目次
- グレープフルーツの薬剤に与える影響
- コメント
グレープフルーツの薬剤に与える影響
グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類(ベルガモチン、ナリンゲニン等)が小腸消化管壁に存在する薬物代謝酵素CYP3A4を阻害するために、Ca拮抗薬の分解が抑制され、血中へと移行する量が増加し、降圧作用が増強される機序が知られている。
グレープフルーツの果肉が白いホワイトタイプの方が、果肉が赤いルビータイプよりも、フラノクマリン類を2倍程度多く含有している。

ここで、管理人がよく患者さんから質問を受けた時に悩む以下の事例についてざっくりまとめてみる。
- グレープフルーツジュースはダメでもグレープフルーツ(実)は食べて大丈夫なのか?
- グレープフルーツジュースが併用注意の欄に記載されているが、絶対摂取したらダメか?
- Ca拮抗薬と時間を開ければグレープフルーツジュースを摂取しても平気か?
GFJはダメでもGFは摂取OK?
相互作用を及ぼす成分(フラノクマリン類)は果皮だけでなく果肉(種や袋除く)にも含まれていて、GF1個の果肉と、GFJ250mlが同等のCYP3A4阻害作用を持つ。
つまり、ジュースだけでなく、果肉の摂取も控えることが望ましい。
GF以外の柑橘類でフラノクマリン類を含むもの(影響が高いもの)と含まないもの(影響が低いもの)は下表。
含むもの(摂取×) | 含まないもの(摂取〇) |
---|---|
グレープフルーツ | 温州ミカン |
スウィーティ | いよかん |
ハッサク | でこぽん |
ぶんたん | かぼす |
夏みかん | バレンシアオレンジ |
だいだい | すだち |
ぼんたん | ゆず |
ぱんぺいゆ | レモン(果肉) |
GFJは絶対摂取したらダメか?
以下のGFJによる薬物動態への影響を見ればわかる通り、Ca拮抗薬服用中の患者がGFJを摂取した場合、半減期や消失速度は変わらないものの、最高血中濃度(Cmax)とAUC(血中濃度-時間曲線下面積)が上昇する。
中でもノルバスクとヘルベッサーはCYP3A4阻害の影響を受けにくいため、比較的気にせずGFJを摂取できる薬剤である。とはいえ、併用注意欄に記載があるため注意するに越したことはない。
なお、GFJの摂取量と血中濃度の上昇度は必ずしも比例しない。(GFJを2倍飲んだとしても血中濃度が2倍までは上昇しない)
製品名 | 一般名 | AUC | Cmax |
---|---|---|---|
ノルバスク アムロジン |
アムロジピン | 1.08~1.16倍 | 1.07~1.15倍 |
ランデル | エホニジピン | 1.67~1.7倍 | 1.26~1.55倍 |
アテレック | シルニジピン | 2.3倍 | |
ペルジピン | ニカルジピン | 1.34~1.97倍 | 1.24~1.53倍 |
バイミカード | ニソルジピン | 1.98~4.55倍 | 3.06~4.92倍 |
バイロテンシン | ニトレンジピン | 1.40~2.06倍 | 1.40~1.99倍 |
アダラート セパミット |
ニフェジピン | 1.08~2.03倍 | 1.04~1.94倍 |
ニバジール | ニルバジピン | ND | ND |
コニール | ベニジピン | 1.59倍 | 1.73倍 |
カルスロット | マニジピン | 2.31~2.44倍 | 2.35~3.07倍 |
カルブロック | アゼルニジピン | 3.32倍 | 2.54倍 |
ムノバール スプレンジール |
フェロジピン | 1.43~3.34倍 | 1.70~4.35倍 |
サプレスタ ベック |
アラニジピン | ND | ND |
ヘルベッサー | ジルチアゼム | 1.03~1.10倍 | 1.02~1.07倍 |
ワソラン | ベラパミル | 1.28~1.42倍 | 0.85~1.61倍 |
※大日本住友製薬 医療情報サイト カルグレより一部抜粋並びに改変
(GFJ:200~400ml摂取時? 剤形(徐放剤等)違いは影響しない)
時間を開ければGFJを摂取可能か?
GFJ摂取の効果は3-4日持続することが知られている。
GFJ摂取により不可逆的に阻害されたCYP3A4がその機能を75%回復するまでに3日、90%回復するまでに4日かかると言われている。
つまり、時間を空けるのであれば何時間レベルではなく、「服用前後4日以上空けて下さい」という非現実的な話になる。
コメントor補足情報orご指摘あればをお願いします。
- << 前のページ
- 次のページ >>