保険医療機関及び保険医療養担当規則の一部改正等に伴う実施上の留意事項について
令和6年3月5日保医発0305第15号
保険薬局の指定に当たっての構造上・経営上の独立性の取扱いについては、下記のとおりとすることとしたので、その取扱いに遺漏のないよう、関係者に対し周知徹底を図られたい。なお、この通知は、令和6年4月1日から適用する。ただし、この通知の適用日前においても、地方社会保険医療協議会への諮問等の必要な手続を行うことができるものとする。
「保険医療機関及び保険医療養担当規則の一部改正等に伴う実施上の留意事項について」(平成8年3月8日保険発第 22 号)の第二を次のように改める。
第二 保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和三二年厚生省令第一六号)の一部改正に関する事項
一 健康保険事業の健全な運営の確保(第二条の三)関係
(一)平成六年の保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則の一部改正において、「調剤薬局の取扱いについて」(昭和五七年五月二七日薬発第五〇六号、保発第三四号)に基づき行われていた保険薬局の保険医療機関からの独立性に関する取扱いを明確化する観点から必要な改正が行われたところであるが、その後も、保険薬局の保険医療機関からの独立性に関して問題のみられる事例が発生し、社会問題化している実情に鑑み、保険薬局は保険医療機関と一体的な構造とし、又は保険医療機関と一体的な経営を行ってはならないこと、及び、保険薬局は保険医又は保険医療機関に対し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行うことの対償として、金品その他の財産上の利益を供与してはならないことを明確化するものであること。
(二)この場合において、保険医療機関と一体的な構造とは、次のアからウまでに掲げるような構造を指すものであること。
- ア 保険医療機関の建物内にあるものであって、当該保険医療機関の調剤所と同様とみられるもの
- イ 保険医療機関の建物と専用通路等で接続されているもの
- ウ ア又はイに該当しないが、保険医療機関と同一敷地内に存在するものであって、当該保険薬局の存在や出入口を公道等から容易に確認できないもの、当該保険医療機関の休診日に公道等から当該保険薬局に行き来できなくなるもの、実際には当該保険医療機関を受診した患者の来局しか想定できないもの等、患者を含む一般人が当該保険薬局に自由に行き来できるような構造を有しないもの
なお、ウへの該当の有無については、現地の実態を踏まえ、地方社会保険医療協議会に諮った上、個別に判断すること。また、保険薬局の独立性の確保の観点からは、いわゆる医療ビルのような形態は好ましくないが、このような場合にあっては、当該建物について、患者を含む一般人が自由に行き来できるような構造になっている旨を十分に確認すること。加えて、このような形態の場合には、患者誘導が行われるような実態のないよう、併せて留意すること。
(三)保険医療機関と一体的な経営を行う場合とは、(二)のまた以下に該当する場合等保険医療機関と保険薬局が一定の近接的な位置関係にあり、かつ、次のアからエまでに規定するような経営主体の実質的同一性が認められる場合又は機能上医療機関とのつながりが強いとみなされる場合を指すものであること。
- ア 保険薬局の開設者(法人たる保険薬局の役員を含む。)が当該保険医療機関の開設者(特定保険医療機関の開設者が法人の場合にあっては、当該法人の役員を含む。)又は開設者と同居又は開設者と生計を一にする近親者であるもの。
- イ 保険薬局の開設者と保険医療機関の開設者の間の資本関係が実質的に同一であるもの(法人の場合にあっては当該法人の役員が経営するものを含む。)
- ウ 職員の勤務体制、医薬品の購入管理、調剤報酬の請求事務、患者の一部負担金の徴収に係る経理事務等が特定保険医療機関と明確に区分されていないもの
- エ 特定の保険医療機関との間で、いわゆる約束処方、患者誘導等が行われているもの。
