統合失調症の治療

EPSやプロラクチン値を上昇させることなく抗精神病効果をもたらすには、線条体におけるドパミンD2受容体遮断は65~78%とされている。

急性期患者には非定型抗精神病薬を用いることが多い。安定期には症状の再燃を防止するため、再燃防止効果があるリスペリドン、オランザピン、クエチアピンを用いて、1~2年は最低量を維持して減薬していく。

現在抗精神病薬は第一世代抗精神病薬(定型抗精神病薬)と第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)に大別される。第二世代抗精神病薬は、第一世代に比べて錐体外路症状が少なく、陰性症状や認知機能障害への効果、感情面への効果がある。従来の統合失調症薬物療法は、第一世代抗精神病薬を中心とした多剤併用療法であったが、現在は第二世代単剤使用が原則である。

現在わが国では、第二世代抗精神病薬としてリスペリドン、オランザピン、クエチアピン、ペロスピロンが使用可能となっている。これらはドパミンD2受容体遮断作用とは別にセロトニン受容体も強力に遮断し、セロトニン・ドパミン拮抗薬(serotonin-dopamine antagonist:SDA)、あるいはその他様々な受容体に対しても親和性を持つことからMARTAと呼ばれる。

D2受容体遮断作用に比べてセロトニン5-HT2A受容体遮断作用が相対的に強くなった点である。セロトニン神経は中脳黒質から線条体に投射するドパミン神経に対して通常抑制的に作用しており、ドパミン神経上の5-HT2Aを遮断することで、ドパミン神経の抑制の解除が生じた結果、ドパミンが遊離し、D2受容体遮断よる錐体外路症状を軽減すると考えられている。

第二はD2受容体に対する遮断作用を弱くした点である。D2受容体に対する親和性の強さによって、内因性のドパミンと比較して強い場合には硬い結合(tight binding)、弱い場合にはゆるい結合(loose binding)と呼ばれる。

また、D2受容体に対する結合性の強さによって、1日1回投与でも24時間以上D2受容体の阻害が持続するものと、24時間以内にD2受容体の占拠率が速やかに低下するものに分類される。

リスペリドンは24時間型tight、オランザピンは24時間型loose、クエチアピンは24時間以内loose、ペロスピロンは24時間以内looseである。

D2受容体からすみやかに解離する、クエチアピン、ペロスピロンは高プロラクチン血症の発現頻度が少なく、loosebindingのオランザピン、、クエチアピン、ペロスピロンでEPSが少ない一方、tightであるリスペリドンは非定型抗精神病薬の中ではEPSや高プロラクチン血症の発現頻度が高い。

アリピプラゾールはドパミンD2受容体部分作動薬として知られている。ドパミンが過剰な状態では、シナプス後のD2受容体には機能的な拮抗薬として働いて、抗精神病効果を発揮する。一方、ドパミン神経伝達が低下した状態では、機能的に本来のアゴニスト作用が現れ、本薬物の内因活性レベルまで上昇させるので、ドパミン機能を調節する。 またEPS、高プロラクチン血症、体重増加、QT延長などの副作用が極めて生じにくい。

関連ページ

コメントor補足情報orご指摘あればをお願いします。

(件名or本文内でキーワード検索できます)



  • << 前のページ
  • 次のページ >>
ページトップへ