医薬品の譲渡・譲受
前提として、譲渡は販売や授与、その他無償での受渡しを含む、譲受は購入とその他無償での受取りを含む。
他薬局等との薬の小分けの際には、品名、ロット、期限、購入等の年月日、購入者又は販売者の氏名・住所等の情報が記載された伝票と、購入者又は販売者の氏名・住所等の情報を確認するための許可証の写しなどの資料、実際に受け取りに行く人の身分を証明する資料(名刺は不可、社員証はOK)が必要となる。
但し書きとして、許可証の写し等(他下記Q&Aの資料)は常時取引関係にある場合(月に1回以上や長年に渡って年に複数回の取引)は不要とされる。受け取りに行く人の身分証は必要。
業務手順書の作成(体制省令第一条第二項、薬生総発1005第1号)
薬局開設者は、「調剤及び医薬品の販売又は授与の業務に係る適正な管理のための業務に関する手順書の作成及び、当該手順書に基づく業務の実施」を行わなければならない。
業務手順書に盛り込むべき事項は、
- ① 医薬品の譲受時は、納品された製品が正しいこと、目視できるような損傷を受けていないことなどを確認すること。
- ② 偽造医薬品の混入や開封済みの医薬品の返品を防ぐための、返品の際の取扱い。
- ③ 貯蔵設備に立ち入ることができる者の範囲と立ち入る際の方法。(第4の1参照)
- ④ 医薬品の譲渡時は、全ての供給品において、第2の1(1)①から⑥までに掲げる事項等(一般用医薬品等については、同②及び③において掲げる事項を除く。)を記載した文書(例えば、納品書)を同封すること。
- ⑤ 製造販売業者により医薬品に施された封を開封して販売・授与する場合(調剤の場合を除く。)には、医薬品の容器等に、当該分割販売を行う者の氏名又は名称並びに分割販売を行う薬局の名称及び所在地を記載すること。
- ⑥ 患者等に対して販売包装単位で調剤を行う場合には、調剤された薬剤が再度流通することがないよう、外観から調剤済みと分かるような措置を講じること。
- ⑦ 偽造医薬品や品質に疑念のある医薬品を発見した際の具体的な手順(仕入れの経緯の確認、販売・輸送の中断、隔離、行政機関への報告等)。
- ⑧ その他、偽造医薬品の流通防止に向け、医薬品の取引状況の継続的な確認や自己点検の実施等。
- ⑨ 購入者等の適切性の確認や返品された医薬品の取扱いに係る最終的な判断等、管理者の責任において行う業務の範囲。
医薬品の購入等に関する記録(薬機法施行規則第十四条)
薬局開設者は、医薬品を購入し、又は譲り受けたとき及び薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設(獣医療法 (平成四年法律第四十六号)第二条第二項 に規定する診療施設をいい、往診のみによつて獣医師に飼育動物の診療業務を行わせる者の住所を含む。以下同じ。)の開設者に販売し、又は授与したときは、次に掲げる事項(第二号及び第三号に掲げる事項にあつては、当該医薬品が医療用医薬品として厚生労働大臣が定める医薬品(以下「医療用医薬品」という。)(体外診断用医薬品を除く。)である場合に限る。)を書面に記載しなければならない。
(振替伝票の作成)
- 一 品名
- ニ 一の製造期間内に一連の製造工程により均質性を有するように製造された製品の一群に付される番号(以下「ロツト番号」という。)(ロツトを構成しない医薬品については製造番号)
- 三 使用の期限
- 四 数量
- 五 購入若しくは譲受け又は販売若しくは授与の年月日
- 六 購入若しくは譲り受けた者又は販売若しくは授与した者(以下「購入者等」という。)の氏名又は名称、住所又は所在地及び電話番号その他の連絡先(次項ただし書きの規定により同項に規定する確認を行わないこととされた場合にあつては、氏名又は名称以外の事項は、その記載を省略することができる。)
- 七 前号に掲げる事項の内容を確認するために提示を受けた資料(次項ただし書きの規定により同項に規定する確認を行わないこととされた場合を除く。)
- 八 購入者等が自然人であり、かつ、購入者等以外の物が医薬品の取引の任に当たる場合及び購入者等が法人である場合にあつては、医薬品の取引の任に当たる自然人が、購入者等と雇用関係にある事又は購入者等から医薬品の取引にかかわる指示を受けたことを示した資料