なお、保険薬局の指定の更新に当たっては、新規指定時と同様、不動産の賃貸借関連書類等の経営に関する書類等の提出を求め、一体的な経営に当たらないことを確認すること。 - オ 特定の保険医療機関から、夜間、休日等における開局、医薬品の備蓄又は管理、当該医療機関の薬剤関連業務への協力等の保険薬局としての機能に関して具体的な指示がされているもの。特に、保険医療機関と不動産取引関係を有する薬局を開設するにあたり、保険医療機関からこのような薬局の機能に関して具体的な指示又は要請を明示的に受けた上で開設するような場合は、保険薬局の保険医療機関からの独立性の観点から、機能上医療機関とのつながりが強いとみなされる場合があることに留意すること。
なお、保険薬局の指定の更新に当たっては、新規指定時と同様、不動産の賃貸借関連書類等の経営に関する書類等の提出を求め、一体的な経営に当たらないことを確認すること。特に、保険医療機関と不動産取引関係を有する保険薬局に関しては、その際に当該保険薬局が当該保険医療機関から土地又は建物を賃借する際の賃料(賃料の名目以外でも、賃貸借に関連して保険薬局から保険医療機関に支払われる費用も含む。)について確認すること。
(四)金品その他の財産上の利益とは、第一の一の(二)と同様であること。
(五)本条の規定に照らし、総合的に判断して医療機関の調剤所と同様とみられるものについては、保険薬局としての適格性に欠けるものであるから、地方社会保険医療協議会に諮った上、保険薬局の新規指定を行わないこと。また、現に存するものについては、次回更新時までに改善を指導し、これに従わない場合は、地方社会保険医療協議会に諮った上、更新を行わないこと。特に、保険医療機関の敷地内に所在する保険薬局にあっては、地方社会保険医療協議会に当該保険薬局の指定又は更新を諮る際に、当該公募に係る資料(新規指定時にあっては、薬局開設に当たって医療機関から提示された条件、契約に係る関係費用の詳細、更新時にあっては、これまでの土地又は建物を賃貸借する際の賃料に係る資料を含む。)及び当該保険薬局が当該公募に応じた際に提出した資料も確認できるようにすること。
平成28年3月31日保医発0331第6号
保険薬局の指定に当たっての構造上・経営上の独立性の取扱いについては、「規制改革実施計画」(平成 27 年6月 30 日閣議決定)を踏まえ、下記のとおりとすることとしたので、その取扱いに遺漏のないよう、関係者に対し周知徹底を図られたい。なお、この通知は、平成 28 年 10 月1日から適用する。ただし、この通知の適用日前においても、地方社会保険医療協議会への諮問等の必要な手続を行うことができるものとする。
「保険医療機関及び保険医療養担当規則の一部改正等に伴う実施上の留意事項について」(平成8年3月8日保険発第 22 号)の第二を次のように改める。
平成26年3月5日保医発0305第10号
保険医療機関が患者を特定の保険薬局へ誘導することについては、療担規則第2条の5第1項及び療担基準第2条の5第1項において禁止されているところである。
また、「保険医療機関及び保険医療養担当規則の一部改正等に伴う実施上の留意事項について」(平成6年3月 16 日保険発 26 号及び平成8年3月8日保険発 22 号)において、保険医療機関内に掲示した特定の保険薬局への案内図や、保険医療機関の受付において配布した特定の保険薬局への地図等を用いることにより、患者を特定の保険薬局へ誘導すること等が禁止されているところであるが、以下の場合には、これに該当しない。
- 3.在宅での療養を行っている患者に院外処方を行う場合
当該患者に対して、地方厚生(支)局長に対して在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の届出を行った薬局のリストを文書により提供すること。
平成20年3月19日 保医発第0319001号
第1 保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号。以下「療養担当規則」という。)の一部改正に関する事項
1 特定の保険薬局への誘導の禁止(第2条の4及び第19条の3)関係
