ワーファリン、プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの違い~管理薬剤師.com

ワーファリン、プラザキサ、エリキュース、イグザレルトの違いと作用

プラザキサ、イグザレルト、エリキュースと言った抗凝固薬が続々と発売されて、心原性脳塞栓症という言葉が耳に入る機会が多くなった気がします。

これらの抗凝固薬は、それまでのワーファリンが納豆や青汁といったビタミンKを大量に含む食物を一緒に食べれないことや定期的に血液検査が必要といった煩わしさを淘汰し、期待されて出てきた薬剤です。

そんな矢先にでたプラザキサのブルーレター・・・。これにより、ワーファリンのほうが使いやすいと思ったDrも多いのではないでしょうか。腎代謝80%だから高齢者に使いづらいのが原因で、これがブルーレターの原因となりました。

さて、心原性脳塞栓症とはどういう疾患なのか、ワーファリンやプラザキサ、エリキュース、イグザレルトは抗凝固薬で、パナルジンやプラビックスは抗血小板薬、何が違うのか?

抗血栓薬の術前休薬期間

一般名(主な商品名) 休薬開始時期 作用持続時間
アスピリン(バファリン、バイアスピリン) 7日前(低危険手技時は3日前) 7~10日
クロピドグレル硫酸塩(プラビックス) 14日前 10~14日
チクロピジン塩酸塩(パナルジン) 10~14日前(低危険手技時は5日前) 10~14日
シロスタゾール(プレタール) 3日前 48時間
イコサペント酸エチル(エパデール) 7日前 7~10日
ジピリダモール(ペルサンチン) 1~2日前 不明
サルポグレラート塩酸塩(アンプラーグ) 1日前 4~6時間
ベラプロストナトリウム(ドルナー、プロサイリン) 1日前 6時間
リマプロストアルファデクス(オパルモン、プロレナール) 1日前 3時間
ワルファリンカリウム(ワーファリン) 3~5日前 48~72時間
ダビガトラン(プラザキサ) 24時間(重大な手術は2日)  
リバーロキサバン(イグザレルト) 24時間(重大な手術は2日)  
アピキサバン(エリキュース) 2~4日前  

(日経DI2012.3より)

抗血小板薬とは

血液凝固(一次止血)のメカニズム

通常、血管に傷がつくと、傷ついた部位のコラーゲンが露出し、その部分にフォンビルブランド因子(vWF)が結合する。そこに血小板がGP1b・GP2b/3aといった糖タンパク質を介して結合(血小板の粘着)、それにより血小板は活性化し、ホスホリパーゼCの活性化を介したアラキドン酸カスケードを進行させて血小板のさらなる凝集を促進、一次止血が完成します。

こうした血小板の凝集は、傷を修復するのには大切な反応なんですが、血小板が山のように凝集して血液の通り道を邪魔してしまえば、脳梗塞や心筋梗塞などの梗塞疾患を引き起こします。

高血圧で血管が細くなっていたり、糖尿病で血管がもろくなって傷ができやすかったりすれば、なお梗塞の危険度は高まります。 これを予防するのが、血小板の凝集を抑制する働きのある抗血小板薬になります。

血液凝固反応

抗血小板薬の作用

バイアスピリンはCOX1を阻害して、血小板凝集促進作用のあるTXA2(トロンボキサンA2)の働きを抑えて、抗血小板作用を示します。ただし、多量に服用するとアスピリンジレンマという、反対の作用のあるPGE1、PGE2、PGI2の働きが抑えられて、逆に血小板凝集が進んでしまいます。

パナルジンとペルサンチンは血小板のアデニル酸シクラーゼを増強して、cAMP濃度を高めて、血小板凝集能を抑制します。

プレタールは血小板のPDEを阻害して、cAMP濃度を高め、血小板凝集能を抑制します。

プラビックスとエフィエントは血小板のADP(P2Y12)を抑制して、血小板凝集能を抑制します。

いずれの薬も、血小板が集まってできた血栓を溶解して梗塞症状を改善する薬です。

H26現在、コンプラビン配合錠やエフィエント錠は経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される(=心臓動脈にバルーンやステントをカテーテルで挿入する治療を受けた)人だけの適応です。

