小児薬の調剤について

散剤の秤量誤差について

第十三改訂調剤指針より、

【重量誤差は分包したものでは重量偏差が変動係数として6.1%以下(分包した散剤の重量が基準化された正規分布をするものとして、全体の分包散剤の90%が平均重量値の±10%に入る範囲は、変動係数で6.08%≒6.1%である)、全量では2%以下であることが望ましいと記載されている。しかし、6.1%は最低限の数値であり、TDMを行っている薬剤などに関しては、薬剤個々について科学的根拠に基づいた最低限度の数値を設定する必要がある。】

とある。例えば、

 Rp)ムコダインDS50% 1.2g 分3 5日分

では、6gを15包撒くわけで、分包紙の重さが1包0.3gとすれば、15包で4.5g。

まず、全量は2%以下であることが望ましいので、分包後の15包全てを量って、そこから4.5gを引いた重さが本来6gのはずが、分包紙の誤差やカセットに付着してしまったマイナス分を加味して6g±0.12gであればOKとするというのが一点。

次に、重量偏差が変動係数として6.1%以下ということで、15包のうちの90%=13.5包が平均重量(ここでは0.4g/包)の±10%の範囲内、1包あたり0.4g±0.04gであればいいということと読み取れる。

15包の重さ(分包紙の重さ含む)=10.38g~10.62gの範囲
1包の重さ(分包紙のの重さ含み、9割が満たしているとする)=0.66g~0.74gの範囲

偏差とは、平均値と測定重量との差のこと。3gが平均で量ったら2.9gしかなければ、重量偏差は0.1g。標準偏差は、この偏差をさらに弄ってばらつき度合いを示すようにしたもので、正規分布を描く時に、1包が全体のどの位置にいるか中央か端か(上位何%以内など)を示す事ができる。

配合について

酸(アスピリン、シナール、タンナルビン等)とアルカリ(重曹、SM散、カマ、アドソルビン等)は一緒に分包しない。

賦形について

通常は、1回量が0.2g以下であれば乳糖を賦形し、1回量が0.2gになるようにする。乳糖を0.2g賦形する場合もある。

ネイオフィリン、イスコチン、ガランターゼ等は乳糖ではなく、馬鈴薯澱粉を使用する。

小児への禁忌薬剤

  • トラマドール塩酸塩・・・12歳未満投与禁忌(重篤な呼吸抑制があらわれるおそれがある)
  • コデイン塩酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩・・・12歳未満投与禁忌(呼吸抑制発生のリスク)

ホクナリンテープの使い方

現在(H24年)までのGEは、アボットの結晶レジボアシステムの特許がきれていないせいで、効果こそ同等に近いものの、肌の弱い人に使用した場合の血中濃度がHTに比べて高くなるという悪い点がある。

もし、剥がれてしまった場合、剥がれたテープをそのまま貼り直すのは避ける。テープ表面に皮脂等がつき薬の吸収が悪くなるため。貼り直すなら新しいテープに替える必要がある。

貼り直すかどうかを決めるためには、剥がれるまでにどれだけ薬物が吸収されたかを検討する必要があるが、12時間未満であれば新しいものを貼り直した方がいい。

逆に12時間を超えるようなら24時間貼付時の80%以上の皮膚移行量となるため、新しいものを貼る必要はない。

メーカー的には積極的に進めてはおりませんが、ホクナリンテープは3/4等のように切って使用することもできるし、2㎎を1㎎2枚で代用することも可能。

坐薬の使用方法

坐薬は、ティッシュペーパー等で坐薬の後部をつまんで、先の尖った太い方から肛門の奥に挿入する(指の第一関節くらい)。

中腰が可能な場合は中腰で、無理な場合は横向きで寝た姿勢で、乳幼児の場合はおむつを交換する要領で両足を持ち上げ挿入後4~5秒間挿入部を抑える。

坐薬の基剤は、体温によって溶ける油脂性基剤分泌液で徐々に溶けて薬物を放出する水溶性基剤に分類される。

2種類の坐薬を併用する場合は、水溶性基剤を用いた坐薬を先に使用して、30分の間隔を空けて、油脂性基剤を用いた坐薬をいれるとよい。

基剤の種類 成分名(主な製品名)
油脂性基剤 ハードフット アセトアミノフェン(アンヒバ、アルピニー)
イブプロフェン(ユニプロン)
フェノバルビタール(ワコビタール)
水溶性基剤 マクロゴール ジアゼパム(ダイアップ)
ドンペリドン(ナウゼリン)
抱水クロラール(エスクレ))

例えば、ダイアップとアンヒバを併用する場合、水溶性基剤であるダイアップを入れて、成分であるジアゼパムが吸収され血中濃度が上昇するまでの間、少なくとも30分以上の間隔を開けてアンヒバを入れる。(同時に入れると、脂溶性のジアゼパムがアンヒバの油脂性基剤に取り込まれて、ジアゼパムの初期吸収が阻害され血中濃度が上昇しづらくなるため)

吐き気止めとしてしばしば使われる五苓散坐剤は、基剤のホスコ(一般名ウイテプゾール)が油脂性基剤のため、同じ油脂性基剤のアンヒバであれば5分程度間をあけるだけでよい。

油脂性基剤の融点は体温で溶ける必要が有るため33.5℃~39℃と低く、水溶性基剤の融点は50℃~60℃程度です。

そのため、必ずしも冷蔵庫に保存しなければならないわけではないが、薬として室温(30℃以下)保存はする必要があります。

坐薬を入れたらすぐ便として出てしまった場合は、

  • 入った直後にでた→入れなおす
  • 入れて5分くらいででた→(溶けかけて形が崩れていない場合)入れなおす。(溶けて形が崩れている場合)薬がどれくらい吸収されているかわからないため、様子を見て必要であれば入れる。
  • ほとんど溶けていた→次回の使用出来る時間まで様子を見て待つ

