目次
下痢・IBSの薬一覧
分類 | 成分名 | 商品名 | 規格・剤形・補足 |
---|---|---|---|
アヘンアルカロイド | ロペラミド | ロペミン | 錠1㎎ |
トリメブチン | 錠1㎎、下痢関連適応:IBSのみ | ||
5-HT3受容体遮断薬 | ラモセトロン | イリボー | 錠2.5μg/5μg、OD錠2.5μg/5μg、適応:下痢型IBSのみ、男性最高1日10μg、女性最高1日5μg |
抗コリン薬 | メペンゾラート | 錠7.5mg、適応:IBSのみ | |
メペンゾラート・フェノバルビタール | 販売中止。配合錠、適応:IBSのみ、フェノバールは鎮静作用 | ||
チメピジウム | チアトン | Cap5mg/10mg、適応IBSのみ | |
ブチルスコポラミン | ブスコパン | 錠10㎎、下痢関連適応:機能性下痢 | |
収斂薬 | タンニン酸アルブミン | タンニン酸アルブミン | 末 |
ビスマス製剤 | 次硝酸ビスマス | 末 | |
次没食子酸ビスマス | 末 | ||
吸着薬 | 天然ケイ酸アルミニウム | アドソルビン | 原末、原料不足で出荷停止中 |
殺菌薬 | ベルベリン | キョウベリン | 錠100mg |
ベルベリン・ゲンノショウコ | フェロベリン | 配合錠 | |
IBS治療薬 | ポリカルボフィルCa | コロネル ポリフル |
細粒83.3%、錠500mg、IBSにおける下痢・便秘の適応 |
乳酸菌製剤 | |||
潰瘍性大腸炎(IBD)治療薬 |
OS-1やポカリスエットについては別ページ参照。
下痢・IBSの薬の作用点
腸管の神経は、内在性神経及び外来性神経(副交感神経と交感神経)によって制御されている。
交感神経は、胸髄下部と腰髄上部の中間外側核から節前線維を伸ばし、胃と小腸は腹腔神経節で、結腸は上腸間膜神経節で、直腸は下腸間膜神経節で節後線維にニューロンを交代し、対象の臓器の副交感神経終末節前線維に対して抑制をかけることで、消化管運動を抑制する。
副交感神経は、消化器系では迷走神経がその働きを担う。遠心性の迷走神経は延髄の迷走神経背側運動核から節前線維を線維を伸ばし、腸管壁内のアウエルバッハ神経叢の介在ニューロンを節後線維としてニューロンを交代して運動ニューロンに接続、消化管運動を亢進する。消化管粘膜からの刺激を求心性の迷走神経が脊髄後根神経節や延髄孤束核へと受け渡し、それらを大脳皮質感覚野へと伝える。
詳しくは、腸神経系を参照。
アヘンアルカロイド
オピオイド受容体は腸管壁内に存在している。μ受容体は、副交感神経細胞体、副交感神経終末、交感神経終末に存在するため、消化管運動の促進作用と抑制作用の2面性を有している。κ受容体は副交感神経終末に存在する。
- ロペミン(ロペラミド)・・・適応:下痢症。腸管壁内の副交感神経終末のμ受容体を刺激してAchの放出を抑制する。
- セレキノン(トリメブチン)・・・適応:①慢性胃炎における消化器症状(腹部疼痛、悪心、あい気、腹部膨満感)、②過敏性腸症候群(便秘型・下痢型・交替型問わず)。
運動亢進状態にある腸管では,副交感神経終末にあるオピオイドμ及びκ受容体に作用して,アセチルコリン遊離を抑制し,消化管運動を抑制する。一方,運動低下状態にある腸管では,交感神経終末にあるμ受容体に作用してノルアドレナリン遊離を抑制する。その結果,副交感神経終末からのアセチルコリン遊離が増加し,消化管運動を亢進する。
また、平滑筋細胞において,弛緩した細胞に対しては,Kチャネルの抑制に基づく脱分極作用により細胞の興奮性を高め,一方,細胞の興奮性に応じて Ca チャネルを抑制することで過剰な収縮を抑制することが推測される。
