高額療養費制度

概要

高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、暦月(月の初めから終わりまで→入院単位ではない)で一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。

ただし、入院時の食費、差額ベット代(患者自身の希望で病室のグレードを上げた場合に上乗せされる費用)、先進医療にかかる費用等、保険外の負担分は含まれません。

自己負担上限

負担の上限は、年齢・所得によって異なります。(75歳到達時特例対象療養に該当する場合の金額は割愛)

70歳以上の方の場合(平成30年8月~)

適用区分 外来(個人ごと) 1か月の負担の上限額(外来+入院)(世帯合算) 多数回該当
現役並み Ⅲ 年収約1160万円~
課税所得690万円以上
252,600円+(医療費-842,000)×1% 140,100円
Ⅱ 年収約770万~約1160万円
課税所得380万円以上
167,400円+(医療費-558,000)×1% 93,000円
Ⅰ 年収約370万~約770万円
課税所得145万円以上
80,100円+(医療費-267,000)×1% 44,400円
一般 年収156万~370万円
課税所得145万円未満
18,000円 57,600円 44,400円
低所得者 Ⅱ 住民税非課税世帯 8,000円 24,600円
Ⅰ 住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)
15,000円
所得区分 外来(個人ごと) 1か月の負担の上限額(外来+入院)(世帯合算) 多数該当
現役並み所得者(年収370万円~。月収28万円以上、課税所得145万円以上などの窓口負担3割の方) 44,400円
57,600円
80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円
一般(年収156万~約370万円、月収26万円以下、課税所得145万円未満※1 12,000円
14,000円
年間上限14万4,000円
44,400円
低所得者(住民税非課税の方) Ⅱ(Ⅰ以外の方) 8,000円 24,600円
Ⅰ(年金収入のみの方の場合、年金受給額80万円以下など、総所得金額がゼロの方) 15,000円

※1 世帯収入の合計額が20万未満(一人世帯の場合は383万円未満)の場合や、「旧ただしガキ所得」の合計額が210万円以下の場合を含む。

※ 年間上限については、8月から翌年7月までを期間として14万4000円を超えた金額は償還払いとなる。患者本人による手続きには領収書が必要となる。

同一の医療機関等における自己負担(院外処方代を含みます。)では上限額を超えないときでも、同じ月の複数の医療機関等における自己負担を合算することができます。 この合算額が負担の上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

また、同一世帯(被保険者とその扶養者)の自己負担額も合算することができます。ただし世帯合算にはいくつかの注意点があります。

  • 70以上の場合は自己負担額を全て合算可能
  • 70歳未満の場合は自己負担額が1月当たり21000円以上のものを合算可能。21000円以上か否かは医療機関ごと(調剤費用は処方箋発行元の診療費用と合算)に計算することに注意する。

多数回該当、直近の12か月間に、既に3回以上高額療養費の支給を受けている場合には、その月の負担の上限額がさらに引き下がります。

「一般」や「低所得者」の区分の方については、多数回該当の適用はありません。

また、入院される方については、加入する医療保険から事前に「所得区分」の認定証を発行してもらうことにより、医療機関の窓口での支払を負担の上限額までにとどめることもできます。このため、一度に用意する費用が少なくて済みます。

70歳未満の方の場合(平成27年1月以降)

所得区分 所得区分判定基準 本来の負担の上限額 多数回該当の場合
ア:上位 社保:標準報酬月額83万円以上
国保:旧但し書所得901万円超
252,600+(医療費-842,000円)×1% 140,100円
イ:上位 社保:標準報酬月額53~79万円
国保:旧但し書所得600万~901万円
167,400円+(医療費-558,000円)×1% 93,000円
ウ:一般 社保:標準報酬月額28~50万円
国保:旧但し書所得210万~600万円
80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円
エ:一般 社保:標準報酬月額26万円以下
国保:旧但し書所得210万円以下
57,600円 44,400円
オ:低所 低所得者(住民税非課税の方) 35,400円 24,600円
所得区分 本来の負担の上限額 多数回該当の場合
7上位所得者 7150,000円+(医療費-500,000円)×1% 783,400円
7一般 780,100円+(医療費-267,000円)×1% 744,400円
7低所得者(住民税非課税の方) 735,400円 724,600円

同一の医療機関等における自己負担(院外処方代を含みます。病院代+薬局の薬代)では上限額を超えないときでも、同じ月の複数の医療機関等における自己負担(70歳未満の場合は2万1千円以上であることが必要です。)を合算することができます。

この合算額が負担の上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

適用区分と数字対応表

レセコンの入力時に選択が必要な項目。レセプトの特記事項欄に数字を記載することが必要です。

70歳未満(平成27年1月以降)

