向精神薬の取扱い
向精神薬の免許(法第50条、第50条の26)
薬局開設許可を受けた者は、第50条の26のみなし規定より、別段に免許の申請をせずして、向精神薬卸売業者及び向精神薬小売業者の免許を受けた者とみなされます。
よって、薬局開設者は、免許の申請を必要とせず、免許証の交付を受けることなく、向精神薬小売業者の免許だけでなく、向精神薬卸売業者の免許 を受けたものとみなされることとなる。
免許の辞退は、知事に別段の申し出が必要。
向精神薬の譲受・譲渡
1、譲受(法第50条の16)
薬局は、向精神薬卸売業者(薬局などの向精神薬小売業者も含みます)から譲り受けることができる。 その他、次の場合も譲り受けることができる。
- 患者に譲り渡した向精神薬を患者又は相続人等から返却される場合(向精神薬小売業者として)
- 病院、診療所、向精神薬小売業者に譲り渡した向精神薬の返品を受ける場合(向精神薬卸売業者として)
- 災害時に使用するために備蓄する目的で地方公共団体の長に譲り渡した向精神薬の返品を受ける場合(向精神薬卸売業者として)
- 向精神薬取扱者が向精神薬取扱者でなくなった場合に、その所有する向精神薬を50日以内に譲り受ける場合(向精神薬卸売業者・向精神薬卸売業者として)
麻薬及び向精神薬取締法の50条の16では、4項で、
「向精神薬小売業者は、向精神薬処方箋を所持するもの以外の者に向精神薬を譲り渡してはならない ただし、向精神薬営業者から譲り受けた向精神薬を返品する場合その他厚生労働省令で定める場合(船員に関係する)は、この限りでない」
とあるため、店舗間での譲受けができないと思われるであろうが、 法第50条の26の特例で、
「薬局開設の許可を受けたものは、向精神薬卸売業者及び向精神薬小売業者の免許を受けた者又は同項の規定により向精神薬卸売業者の免許を受けた者とみなす。」
とあり、薬局開設の許可を受けたものは向精神薬小売業者だけでなく向精神薬卸売業者の免許を受けたものとみなされるので、
卸売業者として他の店舗に譲り渡すことや譲り受けることが可能。
例外としてリタリンは譲受・譲渡が禁止されている。
2、譲渡(法第50条の16、17、施行規則第36条)
薬局は、次の場合以外は向精神薬を譲渡することはできない。
- 向精神薬処方箋を持つ者
- 病院、診療所、向精神薬卸売業者、向精神薬小売業者・・・に譲り渡す場合
- 船舶内に備え付けられる向精神薬を船長の発給する向精神薬の購入に関する証明書と引き換えに船舶所有者に譲り渡す場合
- 救急の用に供する目的で航空機に装備される向精神薬を航空運送事業を経営するものに譲り渡す場合
- 向精神薬卸売業者から譲り受けた向精神薬を返品する場合
- 災害時に使用されるために備蓄される向精神薬を地方公共団体の長に譲り渡す場合
- 薬局を廃止した場合など、その所有する向精神薬を50日以内に向精神薬取扱者に譲り渡す場合
つまり、向精神薬が記載された処方箋を持ってくる患者さんと、病院、診療所、卸問屋、薬局にのみ譲り渡すことができると考えてよい。
向精神薬の保管(法第50条の21)
向精神薬は、薬局従事者が常時出入りするなど、注意している場合以外は、鍵をかけなければならない。
向精神薬の記録(法第50条の23)
第一種及び第二種向精神薬を譲受、譲渡、又は破棄したときは、次の事項を記録し、2年間保存しなければならない。
- 一 譲り渡し、譲り受け、又は廃棄した向精神薬(第三種向精神薬及び向精神薬処方箋を所持する者に譲り渡した向精神薬その他厚生労働省令で定める向精神薬を除く。次号において同じ。)の品名及び数量並びにその年月日
- 二 向精神薬の譲渡し若しくは譲受けの相手方の氏名又は名称及び住所(本社ではなく営業所の名称・所在地)
次のような場合については記録する必要はない(施行規則第42条)。
- 一 病院等の開設者が譲り渡した向精神薬(施用のため交付されたものに限る。)
- 二 向精神薬小売業者又は病院等の開設者が譲り受けた向精神薬(向精神薬小売業者から向精神薬処方箋により調剤された向精神薬を譲り受けた者若しくは病院等の開設者から施用のため交付される向精神薬を譲り受けた者又はこれらの相続人若しくは相続人に代わつて相続財産を管理する者から譲り受けたものに限る。)
