血液凝固の仕組み、血液凝固因子について

血液凝固(一次止血)のメカニズム

通常、血管に傷がつくと、傷ついた部位のコラーゲンが露出し、その部分にフォンビルブランド因子(vWF)が結合する。そこに血小板がGP1b・GP2b/3aといった糖タンパク質を介して結合(血小板の粘着)、それにより血小板は活性化し、ホスホリパーゼCの活性化を介したアラキドン酸カスケードを進行させて血小板のさらなる凝集を促進、一次止血が完成します。

こうした血小板の凝集は、傷を修復するのには大切な反応なんですが、血小板が山のように凝集して血液の通り道を邪魔してしまえば、脳梗塞や心筋梗塞などの梗塞疾患を引き起こします。

高血圧で血管が細くなっていたり、糖尿病で血管がもろくなって傷ができやすかったりすれば、なお梗塞の危険度は高まります。これを予防するのが、血小板の凝集を抑制する働きのある抗血小板薬になります。

血液凝固反応

血液凝固(二次止血)のメカニズム

vWFを介して接着した血小板は、活性化血小板となると膜上に陰性荷電を持つリン脂質を露出させる。

そこをめがけて各種の血液凝固因子(上表)が集まって、リン脂質上にて血液凝固反応が進行する。実際に血小板の膜リン脂質へ結合できるのはGlaドメインを持つ凝固因子、すなわちビタミンK依存性凝固因子(下図水色)であり、これらの凝固因子は同時にCa2+を結合できる部位を持つ。

血液凝固反応は、大きく外因系と内因系、そして凝固抑制系、生体内恒常凝固系らに分けることができる。

血液凝固反応

外因系(Extrinsic Xase)

血管組織が損傷を受けると、組織から組織因子(TF=Ⅲ因子=組織トロンボプラスチン)が遊離し、Ⅶ因子と会合して、直接Ⅹ因子を活性化する(組織因子の下図が少ないとⅨ因子の活性化から進む)。これが外因系のスタートになる。

リン脂質表面上(このリン脂質を供給するのは傷害局所に粘着した活性化血小板)にて、活性化されたⅩa因子からさらに凝固反応が進行し、まずは少量のトロンビンが産生される。

この初期に産生される少量のトロンビンは、フィブリノーゲンをフィブリンに変えるまでの力を持たず、主として血小板のPAR-1を介した血小板活性化に使われる(Initiation Phase)。

また、この少量のトロンビンは、ⅩⅠ因子とⅧ因子、Ⅴ因子に対してポジティブフィードバックをかけて、内因系の凝固反応を助ける(Propagation Phase)。

内因系(Intrinsic Xase)

内因系の凝固反応は、プリカリクレイン、高分子キニノーゲン、ⅩⅡ因子やⅩⅠ因子といった接触因子が、主にコラーゲンのような陰性荷電物質に接触することで活性化され、その後のⅨ因子、Ⅷ因子の活性化から、Ⅹ因子を活性化し、それ以降は外因系と同じ経路にて凝固反応を進行させる。組織因子非依存の凝固機序である。

内因系のⅩⅠ因子とⅧ因子は、先の外因系によるトロンビン生成の増幅反応により更に活性化、これにより凝固反応は30万倍加速される。また、Ⅴ因子も同増幅反応により更に活性化され、活性化されたⅤaとⅩa、Ⅱ、Ⅳ因子でプロトロンビナーゼ複合体を形成し、これも凝固反応を30万倍加速させると言われる。

血液凝固反応

凝固抑制系

凝固抑制系の中核を担うのは、血管内皮細胞上のグルコサミノグリカン(ヘパラン硫酸)に存在する、TFPI(tissue factor pathway inhibitor)、AT(アンチトロンビン)、や血管内皮細胞上のTM(トロンボモジュリン)である。

血液凝固反応

TEPIはⅩa因子とⅦa因子(組織因子との複合体)を阻害する。

TFPIはK1、K2、K3ドメインを持ち、K1とⅦa因子が、K2とXa因子が結合することで両者を阻害する。さらに、プロテインSがTFPIのK3ドメインを介して結合し、APC(活性化プロテインC)非依存に抗凝固作用を約10倍促進する。

ATはXa因子とトロンビンを阻害する。

TMはトロンビンを補足し、プロテインCを活性化プロテインCへ変えて、プロテインSの酵素のもとにⅤa因子とⅧa因子を阻害する。

生体内恒常凝固系

トロンビンの生成を示す指標としてTATがある。生体内の恒常的に存在するTATは0ではない。

生体内では組織外傷非依存的にⅦ因子が常に若干活性化されている状態であり、微量なトロンビンが常に作られている。

関連ページ

(参考・引用:イグザレルト薬剤師セミナー(バイエル薬品)、日本血栓止血学会、リクシアナ資料(第一三共)、クレデンシャル2015.6脳梗塞慢性期の再発予防、PharmaTribune2014.11、クレデンシャル2017.7脳梗塞の急性期治療と再発予防、心房細動Webセミナー(2016.7.26 第一三共)、北埼玉エリア抗凝固薬検討会H29.9.7)

コメントor補足情報orご指摘あればをお願いします。

(件名or本文内でキーワード検索できます)



  • << 前のページ
  • 次のページ >>
ページトップへ