乳酸菌製剤の種類と特徴
分類 | 商品名 | 一般名 |
ビフィズス菌製剤 | ビオフェルミン錠剤 | ビフィズス菌(B.bifidum) |
ビフィズス菌製剤 | ラックビー微粒N・錠 | ビフィズス菌(B.longum, B.infantis) |
ビフィズス菌配合剤 | レベニンS散 | ラクトミン(S.faecalis+L.acidophilus) +ビフィズス菌(B.longum) |
ビフィズス菌配合剤 | ビオスミン散 | ラクトミン(S.faecalis) +ビフィズス菌(B.bifidum) |
酪酸菌製剤 | ミヤBM細粒・錠 | 酪酸菌(C.butyrium) |
酪酸菌配合剤 | ビオスリー散 | ラクトミン(S.faecalis) +酪酸菌(C.butyrium) +糖化菌(B.mesentericus) |
ラクトミン | ビオフェルミン配合散 | ラクトミン(S.faecalis) +糖化菌(B.subtilis) |
耐性乳酸菌 | ビオフェルミンR散・錠 | フェカリス菌(S.faecalis) |
耐性乳酸菌 | ラックビーR散 | ビフィズス菌(B.longum) |
耐性乳酸菌 | レベニン散/Cap | ビフィズス菌(B.infantis) + アシドフィルス菌(L.acidophilus) + フェカリス菌(S.faecalis) |
耐性乳酸菌 | エンテロノンR散 | フェカリス菌(S.faecalis) |
Rは耐性(Resistant)、ラックビーNのNは通常(normal)の意。
牛乳に対してアレルギーのある患者については平成 11 年 5 月 12 日付 医薬安第 50 号 厚生省医薬安全局安全対策課長通知により、アナフィラキシー様症状を起こすことがあることからラックビーRとエンテロノンRで禁忌対象となったが、他乳酸菌製剤は製造工程中に脱脂粉乳を使用していないため対象から除外されている。
- ラックビー(ビフィズス菌)・・・適応:腸内菌叢の異常による諸症状の改善
- ラックビーR(耐性乳酸菌)・・・適応:ペニシリン系、セファロスポリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系、ナリジクス酸投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善
- ビオフェルミン(散:ラクトミン+糖化菌。錠剤:ビフィズス菌)・・・適応:腸内菌叢の異常による諸症状の改善
- ビオフェルミンR(耐性乳酸菌)・・・適応:ペニシリン系、セファロスポリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ナリジクス酸投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善
- ミヤBM・・・適応:腸内菌叢の異常による諸症状の改善
- レベニン(耐性乳酸菌)・・・適応:ペニシリン系、セファロスポリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ナリジクス酸投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善
- ビオスリー(ラクトミン、酪酸菌、糖化菌)・・・適応:腸内菌叢の異常による諸症状の改善
乳酸菌製剤とは
乳酸菌製剤とはEMP経路(解糖系)にて乳酸を産生する嫌気性菌群の総称であり、細菌の形状から球状のものを乳酸球菌、桿状のものを乳酸桿菌と呼ぶ。
なお、ラクトミン(Lactomin)は「Streptococcus faecalis、Streptococcus faecium、Lactobacillus acidophilus、またはLactobacillus bulgaricusの生菌菌体を集め、乾燥した後、殿粉、乳糖、白糖など適当な賦形剤またはそれらの混合物と混合したもの」と定められている。
これらの乳酸菌製剤に配合されている、もしくは単独で使用されている乳酸菌以外の菌として酪酸菌と糖化菌が挙げられる。酪酸菌は腸内で酪酸や酢酸を生成する嫌気性芽胞菌の1つであり、糖化菌は腸内で炭水化物を糖に変えて乳酸菌の発育を助ける。
乳酸菌には免疫賦活作用等の様々な効果(プロバイオテックス)があり、近年は色々な会社がこぞって胃で不活化されない乳酸菌飲食品を発売している。
プロバイオテックス
プロバイオテックスとは、乳酸菌や納豆菌などの腸内細菌のバランスを改善することで腸内フローラを整える菌剤のことを指します。
Lactobacillus (乳酸桿菌)やBifidobacterium(ビフィズス菌)、Enterococcus(腸球菌)などのEMP経路にて乳酸を産生する乳酸菌の効果は様々です。