抗凝固薬とは

血液凝固反応は、血小板による一次止血で終わるわけではありません。外因系と内因系の2経路で血液凝固因子による二次止血がその後に起こります。

二次止血は最終的にフィブリン網による強固な血栓(かさぶたです)を作る反応です。

心原性脳塞栓症とは、心房細動が原因で心房で血栓が生成され、その血栓が大動脈から脳へ移動し、脳の血管を梗塞、詰まった血管の先に血液が流れずに脳組織が壊死して手足を自由に動かすことができなくなる疾患です。

この時心房で作られる血栓は、血小板が集まってできた血栓ではなく、このフィブリンが大部分を占める構造に赤血球と白血球と血小板が点々と存在する構造の血栓で、血管でできる血栓の比にならないくらい大きなものです(くるみ大の大きさのものとでも考えてください)。

このフィブリン血栓は抗血小板薬では溶かすことはできません。フィブリンを溶かす物質としてはプラスミンが挙げられ、プラスミンの前駆体であるプラスミノーゲンをプラスミン変える薬としてt-PAがありますが、これは応急処置としてしか使われません。(出血リスクが高いため)

そこで、抗凝固薬(フィブリンの産生を抑制する薬)としてワーファリンやプラザキサ、エリキュース、イグザレルトが使われるわけです。

血液凝固(二次止血)のメカニズム

vWFを介して接着した血小板は、活性化血小板となると膜上に陰性荷電を持つリン脂質を露出させる。

そこをめがけて各種の血液凝固因子(上表)が集まって、リン脂質上にて血液凝固反応が進行する。実際に血小板の膜リン脂質へ結合できるのはGlaドメインを持つ凝固因子、すなわちビタミンK依存性凝固因子(下図水色)であり、これらの凝固因子は同時にCa2+を結合できる部位を持つ。

血液凝固反応は、大きく外因系と内因系、そして凝固抑制系、生体内恒常凝固系らに分けることができる。

血液凝固反応

外因系(Extrinsic Xase)

血管組織が損傷を受けると、組織から組織因子(TF=Ⅲ因子=組織トロンボプラスチン)が遊離し、Ⅶ因子と会合して、直接Ⅹ因子を活性化する(組織因子の下図が少ないとⅨ因子の活性化から進む)。これが外因系のスタートになる。

リン脂質表面上(このリン脂質を供給するのは傷害局所に粘着した活性化血小板)にて、活性化されたⅩa因子からさらに凝固反応が進行し、まずは少量のトロンビンが産生される。

この初期に産生される少量のトロンビンは、フィブリノーゲンをフィブリンに変えるまでの力を持たず、主として血小板のPAR-1を介した血小板活性化に使われる(Initiation Phase)。

また、この少量のトロンビンは、ⅩⅠ因子とⅧ因子、Ⅴ因子に対してポジティブフィードバックをかけて、内因系の凝固反応を助ける(Propagation Phase)。

内因系(Intrinsic Xase)

内因系の凝固反応は、プリカリクレイン、高分子キニノーゲン、ⅩⅡ因子やⅩⅠ因子といった接触因子が、主にコラーゲンのような陰性荷電物質に接触することで活性化され、その後のⅨ因子、Ⅷ因子の活性化から、Ⅹ因子を活性化し、それ以降は外因系と同じ経路にて凝固反応を進行させる。組織因子非依存の凝固機序である。

内因系のⅩⅠ因子とⅧ因子は、先の外因系によるトロンビン生成の増幅反応により更に活性化、これにより凝固反応は30万倍加速される。また、Ⅴ因子も同増幅反応により更に活性化され、活性化されたⅤaとⅩa、Ⅱ、Ⅳ因子でプロトロンビナーゼ複合体を形成し、これも凝固反応を30万倍加速させると言われる。

血液凝固反応

凝固抑制系

凝固抑制系の中核を担うのは、血管内皮細胞上のグルコサミノグリカン(ヘパラン硫酸)に存在する、TFPI(tissue factor pathway inhibitor)、AT(アンチトロンビン)、や血管内皮細胞上のTM(トロンボモジュリン)である。

TEPIはⅩa因子とⅦa因子(組織因子との複合体)を阻害する。

TFPIはK1、K2、K3ドメインを持ち、K1とⅦa因子が、K2とXa因子が結合することで両者を阻害する。さらに、プロテインSがTFPIのK3ドメインを介して結合し、APC(活性化プロテインC)非依存に抗凝固作用を約10倍促進する。

