男性型脱毛症(AGA)
男性型脱毛症(AGA:Androgenetic Alopecia)のメカニズムとその治療について簡単に解説。
男性ホルモン(アンドロゲン)
男性ホルモン(アンドロゲン)は以下の4つがよく知られている。
- AD(androstenedione)・・・副腎皮質で産生
- DHEA(dehydroepiandrosterone)・・・副腎皮質で産生
- DHEAS(dehydroepiandrosterone sulfate)・・・副腎皮質で産生
- T(テストステロン)・・・副腎皮質で5%、精巣で95%産生
副腎皮質からの産生は視床下部からのCRH→下垂体前葉からのACTHによってコントロールされ、精巣からの産生は視床下部からのGn-RH→L下垂体前葉からのLHによってコントロールされている。
うち、テストステロンは5α還元酵素によって活性型のDHT(ジヒドロテストステロン)に代謝される。DHTはTよりもアンドロゲン受容体への結合親和性が高く、Tの作用に加えて、脱毛、前立腺肥大等の作用がある。
男性型脱毛症(AGA)のメカニズム
AGAとは毛周期(正常:3~4ヶ月の休止期、2~6年の成長期、2週間の退行期)における成長期が短くなって、徐々に軟毛化していき、毛がなくなってしまう減少。

平均の髪の毛の本数は約10万本と言われ、その内の約9割は成長期、残りが休止期か退行期のどちらかに入っていると考えられる。
退行期では毛球が退縮し、毛根が浅い位置へと移動してくる。休止期では毛乳頭は萎縮し、やがて脱毛する。休止期が終わると成長期へと移行し、毛乳頭は再度テストステロンによって活性化→VEGF、FGF-5S、IGF-1、KGF(FGF-7)、FGF-10等の細胞成長因子を放出→毛根近くのバルジ領域の幹細胞が刺激され、新しい毛母細胞が作られる(毛母細胞の増殖)とされる。
成長期が終わるころには毛乳頭から毛母細胞にTGF-β、FGF-5、thrombospondin、neurotrophine-3、neurotrophine-4(NT-4)らによるアポトーシス誘導が促され、退行期へと移行する。
毛乳頭細胞にはテストステロンレセプターが存在し、テストステロンを活性型のDHTに変える酵素:5α還元酵素が存在している。
DHTによる脱毛促進の機序としては、副腎皮質や精巣にて産生された血液中のテストステロンが毛乳頭細胞へ達すると、5α還元酵素によりDHT(ジヒドロテストステロン)に変換される。DHTは毛乳頭細胞からのTGF-β等の産生を促し、毛母細胞アポトーシス誘導引き起こした結果、脱毛が起こるとされている。


