.8-シネオールは、ムチン産生細胞を活性化して、去痰作用を示すほか、免疫力を増強する作用があるが、皮膚・粘膜刺激作用があるので注意する。
注意を要する成分として フェノール、アルデヒド、ケトン、ラクトン類があげられる。
フェノールには殺菌作用、免疫調整作用がありますが、皮膚粘膜に対して刺激が強いので注意
アルデヒドも皮膚刺激があるので低濃度で用いる。化学変化は起きやすく、酸化されてカルボン酸になる。レモングラスに多く含まれる。
ケトンは代表的作用として、粘液溶解作用と瘢痕形成作用がありますが、長期使用で、しびれや知覚異常、神経麻痺などの神経毒性が発現するので注意する。 ローズマリーやユーカリはケトンを含んでおりますが8%以内の含有量ということで、ストイックになる必要はない。
ラクトンも神経毒性があり、皮膚刺激作用もある。ラクトンを塗布したまま日光に当たると日光花瓶を誘発し、皮膚に炎症が起こる可能性がある。 ベルカプテンやクマリンは細胞レベルでメラニン細胞を傷つけると言われている。
精油植物分類
精油 | 部位 | 成分 | 効能 | ノート | BF | 注意点 |
レモン | 果皮 | リモネン・シトラール・ベルガプテン | リフレッシュ作用・消毒殺菌・消化促進・強壮 | トップ | 4 | 皮膚刺激 |
オレンジスイート | 果皮 | リモネン・ネロール・シトラール | リフレッシュ・リラックス作用・食欲増進 | トップ | 4 | |
ペパーミント | 葉 | メントール・メントン・イソメントン・1.8-シネオール | 頭脳明晰・血管収縮・胃腸改善 | トップ・ミドル | 1 | 皮膚刺激 |
ラベンダー | 葉と花 | 酢酸リナリル・リナロール | 優れた鎮静作用・消毒殺菌・抗ウイルス・抗炎症 | ミドル | 5~7 | |
ローズマリー | 葉 | 1.8-シネオール・αピネン・カンファー・カンフェン | 発汗・利尿・頭脳明晰 | トップ・ミドル | 2~5 | |
ユーカリ | 葉 | 1.8-シネオール・αピネン | 頭脳明晰・去痰・殺菌・抗ウイルス | トップ | 2~5 | 刺激に注意 |
ティートリー | 葉 | テルピネン-4-ol・γテルピネン・1.8-シネオール | リフレッシュ作用・殺菌・抗ウイルス・消毒 | トップ | 3~5 | 皮膚刺激 |
ジュニパー | 果実 | αピネン・ミルセン・サビネン・テルピネン-4-ol | 頭脳明晰・血行促進・毒素排泄・収斂・利尿 | トップ・ミドル | 4 | |
イランイラン | 花 | リナロール・酢酸ベンジル | 精神リラックス・ホルモン調整・皮脂分泌調整 | ミドル | 2~4 | 過度で頭痛・吐き気 |
ゼラニウム | 葉 | シトロネロール・ゲラニオール・リナロール・イソメントン | ホルモン調節作用(更年期に)・スキンケア・鎮静 | ミドル | 3 | |
ベルガモット | 果皮 | 酢酸リナリル・リモネン・リナロール・ベルガプテン | 神経症状緩和・リフレッシュ・食欲増進 | トップ | 4~6 | 光毒性 |
グレープフルーツ | 果皮 | リモネン・ベルガプテン | リフレッシュ作用・リンパ浄化 | トップ | 4 | 光毒性 |
ネロリ | 花 | リナロール・リモネン・酢酸リナリル・ネロール・ゲラニオール | 精神安定・細胞成長 | トップ・ミドル | 1~2 | |
クラリセージ | 葉と花 | 酢酸リナリル・リナロール・スクラレオール | 女性ホルモン様作用・鎮痛・免疫賦活 | トップ・ミドル | 2~4 | 集中力減退 |
スイートマジョラム | 葉 | テルピネン-4-ol・サビネン・γテルピネン | 性欲抑制・血行促進・頭痛緩和・冷え改善 | トップ | 3~4 | |
レモングラス | 葉 | シトラール・シトロネラール・リナロール・リモネン | 虫除け作用・食欲増進・ストレス解消・抗炎症・鎮痛 | トップ・ミドル・ベース | 1 | 皮膚刺激 |
カモミールローマン | 花 | アンゲリカ酸エステル | 鎮静・鎮痛・抗炎症 | ミドル | 1~3 | |
ローズオットー | 花 | シトロネロール・ゲラニオール・酢酸ゲラニル | 精神高揚・スキンケア・月経トラブル | トップ・ミドル・ベース | 1 | |
フランキンセンス | 樹脂 | αピネン・リモネン・シメン | 細胞成長促進・スキンケア・集中力アップ | ミドル・ベース | 3~5 | |
サンダルウッド | 心材 | サンタロール・サンタレン | リラックス作用・抗炎症・抗菌 | ベース | 4~6 |
妊娠中OK
ベルガモット、スイートオレンジ、ビターオレンジ、ジャーマンカモミール、ローマンカモミール、グレープフルーツ、レモン、ティートリー、ミント
妊娠初期~4,5ヶ月避けた方がよい
ジュニパー、マジョラム、ニアウリ、ローズマリー、メリッサ、クラリセージ、ゼラニウム、ユーカリ
妊娠中NG
アンジェリカ、カンファー、グローブ、シナモン、セイジ、タイム、レモングラス、キャロットシード、スイートフェンネル
ノートと言うのは精油の揮発性を表します。トップは最初に匂いが立ち、ミドルはトップの次に、ベースは時間がたってから立つ匂いで比較的長続きします。 また、BF(ブレンディングファクター)は香りの強さを表す数値で、1が最も香りが強く、数字が増すごとに香りが弱くなります。
この、ノートとBFを精油同士が邪魔しあわないようにブレンドすることが大切です。 マッサージオイルとして使用する場合は、キャリアオイル30mlあたりに、精油を大体合計10滴くらいになるようにブレンドしてください。
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