肝臓・胆道・膵臓疾患治療薬

肝炎と膵炎の病理

催胆薬

oddi括約筋を弛緩させて、胆汁・膵液の十二指腸への排出を促進する薬。

肝臓で作られた胆汁は、一度胆のうに蓄えられてから、食事により分泌されるコレシストキニンやセレクチンといったホルモンの作用で胆のうの収縮とoddi括約筋がゆるみ、胆のうから分泌され、胆管を通り、途中で膵管と合流し、十二指腸のファーター乳頭から十二指腸内部へと放出され、乳頭部のoddi括約筋により胆汁と膵液の分泌がコントロールされている。

胆汁の主な成分は胆汁色素(直接型ビリルビン)、胆汁酸、リン脂質、コレステロール、電解質、水分である。

直接型ビリルビンは腸内細菌により脱抱合と還元を受けてウロビリノーゲンとなる。ウロビリノーゲンの8割は糞便中に排泄、残りは再吸収され肝臓でビリルビンに再合成される。(詳しくは鉄代謝参照)

胆石のほとんどは胆のうの中に石がたまる胆のう結石(70%)で他に所在する部位の違いで胆管結石や肝内結石がある。結石の成分はほとんどがコレステロールで、高齢者ではビリルビンが多い。

胆のう結石の場合、胆のうから結石が胆管に入る部分で詰まる時に痛みが出る。

  • ウルソ(UDCA:ウルソデオキシコール酸)・・・胆汁酸の1成分。利胆作用により肝臓への胆汁のうっ滞を防ぐとともに、置換作用により細胞障害性の強い疎水性の他の胆汁酸と置き換わり肝臓を保護する。疎水性の強さはLCA>DCA>CDCA>CA>UDCA。他コレステロール胆石の溶解作用。詳しい作用機序は日経DI参照。
    非代償性肝硬変に対する有効性及び安全性は確立していないのでリーバクトの併用は返戻。
    利胆作用があるので胆石の患者
    利胆作用によりグーフィスと同じで下痢のSE頻度が最も高い。
  • チノ(CDCA:ケノデオキシコール酸)・・・コレステロール胆石の溶解作用のみの適応
  • デヒドロコール酸(デヒドロコール酸)
  • スパカール(トレピブトン)
  • パパベリン(パパベリン)
  • コスパノン(フロプロピオン)・・・COMT阻害による鎮痙作用、抗セロトニン作用によるoddi括約筋の機能異常への使用

分岐鎖アミノ酸(BCAA)

肝機能障害でアンモニアを尿素に無毒化できなくなると、肝臓の代わりに筋肉でのアンモニア代謝が起きるが、この際にアミノ酸(BCAA)が必要。不足した場合、高アンモニア血症になる危険性がある。

  • アミノレバンEN配合散・・・カロリーも同時に補給できる(肝機能障害により低下したグリコーゲンの貯蔵能を補う)
  • リーバクト顆粒・・・食事からカロリーが摂取できる場合に使用

高アンモニア血症治療薬

非代償性肝硬変による高アンモニア血症の治療に用いる。

消化管粘膜にはこれらの成分を分解する酵素が存在しないため、これらの薬剤は経口投与後、分解・吸収されることなく大腸に到達し、大腸内の細菌により利用・分解され、有機酸を生成しpHを低下させる。

pHが高いほどアンモニアの腸管吸収率が高いため、pH低下によりアンモニアの産生と腸管吸収が抑制されて血中アンモニアが低下する。

また、腸管に達した薬剤による浸透圧作用により水分を引き寄せて緩下作用を示すとともに、生成した有機酸がさらに蠕動運動を亢進させて排便を促す。

また、カロリーも同時に補給できる。

  • ポルトラック(ラクチトール)
  • モニラック、ラグノス(ラクツロース)

タンパク分解酵素阻害薬

膵臓から分泌される消化酵素は、糖質を分解するアミラーゼ、脂肪を分解するリパーゼ、タンパク質を分解するプロテアーゼの中でもトリプシンとキモトリプシン、エラスターゼ等がある。

蛋白分解酵素(プロテアーゼ)には、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、Znプロテアーゼらがあるが、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼはいずれもアミノ酸であるセリンを活性化に必要とするセリンプロテアーゼに分類される。

それぞれが異なる基質特異性を持っていて、トリプシンは塩基性アミノ酸(リジン等)部位を、キモトリプシンは芳香族アミノ酸(フェニルアラニン等)部位を、エラスターゼはアラニンのような小さいアミノ酸からなるペプチドを切断する。

これらの蛋白分解酵素は酵素活性を持たないチモーゲンとして膵臓から分泌され、分泌後に自己消化されて活性化される。例えば、膵臓から分泌されるトリプシノーゲンは酵素活性を持たず、十二指腸でエンテロキナーゼと反応してトリプシンとなることでリジンとアルギニンのC末端側を加水分解し、キモトリプシンーゲンも十二指腸で活性体のキモトリプシンとなって芳香族アミノ酸のC末端側を加水分解する。

多すぎるトリプシンは自己を傷害してしまい膵炎が起こる。それを阻害するのがフオイパン。

膵炎は、アルコールと胆石、高脂肪食が主な原因。

機序としては、

  • 高脂肪食:膵腺房細胞内への脂肪滴貯留→血中リパーゼ、アミラーゼ増加
  • アルコール:膵腺房細胞も肝臓の1-2%であるがエタノールを酢酸に代謝するアルコール代謝の一端を担うため、大量のアルコールは膵臓にアルデヒドが蓄積。また、膵臓に存在するCYP2E1がアルコールにより誘導、CYP2E1は基質の代謝の際に活性酸素やフリーラジカルを生成する。
  • 胆石:胆石があると膵管狭窄が引き起こされ、膵液が逆流してしまい、トリプシノーゲンが活性化してしまう。

急性膵炎では膵臓の機能自体は保たれているため、痛み止めやタンパク分解酵素阻害薬で治療し、慢性膵炎で膵臓での消化酵素の分泌自体が減っている消化不良の状態(特にリパーゼ減少による脂肪便、体重減少)ではリパクレオンを使用する。

  • エフオーワイ(ガベキサートメシル酸塩)
  • フオイパン(カモスタットメシル酸塩)・・・蛋白分解酵素としてはトリプシンとエラスターゼを阻害し、膵炎で亢進するキニン類や凝固・線溶系も阻害する。他のプロテアーゼ(キモトリプシンや胃から分泌され疎水性アミノ酸を分解するペプシノーゲンとその活性体であるペプシン等)は阻害しない。
    ラジカルスカベンジャー作用による抗がん剤の口内炎予防に適用外治療
  • フサン、コアヒビター(ナファモスタットメシル酸塩)

急性膵炎の急性期や慢性膵炎の増悪期では膵液分泌抑制のための絶飲食が基本であり、非経口による栄養補給が望ましい。

回復期では水分補給から開始し、糖質を中心とした脂質が少ない食事を摂るが、こうすると脂溶性ビタミンが不足するので注意する。

膵酵素補充薬

  • リパクレオン(パンクレリパーゼ)・・・リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼを含み食直後に1日3回服用する。服用量は摂取した脂肪量(以下リパクレオン指導箋より)に応じて2~4カプセルあたりで調整する。通常1gの脂肪を分解するためには2000リパーゼ単位が必要といわれる。
    吸湿性が高く1月で70%ほど効果が減弱するため、一包化は不適

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