目次
- 抗血小板薬一覧と使い方
- PCI(冠動脈インターベンション)
- 各抗血小板薬の特徴
- コメント
抗血小板薬一覧と使い方
分類 | 成分名 | 商品名 | 規格・剤形・補足 |
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COX阻害 | アスピリン | バイアスピリン | 規格:腸溶錠100mg 適応:(狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞))における血栓・塞栓形成の抑制、冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制、川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む) |
アスピリン・ダイアルミネート | 製造中止。規格:配合錠A81 適応: (狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞)における血栓・塞栓形成の抑制、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)、冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓・塞栓形成の抑制、川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む) |
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P2Y12阻害薬 | クロピドグレル | プラビックス | 規格:錠25mg/75mg、GEは錠50mg有 適応:虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制、経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患(急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞)、 末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制 |
チクロピジン | パナルジン | 規格:細粒10%、錠100mg 適応:血管手術および血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療ならびに血流障害の改善、慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛および冷感などの阻血性諸症状の改善、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)に伴う血栓・塞栓の治療、クモ膜下出血術後の脳血管攣縮に伴う血流障害の改善 |
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プラスグレル | エフィエント | 規格:錠2.5mg/3.75㎎/5㎎、OD錠20mg 適応:経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される虚血性心疾患(急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞)、虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る) |
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チカグレロル | プリリンタ | 規格:錠60mg/90mg 適応:【90mg】経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)(ただし、アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板剤の投与が困難な場合に限る)、【60mg】以下のリスク因子を1つ以上有する陳旧性心筋梗塞のうち、アテローム血栓症の発現リスクが特に高い場合(65歳以上、薬物療法を必要とする糖尿病、2回以上の心筋梗塞の既往、血管造影で確認された多枝病変を有する冠動脈疾患、又は末期でない慢性の腎機能障害) |
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PDE阻害薬 | シロスタゾール | プレタール | 規格:散20%、OD錠50mg/100mg、GEは錠50mg/100mgと内服ゼリー50mg/100mg有 適応:慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛及び冷感等の虚血性諸症状の改善、脳梗塞(心原性脳塞栓症を除く)発症後の再発抑制 |
ジピリダモール | ペルサンチン | 規格:錠12.5㎎/25mg/100mg、散と静注はGEのみ 適応:狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患、うっ血性心不全、ワーファリンとの併用による心臓弁置換術後の血栓・塞栓の抑制、ステロイドに抵抗性を示すネフローゼ症候群における尿蛋白減少 |
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ジピリダモール徐放剤 | 販売中止。規格:徐放カプセル150㎎ | ||
5HT2阻害薬 | サルポグレラート | アンプラーグ | 規格:細粒10%、錠50㎎/100mg 適応:慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛および冷感等の虚血性諸症状の改善 |
PGI2誘導体 | ベラプロスト | ドルナー プロサイリン |
規格:錠20μg、GEは錠40μg有 適応:慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善、原発性肺高血圧症 |
ケアロードLA ベラサスLA |
規格:錠60μg 適応:肺動脈性肺高血圧症 |
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EPA製剤 | エパデール等 | ||
