尋常性ざ瘡
尋常性ざ瘡の病理
皮脂の分泌が亢進し、常に毛包内に皮脂が詰まった状態になるために、毛包内まで酸素がいかない(皮膚が息できない)状況になることで、酸素を嫌う嫌気性菌のアクネ菌が繁殖し、毛穴に詰まった脂をリパーゼににより脂肪酸とグリセリンに変えてしまいその遊離脂肪酸が炎症を起こす病変です。
皮脂腺が最も働く思春期~20代にかけて好発し、脂腺が男性ホルモン(アンドロゲン)により活発な人に起こり易い。女性は生理らによる黄体ホルモンがアンドロゲンを誘導し起こることもある。その他、ニキビダニが炎症の原因になることもある。
ニキビの治療では、毛包内につまった脂を取り除くことが大切です。洗顔にて皮膚表面の皮脂を除去することで毛包内にとどまっている蓄積された脂質が皮膚表面に排泄されて2~3時間で新しい回復皮膚におきかわる、つまり、洗顔にて直接的に毛包内にある皮脂の除去はできないですが、間接的に毛包内の皮脂が置き換わることで一時的には毛包内の皮脂の除去につながります。
ただ、表面の皮脂が置き換わるまでは皮脂が少ない状態なのでかさついたり、つっぱったりするのを防ぐために、栄養(油成分)の少ないクリームを塗るとよいでしょう。洗顔は1日2回はするようにしましょう。
食べ物については、臨床的に皮脂腺は摂取した脂質の代謝経路ではなく、皮脂は食事の影響はうけないことが示されていますので食事に気をつける必要はなさそうです(ただとりすぎは×)。
ニキビの症状としては以下のものが有ります。(マルホパンフより抜粋)
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- 面貌(コメド)・・・古い角質が詰まり、角栓ができて毛穴が閉塞したり、性ホルモンの分泌量が増加し、皮脂の分泌が多量になったりすると、皮脂が毛穴の中にたまって、面貌ができる。アクネ菌は、皮脂を好み酸素を嫌うため、発育に好都合な面貌の中で増殖する。
- 紅色丘疹・膿疱・・・毛穴の中で過剰に増殖したアクネ菌は、炎症をおこす物質を作る。炎症が起こると、ニキビは赤く盛り上がって「紅色丘疹」となったり、膿が溜まって「膿疱」となる。
- 硬結・嚢腫・・・さらに、炎症が拡大して進行すると、毛穴の壁が破壊され、皮下に膿のふくろができて「嚢腫」となったり、固く盛り上がって「硬結」ができる。
尋常性ざ瘡の薬
ニキビの薬物治療は、アクネ菌を殺す抗生物質の内服(テトラサイクリン系抗生物質や抗アンドロゲンを期待したスピロノラクトン等)や外用(下記)や皮脂を取り除くイオウらが用いられます。
実際に使用については、急性期(面貌が主体の時)は、毛穴の閉塞を除去するアダパレンや過酸化ベンゾイルが、急性期(紅色丘疹・膿疱が主体の時)は、アクネ菌の増殖を抑えたり炎症を抑える目的で、抗菌薬の内服・外用、アダパレン、過酸化ベンゾイルが用いられる。
寛解維持期は眼未見えない微小面貌を抑えることにより、紅色丘疹や膿疱をできにくくするためにアダパレンや過酸化ベンゾイルが用いられる。
赤いニキビには抗菌薬、微小面貌を含む顔全体には過酸化ベンゾイルやアダパレンというのが一般的な治療。
- アクアチム(ナジフロキサシン)・・・ニューキノロン系。Cr、軟膏、Lo1日2回
- ダラシン(クリンダマイシン)・・・リンコマイシン系。ゲル、Lo1日2回。
- デュアック(クリンダマイシン+過酸化ベンゾイル)・・・配合剤。ゲル、Lo1日1回。
- ディフェリン(アダパレン)・・・ゲル、1日1回
アダパレンはレチノイン酸受容体※1(RARγ)に結合し,遺伝子転写促進化を誘導することによりレチノイド様作用を示す。ディフェリンRの局所投与により,表皮角化細胞の分化が抑制され,非炎症性皮疹と炎症性皮疹が減少することが考えられる。
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レチノイン酸はケラチノサイトのhBD-2,3,4の発現誘導を阻害する。また、レチノイン酸は単球上のTLR2の発現を抑制することにより炎症反応を抑制し、治癒を高める。
- ベピオ(過酸化ベンゾイル)・・・ゲル、1日1回
ベピオゲルは、有効成分である過酸化ベンゾイルの抗菌作用と角質剥離作用により、炎症性皮疹(赤ニキビ)及び非炎症性皮疹(白ニキビ・黒ニキビ)を改善する。
過酸化ベンゾイルは強力な酸化剤であり、分解により生じたフリーラジカル(酸化ベンゾイルラジカルやフェニルラジカル)がP.acnesやS.epidermidisなど細菌の膜構造・DNA・代謝などを直接障害して、抗菌作用を示す。
また、閉塞した毛漏斗部において、過酸化ベンゾイルの分解により生じたフリーラジカルが、角層中コルネオデスモソームの構成タンパク質を編成させることにより、角質細胞同士の結合が弛み、角質剥離が促進される。
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副作用は使用開始から1ヶ月以内が多い。日光がダメなのは刺激に過敏になっているため。温度が上がると分解が進む。漂白作用がややあるが、毎日使用で枕の色落ちが出たケースが何例かあった程度。
- ゼビアックス(オゼノキサシン)・・・ニューキノロン系。Lo1日1回。粘性のあるローション。
以下、P.acnesに対する抗菌力の比較。
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そのほかにケミカルピーリングという方法があります。これは、トリクロロ酢酸、サリチル酸、ジェスナー液などを皮膚表面に塗布することで角化細胞間の接着をゆるめ、表皮細胞のターンオーバーを促進する、毛孔の角栓の除去、皮脂分泌の抑制、アクネ菌の殺菌らの効果を示す方法です。
しかし、角栓を除去したからといってニキビ症状がすぐによくなるわけではありません。また数時間もすれば新しい皮脂が皮脂腺から分泌され、数日もすればアクネ菌が生息してしまうためです。洗顔と洗顔後の薬物塗布等で膿庖型ニキビになることさえ防げれば痕にはならないため、日々のスキンケアが大切です。
文献引用元(マルホ各種製剤パンフ、インタビューフォーム)
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