2、薬局開設者は、前項の規定に基づき書面に記載するに際し、購入者等から、薬局開設、医薬品の製造販売業、製造業若しくは販売業又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設許可に係る許可証の写し(以下単に「許可証の写し」という。)その他の資料の提示を受ける事で、購入者等の住所又は所在地、電話番号その他の連絡先を確認しなければならない。ただし、購入者等が当該薬局開設者と常時取引関係にある場合は、この限りではない。
3、薬局開設者は、薬局医薬品、要指導医薬品又は第一類医薬品(以下この項において「薬局医薬品等」という。 )を販売し、又は授与したとき(薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に販売し、又は授与したときを除く。第五項及び第六項並びに第百四十六条第三項、第五項及び第六項において同じ。)は、次に掲げる事項を書面に記載しなければならない。
- 一 品名
- 二 数量
- 三 販売又は授与の日時
- 四 販売し、又は授与した薬剤師の氏名並びに法第三十六条の四第一項若しくは第三十六条の六第一項の規定による情報の提供及び指導又は法第三十六条の十第一項の規定による情報の提供を行つた薬剤師の氏名
- 五 薬局医薬品等を購入し、又は譲り受けようとする者が、法第三十六条の四第一項若しくは第三十六条の六第一項の規定による情報の提供及び指導の内容又は法第三十六条の十第一項の規定による情報の提供の内容を理解したことの確認の結果
4、薬局開設者は、第一項の書面を、記載の日から三年間、前項の書面を記載の日から二年間、保存しなければならない。
5、薬局開設者は、第二類医薬品又は第三類医薬品を販売し、又は授与したときは、次に掲げる事項を書面に記載し、これを保存するよう努めなければならない。
- 一 品名
- 二 数量
- 三 販売又は授与の日時
- 四 販売し、又は授与した薬剤師又は登録販売者の氏名及び法第三十六条の十第三項の規定による情報の提供を行つた薬剤師又は登録販売者の氏名
- 五 第二類医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が、法第三十六条の十第三項の規定による情報の提供の内容を理解したことの確認の結果
6、薬局開設者は、医薬品を販売し、又は授与したときは、当該医薬品を購入し、又は譲り受けた者の連絡先を書面に記載し、これを保存するよう努めなければならない。
書面記載事項補足(薬生総発1005第1号)
薬局開設者に課される医薬品の譲受時及び譲渡時の書面記載事項として、次の①から⑧までの事項としたこと。
ただし、②及び③については、医療用医薬品(体外診断用医薬品を除く。)である場合に限ること。
また、⑥(氏名又は名称以外の事項に限る。)及び⑦については、薬局開設者と医薬品を購入若しくは譲り受けた者又は販売若しくは授与した者(以下「購入者等」という。)が常時取引関係にある場合を除くこと。
⑧については、購入者等が自然人であり、かつ、購入者等自らが医薬品の取引の任に当たる場合を除くこと。この場合、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(平成 16 年法律第 149 号)において、書面の保存に代えて当該書面に係る電磁的記録の保存を行うことができることとされており、電磁的記録でも差し支えないこと。
また、剤型、色、味、におい等外観的特性について確認するための製剤見本(以下単に「製剤見本」という。)については、譲受人の服用を目的としておらず、製剤見本である旨が明記されているため、記録義務の対象とならないこと。
なお、②及び③については、医療用医薬品(体外診断用医薬品を除く。)以外の医薬品(以下「一般用医薬品等」という。)についても、偽造医薬品の流通防止に向けた対策の観点から、併せて記載することが望ましいこと。
- ① 品名
- ② ロット番号(ロットを構成しない医薬品については製造番号又は製造記号)
- ③ 使用の期限
- ④ 数量
- ⑤ 購入若しくは譲受け又は販売若しくは授与(以下「購入等」という。)の年月日
- ⑥ 購入者等の氏名又は名称、住所又は所在地、及び電話番号その他の連絡先
- ⑦ ⑥の事項を確認するために提示を受けた資料
- ⑧ 医薬品の取引の任に当たる自然人が、購入者等と雇用関係にあること又は購入者等から取引の指示を受けたことを表す資料