(参考:調剤と情報 2009.4)

熱性けいれんについて

熱性けいれんは発熱(38℃以上)により引き起こされるけいれんで、生後6カ月から5歳までの小児にもっとも頻繁に起こります。

けいれんは、熱による何らかの刺激が原因で脳神経が刺激されることが原因で引き起こされ、子供の未熟な脳においてはそれらを抑制する力が弱いために起こるとされています(wikiより)。

症状としては、白目、手足の強直と振戦、唇の色が青くなる等が上がられますが、それらは通常数秒~10分以内に収まります。

治療は、あらかじめ起こりやすいことがわかっている場合は37度以上になったらダイアップ(GABA刺激薬)を挿入。わからない場合で不安な場合は救急外来でもよいかもしれません(対処法は見てるしかないので)。

熱性けいれんを誘発させる薬剤

熱性けいれんを誘発させる薬剤としてよく知られるのが、抗ヒスタミン薬テオフィリン製剤の2つ。(因果関係がないというデータもあるみたいですが、通常は控えるように指導します)

視床下部の結節乳頭核、ここが上行性網様体賦活系として覚醒をはじめとした作用を担っているわけで、ここの大型細胞にはヒスタミン、GABA、アデノシンが含まれていて、これらはけいれんを抑制する作用を担っています。

脂溶性が高く血液脳関門容易に通過する(脳内移行性が高い=いわゆる眠気がでやすい)第一世代抗ヒスタミン薬(ペリアクチン、ポララミン、タベジール等)と一部の第二世代抗ヒスタミン薬(セルテクト、ザジテン等)はここのH1受容体をブロックしやすいため、テオフィリンもアデノシンA1受容体拮抗作用を有するため、結果としてけいれん抑制作用が弱まってしまい、熱性けいれんのリスクが高まるという説が有力。

第二世代の抗ヒスタミン薬で添付文書上熱性けいれんに慎重投与なのはザジテンのみ、重大な副作用に痙攣の記載があるのはジルテック、ザイザル、クラリチン、インタビューフォームで過量投与で痙攣と記載があるのはセルテクト。なので、常用量で不可なのは第一世代とザジテンとしておけばいいのかなと思います。

これ以外にも、オゼックスやオラペネムのような抗生剤の内服でも熱性けいれんが誘発される可能性もあるため、注意が必要です。

小児への解熱鎮痛薬の使用

小児(15歳未満)のインフルエンザと水痘の発熱には

  • ポンタール(メフェナム酸)
  • ボルタレン(ジクロフェナクNa)
  • サリチル酸系(アスピリン、バファリン、エテンザミド、PL顆粒等)

の解熱鎮痛薬は、インフルエンザ脳症を引き起こす可能性があるため原則禁忌です。(フェニル酢酸系消炎鎮痛剤使用に関する緊急安全情報より)

とはいえ、上記以外、アセトアミノフェンを除くすべてのNSAIDsはインフルエンザと水痘には極力用いるべきではありません。

インフルエンザ脳症

インフルエンザ脳症とは、感染に伴う発熱後、急速に神経障害・意識障害を伴う症候であり、病型が急性壊死性脳症、ライ症候群、HSE症候群等に分類されている。

そのうち有名なのが、急性壊死性脳症とライ症候群です。

急性壊死性脳症は、主としてA型インフルエンザ(特にA香港型)の発熱により引き起こされ、発熱から平均1~4日後に発症する。嘔吐や下痢、けいれんから意識障害を経て、死亡することもある。

ライ症候群は、主としてB型インフルエンザor水痘の発熱により引き起こされ、発熱から5~7日後に発症する。嘔吐、けいれん(急性脳浮腫)から意識障害を経て、これも死亡することがある。

サリチル酸がミトコンドリアの働きを抑制することで、エネルギー代謝が抑制されて引き起こされると考えられている。

吸入薬とスペーサーについて

喘息ガイドラインより、発作時使用は1時間に20分間隔(1日3回まで)。ダメなら受診。

薄める液は、「精製水・生理食塩液・注射用水」どれでも可。大塚生食注は1本20ml。

配合により保存できる期間は5週まで。薄め方はネブライザーの最小使用液量以上なら原液でも可。

ネブライザー(一般医療機器or管理医療機器)はジェット式、超音波式、メッシュ式があり、価格は約3万~6万円程度。通常小児科でレンタルする。

ベネトリン吸入液0.5%  0.3ml
ビソルボン吸入液0.2%  0.5ml
生理食塩液     0.2ml
・・・1回1ml(回数指示)   40回分

上記例では、1回量が1mlと多いので、特に問題ない。薄めることで効果減弱はないが、吸入時間はアップする。

ちなみに、吸入補助器具(スペーサー:デュオペーサーやインスパイアイース等)の無料配布はH24.3月末だったか?エビデンスの問題にて中止されています。今後は有償のものを購入してもらうことになります。

おすすめサイト

散剤と服用補助食品の飲み合わせ

  • 1歳まで・・・スポイトで少量ずつ口腔内へ。お薬団子を頬の内側や上顎に塗布。水に溶かす。食品と混合。
  • 3~4歳・・・味のある飲料で。オブラートに包んで。
  • 4~5歳・・・薬を飲むことの重要性を理解してもらう
  • 5歳~・・・小さい錠剤を試していく

散剤と服用補助食品の飲み合わせ一覧表(日経DIのサイト)もおすすめ。

シロップ剤の配合変化表

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関連リンク

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