- (1)従来から、保険医が処方箋の交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行うことは禁止されているところであるが、今般、保険医療機関についても、当該保険医療機関において診療に従事する保険医の行う処方箋の交付に関し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行うことを禁止したものであること。具体的には、保険医療機関内に掲示した特定の保険薬局への案内図や、保険医療機関の受付において配布した特定の保険薬局への地図等を用いることにより、患者を特定の保険薬局へ誘導すること等を禁止するものであること。
- (2)保険医療機関が、保険医の行う処方箋の交付に関し、患者に対し特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行うことの対償として、保険薬局から金品その他の財産上の利益を受け取ることについても、特定の調剤薬局への患者誘導につながる蓋然性が極めて高く、また、行為それ自体が医薬分業の本旨にもとるものであることから、禁止することとしたものであること。この場合において、金品その他の財産上の利益とは、金銭、物品、便益、労務、饗応、患者一部負担金の減免等を指すものであること。
- (3)保険医についても、(2)と同様の観点により、保険薬局から金品その他の財産上の利益を受け取ることを禁止するものとすること。
2 証明書等の交付(第6条)関係
あん摩・マッサージ、はり及びきゅうに係る療養費の請求の際に必要な医師の同意書の交付に要する費用について、診療報酬上評価を行ったことに伴い、無償で交付する義務の対象から除外したこと。
3 特殊療法等の禁止(第18条)及び使用医薬品(第19条)関係
- (1)保険医は、健康保険の診療に従事するに当たり、厚生大臣の定める医薬品以外の医薬品を使用することは禁止されているところであるが、今般、薬事法(昭和35年法律第145号)第80条の2第1項に規定する治験(以下「治験」という。)に係る診療について、特定療養費の支給対象とされたことに伴い、厚生大臣の定める医薬品とされていない治験薬についても保険診療上使用されることとなることから、その場合には、本規定を適用をしない旨を明記したものであること。
- (2)また、特殊な療法及び新しい療法等についても、厚生大臣が定める場合のほかこれを行ってはならないものとされているが、(1)と同様の趣旨により、治験に係る診療については、本規定の適用除外とするものであること。(厚生大臣が定める場合を告示)
4 診療の具体的方針(第20条)関係
- (1)検査については、研究の目的で行うことは禁止されているところであるが、治験に係る診療について、特定療養費の支給対象としたことに伴い、治験に行う検査については、この限りでない旨を明記したものであること。
- (2)歯科診療についても、(1)と同様であること。
5 歯科診療の具体的方針(第21条)関係 今般、歯科診療報酬において、補綴物維持管理料を創設したこと等に伴い、歯冠修復物及びブリッジの維持管理について、歯科医師である保険医の努力義務として明確に位置づけたものであること。
第2 保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和32年厚生省令第16号)の一部改正に関する事項
1 健康保険事業の健全な運営の確保(第2条の3)関係
- (1)平成6年の保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則の一部改正において、「調剤薬局の取扱いについて」(昭和57年5月27日薬発第506号、保発第34号)に基づき行われていた保険薬局の保険医療機関からの独立性に関する取扱いを明確化する観点から必要な改正が行われたところであるが、その後も、保険薬局の保険医療機関からの独立性に関して問題のみられる事例が発生し、祉会問題化している実情に鑑み、保険薬局は保険医療機関と一体的な構造とし、又は保険医療機関と一体的な経営を行ってはならないこと、及び、保険薬局は保険医又は保険医療機関に対し、患者に対して特定の保険薬局において調剤を受けるべき旨の指示等を行うことの対償として、金品その他の財産上の利益を供与してはならないことを明確化するものであること。
