ω3脂肪酸(ロトリガとエパデール)
- エパデール(イコサペント酸エチル)・・・EPA製剤
エパデールEMは乳化製剤であり、1日3回のエパデールの吸収率を高め1日1回投与へと改良したもの。食事の影響はないが同じ食直後の服用 - ロトリガ(イコサペント酸エチル+ドコサヘキサエン酸エチル)・・・EPA-DHA製剤。シームレスカプセル。
ω3脂肪酸とは
動物体内で合成されない不飽和脂肪酸(n-3系列とn-6系列)を必須脂肪酸と呼び、リノール酸、α-リノレン酸がそれに該当します。 これらは体内で合成できないため、食事から摂る必要があり、摂取された不飽和脂肪酸は、体内で、
n-6系(ω=6):リノール酸 → γリノレン酸 → ジホモγリノレン酸 → アラキドン酸
n-3系(ω=3):α-リノレン酸 → EPA(エイコサペンタエン酸) → DHA(ドコサヘキサエン酸)
と代謝される。
ロトリガとエパデールの効果比較
項目 | ロトリガ 2g×1回/日 |
ロトリガ 2g×2回/日 |
エパデール 0.6g×3回/日 |
---|---|---|---|
薬価 | 261.30/包 | 522.60/2包 | 244.80/3包 |
TG | -10.9% | -22.7% | -11.3% |
LDL-C | -2.10% | -1.08% | -4.25% |
HDL-C | +2.44% | +4.31% | +1.64% |
TC | -2.71% | -3.70% | -4.25% |
VLDL-C | -10.2% | -19.75% | -8.42% |
RLP-C | -11.05% | -20.61% | -5.79% |
sd-LDL | -6.96% | -16.21% | +1.07% |
Large-LDL | +9.51% | +16.37% | +7.31% |
ロトリガ、エパデール、ネイチャーメイドの含量比較
ロトリガ1日1回服用は、エパデールS600を1日3回服用の半分量のEPAを含有するが、DHAを余計に配合するため、両者の実際の効果はほぼ同じ。
DHAは心臓や脳移行性が高く、認知機能の改善や心機能の改善の効果がある。
項目 | EPA/日 | DHA/日 |
---|---|---|
ロトリガ(1回/日) (武田) |
930mg | 750mg |
ロトリガ(2回/日) (武田) |
1800mg | 1500mg |
エパデールS600(3回/日) (持田) |
1800mg | - |
フィッシュオイル (ネイチャーメイド) |
160mg/4粒 | 108mg/4粒 |
コレステロールの代謝について
食事の脂肪とコレステロールは小腸粘膜のNPC1L1(Niemann-Pick C1 like 1 Protein=コレステロールトランスポーター)により吸収後、カイロミクロンに取り込まれ、LPL(リポ蛋白リパーゼ)の作用でTGが除かれてRLP(レムナントリポ蛋白)になった後、肝臓のレムナント受容体を介して肝臓に取り込まれる。
食事の炭水化物はグルコースになって解糖系に入り、アセチルCoA→HMG-CoAの存在下→肝臓にてコレステロールの合成に使用される。肝臓では遊離脂肪酸とグリセロールからトリグリセリド(TG)の合成も行われ、この内因的に合成されたコレステロールとTGを運搬するVLDLを産生する。
VLDLはLPL(リポ蛋白リパーゼ)の作用でTGが除かれてIDL(=RLP:レムナントリポ蛋白)になった後、HTGL(肝性トリグリセリドリパーゼ)の作用でさらにTGが除かれてLDLとなる。
RLPは通常肝臓にすみやかに取り込まれるが、TG高値例ではRLPが滞留し、それらがどんどんマクロファージに取り込まれる(酸化を受けずに)と、マクロファージが泡沫化(ほうまつか=膨らんで)してプラークを形成し動脈硬化を進行させる。
LDL(Large LDL)の一部は肝臓や末梢組織のLDL受容体に結合せず、HTGLの作用でTGを除かれて、比重の大きい小型のsdLDL(small dense LDL)になる。このsdLDLはLDL受容体への親和性が非常に低いため、血中滞在時間がLDLの2日に対して5日と長い上に、酸化を受けて酸化LDLになりやすい。