DHTによる前立腺肥大の機序は十分解明されていないとのこと(アボルブ能書より)。前立腺には5α還元酵素Ⅰ型及びⅡ型が存在し、DHT濃度を低下させることにより前立腺容積が減少する。
男性型脱毛症(AGA)と遺伝
AGAには遺伝が深く関わっている。
テストステロンとDHTの受容体は同じ受容体で、受容体結合能がDHTの方が高いため、DHTが多ければ多いほど受容体をDHTに奪われて薄毛になりやすくなる。
アンドロゲン受容体が遺伝的に多ければDHTが結合しやすくなるので薄毛になりやすい。
このアンドロゲン受容体はX染色体に存在しているみたいで、X染色体が母親から、Y染色体が父親から継承されるので、母方の祖父の影響を受けやすいとされる(隔世遺伝)。
テストステロンをDHTに変換するのが5α還元酵素ですから、この5α還元酵素の活性が高くなる遺伝子をもっていると薄毛になりやすくなるといえる。5α還元酵素は、M部分とか頭頂部部分の毛乳頭に多く存在し、後頭部にはほとんど存在していない。
5α還元酵素の活性は優性遺伝なので、母親と父親で活性が高い方を受け継ぐ。そのため、母方のみではなく父方の方にも注意する必要がある。
男性型脱毛症診療ガイドライン
ガイドラインによると、
- A:行うよう強く勧められる
- B:行うよう勧められる
- C1:行うことを考慮してもよいが、十分な根拠が無い
- C2:根拠が無いので勧められない
- D:行わないよう勧められる
内容 | 推奨度 | 特徴 |
---|---|---|
ミノキシジル外用液 (リアップ等) |
男性:A 女性:A |
血流促進、各種GF増加、毛母細胞アポトーシス抑制 |
ミノキシジル内服 (ロニテン等) |
- | |
L-リシン | - | 必須アミノ酸。ミノキシジルの吸収UP |
塩化カルプロニウム (フロジン等) |
C1 | 血管拡張・血流促進(コリン刺激) |
フィナステリド (プロペシア等) |
男性:A 女性:D |
5α還元酵素Ⅱ型阻害 |
デュタステリド (ザガーロ、アボルブ等) |
- | 5α還元酵素Ⅰ型、Ⅱ型阻害 |
自毛植毛 | B | 後頭部の自毛を植毛 |
人工植毛 | D | 化学繊維の人工毛を植毛 |
t-フラバノン (サクセス等) |
C1 | TGF-β抑制 |
ニコチン酸アミド (サクセス等) |
- | 血行促進 |
アデノシン | C1 | 血行促進 |
サイトプリン ペンタデカン |
C1 | GF(BMP、エフリン)増加 |
セファランチン | C2 | 血行促進・抗アレルギー |
ケトコナゾール | C1 | 抗真菌・5α還元酵素阻害 |
※GF(GlowthFactor:成長因子)、BMP(Bone Morphogenic Protein:骨形成因子)、エフリン(Ephrin:血管形成)
こちらのサイトによると、ミノキシジルの発毛機序は、ミノキシジルが血管平滑筋細胞膜等に存在するsulfonylureareceptor(SUR)を結合、活性化して、
- 血管平滑筋ATP感受性Kチャネル開放による毛組織血流改善
- 毛乳頭細胞からのVEGF、IGF-1等の細胞成長因子の産生促進。毛包のHGF発現を促進する
- アポトーシスに関与するミトコンドリアATP感受性Kチャネルを開放し、TGF-β等による毛母細胞アポトーシスを抑制
のいずれかを誘起し,成長期期間を延長して,矮小化毛包を改善するとされる。
フィナステリドとデュタステリドは毛乳頭の5α還元酵素を阻害してDHTの生成を抑制して脱毛を抑制する。フィナステリドはⅡ型のみ、デュタステリドはⅠ型とⅡ型両方を阻害するので脱毛目的だけならフィナステリドがいいのか。また、DHTがなくなっても、テストステロンが減るわけではないため筋肉量の低下等は引き起こさない。
アデノシンはアデノシン受容体に結合し、ACを活性化して血管を拡張する。
自毛植毛では血管とくっついている毛乳頭ごと、自分の後頭部から剥げているところに移植するという手術。
AGAの具体的な治療方法
毛乳頭があれば毛母細胞が作られ、髪は生えてくる。
毛乳頭が完全に死滅してしまったら、血行を良くしようが育毛剤を使おうが何をしようが髪は絶対に生えてこない。
逆に産毛や細毛が見えている場合、毛乳頭は萎縮しているもののまだ生きているので、ストレスを軽減させたり、マッサージして血行を改善して毛乳頭の活動を高めたり、フィナステリドやミノキシジルで成長期の延長や早期アポトーシスの抑制をしてあげれば、ある程度力強い毛が生えてくる可能性がある。
AGAのヘアサイクルが約1年として、産毛が完全に抜け落ちて、再度新しい髪が産生されてそれが伸びるには最低2年は要するのだろう。1ヶ月だけケアとかではなく、長期にわたるケアが必要であると思われる。
ミノキシジルの使用
日本で認可されているのは外用剤(リアップ)のみで、X5の価格は約8000円と非常に高価である。