- (2)この場合において、保険医療機関と一体的な構造とは、保険薬局の土地又は建物が保険医療機関の土地又は建物と分離しておらず、公道又はこれに準ずる道路等を介さずに専用通路等により患者が行き来するような形態のものをいうものであること。また、保険薬局の独立性の確保の観点からは、いわゆる医療ビルのような形態は好ましくないが、このような場合にあっては、当該建物について、患者を含む一般人が自由に行き来できるような構造になっている旨を十分に確認すること。加えて、このような形態の場合には、患者誘導が行われるような実態のないよう、併せて留意すること。
- (3)保険医療機関と一体的な経営を行う場合とは、(2)のまた以下に該当する場合等保険医療機関と保険薬局が一定の近接的な位置関係にあり、かつ、次のアからエまでに規定するような経営主体の実質的同一性が認められる場合又は機能上医療機関とのつながりが強いとみなされる場合を指すものであること。
- ア 保険薬局の開設者(法人たる保険薬局の役員を含む。)が当該保険医療機関の開設者(特定保険医療機関の開設者が法人の場合にあっては、当該法人の役員を含む。)又は開設者と同居又は開設者と生計を一にする近親者であるもの。
- イ 保険薬局の開設者と保険医療機関の開設者の間の資本関係が実質的に同一であるもの(法人の場合にあっては当該法人の役員が経営するものを含む。)
- ウ 職員の勤務体制、医薬品の購入管理、調剤報酬の請求事務、患者の一部負担金の徴収に係る経理事務等が特定保険医療機関と明確に区分されていないもの
- エ 特定の保険医療機関との間で、いわゆる約束処方、患者誘導等が行われているもの。
- (4)金品その他の財産上の利益とは、第1の1の(2)と同様であること。
- (5)本条の規定に限らし、総合的に判断して医療機関の調剤所と同様とみられるものについては、保険薬局としての適格性に欠けるものであるから、地方社会保険医療協議会に諮った上、保険薬局の新規指定を行わないこと。また、現に存するものについては、次回更新時までに改善を指導し、これに従わない場合は、地方社会保険医療協議会に諮った上、更新を行わないこと。
2 掲示(第2条の4)関係
- (1)保険薬局が提供するサービスの内容等に関する事項について、患者に対する十分な情報提供の促進を図る観点から、厚生大臣の定める事項を薬局内の見やすい場所に掲示することとしたこと。
- (2)具体的には、次の4つの事項を掲示事項としたこと。
- ア 薬剤服用歴管理指導料に関する事項
- イ 基準調剤加算に関する事項
- ウ 無菌製剤処理加算に関する事項
- エ 在宅患者訪問薬剤管理指導料に関する事項
3 調剤の一般的方針(第8条)関係
- (1)保険薬局における薬学的管理及び指導は医薬分業の本旨であり、最近の医薬分業の急速な進展に伴い、その重要性が高まっていることに鑑み、調剤に加えて薬学的管理及び指導を保険薬剤師の義務として明確にしたものであること。
- (2)患者の療養上妥当適切な調剤及び薬学的管理指導を行うため、保険薬剤師は、日本薬剤師研修センター、薬剤師会及び薬科大学等が開催する研修等を通じて必要な知識及び技能の研鑽に努めなければならないものであること。
第3 保険薬局に係る厚生大臣の定める掲示事項(平成8年3月厚生省告示第27号)に関する事項
1 保険薬局が提供するサービスの内容について、患者に対する情報の提供の促進を図る観点から、保険薬局内の掲示事項として、調剤報酬点数表の薬剤服用歴管理指導料に関する事項及び同表に基づく届出事項に関する事項を定めたこと。
2 具体的には、薬剤服用歴管理指導料に関する事項並びに基準調剤加算の届出、無菌製剤処理加算の届出及び在宅訪問薬剤管理指導料に係る届出等に使用した届出書の内容のうち、届出を行ったことにより患者が受けられるサービスの内容等を保険薬局内の見やすい場所に分かりやすく掲示するものであること。
3 保険薬局の外側の見やすい場所に、開局時間及び休業日並びに時間外、休日、深夜における調剤応需体制に関する事項等についても掲示することが望ましいこと。