ATはXa因子とトロンビンを阻害する。

TMはトロンビンを補足し、プロテインCを活性化プロテインCへ変えて、プロテインSの酵素のもとにⅤa因子とⅧa因子を阻害する。

生体内恒常凝固系

トロンビンの生成を示す指標としてTATがある。生体内の恒常的に存在するTATは0ではない。

生体内では組織外傷非依存的にⅦ因子が常に若干活性化されている状態であり、微量なトロンビンが常に作られている。

抗凝固薬の作用

ワーファリン

ワーファリンはビタミンKに拮抗することで、上で出てきた四つの血液凝固因子(Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子:水色の文字)を抑制してしまうため、Ⅶ因子阻害による頭蓋内出血のリスク(脳内にTFが多いため)や他の凝固因子阻害による他の出血のリスクも高めてしまいます。

プロテインCやプロテインSといった凝固抑制因子も阻害してしまう。

そのため、ワーファリンでは、プロトロンビン時間という血液が固まるまでの時間と、それを指数化したPT-INRを用いて、大体1.6~3.0(通常は2.0前後)に調整することで出血リスクを管理します。 納豆、青汁、クロレラの同時摂取はワーファリンの作用を減弱させるので禁忌。市販の整腸剤に含まれる糖化菌の一つ、納豆菌も禁忌。

プラザキサ

プラザキサは直接的トロンビン拮抗薬として、Ⅱa因子(トロンビン)と、トロンビン-TM複合体を阻害する

メリットは、ワーファリンと違ってビタミンKに拮抗するわけではないので、納豆や青野菜といった食事の制限を受けないこと、頭蓋内や消化管出血のリスクを減らせるということ、PSやPC等のVK依存性の凝固抑制物質を阻害しないことが挙げられる。

デメリットは、生体内に恒常的に存在するトロンビンをも抑制するため、出血リスクが上がることや、トロンビン-TM複合体への親和性のほうが強いために活性化PCの合成を阻害して抗凝固が妨げられること、トロンビンは血小板リン脂質上に存在するXa因子に比して分子自由度が高いため、活性を阻害すると腎排泄が高まるので腎機能障害患者に使いにくい。実際、イグザレルトやエリキュースの腎排泄率が30%前後であるのに対して、プラザキサの腎排泄率は80%である。

比較的メジャーな抗真菌薬イトラコナゾールと併用禁忌である。

吸湿性が高く、アルミピロー包装から出した状態での安定性は3ヶ月、PTPから取り出すと1日持たない。もちろん一包化は不可である。

ワソランとの併用によりプラザキサの血中濃度が上昇することがあるため、プラザキサを服用中にワソランを併用する場合は、併用開始から3日間はワソラン服用の2時間以上前にプラザキサを服用する必要がある(3日間はプラザキサ服用→2時間以上→ワソラン服用)。逆(ワソラン服用中にプラザキサ服用はそのままで併用でOK)。どちらにしても血中濃度を考慮して110mgの使用を考慮すること。

イグザレルト、エリキュース

イグザレルトとエリキュースは、Xa因子の活性中心のS1ポケットに直接結合してⅩa活性を阻害する薬。

XaはセリンプロテアーゼドメインとEGFドメインとGlaドメインからなっていて、GlaドメインはビタミンK依存性に活性化され、これがあるCaと結合できると同時に膜のリン脂質と結合できるようになる。

メリットは、常に存在している微量なトロンビンを阻害しないのでプラザキサよりも出血リスクが少ないこと、トロンビンよりも上流かつ外因系と内因系のちょうど交わるところを阻害すると効率が良い(XⅠ因子1分子→Xa因子870分子→トロンビン12万分子→フィブリン2億分子)こと、加えてプラザキサと同様のメリットがある。

デメリットは、同用量であっても個人によって効き方が違うため、用量調整には十分注意する必要が有ること。

  • 年齢・・・75歳以上(エリキュース80歳以上)
  • 体重・・・50kg以下(エリキュース60kg以下)
  • 腎機能・・・クレアチニンクリアランス50ml/min以下(エリキュース血清Cr1.5mg/dL以上)

のいずれか2つを満たす場合は用量を減らして投与することはできるものの、低用量を使用したとしてもリスクは格段に上がるため、このような患者にはワーファリンのほうが分がある。

イグザレルト(半減期:5~9h)、エリキュース(半減期:12h)ともにワーファリン(半減期:55~133h)に比べて半減期が短いため、1日2回の投与が望ましく思えるが、イグザレルトの投与回数は1日1回である。