外用剤は内服に比べると吸収率が低いのと、肌の弱い人には刺激になりやすいのがデメリット。
内服は海外輸入品を使用すると良い。実際に都内のクリニックでも海外品を販売している。
内服は外用剤に比べて効果は高いものの、全身の毛に作用するので、腕とかすね毛が高率で長くなるため、毛深くなりたくない人にはおすすめしない。必須アミノ酸のリシンを一緒に取ることで効果が高まるとされる。
2.5mg、5mgと10mgの規格があるが通常は10mgを1日1回服用する。血圧が下がる効果があるため、血圧が過度に下がりすぎた場合は5mgか。
(Lloyd)ミノキシジルタブレット10mg(MinoxidilTablets)
海外にはリアップX5と同等品であるミノキシジル5%どころか、7%、15%なんてものもある。
フィナステリドの使用
0.2mgと1mgの規格があり、通常は1mgを1日1回服用する。
MSDのプロペシアは1錠250円もするので、30日で7500円。ファイザーのジェネリックがその0.8掛けで6000円/30日。
どう考えても高いので、海外輸入品を通常購入することになる。30錠と100錠がある。100錠のほうが断然お得だ。
フィンペシア(Finpecia)1mg キノリンイエローフリー新タイプ
ミノキシジルとセット購入がお得。(下記はほんの一例でシャンプーとかローションまでセットになったものも多数あり)
フィンペシア(キノリンイエローフリー新タイプ)1mg100錠 + ミノキシジルタブレット(Noxidil)5mg100錠
デュタステリドの使用
日本では前立腺肥大症の適応しか無いアボルブ(デュタステリド)だって海外輸入品を購入可能だ。
塩化カルプロニウムの使用
アロビックスも購入可能。
精子について(番外編)
男性型脱毛症の内服治療薬であるプロペシア等を服用した際に、精子に影響はでるのか?と気になる人は多いのではないだろうか?
添付文書に1%未満とかであるが、睾丸痛、男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常等、勃起機能不全、射精障害、精液量減少とある。
自分もかれこれ上記のフィンペシアをすでに1年飲んでいるので、どうなっているか気になり調べてみようと思った。
- 光学顕微鏡を購入する
- 産婦人科に行って調べる(結婚してないとできない?)
- 外部業者に提出して調べてもらう
とかの選択肢がある。
んでもって探してみると、顕微鏡は安いといいものがないし、外部委託もレビューで結果が戻ってこないなどがあり心配と、探しているうちに、元気チェッカーなるものを発見した。
この価格で600倍でみれれば十分安い。
4回みれるようの透明シールも、ぶっちゃけサランラップでもいけそうだし、レンズは何度でも使用可能だから一個買えば結構長持ちするかと。

使用方法は説明書を見えるだけで事足りる。検体の精子は粘着部にくっついて以外に落ちてこない。

そのまま覗いても見えるんだけど、穴が小さくて見づらい。
おすすめは、天井の蛍光灯を向きながら携帯のカメラ部分を接着させて動画撮影すること。拡大で見れるのでいい。
手がプルプルしていてよくわからないかもだけど、とりあえず精子は生きているので薬は飲んで大丈夫そうだ。心配な方は確認してくれ。
自毛植毛について(体験記)
自毛植毛1回目(新宿ノアクリニックにて)
薄毛はもともと気になっていたが、いよいよ対処しないとならないレベルに達したため、ミノ、フィナにつづいて推奨度Bの自毛植毛を試しにしてみることにした。
なぜ自毛植毛か?効果があるかないかわからないこと(リーブ21、ハーグ療法、育毛剤etc...)に時間を使うのがめんどくさかったため。
30超えると進行スピードがかなり増すようで、遺伝的になることがわかっている場合は、30超えたら早めに対処しておくことをおすすめする。