マクロファージの活性化やIL-2、INF-γ産生促進によるTh1/Th2バランスの改善のほか、発癌物質の吸着・除去、コレステロール低下作用、血圧低下作用、抗酸化作用、ビタミンB群合成(Bifidobacterium)などが知られています。
また、オリゴ糖や食物繊維など人の消化酵素により消化されないが、は腸内細菌によって揮発性脂肪酸(蟻酸,プロピオン酸,酪酸など)に分解され,この物質をエネルギー源としているBifidobacterium属を活性化させるように、間接的に腸内有用菌の増殖を促進するような成分をプレバイオテックスと呼んでいる。
機能性食品にはもう一つバイオジェニックスという言葉があるが、これは「生体に直接あるいは腸内フローラを介して免疫賦活,コレステロール低下作用,血圧降下作用,整腸作用,抗酸化,抗腫瘍,抗血栓,造血作用などに働く食品成分」でフラボノイドやDHA、EPAなどの食品成分が該当する。
一般的に空腹時に経口摂取された乳酸菌のほとんどは胃酸や胆汁酸の作用によって死滅してしまい、実際に腸管まで到達して作用を示すものは非常に少ない。
乳酸菌について
乳酸菌という名称、EMP経路(解糖系)にて発酵という別経路に入り、乳酸を生成する嫌気性菌類の総称であり、乳酸菌といわれたらその中には実に多数の菌が属する(属の下に科があるため)ことになる。
乳酸菌は先に述べたとおり、胃酸や胆汁酸の作用や他の常在菌の作用でほぼ死滅してしまうこと、乳酸菌製品の開発には、いかに胃酸や胆汁酸で消化されずに腸まで達する製品を作るかが求められる。
乳酸菌の効果を助けるためにも、1日1リットル程度の水分の摂取、十分な睡眠時間、肉よりも魚、魚よりも野菜の食生活、よくかんで食べる、などをあわせて行うとよい。
また、乳酸菌の王道であるヨーグルトは乳糖が分解されずにアレルギーを起こす可能性などあるので乳児に対しては注意する(治療薬はミルラクト)。
以下に、乳酸菌の中でもよく知られているものを挙げる。また、乳酸菌は種類によって効能の差が大きいので選ぶ際にも注意したい。
ビフィズス菌(Bifidobacterium)
いわずと知れた腸内常在菌で、成人になるまでは最も優勢な菌として位置するが、年を重ねるごとにその数は減少していく。 最近は、カルピス社が発売しているダノンBIO(高生存ビフィズス菌:BE80菌)がよくCMしてますね。
ヤクルト菌(Lactobacillus casei シロタ株)
胃酸や胆汁酸に対して抵抗性を持つ代田稔氏によって開発された菌。普段飲むヤクルトの中に入っているメジャーな菌。
KW乳酸菌(Lactobacillus paracasei KW3110)
キリンが開発した乳酸菌で、強い酸にも耐えて、特にアレルギーに対して効果のある菌ということで見出された菌だという。
LG21乳酸菌(Lactobacillus gasseri OLL2716)
明治乳業が開発した乳酸菌で、ピロリ菌に対する除菌を目的として開発された胃潰瘍患者さん用の乳酸菌
L29乳酸菌(Lactobacillus Lactobacillus acidophilus L92株)
カルピス社が開発した乳酸菌で、胃酸や胆汁酸にも強く腸まで達してその作用を示すという。
EF乳酸菌(Enterococcus faecalis)
他のどの乳酸菌にも比して免疫賦活作用が強いといわれる。その概要はTNF-αの活性化やIL-12の活性化によるものだといわれる。
その他
キムチや漬物発酵の際に活躍するラクトバチルス・プランタラムやラクトバチルス・プレビスなどもいる。
菌の分類と効能
腸内菌叢は、バクテロイデス属、ビフィズス菌、ユーバクテリウム属、クロストリジウム属、ペプトコッカス属等の嫌気性菌群が大半を占め、大腸菌、腸球菌、乳酸桿菌等の通性嫌気性菌(酸素があれば好気性、なければ嫌気性)は少ない。(腸内菌叢の基礎)
(※下記菌分類は乳酸菌だけでなく、酪酸菌や糖化菌、その他腸内常在菌を含めたものです。更に詳しい乳酸菌の分類と効能)
┌ グラム陽性球菌
| ├ レンサ球菌属(Streptococcus)・・・腸内常在菌。ホモ
| | ├ サーモフィルス菌(Streptcoccus thermophilus)・・・明治ブルガリアLB81
| | └ フェカリス菌(糞便レンサ球菌)(Streptococcus faecalis)
| | ・・・ビオフェルミン散・R散・R錠、レベニン、ビオスリー、ビオスミン
| ├ 腸球菌属 (Enterococcus)
| | ├ フェカリス菌(Enterococcus faecalis)・・・ホモ(乳酸)
| | └ フェシウム菌(Enterococcus faecium)
| ├ ラクトコッカス属 (Lactococcus)・・・ホモ(乳酸)