また、薬局開設者は、購入者等が常時取引関係にある場合を除き、①から⑧までの事項を書面に記載する際に、購入者等から、薬局開設、医薬品の製造販売業、製造業若しくは販売業又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設の許可に係る許可証の写し(以下単に「許可証の写し」という。)その他の資料の提示を受けることで、購入者等の住所又は所在地、電話番号その他の連絡先を確認しなければならないこと。
なお、この確認ができない場合は、医薬品の譲受及び譲渡を行わないこと。
医薬品の分割販売について(薬機法第五十条、施行規則第二百十条)
医薬品は、その直接の容器又は直接の被包に、次に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。
- 十三 厚生労働大臣の指定する医薬品にあつては、その使用の期限
- 十四 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
第五十条第十四号の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
- 七 分割販売される医薬品にあつては、分割販売を行う者の氏名又は名称並びに分割販売を行う薬局、店舗又は営業所の名称及び所在地
分割販売補足(薬生総発1005第1号)
3 医薬品に施された封を開封して分割販売する者の記録義務に係る規定
法第 50 条に規定する医薬品の容器等に直接記載する事項として、薬局開設者、店舗販売業者又は卸売販売業者が、その直接の容器又は直接の被包を開き、分割販売する場合について、当該分割販売を行う者の氏名又は名称並びに分割販売を行う薬局、店舗又は営業所の名称及び所在地を記載する。
また、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」(昭和 36 年厚生省令第1号。以下「施行規則」という。)第 216 条に規定する表示の特例の対象となる医薬品について、その直接の容器又は直接の被包に「調剤専用」の文字があることに加え、改正施行規則第 210 条第7号に掲げる事項の記載のあるものとしたこと。
なお、開封日を特定することが可能な場合には、開封日を表示した上で分割販売するとともに、第2の1の書面記載事項に開封日を併せて記載することが望ましいこと。
処方箋医薬品の譲渡に関する帳簿(薬機法施行規則第二百九条
法第四十九条第二項 の規定により、同条第一項 に規定する医薬品の販売又は授与に関して帳簿に記載しなければならない事項は、次のとおりとする。
- 一 品名
- ニ 数量
- 三 販売又は授与の年月日
- 四 処方箋を交付し医師、歯科医師又は獣医師の氏名及びその者の住所又はその者の勤務する病院若しくは診療所若しくは家畜診療施設の名称及び所在地
- 五 購入者又は譲受人の氏名及び住所
Q&A
(答1) 購入者等を確認するための資料としては、許可証や届出書等の写し、許可証等の写しがない場合には、例えば保険指定通知書の写しや地方厚生局が公表している保険医療機関や保険薬局等の一覧の写し等が考えられる。
購入者等と雇用関係にあること又は購入者等から医薬品の取引に係る指示を受けたことを示す「資料」としては、客観的に確認でき、複製が容易でない資料である必要があり、例えば社員証や運送会社等の配達伝票が考えられるが、名刺は該当しないと考えられる。
なお、購入者等の薬局等において譲渡又は譲受する場合の当該購入者等を確認するための資料については、ネームプレートや購入者等の自署(サイン)でも差し支えない。
(答2) 記録方法としては、確認に用いた資料の種類を記録すること。また、配達伝票で確認した場合は、当該配達伝票を保管することでも差し支えない。なお、購入者等を確認するための資料については、確認した許可期限や許可番号等を併せて記録すること。
(答3) 常時取引関係にある者が適正な許可業者等であることを証明するために、資料に係る記録をそのまま保存するか、廃棄する場合は、新たに購入者等を確認した上で記録を作成し、保存しておく必要がある。なお、取引の相手方の許可更新等の際に定期的に許可証の写し等を確認し、記録すること。
(答4) 「その他の連絡先」としては、電子メールアドレス等が考えられる。
