馬油
馬油(ばゆ×→ばーゆ○)の効能を知るためにはまず馬油の成分を知る必要があります。
馬油の成分
脂肪酸 | ヒト脂(%) | 馬油(%) | 牛脂(%) | |
飽和脂肪酸 | ミリスチン酸 | 3 | 3.9 | 3.3 |
パルミチン酸 | 25 | 24.5 | 26.6 | |
ヘプタデカン酸 | 0.3 | 1.3 | ||
ステアリン酸 | 4 | 2.7 | 18.2 | |
計 | 32 | 31.4 | 49.4 | |
不飽和脂肪酸 | ミリストレイン酸 | 0.5 | 0.8 | |
パルミトレイン酸 | 9 | 9.4 | 4.4 | |
ヘプタデセン酸 | 0.6 | 0.7 | ||
オレイン酸 | 48 | 36.9 | 41.2 | |
リノール酸 | 11 | 17.2 | 3.3 | |
リノレン酸 | 2.3 | |||
イコセン酸 | 0.6 | |||
計 | 68 | 67.5 | 50.4 |
この表の中で注目してほしいのは、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の構成についてである。
※脂肪酸については、脂質の項を参照してください。
ヒト脂と馬油の飽和・不飽和脂肪酸構成比が類似していること、不飽和脂肪酸の含有量が他の動物脂に比べて多く(牛脂50.4%と オリーブ油85%の中間に位置する)、その中でもリノレン酸を2.3%含んでいることが馬油の最大の特徴である。
また、馬脂の融点は30~48℃と、他の脂に比べると融点が低くやわらかいのも特徴のひとつである。
馬油の特徴
馬油は不飽和脂肪酸の比率が高いことから、他の動物脂に比べて酸化を受けやすい(腐りやすい)。
ここで、馬油よりも不飽和脂肪酸含有率が高いオリーブ油とかはなんで酸化されないの?と聞かれそうだが、これは、市販のオリーブ油 や他の食用油には抗酸化作用のあるビタミンEが配合されていることによる。
もちろん市販の馬油も酸化防止の目的でほぼ100%ビタミンEが配合されているので臭みはない。
次に馬油の効能であるが、アトピー性皮膚炎治療に限って言えば、活性酸素除去作用、抗菌作用、血行促進作用の3つの作用が期待できる のではないでしょうか。
馬油は先に述べたとおり、ヒトの皮脂とほぼ同じ構成で、ヒトの体温で融解することから、短時間で皮膚組織の奥深く(皮下組織1mm位) まで強力に浸透する。
そして、皮膚組織内部の空気を追い出した上で、油膜を張って外部と遮断することで、内部空気による酸化と外部からの二次的な酸化 を抑える作用を持つ。
酸化を抑える作用というのは、具体的には、馬油が真皮と皮下組織の血管内にまで浸透するため血管内の血球成分や、過酸化脂質、酸化コレステロール、 活性酸素などの生成を抑えることである。
また、空気を追い出すことで、細胞内間隙の空気中に存在する黄色ブドウ球菌などの好気性菌を馬油の中に捕捉して殺す抗菌作用を示す。
これらの作用が結果的に抗炎症作用となって表われることとなる。
最後の血行促進作用は馬油特有の成分であるリノレン酸のせいだと思われる。真皮や皮下組織まで到達したリノレン酸はEPA(エイコサペンタエンサン) に代謝されることでその作用を示す。(くわしくは脂質の項参照)
血行が促進されるということは、炎症や痛みの原因物質が局所に滞留するのを防ぐので、二次的に抗炎症、鎮痛、抗緊張作用を示すことになる。
馬油の使用法
このように、馬油には抗炎症作用が一応あるが、単体での作用は薬理学的観点から見ただけではかなり弱いように思われる。
そこで、その組織浸透性を生かして、ワセリンのような基剤のかわりに用いるのがいいのかもしれない。
実際、紫雲膏や神仙太乙膏に混ぜたり、アロマ、竹酢液などと混ぜて、それらの浸透性を高めるのに使用する場合は多々ある。
僕自身は馬油単体の使用経験はありますが、混合で使用したことはないので、実際の効果はわかりません。。。
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