| | └ ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)
| ├ ペディオコッカス属(Pediococcus)・・・ホモ(乳酸)
| └ リューコノストック属 (Leuconostoc)・・・ヘテロ
|
├ グラム陽性嫌気性球菌
| ├ ペプトコッカス属(Peptococcus)
| | └ ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)・・・腸内常在菌
|
├ グラム陰性通性嫌気性桿菌
| ├ エシェリキア属 (Eshericha)
| | └ 大腸菌(Eshericha coli)・・・腸内常在菌
| ├ クレブシエラ属(Klebsiella)
| | └ 肺炎桿菌(Klebsiella Pneumoniae)・・・腸内常在菌
| └ エンテロバクター属(Enterobacter)
| └ エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)・・・腸内常在菌
|
├ グラム陽性嫌気性桿菌
| ├ ラクトバシラス属 (Lactobacillus)・・・腸内常在菌。ホモorヘテロ
| | ├ アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)・・・カルピスのL29乳酸菌、レベニン
| | ├ カゼイ菌(Lactobacillus casei)・・・ヤクルト菌(シロタ株)
| | ├ ガセリ菌(Lactobacillus gasseri)・・・雪印のLG乳酸菌
| | ├ デルブリュッキ菌(Lactobacillus delbrueckii)
| | ├ ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)
| | ├ ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)
| | ├ ラクトバチルス・ライヒマニ(Lactobacillus leichmannii)
| | ├ ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)・・・キリンのKW乳酸菌
| | ├ ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)
| | ├ ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)
| | ├ ファーメンタム菌(Lactobacillus fermentum)
| | ├ ブルガリクス菌(Lactbacillus bulgaricus)・・・明治ブルガリアLB81
| | └ ロイテリ菌(Lactobacillus reuteri)
| ├ ユーバクテリウム属(Eubacterium)・・・腸内常在菌
| | ├ ユーバクテリウム・レクタル(Eubacterium rectale)
| | └ ユーバクテリウム・ハリー(Eubacterium hallii)
| └ ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium)・・・腸内常在菌
| └ ビフィズス菌類(B.bifidum、B.adolescentis他)・・・ヘテロ(乳酸・酢酸)、ラックビー、
| ビオフェルミン錠、レベニン、ビオスミン
|
├ グラム陽性有芽胞桿菌
| ├ バシラス属(Bacillus)・・・糖化菌
| | ├ ポリファーメンチカス菌(Bacillus polyfermenticus)
| | ├ 枯草菌(Bacillus subtilis)・・・ビオフェルミン
| | ├ ジャガイモ菌(Bacillus mesentericus)・・・ビオスリー
| | └ 納豆菌(Bacillus natto)
| └ クロストリジウム属(Clostridium)・・・腸内常在菌
| ├ 酪酸菌(Clostridium butyricum)・・・ミヤBM、ビオスリー
| └ その他多数(ボツリヌス、破傷風、ウェルシュ等)
|
└ グラム陰性嫌気性桿菌
└ バクテロイデス属(Bacteroides)
└ バクテロイデス・フラギリス(B.fragilis)・・・腸内常在菌
生成物(短鎖脂肪酸)について
カルボン酸塩は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、コハク酸などの短鎖脂肪酸(炭素数が5-10と少ない)とオレイン酸やリノール酸等の長鎖脂肪酸に分類され、長鎖脂肪酸はさらに飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸へと分けることができる。
