障害者総合支援(障害者総合支援法)
障害者総合支援の対象者
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(略称:障害者総合支援)第5条の精神通院医療(21)、更生医療(15)、育成医療(16)の対象となるのは、心身の障害の状態からみて、市町村などが自立支援医療を受ける必要があると認定した人です。
身体障害者だけでなく、ひどいうつ病の人も対象となる可能性があります。
認定を受けようとする患者は自立支援医療を受ける指定自立支援医療機関名等を記入した申請書に、医師の診断書、世帯の所得状況を確認できる資料、被保険者証の写し、身体障害者手帳の写し(更生医療のみ)、特定疾病療養受療証の写し(人工透析の場合)を添えて、患者が居住する市町村等へ申請する。認定を受けたヒトには、市町村より自立支援医療受給者証が交付されます。
なお、重度の心身障害者(身体障害者手帳1~2級など)に対しては、自己負担分を軽減できるようにする重度心身障害者医療費助成を行っている自治体もあり、これについては別に各市町村の窓口での問い合わせが必要です。受給券の有効期間は原則1年で、その間であれば何度でも使え、薬局の負担は無料になります。また、更新は毎年自動で行われます。
指定
障害者総合支援法第59条の規定に基づき、都道府県が指定した薬局がこれを扱うことができる。
申請書類は、
- 指定自立支援医療機関指定申請書(薬局)(精神通院医療)(様式第7号(1))
- 管理薬剤師の経歴書(別紙1)
- 管理薬剤師の薬剤師免許証の写し
- 調剤のために必要な設備及び施設の概要(別紙2)
- 役員名簿(別紙3)
- 複数の医療機関から処方箋を受け付けていることの届出書(様式1)
申請先は、
- 栃木県の場合は精神通院医療は栃木精神福祉センター(保健所ではない)に提出します。更生医療と育成医療は保健所(健康福祉センター)へと提出先が別。
- 群馬の精神通院医療はこちら、育成・更生医療はこちら。
- 埼玉の精神通院医療はこちら
申請書は4月から指定を受けたいのであれば、3月中に提出すれば良い(郵送でOK)。受領印付きの複写が欲しい場合、申請書を正副2部、返信用封筒をつけて提出する。
なお、自立支援では日付を遡っての指定はできない。(例:4月中に届け出して、4月1日から指定してもらう等は不可なのでその場合は他の公費か保険で処理する。)
受理されると文書にて受理の連絡がなされ、各自治体の指定自立支援医療機関一覧に掲載されるが、タイムラグが有り対象月の1日に掲載されない場合もあるので、もし掲載されてない場合は各自治体に確認するとよい。
指定を受けるには、指定基準を満たす必要がある場合があるので注意が必要です。
例えば、新規に開局する保険薬局にあっては、育成・更生医療では、
- 当該薬局における管理者(管理薬剤師)が過去に他の指定自立支援医療機関において、管理者(管理薬剤師)としての経験を有している実績があること。
- 当該薬局に一年以上の調剤経験のある薬剤師を有していること。
- 通路、待合室など、身体障害に配慮した設備構造等が確保されていること。
- 開局後1ヶ月経たないと指定が受けられない場合がある?
精神通院医療では、
- 管理薬剤師は概ね「3年以上の経験が必要」(根拠となる文書には「十分な経験」とされており、これを近県との申し合わせで「3年以上」としているとのこと。)
等の制約がある場合がある。
更新
指定の更新は障害者総合支援法第60条に「6年ごとに指定の更新を受けなければ効力を失う」とあります。
更新書類は、
- 指定自立支援医療機関指定更新申請書(薬局)(精神通院医療)(様式3)
- 役員名簿(別紙)
- ※健康保険法第68条第2項に規定する薬局に該当する場合は更新申請は不要ですが、次の書類を提出してください。
健康保険法第68条第2項に規定する保険医療機関等であることの届出書(薬局)(精神通院医療)(様式9)
変更
指定医療機関の名称、所在地、自立支援医療を行う薬剤師の変更があった場合は、都道府県知事に届け出ます。変更の書式は、上記の別紙様式1-2を使います。
- 指定自立支援医療機関変更届出書(様式第9号)
- 管理薬剤師の経歴書(別紙1)
- 管理薬剤師の薬剤師免許証の写し
廃止
薬局を閉める場合は、休止等届を提出します。(指定自立支援医療機関業務休止等届出書(様式第10号))
給付
原則として医療に要した費用の90%(ただし、保険で給付された費用分を除く=保険優先)。保険で3割負担でも、3割負担のうちの2割が公費で給付され、実際の自己負担割合は1割。
この自己負担の1割負担が過大なものとならないよう、1か月あたりの負担に上限が設けてある。なお、上限の額は世帯の所得により異なる(0円(生保)→2500円→5000円→医療保険の自己負担上限額→制度対象外のような段階)。
