粘膜型と結合織型マスト細胞
肥満細胞は骨髄から産生されたばかりの状態では、まだ未熟な状態であり、血中へ移動した後、IL-4やIL-5の作用で結合組織や粘膜に移行してはじめて最終分化する。
この時、結合組織で分化するか、粘膜で分化するかで肥満細胞の型が若干異なる。
皮膚や粘膜下組織といった結合組織にて分化した肥満細胞は結合織型マスト細胞と呼ばれ、粘膜にて分化した肥満細胞は粘膜型マスト細胞と呼ばれている。 通常の状態では結合織型マスト細胞の数は多いが、粘膜型マスト細胞の数は少ない。しかし、アレルゲンに接すると粘膜面に多くのマスト細胞が出現する。
項目 | 粘膜型マスト細胞 | 結合織型マスト細胞 |
存在場所 | 粘膜内 | 粘膜下組織、皮膚など結合組織 |
顆粒の大きさと数 | 小さく少ない | 大きく多い |
ヒスタミン含量 | 少ない | 多い |
プロテオグリカン | コンドロイチン硫酸 | ヘパリン |
プロテアーゼ | トリプターゼ | トリプターゼ、キマーゼ |
主なアラキドン酸代謝物 | LTC4 | PGD2 |
寿命 | 週単位 | 月単位 |
IgEレセプター | 多い | 少ない |
Stat4発現 | してない | している |
プロテアーゼはペプチドグリカン(ウロン酸+グルコサミノグリカンの繰り返し)のグルコサミノグリカンに結合することで容易には活性化されないようになっている。
トリプターゼは気管支などの平滑筋増殖や繊維芽細胞からのコラーゲン産生に関与し、その他肥満細胞から産生されるメディエーターとして増殖に関わるのは、 カイメース(EGF増殖に拮抗、細胞外マトリックス分解)やPAI-1(MMP9活性化抑制→コラーゲン沈着促進)らがある。
また、好酸球特異的と言われていたMBP(Major basic protein)もマスト細胞顆粒に存在していて、これもまたヘパリンと結合してプロテオグリカンの形で存在している。
マスト細胞は寿命が長く、しかも顆粒を放出するという機能を果たした後も、アポトーシスに陥ることなく元の形態に戻ることができるという。
マスト細胞の寿命の長い原因の一つとしてSCF(stem cell factor)のレセプターであるKITが長く発現していることがあげられる。
SCFによるKITからのシグナルはマスト細胞の分化には必須であると共に、血球系の分化にも重要なシグナルである。 マスト細胞を除く血球系が分化と共にKITの発現を低下させていく一方、 マスト細胞のKITは成熟しても発現を維持し続けている。
SCFには膜に結合するものと可溶性のものと2種類存在し、マスト細胞の分化にはとくに可溶性のSCFが重要である。
IgEとマスト細胞膜のFcεRIの凝集によって活性化されたマスト細胞は、IL-4、IL-13などのTh2サイトカインを合成、放出する一方、細胞表面にはCD40Lを発現し、 B細胞上のCD40と結合して、IL-4、IL-13と強調してIgEへのクラススイッチを促進する。
Stat4はJAK-STAT経路で主にサイトカインのシグナル伝達に関与する転写因子であるが、このStat4はIFN-γなどの産生を誘導し、Th2からTh1にシフトさせる。 つまり、結合織型マスト細胞はStat4を発現することによってTh1系のサイトカインを産生する。
このことは、マスト細胞の機能として知られるTh2サイトカイン放出を含むアレルギー反応への関与は、主に粘膜型マスト細胞によるものであることが示唆する。
ケモカインCXCR2が腸管におけるマスト細胞前駆細胞の組織への移行に必要である。
- 粘膜型と結合織型マスト細胞
- マスト細胞と遺伝子
- マスト細胞とFcεRI
- マスト細胞のシグナル伝達
- マスト細胞の抑制シグナル
コメントor補足情報orご指摘あればをお願いします。
- << 前のページ
- 次のページ >>