酸化LDLもまたマクロファージを泡沫化して動脈硬化を進行させる。
HDLのほとんどは肝臓・小腸で産生されるが、一部はLPLの作用でRLPができる時にも産生される。
肝臓や小腸はアポA-1を産生し、肝臓や末梢組織のABCA1、マクロファージのABCA1やABCG1はコレステロールやリン脂質をアポA-1に供給し、preβHDLを産生、preβHDLはマクロファージや末梢組織から遊離型コレステロール(FC)を引き抜き、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)の作用でコレステリルエステル(CE)となったものを取り込み、HDL3となる。
HDL3はさらにCE(コレステリルエステル)を取り込み肥大化しHDL2になる。HDL2はHDL受容体(SR-B1)を介して肝臓に取り込まれコレステロールやTGを戻す。これらは、胆汁酸により糞便として排泄されたり、VLDLに取り込まれたり内臓脂肪となったりする。
また、HDL2はコレステリルエステル転送蛋白(CETP)により、VLDLやLDLにCEを逆転送し、それと交換にTGを受け取り、TGリッチHDL2へと変換される。TGリッチHDL2は肝性リパーゼ(HTGL)の作用で、preβHDLとHDL3に変換され、再利用されるか、肝LDL受容体を介して肝臓に取り込まれる。
ロトリガとエパデールの作用機序
- 肝臓で遊離脂肪酸からトリグリセリドを合成する時に必要な酵素(アシルCoAシンテターゼ等)を阻害する。→TG値の低下
- アセチルCoAから脂肪酸を生成する反応(β酸化の逆経路)で必要な酵素(アシルCoAカルボキシラーゼ等)を阻害する。→脂肪酸低下→TG値の低下
- 脂肪酸のβ酸化を亢進してTCA回路へ送る。→TG値の低下
- LPLの活性を高める→カイロミクロンとVLDLのレムナントリポ蛋白への変換促進→VLDL値の低下
- CETPの発現を抑制→VLDLやLDLが、HDLからTGと引き換えにCEを受け取らない→VLDLやLDL内(CE↓、TG↑)とHDL内(CE↑、TG↓)→LDLの小型化の抑制、LDL-Cの低下、HDL-Cの増加(HDL等数は変わらず、含まれるCEの量が増加するという意味)
EPAは体内でAA(アラキドン酸)と置き換わり、PGI3(PGI2と同等の抗血小板作用)やTXA3(血小板凝集作用なし)を産生し、抗血小板作用を示す。
EPAはPPARαの発現量を増加し、脂肪細胞を減少させる。PPARは脂肪酸をリガンドとする受容体であり、PPARαは刺激すると脂肪酸低下(フィブラート)、PPARγは刺激するとインスリン感受性の高い小型脂肪細胞を増やす(アクトス)。
過栄養状態の肝臓では、脂肪酸による小胞体ストレスが誘導され、apoB蛋白の分泌が減少し、脂肪肝を発症する。DHAはオートファジーを介してapoBを分解し、VLDL分泌を減少させ、高TG血症を抑制する。
(参考文献:メーカー販促文書、インタビューフォーム、NMオンライン、HDL産生トランスポーター ABCA1の肝での二重転写制御機構、j-Tokyo)
高脂血症の薬の種類
- スタチン系
- フィブラート系、選択的PPARαモジュレータ
- ニコチン酸誘導体(ユベラN、ペリシット、コレキサミン)
- 陰イオン交換樹脂(クエストラン、コレバイン)
- プロブコール(シンレスタール、ロレルコ)
- 植物ステロール(ハイゼット)
- ω3脂肪酸(エパエール、ロトリガ)
- 肥満症治療薬(オブリーン)
- 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(ゼチーア)
- PCSK9阻害薬(
プラルエント(2020.5販売中止)、レパーサ、レクビオ) - MTP阻害薬(ジャクスタピッド)
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