- 三 向精神薬小売業者又は病院等の開設者が廃棄した向精神薬(前号に掲げる向精神薬であるものに限る。)
患者へ向精神薬処方箋により調剤した向精神薬を交付した時や、患者から向精神薬の返却を受けた時、又は返却を受けたものを廃棄した時は記録の必要はない。(コデイン、ジヒドロコデイン、エチルモルヒネ及びこれらの塩類以外の麻薬は譲渡記録と患者氏名必要、毒薬は受け払い必要)
同一法人の薬局、他の薬局との間で譲受、譲渡があった場合には記録しなければならない。
伝票の保存をもって記録に変えることができるが、向精神薬が記載されていない伝票とは別に纏める(他店舗とのやり取りをする場合は別に記録簿を用意したほうがいいかも)。
第3種向精神薬については、記録義務はありませんが、譲受けについて記録し、定期的に在庫確認をすることが望ましいです。
向精神薬の廃棄(法第50条の21)
向精神薬を廃棄するときは、届出の必要はないが、第一種及び第二種向精神薬を廃棄したときは記録が必要。
廃棄は回収が困難な方法
向精神薬の事故届(法第50条の22)
薬局で所有する向精神薬について、次の数量以上の損失(事故)があった場合、速やかにその向精神薬の品名、数量その他事故の状況を明らかにするため の必要な事項を「向精神薬事故届」により保健所に提出する。
- 末、散剤、顆粒剤:100g
- 錠剤(ODフィルム剤含む)、カプセル剤、坐剤:120個
- 注射剤:10アンプル(バイアル)
- 内用液剤:10容器
- 経皮吸収型製剤:10枚
向精神薬の扱いには麻薬と同じように十分な注意が必要です。
薬局管理者の義務(法第50条の20、26)
薬局開設者は、自ら向精神薬取扱い責任者になるか又は向精神薬取扱い責任者を置かなければならない。
そして、向精神薬営業者である薬局の管理者は、薬事法の規定により薬局開設の許可(その更新を含む。)を受けた者であるとき、必然的に 向精神薬取扱い責任者とみなされます。
そして、向精神薬取扱い責任者(管理薬剤師)は、上記の譲受・譲渡などの記録を行わなければなりません。
(参考・引用元:薬局における向精神薬取扱いの手引(厚生労働省))
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記事No2862 題名:Re:にこ様 投稿者:管理人tera 投稿日:2024-10-19 17:24:57
記録は以下のア~ウが必要です。
ア 向精神薬の品名・数量
イ 譲受、譲渡又は廃棄年月日
ウ 譲受又は譲渡の相手方の営業所等の名称・所在地
そのため、
・帳簿にア~ウの事項を残すか、
・伝票にア~ウの事項が記載されていれば、伝票を他の伝票とは別に綴るか、
のどちらかを選択できます。
この他の伝票は向精神薬以外の意味であり、一類と二類が同じ伝票に記載されていれば、まとめて向精神薬伝票として保存していればよいとは思います。
ただ、保健所的には3類も含めて帳簿を作ってほしいみたいですが・・・
記事No2861 題名:向精神薬1種、2種の帳簿 投稿者:にこ 投稿日:2024-10-19 15:06:14
向精神薬の入庫払出の帳簿は1、2類の譲渡伝票を別保管すれば書かなくてもよいのでしょうか?
記事No2542 題名:Re:ぽん太様 投稿者:管理人tera 投稿日:2023-07-08 13:32:07
他の方法ですか・・・。どうしても紙の方が簡便なのでこれを選んでしまいますが、デジタル媒体への記録でもよいかとは思います。
記事No2540 題名:向精神薬 帳簿 投稿者:ぽん太 投稿日:2023-07-05 16:05:02
今は麻薬帳簿と同じように手書きで記録しています。他に方法がないか?と聞かれたので、あれば教えてください。
記事No2532 題名:Re:ふじい様 投稿者:管理人tera 投稿日:2023-06-26 09:39:44
1,2類の記録は必須ですが、3類は任意です。
個別指導もそうですが、保健所の立ち入りで必ずチェックされるのできちんとやったほうがいいとは思いますが・・・。
しかし、法令違反であっても責任が管理薬剤師にあるので、その辺のことは管理薬剤師にお任せでいいのかなとは思います。
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