褥瘡の分類

深さ 症状
浅い褥瘡 Ⅰ度 圧迫を除いても消退しない、発赤・紅斑
Ⅱ度 真皮までにとどまる皮膚障害、びらん、水疱、浅い潰瘍
深い褥瘡 Ⅲ度 傷害が真皮を超えて皮下組織まで及ぶ褥瘡
Ⅳ度 傷害が筋肉や腱、関節包、骨にまで及ぶ褥瘡

Ⅲ度とⅣ度の深い褥瘡は、さらに病変の進行に応じて黒色期~白色期へと分類できる。

進行期 状態
黒色期 壊死組織の付着
黄色期 深部壊死組織と不良肉芽形成
赤色期 肉芽形成期
白色期 表皮形成期

褥瘡の治療

ドレッシング材はたくさんの種類があり、管理医療機器か高度管理医療機器に該当するので、高度管理医療機器の登録がなければ容易に患者に販売はできませんが、特定保険材料料に指定されているものは保険請求できるでき、処方箋での調剤が可能、そして処方箋調剤の際は高度管理医療機器の登録を受けていない薬局であっても渡すことができます。

Ⅰ度

Ⅰ度(発赤・紅斑)では、創面の除圧・保護のためのドレッシング材(透明のポリウレタンフィルムに粘着剤を塗布したもの。オプサイトウンド等)、白色ワセリンや亜鉛華、アズノール軟膏等の油脂性基剤による創面保護がメイン。滲出液は少ないので水溶性基剤を使う機会はない。

Ⅱ度

Ⅱ度(皮膚障害、びらん、水疱、浅い潰瘍)では、破れていない水疱については白色ワセリン等油脂性基剤で保護もしくは創面保護のドレッシング材。水疱が破れたらもしくは水疱が大きく穿刺した場合はドレッシング材(透明のポリウレタンフィルム)。

破れた水疱や浅い褥瘡については肉芽形成を促し傷を保護する目的でプロスタンディン軟膏、滲出液の量により水分吸収作用のあるアクトシン軟膏や滲出液保持作用のあるリフラップ軟膏を用いることも。

ドレッシング材はハイドロコロイド(デュオアクティブ、キズパワーパッド、コスパがいいのは瑞光メディカルのハイドロコロイド包帯)が推奨。

ハイドロコロイドは外側が疎水性となって水を弾き、内側が親水性であまり多くない滲出液の吸収作用がある。感染の可能性が低い壊死組織が取り除かれた後に使用し、滲出液が多い場合は早めに取り換えるが、基本は2~5日貼りっぱなし。

滲出液が多い場合はハイドロコロイドよりポリウレタンフォーム(ハイドロサイトプラス等)が優れている。逆に滲出液が少ない乾燥面には補水作用のあるハイドロジェル(ビューゲル等)を使用する。

細菌感染により炎症が起こっている場合は、抗菌作用のあるテラジアパスタ、ゲーベンクリーム、ユーパスタ、ヨードコート、カデックスが滲出液の量により選択される。

感染症の場合のドレッシング材の使用は基本的には避けるが、使う場合は抗菌作用のあるAg入りのハイドロサイトジェントル銀等を使用する。

Ⅲ度~Ⅳ度

Ⅲ度~Ⅳ度(真皮以下まで及ぶ褥瘡)。

黒色期~黄色期においては、壊死組織があると肉芽ができないので、感染病変を治療しながらの壊死組織の除去(デブリドマン)と細菌感染の制御→肉芽組織が早く形成。

壊死組織除去作用のあるプロメライン、滲出液が少ない黒色期にはゲーベンやハイドロジェルを使用する。滲出液が多ければ滲出液吸収作用の有るカデックスやユーパスタを選択。これらがない場合ゲンタシンが使われることもあるが、ゲーベン含めて長期の使用は耐性菌の問題があるため使用は限定的に。

滲出液が多くなる黄色期では感染病変がなければ、オルセノン軟膏やアクトシン軟膏を使用することもあるが無理に使用せず、滲出液吸収効果に優れたポリウレタンフォーム(ハイドロサイトジェントル等)、滲出液がさほど多くなければデュオアクティブ等のハイドロコロイドを数日貼りっぱなしで。

赤色期~白色期においては、サイトカインが水溶性のため、乾燥させず、肉芽組織ができやすいような環境を作る。滲出液の量に応じてドレッシング剤を選択する。

フィブラストスプレーやオルセノン、リフラップ、プロスタンディン、ソルコセリル軟膏等の肉芽組織形成促進作用のある薬剤を使用する。アクトシンは滲出液吸収作用があるのがこの時期に使ってよいか悩みどころ。

褥瘡の治療薬

(図引用元:https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/05.pdf)

DESIGN分類:D(depth=深さ)、E(exudate=滲出液)、S(size=大きさ)、I(inflammation/infection=炎症/感染)、G(granulation tissue=肉芽組織)、N(necrotic tissue=壊死組織)、P(poket=ポケット)