さらに、統合失調症などで、医療費が高額な治療を長期間にわたり続けなければならない方(本制度では「重度かつ継続」と呼んでいます)は、1 か月当たりの負担限度額が低くなります。(詳しくは、自立支援医療(精神通院医療)について参照)
患者さん側の申請は役所の障害者福祉課にて行い、その時に受給者証や上限管理表をもらいます。受給者証はもらうが上限管理表(ノート)をもらえないケースもあるようです。もらっていない場合は市町村に確認して送ってもらうよう手配することも可能です。
なお、生活保護者に関しては費用が発生しないため配っていないことは確認済み。難病54の管理表は生保でも配られます。
生保(12)と自立支援の併用は、9割が自立支援(自立支援優先)で給付され、残りの1割が12での給付となる。
薬局での給付の際は、必要に応じてその患者さんの自立支援医療受給者証を確認する。
受給者証には、指定医療機関の名称(○○薬局)と自己負担限度額が記入してあります。受給者証に記載してある医療機関以外では公費負担医療制度を利用できないので注意する。
また、上限がある場合は、15、16、21全てで患者さんが上限管理表を持っているので、1月で1ページで記入します。
管理表の細かい書き方のルールなどは、兵庫県のサイトにQA形式で載っているので、それを参考にするとよいでしょう。(例えば、介護保険では本人に対する請求を1円単位で行った後、自己負担上限額管理票には、10円未満を四捨五入した金額を記載してください。など)
精神通院医療(21)
対象疾患は、すべての精神疾患・てんかんで通院により精神医療が行える範囲の症状を有する場合が該当。症状がほとんど消失していても、継続して通院治療を行う必要がある場合も対象となる。
精神疾患及びてんかんに起因する合併症も含まれる。(感染症、がん、アレルギー(薬剤アレルギーを除く)、筋骨格系疾患や結核性疾患は除く)
指定自立支援医療機関(申請してある医療機関)における入院せずに行われる薬剤交付、その他訪問介護、デイケア、診察が給付対象となる。
疾病の種類 | 症例 |
病状性を含む器質性精神障害 | 認知症(アルツハイマー型、血管性等)等 |
精神作用性物質使用による精神及び行動の障害 | アルコール、タバコ、アヘン類、タイマルイ、コカイン、カフェイン、アンフェタミン、鎮静薬、催眠薬等による精神・行動の障害、急性中毒、依存症等 |
統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害 | |
気分障害 | うつ病、躁鬱病等 |
神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害 | パニック障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害、神経衰弱等 |
生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群 | 摂食障害、非器質性睡眠障害(不眠症、過眠症等)、性機能障害、産じょくに関連した精神/行動障害等 |
成人の人格及び行動の障害 | 妄想性人格障害、強迫性人格障害、持続的人格変化、病的窃盗、性同一性障害、性嗜好障害(フェティシズム、小児性愛)等 |
知的障害(精神停滞) | |
心理的発達の障害 | 言語障害、学習能力発達障害、自閉症等 |
小児期および青年期に通常発症する行動及び情緒の障害 | 多動性障害、行為障害、情緒障害、チック障害等 |
てんかん |
更生医療(15)
身体障害福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた18歳以上の人が対象となる。
身体の障害のあるものに対して、手術などの治療により、障害の除去、軽減ができると認められる場合、医療費の一部を給付。
更生医療の対象となる障害は、視覚障害、聴覚障害、内臓機能障害等で、その身体障害を手術等により確実に除去・軽減の効果が期待できるものを対象とする。なお、内臓機能障害に対しては、内科的治療のみの医療は対象外。
人工透析等で高額療養費(マル長)や市町村独自の重度心身障害者医療費助成制度と併用する場合に注意する。
疾病の種類 | 症例 |
視覚障害 | 白内障手術、網膜剥離手術、虹彩切除術、角膜移植術 |
聴覚・平衡機能障害 | 外耳道形成術、鼓膜穿孔閉鎖術、人口鼓膜、人工内耳 |
音声・言語・そしゃく機能障害 | 唇顎口蓋裂の歯科矯正治療、口唇形成術、口蓋形成術、人口咽頭 |
肢体不自由 | 間接形成術、人工関節置換術、理学療法、作業療法 |
心臓機能障害 | 弁形成術、大動脈・冠動脈バイパス術、ペースメーカー植え込み術、心移植術(抗免疫療法含む) |
腎臓機能障害 | 人工透析療法、腎移植術(抗免疫療法含む) |