(答5) 常時取引関係にある取引先が適正な事業者であることを確認する観点から、一度は確認し、記録を作成する必要がある。なお、資料の保存については、答3の取扱いとすること。
(答6) 「場所」の記録としては、店舗等の名称の記録が必要であるが、当該情報によりその場所が特定できる場合には、所在地や許可番号の記録までが求められるものではない。
(答7) 業務手順書は、それぞれの薬局、店舗等の実態に合わせて定められるべきものであり、手順書の記載内容を一律にする必要はない。
立ち入る際の方法としては、例えば、従業員が立ち入る時は入退室の記録はせず、取引先など外部の者が入る場合は入退室の際に記録簿に記録をつけることや、医療用麻薬など特に取扱いに留意が必要な医薬品を貯蔵している場所に立ち入る場合は入退室の際に記録簿に記録をつけること等が考えられる。ただし、上記の方法はあくまで例示であり、必ずしもそのとおりの方法が必要とされるものではない。
また、監視カメラを設置して全ての立ち入りを管理することまでは必ずしも必要とはされない。
(答8) 例えば、月に1回以上の取引がある場合など、定期的な取引関係にある場合が考えられるが、長年にわたって年に複数回の取引がある場合も該当すると考えられる。
(答9) 「医薬品の取引の任に当たる自然人」とは、営業所や薬局などの事業者ではなく、薬局等を実際に訪れる購入者等の従業員や配達の委託を受けた者又はその従業員などの個人を意味している。
(答 10) 有効期間のみ記載されている医薬品については、有効期間の記録で差し支えない。また、使用の期限又は有効期間に加えて、配置期限を自主的に設定している場合について、必ずしも配置期限を記録することは求められない。
なお、医療用ガスや麻薬などそもそも使用の期限や有効期間の記載がない一部の医薬品については使用期限や有効期間を記録することは求められない。
また、ロット番号や製造番号、製造記号がない場合は、それらを記録する必要はなく、医療用ガスのボンベの番号など、一定程度、製造単位等を特定しうる記号等を記載することでも差し支えない。
(答 13) 医薬品の譲渡時に同封することとされている文書は電磁的記録であっても差し支えない。ただし、電磁的記録により送付することをあらかじめ相手方と合意しておくことが望ましい。
(答 17) 省略して差し支えない。
高度管理医療機器の譲渡・譲受
高度管理医療機器の購入等に関する記録(第百七十三条)
高度管理医療機器等の販売業者等は、高度管理医療機器等を購入し、又は譲り受けたとき及び高度管理医療機器等の製造販売業者、製造業者、販売業者、賃貸業者若しくは修理業者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に販売し、授与し、又は賃貸したときは、次に掲げる事項を書面に記載しなければならない。
- 一 品名
- 二 数量
- 三 製造番号又は製造記号
- 四 購入、譲受け、販売、授与若しくは貸与又は電気通信回線を通じた提供の年月日
- 五 購入者等若しくは貸与された者又は電気通信回線を通じて提供を受けた者の氏名及び住所
2 高度管理医療機器等の販売業者等は、高度管理医療機器等を前項に掲げる者以外の者に販売し、授与し、又は賃貸したときは、次に掲げる事項を書面に記載しなければならない。
- 一 品名
- 二 数量
- 三 販売、授与又は賃貸の年月日
- 四 販売、授与若しくは貸与又は電気通信回線を通じた提供を受けた者の氏名及び住所
3 高度管理医療機器等の販売業者等は、前二項の書面を、記載の日から三年間(特定保守管理医療機器に係る書面にあつては、記載の日から十五年間)、保存しなければならない。ただし、賃貸した特定保守管理医療機器について、貸与を受けた者から返却されてから三年を経過した場合にあつては、この限りではない。
管理医療機器・一般医療機器の購入等に関する記録(第百七十三条)
4 高度管理医療機器等の販売業者等は、管理医療機器又は一般医療機器(特定保守管理医療機器を除く。以下この条及び第百七十八条において同じ。)を取り扱う場合にあつては、管理医療機器又は一般医療機器の購入、譲受け、販売、授与若しくは貸与又は電気通信回線を通じた提供に関する記録を作成し、保存するよう努めなければならない。
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