イグザレルトが1日1回で血中濃度が下がった後の半日間、血液凝固を抑制し続けるメカニズムは以下のようなものである。

  • 血管内皮細胞上のTFPIを増加させ(Xaが阻害されるとTFPIがXaに結合できずに温存できるため)、その効果が24時間持続する可能性がある。
  • ワーファリンと違ってPSやPCといった凝固抑制因子を阻害しない
  • 有効血中濃度でトロンビン生成を強力に阻害するため、ATやトロンボモジュリンなどの消費がなく、温存される
  • 上記等の理由で、トラフ濃度でのPT延長が認められなくても、プロトロンビナーゼ複合体を介する凝固時間の延長は持続するため、抗凝固効果が持続している可能性

ヘパリン関連薬

ATを介してXaやトロンビンを抑制する薬剤として、ヘパリン、低分子ヘパリン、ダナパロイド、フォンダパリヌクス、アンチトロンビン製剤がある。

ヘパリンは低分子化されるとXa選択性が増し、五単糖の最小単位がフォンダパリヌクスでで最もXa選択性の高いヘパリン関連薬である。

ワーファリンからイグザレルトやプラザキサへの切り替え

ワーファリン投与時におけるPT-INRの基準値は、70歳未満で2.0~3.0、70歳以上で1.6~2.6が普通であり、この治療域にコントロールされている患者さんの場合、ワーファリン中止後、PT-INRが治療域の下限(PT-INRが70歳未満は2未満、70歳以上は1.6未満になってから)を下回ってから切り替える。

ワーファリンの抗凝固効果は通常、経口投与後48~72h持続するが、個人差が大きいので、PT-INRをモニタリングしながら切り替える必要がある。そうすることで、効果の重複による出血リスクを減らすことが出来る。

逆に、イグザレルト等からワーファリンに戻す場合は、PT-INRが治療域の下限を超えるまでは、両者を併用し、下限を超えたらワーファリン単剤に切り替える。

脳梗塞と脳出血

脳梗塞と脳出血はシーソーの関係であり、どちらかの治療をするとどちらかのリスクが高まることになります。

日本人は白人の4倍は脳出血を起こしやすい種族で、とくにアスピリン感受性が高く、アスピリンによる脳出血等の出血は極めて起こりやすいです。

脳出血の患者さんにおいては、スタチンをなるべく避ける事が望ましい。というのは、コレステロールが血管を作る物質であるからだ。実際、LDLが高いと脳梗塞、LDLが低いと脳出血を起こしやすいというデータがある。

脳梗塞の危険因子としては、高血圧や高脂血症、糖尿病が挙げられるが、糖尿の人に対して、A1cを下げれば下げるほど脳卒中のリスクが減るということはなく、むしろリスクが上がる。そのため、糖尿病に対しては血圧と脂質を下げるよう努力する。

脳卒中後のうつに対してはアマンタジン、シンメトレルが著効する(元気にしてくれる)ただし、ドグマチールはかなりの確率でパーキンソン病になるので、統合失調症とかになるべくつかわない。アマンタジンは若年者に。高齢者に使うとパーキンソンに。

脳梗塞簡易分類

脳梗塞には、ワーファリンの適応となる心原性脳塞栓症、アテローム血栓症、ラクナ梗塞の3タイプに分類できる。

心原性の機序は上記の説明の通り。心原性に置いて、ワーファリンの効果がすぐれている。ただし、ワーファリンを飲んでいる患者が出血した場合の予後は、飲んでいない人の予後より不良である。

アテローム血栓症は、クロピドグレル、シロスタゾール、アスピリン、多剤併用が良く効く。

アテロームとは、血小板(白色)が血管内皮に集まって、その丘で血液の流れが食い止められたり、ずり応力により出血が起こる。内頚動脈はアテロームができやすい。 頸動脈が細い人は数%で、これらの人においては薬物治療よりは頸動脈内非剥離術(オペで血栓取り除く手術)が使用される。太い人においては薬物治療の対象となる。 アテロームと心原性は同じ病気で再発するので、交互に起こることはほぼない。

ラクナ梗塞は脳の細い血管詰まることで起きる梗塞。細い血管は弱いので出血をおこしやすい。

3つの梗塞を分類するのに、血管の太さで分ける方法がある。

  • 太い血管:弾性動脈・・・・大動脈
  • 普通の血管:筋性動脈・・・・冠血管、内頚動脈、腎動脈→アテローム血栓の対象
  • 細い血管:細動脈・・・・腎臓、網膜、脳→ラクナの対象

参考・引用:イグザレルト薬剤師セミナー(バイエル薬品)、日本血栓止血学会

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