乳酸だけを産生する菌をホモ乳酸菌、乳酸以外の酢酸やアルコール等を同時に産生する菌をヘテロ乳酸菌と呼ぶ。
ホモ乳酸菌の発酵は、
- C6H12O6(グルコース)→CH3CH(OH)COOH(乳酸)+2ATP
のような反応により、1分子のグルコースからピルビン酸を経て、1分子の乳酸を産生します。この時ATPが産生され、これが嫌気性条件下でのエネルギーとなります。
ヘテロ乳酸菌の発酵は、
- C6H12O6(グルコース)→CH3CH(OH)COOH(乳酸)+C2H5OH(エタノール)+CO2(二酸化炭素)+ATP
のような反応により、1分子のグルコースからピルビン酸を経て、1分子の乳酸を産生します。
しかし、ヘテロ乳酸菌の中でもビフィズス菌類は、特殊な発酵経路(ビフィズム経路)を持ち、
- 2CH6H12O6(グルコース)→2CH3CH(OH)COOH(乳酸)+3CH3COOH(酢酸)+5ATP
のように、2分子のグルコースから2分子の乳酸を産生するとともに、3分子の酢酸も生成します。この酢酸が腸内の酸性条件にも一役買っています。
酪酸菌の発酵は、
- C6H12O6(グルコース)→CH3CH2CH2COOH(酪酸)+2CO2(二酸化炭素)+2H2(水素)
が基本反応式で、ピルビン酸までは乳酸発酵と同じ経路で進み、その後、酢酸を経て酪酸を生じる。
上記画像や下記の注釈はこちらのサイトから引用させていただきました。酪酸菌(宮入菌)がデンプンを分解するかがわからないからB5なんだかB8なんだかわからず。
食物繊維は難消化性糖類で、人は利用できないけど、一部の細菌は発酵の際に利用できる。
- B1・・・バクテロイデス属を含み、グルコースを代謝し、コハク酸、プロピオン酸、酢酸を生成する。
- B2・・・ルミノコッカス ブロミ等、デンプンを分解して酢酸を作る。日本人にはあまりいない。
- B3・・・ルミノコッカス アルバス等、食物繊維を分解して酢酸を作る。日本人にはあまりいない。
- B4・・・ビフィズス菌を含み、グルコースを代謝し、乳酸や酢酸を生成する。一部はデンプンも分解できる。
- B5・・・ユーバクテリウム属、ロセブリア属(Roseburia属)を含み、デンプンやグルコースを分解して乳酸や酢酸を生成、酢酸から酪酸を生成する。
- B6・・・フィーカリバクテリウム・ プラウスニッツィイが該当し、B5のデンプンを分解できないバージョン
- B7・・・ベイロネラ属、メガスフェラ エルスデニが該当し、酢酸やコハク酸、プロピオン酸を生成する。
- B8・・・ユーバクテリウム属を含み、酢酸から酪酸を生成するだけでなく、乳酸からも酪酸を生成できる。※乳酸から酢酸を生成する他の菌類としては、Megasphaera(メガスファエラ)属、クロストリジウム属の一部、ロセブリア属(Roseburia属)がある。
- B9・・・酢酸生成菌、ブラウティア・ヒドロゲノトロフィカが該当し、水素や二酸化炭素から酢酸を作る。
- B10・・・メタン生成菌。日本人にはあまりいない。
短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)は、Naや水の吸収、消化管上皮細胞増殖、大腸での粘液分泌、大腸の相性収縮や持続性収縮、末梢での免疫細胞の機能などに影響を与える。短鎖脂肪酸(コハク酸、乳酸)はほとんど吸収されず、上皮細胞のエネルギー源にもならない。(日本ビフィズス菌センター
生成された短鎖脂肪酸の大部分は大腸粘膜組織から吸収され、上皮細胞の増殖や粘液の分泌、水やミネラルの吸収のためのエネルギー源として利用されます。また、一部は血流に乗って全身に運ばれ、肝臓や筋肉、腎臓などの組織でエネルギー源や脂肪を合成する材料として利用されます。その他にも短鎖脂肪酸には、腸内を弱酸性の環境にすることで有害な菌の増殖を抑制する、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進する、ヒトの免疫反応を制御する、(ヤクルト中央研究所)
腸内菌叢により産生される短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸およびプロピオン酸)は、腸管粘膜のエネルギー源として利用され、水分吸収を促進する他、腸管上皮細胞の増殖促進、炎症性サイトカインの抑制作用等による抗炎症、抗潰瘍作用を有することが報告されています。酪酸菌は経口投与後腸管内において増殖し、酪酸を産生することにより、抗炎症、抗潰瘍作用を示すことが動物実験において証明されています。(ミヤリサン株式会社)