配合剤 | タケルダ キャブピリン コンプラビン |
抗血栓薬の術前休薬期間
一般名(主な商品名) | 休薬開始時期 | 作用持続時間 |
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アスピリン(バファリン、バイアスピリン、タケルダ、キャブピリン、コンプラビン) | 7日前(低危険手技時は3日前) | 7~10日 |
クロピドグレル硫酸塩(プラビックス) | 14日前 | 10~14日 |
プラスグレル硫酸塩(エフィエント) | 14日以上前 | - |
チクロピジン塩酸塩(パナルジン) | 10~14日前(低危険手技時は5日前) | 10~14日 |
チカグレロル(ブリリンタ) | 5日以上 | - |
シロスタゾール(プレタール) | 3日前 | 48時間 |
イコサペント酸エチル(エパデール) | 7日前 | 7~10日 |
ジピリダモール(ペルサンチン) | 1~2日前 | 不明 |
サルポグレラート塩酸塩(アンプラーグ) | 1日前 | 4~6時間 |
ベラプロストナトリウム(ドルナー、プロサイリン) | 1日前 | 6時間 |
リマプロストアルファデクス(オパルモン、プロレナール) | 1日前 | 3時間 |
PCI(冠動脈インターベンション)とは
カテーテルを使用したバルーン治療やステント留置術のこと(詳しくは、カテーテル治療とバイパス手術を参照)。
カテーテルを利用した治療には、バルーン、ステント留置のほか、脳動脈瘤の治療で使われ動脈瘤内にコイルを詰めて動脈瘤を閉塞させるコイル塞栓術、心房中隔欠損症(右心房と左心房の間に穴が空いている)の治療で使われる閉鎖栓療法がある。
カテーテルの挿入口としては、昔ながらの大腿動脈と上腕動脈、橈骨(手首)動脈の3か所あり、出血が少ないことや感染予防の観点から、橈骨動脈からの挿入が最もポピュラー(心筋梗塞での心カテーテルはほぼ橈骨動脈、脳においても徐々にこちらにシフトしていっている)。
新生内膜の形成までの間のステント留置後の血栓予防は、DAPT(dual antiplatelet therapy=抗血小板薬2剤併用:バイアスピリン+クロピドグレルorエフィエント)+PPI→1~3ヶ月後→SAPT(single antiplatelet therapy=抗血小板薬単剤)へ。
ガイドラインではバイアスピリンを残すが、出血リスクが高い場合にP2Y12拮抗薬を選択できる(ガイドライン上ではP2Y12拮抗薬を考慮するとある)ため、出血リスクを考えてP2Y12拮抗薬を残すDrが多い。
SAPTをいつまで継続するかですが、ステント血栓だけを考えれば、新生内膜形成後は中止してもと思われますが、実際は、一次予防(高コレステロール等)に続く、二次予防として一生にわたり継続するケースが多い。
いずれの薬も、血小板が集まってできた血栓を溶解して梗塞症状を改善する薬です。
一方、心房細動を合併している場合は、少しこれと異なり、PCI施行後2wはアスピリンとP2Y12拮抗薬と抗凝固薬を3剤併用(リスクにより3か月まで延長)し、2週間~1年まではP2Y12拮抗薬と抗凝固薬の2剤併用、1年目以降は抗凝固の単剤投与がテンプレート。これはAFIRE研究により1剤の2剤に対する非劣性が示されたためである。(図引用元:冠動脈疾患患者における抗血栓療法2020)
OAC(DOAC+ワーファリン)服用中の人は一番左の列に従う。
各抗血栓薬の特徴
COX阻害薬
バイアスピリン(アスピリン)はCOX1を阻害して、血小板凝集促進作用のあるTXA2(トロンボキサンA2)の働きを抑えて、抗血小板作用を示します。ただし、多量に服用するとアスピリンジレンマという、反対の作用のあるPGE1、PGE2、PGI2の働きが抑えられて、逆に血小板凝集が進んでしまいます。脳出血リスクを増加させやすいのと胃粘膜障害、消化管出血に注意。
アスピリン(粉)は解熱鎮痛と川崎病のみの適応(抗血小板関連での適応はない)。吸湿によって脱アセチル化が起こり、酢酸とサリチル酸に分離し酢酸臭を放つ。そのため、吸湿性の高い製剤との配合、アルカリ性薬剤との配合、乳糖賦形の際アスピリンの結晶をすりつぶして混ぜる(賦形自体が好ましくない)のは不可。
PDE阻害薬
プレタール(シロスタゾール)は、血小板及び血管平滑筋のPDEを阻害することにより、抗血小板作用及び血管拡張作用を、また、TXA2による血小板凝集を抑制する抗血小板作用は弱いものの血管拡張作用があるため、心臓よりも脳血管細動脈や末梢動脈の梗塞に使われることが多い。頭痛、頻脈の副作用があるため、これらを合併している患者や心不全の患者には使えない。
ペルサンチン(ジピリダモール)は血小板のPDEを阻害して、cAMP濃度を高め、血小板凝集能を抑制します。PGI2増加、TXA2合成抑制、アデノシン再取込阻害作用によるAC活性増強→血小板内cAMP合成促進作用、尿蛋白減少作用がある。
ADP受容体(P2Y12)阻害薬
ブリリンタ(チカグレロル)、パナルジン(チクロピジン)、プラビックス(クロピドグレル)、エフィエント(プラスグレル)は血小板のADP受容体(P2Y12)に選択的かつ不可逆的に結合し、PI3キナーゼの活性化を抑制することにより、GPⅡb/Ⅲaの活性化を阻害する。さらに、ADP受容体(P2Y12)刺激によって起こる抑制性蛋白質 Gi によるACの活性抑制を阻害し、cAMPを増加させCa2+流入を阻害する(血小板内のCa2+濃度を抑える)ことにより、各種血小板凝集因子による凝集反応を抑制する。
4者の抗血小板作用はほぼ同じであるが、パナルジンは副作用が多く、定期的な血液検査が必須のことや1日2-3回であることがデメリット、プラビックスは1日1回で副作用も少ないもののエフィエントに比べて作用発現が遅く、CYP2C19の影響を受けやすいのがデメリット、エフィエントは適応がPCI適用患者のみである(2022.1:虚血性脳血管障害への適応追加、投与開始時に投与が必要と判断した理由をレセプト摘要欄へ記載が必要)ことがデメリット、
ブリリンタは受容体結合が可逆的であることから、他の薬剤と比較して投与中止後に速やかに抗血小板作用が消失する。また、プラビックスやエフィエントと違いプロドラッグではないので、効果発現が早いといった良い面もある一方、出血イベントがやや高いため、他の薬剤でも血栓症を繰り返す症例等の特殊な場合に限定して使用される。
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