4 保険調剤に関して、ここで定められた以外の事項について誤解を招くような表現の掲示を行ったり、誇大な広告・宣伝を行ってはならないものであること。なお、以下に各事項の掲示の具体例を示す。
(掲示例)
- 1 当薬局は、厚生大臣が定める基準による調剤を行っている保険薬局です。
- 2 当薬局は、○○○品目の医薬品を備蓄しています。
- 3 当薬局は、どの保険医療機関の処方箋でも応需します。
- 4 当薬局は、患者さんの希望により服用薬剤の種類や服用経過などを記録した「薬剤服用歴の記録」を作成し、薬剤によるアレルギーや副作用の有無を確認するとともに、複数の病院・診療所から薬剤が処方されているような場合には、服用薬剤同士の重複や相互作用の有無をチェックします。
- 5 当薬局は、処方箋による医師の指示があるときは、在宅で療養されている患者さん宅を訪問して服薬指導等を行います。
- 6 当薬局は、無菌室(クリーンベンチ)の設備を備え、注射薬等の無菌的な製剤を行います。
Q&A(H28年調剤報酬改定)
(答)フェンス等を撤去したことのみをもって、地方厚生(支)局へ報告することは不要である。ただし、フェンス等を撤去することにより「「保険医療機関及び保険医療養担当規則の一部改正等に伴う実施上の留意事項について」の一部改正について」(平成28年3月31日付け保医発0331第6号)における「一体的な構造」に該当する場合があり得るので留意すること。なお、疑義が生じる場合には、事前に地方厚生(支)局へ相談されたい。
Q&A(H26年調剤報酬改定)
・ 保険医療機関は、事業者又はその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない。
・ 保険薬局は、事業者又はその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険薬局において調剤を受けるように誘引してはならない。とされたが、趣旨如何。
(答)一部の保険医療機関等において、集合住宅等に入居する患者の紹介を受け、患者紹介料を支払った上で、訪問診療等を行っている事例があった。これらの事例については、
・ 特定の保険医療機関等への患者誘導につながる蓋然性が高く、患者が保険医療機関等を自由に選択できる環境を損なうおそれがあること
・ 患者を経済上の取引の対象としており、保険医療機関等による過剰な診療等につながり、保険診療そのものや保険財源の効果的・効率的な活用に対する国民の信頼を損なうおそれがあること等の問題がある。保険医療機関等は患者が自由に選択できるものである必要があり、また、健康保険事業の健全な運営を確保する必要があること等から、今回の改正において、保険医療機関又は保険薬局が、事業者又はその従業者に対して、患者を紹介する対価として、患者紹介料等の経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険医療機関又は保険薬局において診療又は調剤を受けるように誘引することを禁止したものである。
(答)今回の改正により、基本的には、
① 保険医療機関又は保険薬局が、事業者又はその従業員に対して、患者紹介の対価として、経済上の利益の提供を行うこと
② ①により、患者が自己の保険医療機関又は保険薬局において診療又は調剤を受けるように誘引することのいずれにも該当する場合は、禁止行為に該当すると判断される。①については、患者紹介の対価として、経済上の利益が提供されているか否かで判断されるものである。
患者紹介とは、保険医療機関等と患者を引き合わせることであり、保険医療機関等に患者の情報を伝え、患者への接触の機会を与えること、患者に保険医療機関等の情報を伝え、患者の申出に応じて、保険医療機関等と患者を引き合わせること等も含まれる。患者紹介の対象には、集合住宅・施設の入居者だけでなく、戸建住宅の居住者もなり得るものである。
経済上の利益とは、金銭、物品、便益、労務、饗応等を指すものであり、商品又は労務を通常の価格よりも安く購入できる利益も含まれる。経済上の利益の提供を受ける者としては、患者紹介を行う仲介業者又はその従業者、患者が入居する集合住宅・施設の事業者又はその従業者等が考えられる。
