ザルティアの作用機序と特徴
前立腺肥大の薬一覧については別ページ参照。
ザルティアとシアリス、アドシルカの違い
前立腺肥大の治療薬として認可されたザルティア(タダラフィル)は、それまで勃起不全治療薬として使われていたシアリス(タダラフィル)や肺高血圧症治療薬として使われていたアドシルカ(タダラフィル)と同一成分である。
薬品名 | 規格 | 色 | 適応 | 使用法 |
---|---|---|---|---|
ザルティア | 2.5mg、5mg | 白色 | 前立腺肥大症に伴う排尿障害 | 1日1回5mg |
シアリス | 5mg、10mg、20mg | くすんだ黄色 | 勃起不全 | 1日1回10mg |
アドシルカ | 20mg | 赤褐色 | 肺動脈性肺高血圧症 | 1日1回40mg |
ザルティアとシアリス共通の5mgで比べてみると、シアリスのほうが1種類(黄色三二酸化鉄)添加物が多いせいでやや黄色をしているのと刻印が異なる以外は形・重さ・幅・高さすべて同じサイズである。シアリス20mgとアドシルカ20mgもアドシルカのほうが1種類(三二酸化鉄)添加物が多いせいで赤褐色になっている以外は同じである。つまり、錠剤の色と刻印以外は同じというわけ。
使用方法は、シアリスでは1日1回10mg、予定される性行為の30分以上前に服用する。効果が得られない場合は20mgに増量できる。アドシルカは1日1回40mgを、ザルティアでは1日1回5mgを毎日同じ時刻に服用する。なお、食事の影響を受けないため三者ともに食事の有無にかかわらず服用できる。
1回の服用量こそ少ないが、同じ薬であるゆえ、前立腺肥大の治療中に勃起をし続けてしまわないかと心配になることだろう。そこで能書を見ると、
- 勃起関連の副作用頻度は1%未満
- タダラフィルが勃起不全治療の効果を発現するには、性的刺激が必要である。
- 持続勃起症が起こる可能性(頻度不明)はあり、すみやかに適切な処置を行わないと組織の損傷又は勃起機能を永続的に損なうことがあるので、勃起が4時間以上持続する症状が見られた場合は直ちに医師の診断を受けるように指導すること。
ということで、さほど心配は不要なようだ。
ザルティアの作用機序
ザルティアは排尿症状と蓄尿症状を同時に改善する。IPSSトータルスコアでの改善率はα1遮断薬とほぼ同等の効果が示されている。
下図を見れば分かる通り、ザルティアの作用点は大きく3つ、
- 血管平滑筋のPDE5を阻害して血管を拡張し膀胱組織障害を改善する→排尿・蓄尿改善
- 内尿道括約筋(=膀胱頸部平滑筋)、外尿道括約筋、前立腺平滑筋のPDE5を阻害して膀胱出口部閉塞を改善する→排尿改善
- 膀胱過伸展、膀胱血流障害、炎症・酸化ストレス等により亢進した求心性の神経活動を抑制する→蓄尿改善
PDE5(ホスホジエステラーゼtype5)は、NO(Nitric Oxide:一酸化窒素)によって産生されるcGMPを分解する酵素であり、ザルティアはこのPDE5を阻害することでcGMP濃度を上昇させて血管平滑筋を弛緩させる。
前立腺腫大は膀胱の過伸展をもたらし、膀胱の血流障害(虚血)、炎症、酸化ストレスやこれに伴う組織障害が生じる結果、下部尿路症状が発現すると言われているため、組織障害を改善することやこれらによって誘発される求心性の神経活動を抑制することは前立腺肥大に伴う尿路症状を改善することにつながる。(※図は求心性神経抑制から副交感神経亢進につながっているように見えるが、連動しているわけではない。別)
下部尿路組織におけるPDE5の分布は、膀胱-精管動脈、陰茎海綿体、膀胱、尿道、前立腺等の内皮細胞と平滑筋細胞に局在している。ザルティアはこのPDE5を選択的に阻害する(他のPDEアイソザイムよりも9000倍以上選択性がある)。
(参考:前立腺肥大治療薬の作用点)
- β3刺激薬(ベタニス)、抗コリン薬(ベシケア)→膀胱排尿筋弛緩→蓄尿
- PDE5阻害薬(ザルティア)→内・外尿道括約筋弛緩、前立腺平滑筋弛緩→排尿
- α1遮断薬(α1A選択:ユリーフ、α1A・ID:ハルナール、αID選択:フリバス)→前立腺平滑筋弛緩→排尿
ザルティア服用上の注意点
併用禁忌
- 硝酸剤(ニトロ他)・・・NO供与剤との併用は、NOによる血管平滑筋弛緩作用が増強され、過度の血圧降下を生じる可能性がある。
- 心血管障害・・・血管拡張により血圧が下降し、心血管系の障害を生じる可能性がある。
- 重篤な腎機能障害・・・血中濃度が上昇する。中等度以上の腎障害患者には2.5mgを選択する。
- 重篤な肝機能障害・・・CYP3A4により代謝されるため、クリアランスが低下する可能性。
併用注意
CYP3A4を阻害する薬剤(イトラコナゾールやクラリスロマイシン)、飲食物(GFJ)、CYP3A4を誘導する薬剤(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール)との併用はザルティアでは併用注意だが、アドシルカでは併用禁忌となっているため注意する。
α遮断薬等の降圧剤との併用も併用注意ではあるがそこまで気にする必要はない(メーカー)。
副作用
主な副作用は、消化不良、頭痛、CK上昇、筋肉痛、ほてり等。勃起関連副作用は1%未満と非常に少ない。
(参考・引用元:ザルティア錠冊子(2014.4作成)、各薬剤インタビューフォーム)
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