短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)は大腸で発生すると速やかに大腸粘膜から吸収される。他方、乳酸やコハク酸は吸収が悪く、一旦発生が加速すると管腔内の蓄積が進行するので、このような場合には大腸の上皮細胞はエネルギー不足となり、水分や無機塩類の吸収、粘液の分泌など大腸粘膜の正常な機能が担保されなくなる。(食品機能性の科学)
フェカリス菌
ビオフェルミン(錠剤以外)、レベニン、ビオスミン、ビオスリーに含まれる菌。ビオフェルミン=フェカリス菌と思って良い。伊藤園の朝のYooという乳酸菌飲料にも入っている。Streptococcus faecalisもEnterococcus faecalisも糞便がつくが同じ菌である。
嫌気性条件下でグルコースを消費して乳酸を産生することで腸内を酸性にして、腸内菌による腐敗産物の産生を抑制する。
ビオフェルミン配合散やレベニンS散は抗生物質感受性であり、乳酸菌が抗生物質に不活化されてしまうため、抗生物質を併用する際は耐性を付与したビオフェルミンRかレベニン散、エンテロノンRを用いる。耐性を付与したと言っても菌名は同じStreptococcus faecalisである。Rは御存知の通りホスホマイシン系、クロラムフェニコール系、ニューキノロン系、ペネム系抗生物質と一緒に使うことができない。
フェカリス菌やビフィズス菌はビオチンを消費してしまうため、掌蹠膿疱症等の皮膚疾患を持つ人が摂り過ぎると皮膚炎が悪化する可能性が指摘されている。(ビオチン不足を引き起こさない乳酸菌はラクトバシラス属)
アシドフィルス菌
レベニンの成分の一つ(Lactobacillus acidophilus)。この属の乳酸菌はビオチン消費能がなく、アレルギー疾患の人に好まれる傾向がある。
ビフィズス菌
ラックビー、ビオフェルミン錠剤、レベニンに含まれる乳酸菌。
腸内で増殖・定着し、乳酸ならびに酢酸を産生して、腸内有害菌の増殖を抑制するとともに、腸内有害菌によって産生される腐敗産物を抑制する。また、ビフィズス菌優位の腸内菌叢に導くことにより、腸内菌叢の正常化をはかり、すぐれた整腸作用を発揮し、下痢や便秘等の腹部症状の改善に効果を発揮する。
ラックビーNやレベニンS散は抗生物質感受性であるため、抗生物質を併用する際は耐性を付与したラックビーRかレベニン散を用いる。
酪酸菌(宮入菌)
一般的に乳酸菌類は強酸性下の胃液中において死滅するのに対して、本菌はほとんど影響を受けないこと、抗生物質投与時に起こる下痢などの諸症状に対して改善効果を示すこと、さらに、本菌自体の作用のみならず、本菌の主要代謝産物である酪酸による腸粘膜萎縮改善作用などの特徴を有する。
ミヤBMの主成分である酪酸菌(宮入菌:Clostridium butyricum)は芽胞として配合されていることから、投与後、胃液や胆汁酸、腸液、消化酵素などの影響を受けずに腸に到達する。その後、芽胞が発芽し栄養体細胞となった酪酸菌(宮入菌)は腸管内で増殖し、有用菌優位の腸内菌叢を形成する。さらに、有害物質産生菌もしくは腸管病原性細菌の発育を阻止し、腸内菌叢のバランスを回復、保持させる。
酪酸菌(宮入菌)は、腸管内で発芽、増殖することにより、酪酸等の短鎖脂肪酸や各種代謝産物を産生し、有害菌や病原性細菌の抑制または有用菌を保持し、腸内細菌叢のバランスを改善させて種々の腸の諸症状、例えば急性、慢性腸炎や便秘さらには抗生物質や化学療法剤投与による下痢症を改善する。
また、酪酸菌(宮入菌)の産生する酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸は、消化管粘膜上皮細胞の増殖促進作用、水・ナトリウムの吸収調節作用を示す。さらに、酪酸は腸管内における抗炎症作用や大腸上皮細胞の重要なエネルギー源として利用されやすいなど、消化管内でさまざまな生理作用を発揮することが知られている。
酪酸菌(宮入菌)はアミラーゼおよびビタミン B 群(B1・B2・B12・ニコチン酸・葉酸)を産生する。宮入菌は酪酸だけでなく酢酸やプロピオン酸も産生する。
宮入菌であるClostridium butyricum以外にもFaecalibacterium prausnitzii(これは芽胞は作らない)など他にも酪酸を産生する菌(酪酸菌)はある。
糖化菌
ビオフェルミン(錠剤以外)やビオスリーに含まれる。
糖化菌は、アミラーゼを産生し、デンプンを糖へ分解する。そのためデンプンを分解できない乳酸菌の増殖を促進する働きがある。
デンプン主体の培地において、乳酸菌に糖化菌を混ぜると、乳酸菌が単独時よりも10倍以上増殖するという。
糖化菌は芽胞形成菌であるため、胃酸の影響を受けずに腸まで届く。デンプンの分解を目的として消化酵素剤として単独使用されることも多い。
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