禁止行為に該当すると判断されることを避ける意図をもって、外形的には、経済上の利益の提供を患者紹介の対価として明示しないことも予想される。例えば、訪問診療の広報業務、施設との連絡・調整業務、訪問診療の際の車の運転業務等の委託料に上乗せされている場合、診察室等の貸借料に上乗せされている場合も考えられ、契約書上の名目に関わらず、実質的に、患者紹介の対価として、経済上の利益が提供されていると判断される場合は、①に該当するものとして取り扱うものである。
このため、保険医療機関等が支払っている委託料・貸借料について、患者紹介の対価が上乗せされていると疑われる場合は、当該地域における通常の委託料・貸借料よりも高くはないこと、社会通念上合理的な計算根拠があること等が示される必要がある。
また、患者紹介を受けており、保険医療機関等が支払っている委託料・貸借料について、診療報酬の一定割合と設定されている場合は、実質的に、患者紹介の対価として支払われているものと考えられる。
同様に委託料・貸借料について、患者数に応じて設定されている場合は、業務委託・貸借の費用と患者数が関係しており、社会通念上合理的な計算根拠があること等が示される必要がある。集合住宅・施設に入る保険医療機関等を決定・制限することができる者が、保険医療機関等に対して診療又は調剤に必ずしも必要ではない業務委託・貸借を条件として求めている場合は、患者紹介の対価として委託料・貸借料が支払われている蓋然性が高いと考えられる。
②については、①により、患者が自己の保険医療機関又は保険薬局において診療又は調剤を受けるように誘引しているか否かで判断されるが、保険医療機関又は保険薬局が、患者紹介を受けて、当該患者の診療又は調剤を行っている場合は、基本的には、②に該当するものと考えられる。
なお、これについては、訪問診療の同意書、診療時間、診療場所、診療人数等も参考にするものである。
(答)集合住宅の入居要件として、特定の保険医療機関の訪問診療を受けることを入居者に求め、保険医療機関が入居者に一律に訪問診療を行うことについては、訪問診療は通院が困難な患者に対してその状態に応じて行うものであること、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」において「居宅における療養上の管理及び看護は、療養上適切であると認められる場合に行う」とされていること、保険医療機関は患者が自由に選択できるものである必要があること等から、あってはならないものである。
(答)集合住宅に入る保険薬局を決定することができる者が、保険薬局に対して調剤に必ずしも必要ではない業務委託を条件として求めている場合は、患者紹介の対価として委託料が支払われている蓋然性が高く、基本的には、患者紹介料の支払いの禁止に該当するものと考えられる。
(答)診察室等の貸借料に患者紹介の対価が上乗せされている場合も考えられ、契約書上の名目に関わらず、実質的に、患者紹介の対価として、経済上の利益が提供されていないかどうかを確認する必要があり、診療所が支払っている貸借料について、患者紹介の対価が上乗せされていると疑われる場合は、当該地域における通常の貸借料よりも高くはないこと、社会通念上合理的な計算根拠があること等が示される必要がある。
また、診療所が支払っている貸借料について、診療報酬の一定割合と設定されている場合は、実質的に、患者紹介の対価として支払われているものと考えられる。
(答)歯科訪問診療の広報業務、施設との連絡・調整業務、歯科訪問診療の際の車の運転業務等の委託料に患者紹介の対価が上乗せされている場合も考えられ、契約書上の名目に関わらず、実質的に、患者紹介の対価として、経済上の利益が提供されていないかどうかを確認する必要があり、保険医療機関が支払っている委託料について、患者紹介の対価が上乗せされていると疑われる場合は、当該地域における通常の委託料よりも高くはないこと、社会通念上合理的な計算根拠があること等が示される必要がある。
また、保険医療機関が支払っている委託料について、患者数に応じて設定されている場合は、業務委託の費用と患者数が関係しており、社会通念上合理的な計算根拠があること等が示される必要がある。
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