区分 数字(年3回未満) 数字(年3回以上) 負担 限度額適用認定証
(適用区分)
ア:上位 26区ア 31多ア 3割
イ:上位 27区イ 32多イ
ウ:一般 28区ウ 33多ウ
エ:一般 29区エ 24多エ
オ:低所 30区オ 35多オ
区分 数字(年3回未満) 数字(年3回以上)
A:上位所得者 17上位 22多上
B:一般 18一般 23多一
C:低所得者 19低所 24多低

70歳以上(H30年8月以降)

区分 数字(年3回未満) 数字(年3回以上) 負担 限度額適用認定証
(適用区分)
現役並みⅢ 26区ア 31多ア 3割 -
現役並みⅡ 27区イ 32多イ 現役Ⅱ
現役並みⅠ 28区ウ 33多ウ 現役Ⅰ
一般 29区エ 34多エ 2割or1割 -
低所得者Ⅱ 30区オ -
低所得者Ⅰ
区分 数字(年3回未満) 数字(年3回以上)
Ⅳ:現役並み所得者 17上位 22多上
Ⅲ:一般 18一般 -
Ⅱ:低所得者 19低所 -
Ⅰ:低所得者 19低所 -

外来の場合の高額療養費と自己負担

高額な薬剤費等がかかる患者の負担を軽減するため、従来の入院療養に加え、外来療養についても、同一医療機関での同一月の窓口負担が自己負担限度額を超える場合は、患者が高額療養費を事後に申請して受給する手続きに代えて、保険者から医療機関に支給することで、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめる取扱い(現物給付化)を導入するものである。

つまり、H24.4より限度額適用認定証等を提示し、患者が外来の診療を診療を受けた場合についても、入院した場合と同様に、医療機関等の窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることができる仕組みが導入されます。

これまでの限度額適用認定証又は限度額適用・標準負担額減額認定証と同様に、原則として発効日の属する月から最長1年以内の月の末日までとなり、少なくとも1年ごとに更新が必要です。

70歳未満の上位所得、一般の被保険者で高額療養費の現物給付化を希望される方は、入院・外来に問わず、所得区分を確認するため、全員、「限度額適用認定証」が必要となります。

70歳未満、70歳以上ともに低所得にあてはまる方で高額療養費の現物給付化を希望される方は、「限度額適用・標準負担額減額認定証」が必要となります。

70歳以上75歳未満の現役並み所得、一般の方は「高齢受給者証」により所得区分が確認できるため、限度額適用認定証又は限度額適用・標準負担額減額認定証は不要となります。

75歳以上で一般、現役並所得の方は、被保険者証を提示することになります。

一つの薬局の場合、同一の医療機関から発行された処方箋で調剤された費用についてのみ合算されます。

複数の医療機関等同士の医療費を医療機関の窓口で合算することはできないため、高額療養費の現物給付化の対象とはなりません。

この場合、高額療養費の現物給付化の対象とはなりませんが、被保険者は後日、保険者に高額療養費の申請を行うことにより高額療養費の支給を受けることになります。

高額療養費の現物給付化については、個人単位で計算しますので、各患者が各々自己負担限度額に達しない場合には、高額療養費の現物給付化の対象とはなりません。

ただし、同一の世帯で合算し、高額療養費の対象となる場合には、後日、保険者に高額療養費の申請を行うことにより高額療養費の支給を受けることになります。

高額療養費の一部負担金に関して(国民健康保険における高額療養費支給事務の取扱い等について

  • 一 一部負担金の支払に係る一○円未満の端数金額は四捨五入することとされたところであるが、療養取扱機関から審査支払機関へ請求する額は、療養に要する費用の額から四捨五入を行う前の一部負担金に相当する額を控除した額とするものであること。
    なお、この措置については、特定療養費が現物給付化された場合に係る療養取扱機関等の窓口での支払及び療養取扱機関等から審査支払機関に対する請求についても適用されるものであること。
  • 二 この端数処理は、療養取扱機関等の患者に対する請求の都度行うこと。

まとめ

現物給付化できるのはあくまで同一医療機関からのもので、個人についてのみ。それ以外は後日申請すれば戻る。

年齢 現役並or上位所得 一般所得 低所得
70歳未満 限度額適用認定証 限度額適用認定証 限度額適用・標準負担額減額認定証
70歳~74歳 区分Ⅲ:高齢受給者証
区分Ⅰ・Ⅱ:限度額適用認定証
高齢受給者証 限度額適用・標準負担額減額認定証
75歳以上 区分Ⅲ:被保険者証
区分Ⅰ・Ⅱ:限度額適用認定証
被保険者証 限度額適用・標準負担額減額認定証