乳剤性基剤

O/W型は乾燥面に水分を与える補水作用があり、浸出液の少ない褥瘡に適する。W/O型は油脂性基剤と同じように創面の保護と浸出液の保持作用がある。

薬剤名 成分名 効果・効能・補足
O/W型 親水軟膏
バニシングクリーム
オルセノン軟膏 トレチノイントコフェリル 水分含有率73%。VA、VE誘導体。肉芽形成促進、血管新生、表皮形成、創傷治癒
テラジアパスタ スルファジアジン サルファ誘導体。抗菌作用
ゲーベンクリーム スルファジアジン銀 水分含有率67%。サルファ誘導体。抗菌作用。基剤の補水効果による壊死組織除去
W/O型 吸水軟膏
コールドクリーム
親水ワセリン
ラノリン
リフラップ軟膏 リゾチーム塩酸塩 水分含有率21%。繊維芽細胞増殖、創傷治癒
ソルコセリル軟膏 幼牛血液抽出物 水分含有率25%。牛血液原料。ミトコンドリア呼吸促進によるATP産生増加→肉芽形成促進
ハイドロジェル(ビューゲル) 医療材料 乾燥面へ

油脂性基剤

創面の保護と浸出液の保持作用に用いる。

薬剤名 成分名 効果・効能・補足
白色ワセリン
プラスチベース
創傷保護
亜鉛華(単)軟膏 酸化亜鉛 局所収斂、創傷保護、組織修復、抗炎症作用、滲出液を少し吸収(吸収率:亜鉛華>亜鉛華単)
アズノール軟膏 ジメチルイソプロピルアズレン 創傷治癒促進、抗炎症、抗ヒスタミン作用
プロスタンディン軟膏 アルプロスタジルアルファデクス PGE1製剤。表皮形成、創傷治癒促進、局所血流増加、肉芽形成促進
ポリウレタンフィルム 医療材料 創面保護、浸潤維持

水溶性基剤

滲出液を吸収するため、浸出液の多い褥瘡に適する(吸水作用)。すなわち、同じ抗菌作用を持っていても浸出液が多ければユーパスタ、滲出液が少なければゲーベンのように使い分けないといつまでも壊死組織が取り除けず黒色期が長引く恐れがあるため注意する。

精製白糖は滲出液を吸収する作用による創傷治癒促進作用があるので、イソジンゲルとイソジンシュガーでは同じ殺菌作用を持つヨードが含有していたとしても使用用途が異なる。(日経DI

薬剤名 成分名 効果・効能・補足
マクロゴール軟膏
アクトシン軟膏 ブクラデシンナトリウム 局所血流改善、血管新生、肉芽形成、表皮形成
アルキサ軟膏 アルクロキサ アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート、角質水分保持、角質溶解、組織修復、線維化抑制、白血球増加作用
プロメライン軟膏 プロメライン 壊死組織の除去。タンパク分解酵素(パイナップル)
ユーパスタコーワ軟膏 精製白糖・ポビドンヨード 水分吸収量1.3ml/g。創傷治癒、殺菌作用
デブリサン・ペースト デキストラノマー 水分吸収量2.9ml/g。特定保険材料。浸出液吸収→肉芽形成促進。
ヨードコート軟膏 ヨウ素 水分吸収量3.7ml/g。殺菌、創傷治癒。浸出液吸収
カデックス軟膏 カデキソマー・ヨウ素 水分吸収量7.3ml/g。殺菌、創傷治癒。浸出液吸収。カデキソマーが滲出液吸収。壊死組織の除去
ハイドロコロイド(デュオアクティブ) 医療材料 浸出液吸収小
ポリウレタンフォーム(ハイドロサイトプラス) 医療材料 滲出液吸収大
ハイドロサイトジェントル銀 医療材料 感染症+浸出液吸収大

その他(粉末)

薬剤名 成分名 効果・効能・補足
イサロパン アルクロキサ アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート、線維芽細胞増殖、血管新生促進、肉芽形成促進、表皮再生促進、創傷治癒促進、浸出液吸着→乾燥化
フィブラストスプレー トラフェルミン FGF製剤。血管内皮や繊維芽細胞に存在するFGFレセプターに結合し、線維芽細胞増殖と血管新生、肉芽形成促進。

合剤の使用

単剤で使用すると水分調節がうまく行かない場合があるため、合剤として出されるケースが多々ある。

例えば、オルセノン軟膏は肉芽形成促進剤で補水作用を持つが、滲出液量を調整するために、滲出液吸収作用の有るユーパスタを1:3で混ぜたり、マクロゴール軟膏を3:7で混ぜたりして使う場合がある。

滲出液が少ない黒色期にゲーベン単剤を使用しても、黄色期で浸出液が多くなってきたら、滲出液吸収作用と壊死組織除去作用を持つプロメラインを1:1等でゲーベンと混ぜて使用するケースも有る。ただし、この2つは銀イオンと水硫基が硫化反応を起こして変色するので、使う前に混ぜる必要がある。

非タンパク質カロリー/窒素比(NPC/N 比)

非タンパク質カロリー/窒素比(NPC/N比)は、褥瘡治療において重要である。非タンパク質は主として脂肪と炭水化物。

高すぎるNPC/N比ではタンパク不足により筋肉を分解してアミノ酸を得ようとするためタンパク質が不足し、低すぎるNPC/N比はカロリー不足からタンパク質分解→タンパク質不足を引き起こし、それぞれが治癒を妨げます。

これを計算するためには以下の手順で求める(例は109回薬剤師国家試験問235)

  • 体重から総エネルギーを計算(体重46㎏×30kcal/kg等)
  • タンパク質摂取量から得られるカロリーを計算する(タンパク60g×4kcal/g)
  • 非タンパク質カロリーを計算する(総エネルギー-タンパク由来カロリー)
  • 窒素量(タンパク60g×窒素含有量16%)
  • NPC/N比=非タンパク質カロリー/窒素量

(図、文章引用元:日本皮膚科学会日本褥瘡学会日本薬剤師会、調剤と情報2020.10)

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