肝臓機能障害 | 肝移植術(抗免疫療法含む) |
小腸機能障害 | 中心静脈栄養法 |
HIVによる免疫機能障害 | 抗HIV療法、免疫調節療法、その他のHIV感染症に対する治療 |
育成医療(16)
身体に障害があるか、疾患に対する治療を行わないと一定の障害を残すと認められる18歳未満の児童が対象。
対象となる障害は、身体障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる場合、かつ身体障害に直接起因する疾患を合併した場合は、その治療も含まれます。
なお、内臓機能障害に対しては、内科的治療のみの医療は対象外。
疾病の種類 | 症例 |
視覚障害 | 白内障・緑内障手術 |
聴覚・平衡機能障害 | 外耳道形成術、鼓膜穿孔閉鎖術、人口鼓膜、人工内耳 |
音声・言語・咀嚼機能障害 | 唇顎口蓋裂の歯科矯正治療、口唇形成術、口蓋形成術、人口咽頭 |
肢体不自由 | 間接形成術、人工関節置換術、理学療法、作業療法 |
心臓機能障害 | 弁形成術、大動脈・冠動脈バイパス術、ペースメーカー植え込み術、心移植術(抗免疫療法含む) |
腎臓機能障害 | 人工透析療法、腎移植術(抗免疫療法含む) |
肝臓機能障害 | 肝移植術(抗免疫療法含む) |
小腸機能障害 | 中心静脈栄養法 |
HIVによる免疫機能障害 | 抗HIV療法、免疫調節療法、その他のHIV感染症に対する治療 |
先天性内臓機能障害 | |
他の内臓機能障害(呼吸器、膀胱、直腸) |
補足
- 精神疾患に起因すると思われる生活習慣病であれば公費負担の対象となる。
- 院外処方箋での公費負担と公費負担外の処方箋の書き方としては、処方箋2枚で別々に記載する、もしくは、1枚でもわかるように記載すれば問題ない。
- 公費負担対象の薬と公費外の薬が同一剤であった場合は、公費負担の方で計算し、公費外の方では計算しない。
参考:ENIF医薬ニュースvol.21 No.5
コメントor補足情報orご指摘あればをお願いします。
記事No1793 題名:管理人tera様 投稿者:ぽんくん 投稿日:2021-09-10 21:53:00
回答していただきありがとうございます。
申請中時は先患者様から代金をいただくことはせずに、次回来局時支払いをすることなんですね。
勉強になりました
記事No1790 題名:Re:ぽん君様 投稿者:管理人tera 投稿日:2021-09-10 15:42:48
はじめまして。
質問1,2につきましては、生保以外では、1割分を患者負担か公費かは自治体により異なるかとは思います。
自分の中では、1割分を公費として賄い、自己負担をゼロにするのは自治体独自の公費なのかなと思っています。(知識なくてすいません)
役所に確認する以外確実な回答は難しいかもしれません。
質問3については、受給者証申請中に管理表だけ届くケースを経験しておらず、明確な答えはできませんが、通常は、受給者証が届くまでは1割負担にせず、その間に受診した場合は償還払い(患者さんが自身で請求する)を選択して頂くことになるかとは思います。
記事No1783 題名:負担割合について 投稿者:ぽん君 投稿日:2021-09-09 09:02:23
はじめまして。
21の負担割合についてです。
以下の疑問点についてお手隙の際に教えていただけないでしょうか?勉強不足で申し訳ありません。
・患者負担割合がない場合はどのようなケースか?(福祉関係など)
・15や16に関しても患者負担割合がない場合はどのようなケースがあるのか?
・受給者証申請中の上限管理表の記載方法と患者負担割合は原則1割負担でいいのか?
記事No1450 題名:Re:やまもと様 投稿者:管理人tera 投稿日:2020-09-02 12:27:43
はじめまして。
21の対象疾患は厚生労働省からある程度明確に示されているものの、対象薬剤の範囲までは明確には示されていないように思います(自分が探せないだけなんですが・・・)。
もちろん、適応がてんかんしかない薬剤がてんかんの人に出ていれば自動的に対象薬になりますし、対象疾患に適応を持つ薬剤をリスト化すれば対象薬リストは作れるかもしれません。
しかしながら、基本的には、医師のさじ加減と、常識に照らし合わせて、さすがにこれは対象薬ではないというものを除するという形で調剤するものだと思っております。
力に添えずすいません。
記事No1448 題名:21対象薬剤について 投稿者:やまもと 投稿日:2020-09-01 19:16:59
いつも大変参考にさせて頂いております。
21の対象薬剤の範囲は明確に定められていますか?風邪薬などはだめだと思うのですが、対象薬リストのようなものは公開されておりますか?
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