とりあえず5年前に戻すことを目標に見積もり(新宿ノアクリニック(現在閉院)にて)。
1株800円(1本ではなく1株としているのは1つの毛穴から何本かでていることがあるため)で、1000株(80万円+消費税)をM字部分に割りかし高密度で植えることにした。
後頭部からFUE法にて採取した毛根を前に移植するため、沢山移植すると後頭部が薄くなってしまうし、低密度で広範囲植えると他の部分とバランスが悪くなってしまうことを懸念してこのような感じになった。
後頭部刈り上げはクリニックでしてくれるんだけど、一部分の長方形部分だけ刈り上げるみたいなんで、自分で広範囲バリカンで刈り上げました。3mmでは長いとのことで1mm程度に。何もつけないバリカンで刈り上げる。
手術当日からの流れは以下。
-
当日平成27年9月10日AM10時50分クリニックへ。手術の説明と内容詳細(どこに植えるか)確認、同意書へのサイン、そして支払い。
- 11:50~手術開始。最初に安定剤みたいな?麻酔の効きを良くする注射をしてから、後頭部に複数箇所麻酔(キシロカイン)。麻酔は飛び上がるほどの痛みではない。その後の採取は麻酔が効いているので全く痛くはない。この時好きな音楽を流してくれる。
- 14:00過ぎくらいかな?(時間不明)採取終了し、そのまま植え込みへ。食事休憩をとってもいいがめんどいのでそのまま続行。
- 左右の眉間部分に麻酔を打ち、好きなビデオを見ながら植え込みスタート。あんまり麻酔を打つとむくむのがやなので弱めにうってもらいました。そしたら最後の100本で激痛に耐えれず、ちょこっとだけ再度注入。最後に包帯を巻いてオペは終わり。
- 16:07終了、頼んでいた昼食(無料)を食べて、アンケートを書いて、痛み止めとか抗生剤をもらって、無料でくれるニット帽をかぶりクリニックが予約しておいてくれたビジネスホテルへ。
- 当日は安静が必要とのことで、だらだらホテルで過ごし、飯はコンビニで済ます。枕は低いほうがいいとのことで枕なし、もらったアイスノンを付け就寝。
- 翌日7:00頃起床→ベッドの頭部分が血だらけになっていることにびっくり。。。ビニール袋でもかぶって寝ればよかったと思いました。。。
- 10:00にクリニックへ、包帯を取ってからアルコール綿で血糊を拭きとってもらい、包帯は再度巻き直し。ホテル代・電車代・健康診断代は出してくれるとのことで精算。そのまま電車で帰宅。
- 14:00~仕事へ。どうしたのと聞かれるが、ヤンチャしました^^;で乗り切る。帰ってきてから包帯をとったらこんな感じ(手術翌日の様子)。
- コノ後は、術後3日までは運動・アルコール禁止。術後1週間までは軽い運動のみ・移植部分は泡で洗髪。術後1週間~指でこすっての洗髪OK、かさぶたは無理に取らない・運動は適度にOK。術後2週間~ハードな運動OK・洗髪はいつもどおりで、この頃から移植した毛が抜け始めるのでなるべく全部抜く。
自毛植毛2回目(新宿親和クリニックにて)
1回目の植毛からおおよそ半年後の写真が以下である。

左右の凹み具合が違うのは姿勢が悪く骨格が曲がっているせいもあるのでしゃあないとしても、左右の移植部分と元からある部分のつなぎ目が結構開いているのが気になる。
移植から半年しか経過しておらず、その間フィンペシア1mgを毎日服用しているので、その短期間に間が開いたわけではない。
これらが気になってしょうがないため、約半年後の平成28年2月27日に2回目の手術を親和クリニックにて決行することにした。
ノアクリニックとの違いは、
- カウンセリング他:カウンセラーの対応は互角でどちらの対応もGood。
- 料金:ノアが1株800円、基本料0円。親和が1株700円、基本料20万円。どちらもキャンペーン適用時の比較なので安いと思うが、それでもノアは激安だった。交通費(電車代)はノアは無料、親和は全額自己負担。採血代とホテル代はどちらも無料。術後の軽食はどちらもでる。術後にアイスノンくれたのはノアのみ。二日目の帰りに包帯を渡されたのはノア、親和は帰り洗髪してくれたが包帯はなし。
- 人員:医師の人数がノア1名に対して、親和3,4名、看護師の数も事務の数も多いのでスピーディなオペができる。オペ時間は10時~14時の4時間でノアよりは早い。
- 麻酔:麻酔の方法は同じ。抗生剤の点滴打ちながら、セルシンみたいな安定剤を筋注、眉上4箇所に麻酔。親和のほうが量が多いのか腕がいいのかわからないが、痛みは最後まで全く無かった。ノアは途中で切れて再度打ちなおした。
- 仕上がり:親和のほうがノアより仕上がりは良いと思う。痛み出血とも少なく、早いし親和のほうが腕は良いのかもしれない。
のような感じ。
今回は1回目で気になった左右の隙間を埋めつつ、角度をなくし、全体的に下にずらしたため、1400株移植することになった。(700×1400+20万+消費税)

移植後は以下の様な感じ。






経過(まとめ)

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