マイナンバーまたは健康保険証を提示し、情報提供に同意していただくことで、限度額適用認定証の申請は不要となります。

※ただし、保険の加入状況によっては申請が必要な場合があります(被保険者が市区町村民税の非課税者など)。

高額介護サービス費

高額介護合算療養費制度

H20.4より、高額医療・高額介護合算療養費制度が制定され、医療保険と介護保険の自己負担を合算して、高額療養費制度を利用することができるようになりました。

高額介護合算療養費の計算期間は「8月1日~7月31日」の1年間である。

H30年8月以降

所得区分 負担限度額(年単位)
70歳未満 70歳以上
標準報酬月額83万円以上 212万円 212万円
標準報酬月額53~79万円 141万円 141万円
標準報酬月額28~50万円 67万円 67万円
標準報酬月額26万円以下 60万円 56万円
低所得者2 34万円 31万円
低所得者1 34万円 19万円

長期高額疾病(長期特定疾病=マル長(チョウ))

マル障(心身障害者医療費助成)というものもあるが、これは都道府県が行う障害があり収入が一定の基準以下を対象にした助成制度であり混同しないように。

長期高額疾病は医療保険の高額療養費のひとつで、

  • 人工透析を実施している慢性腎不全
  • 血漿分画製剤を投与している先天性血液凝固第Ⅷ因子障害または先天性血液凝固Ⅸ因子障害(血友病)
  • 抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群(血液製剤の投与に起因するHIV感染症)

を対象として、患者の自己負担は月額1万円となっている。

この制度を適用する場合、予め患者は保険者に申請して「特定疾病療養受療証」の交付を受け、調剤の際には、保険薬局の窓口で処方箋と合わせて受療証を提示することになっている。

その患者の1月の自己負担が1万円(70歳未満の上位所得者で人工透析を行っている患者は2万円)を超えた場合は、調剤報酬明細書の「特記事項」欄に「長」(または「長2」)という略号を記載する必要がある。

また、そのような特定疾病療養の対象患者が自立支援医療を併用する場合、実際に患者から窓口で徴収する自己負担は、

  • ①自立支援医療の受給者証に記載されている1月あたりの自己負担上限額
  • ②自立支援医療に係る月額医療費の1割相当額
  • ③特定疾病の高額療養費の自己負担限度額(1万または2万)

のいずれか一番低い額となる。

その際、窓口での徴収額が①または②となるケースでは、特定疾病療養の自己負担上限額より低いので、仮に高額療養費(特定疾病)を適用しなくても患者の自己負担額に影響することはない。(例:更生医療15が上限5000円、マル長が上限1万円で医療費が4000円なら自己負担は4000円、医療費が6000円なら自己負担は5000円で実質高額療養費を適用しないことになる。)

しかし、医療保険の特定疾病療養受療と自立支援医療を併用する場合には、医療保険による給付が自立支援医療に優先して適用されることになっているため、レセプトに「長」もしくは「長2」の記載がないと、医療保険の給付分と公費負担分の費用按分を適切に行うことができなくなる。

(以上R2年保険調剤Q&A Q202より)

例えば、人工透析中でマル長の対象、腎移植も行っていて障害者認定で更生医療(15)と市町村の重度心身障害者(82とか独自の番号)を併用する場合、全ての対象から外れる薬はもちろん保険で。人工透析に係るものならマル長でそこに重度心身障害がかぶさるなら月額21000円(埼玉)までは自己負担なしで超えたら償還払い。グラセプターなど腎移植の処方なら人工透析は関係ないので15と重度心身障害の2つで住んでいる市町村外の処方なら重度心身障害は使えないので15の上限で処理する。

以上、引用(厚生労働省HP

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記事No2616 題名:tera様 投稿者:新人 投稿日:2023-12-23 00:06:08

入院されていたのですね。
お忙しいところ、ご回答ありがとうございました。

寒い日が続きますので、どうぞご自愛ください


記事No2614 題名:Re:新人様 投稿者:管理人tera 投稿日:2023-12-15 16:09:33

すいません、入院しており確認遅れました。
そうですね。直近1年が条件を満たせていれば4回目以降はずっと多数回該当です。


記事No2612 題名:多数回該当について 投稿者:新人 投稿日:2023-12-10 22:42:48

いつも参考にさせていただいております。
多数回該当について教えていただきたいです。

70歳未満、区分エ(負担上限57,600円)に該当する方で、3ヶ月に一度来局、毎回上限を超える医療費がかかると仮定した場合、主保険が変わらなければ、4回目以降はずっと(何年間も)多数回該当の請求額でよろしいのでしょうか?

よろしくお願いします。


記事No2377 題名:Re:みなみ様 投稿者:管理人tera 投稿日:2023-01-13 18:13:09

了解です。解決してよかったです。


記事No2376 題名:28公費とマル長について 投稿者:みなみ 投稿日:2023-01-13 10:57:15

先日お伺いした件、解決いたしました。レセコンの仕様(不具合)によりお支払い額が0円になっていたようです。お忙しいところ申し訳ございませんでした。また何かありましたらよろしくお願いします。


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