5-HT3受容体遮断薬
5HT3受容体は、迷走神経(副交感神経)や腸管神経叢等の神経節や、内在性知覚神経終末、CTZ、嘔吐中枢に存在する。
迷走神経節の5HT3受容体が刺激されるとAch等の神経伝達物質が分泌され、輸送機能の亢進・水分輸送異常が起こり下痢が引き起こされる。腸管の内在知覚神経終末の5HT3受容体が刺激されると、求心性迷走神経を介して大脳皮質へと投射され、腹痛や内蔵知覚過敏が引き起こされる。
- イリボー(ラモセトロン)・・・適応:IBS(下痢型過敏性腸症候群)。男性と女性で用量が異なるので注意。
なかでも下痢が優位な下痢型IBSに。下痢型IBSは主としてストレス等に起因して引き起こされる下痢症状で、月に2回以上下痢を繰り返し、いつも腹痛や腹部不快感があり、急な腹痛や下痢でトイレに駆け込むことがあるなどの症状を有する。
抗コリン薬
腸管壁内のムスカリン受容体を遮断して腸管運動を抑制する。
- トランコロン(メペンゾラート)・・・適応:過敏性大腸症=過敏性腸症候群。トランコロンP配合錠はフェノバルビタールとの配合剤。上部消化管に対するよりも下部消化管に対してより選択的。
- チアトン(チキジウム)・・・適応:過敏性大腸症候群。上部消化管に対するよりも下部消化管に対してより選択的。
- ブスコパン(ブチルスコポラミン)・・・下痢関連適応:機能性下痢
過敏性腸症候群治療薬
- ポリフル、コロネル(ポリカルボフィルCa)・・・腸内にてゲル化し→便中の水分を調節することで便秘・下痢を改善する。胃酸によりCaが離脱して作用を示すため、必ず食後に服用。コップ一杯の多めの水で服用する。
収斂薬
収れんとは引き締めるという意味で、タンニン酸のフェノール基は、アルブミンや腸管粘膜のタンパク質のアミノ基と結合して不溶性の複合体を形成する。
以上のことより、タンニン酸アルブミンは腸内で徐々に分解されてタンニン酸を遊離し、遊離されたタンニン酸により粘膜表面がコーティングされてバリアの形成と細胞の表面や間質のタンパク質が変性し、収縮する。
この収縮により微小血管が収縮し、血流が減少、浮腫や発赤が抑えられる。
タンニン酸ベルベリンはタンニン酸の作用とベルベリンの殺菌作用があるので、感染性下痢に使用するといい。
- タンニン酸アルブミン(タンニン酸アルブミン)・・・適応:下痢症。腸粘膜のタンパク質と結合し被膜を形成し、分泌と刺激を抑制することで止瀉作用を示す。鉄剤とは併用禁忌。牛乳アレルギー、細菌性下痢に禁忌
殺菌薬
- フェロベリン(ベルベリン・ゲンノショウコエキス)・・・適応:下痢症。ベルベリンは主として殺菌作用、蠕動抑制作用、胆汁分泌作用を示し(機序不明)、ゲンノショウコエキス中に含まれるタンニンはタンナルビンと同じ作用にて収れん作用を示す。
ベルベリンと似た名前でいつもこんがらがるパパベリンは、アストフィリン(気管支拡張)やストミン(内耳血流↑)に含有しているが、PDE阻害→cAMP↑による平滑筋弛緩作用により鎮痙作用を示すとともに、血管拡張作用ある。
そのため、適応は胃炎,胆道(胆管・胆のう)系疾患に伴う内臓平滑筋の痙れん症状以外に、脳動脈硬化症の随伴症状,急性動脈塞栓,末梢循環障害,冠循環障害による血管拡張と症状の改善作用がある。
吸着薬
腸内のガスや細菌などの有害物を吸着して粘膜への刺激を和らげ、止瀉作用を示す。
アドソルビン(天然ケイ酸Al)・・・経過措置R8.3。適応:下痢症。
乳酸菌製剤
乳酸菌製剤のページを参照
潰瘍性大腸炎(IBD)治療薬
下痢について
下痢の病理
下痢とは1日の糞便中の水分量が200ml以上に増加し、水様の便を排泄する状態を言う。
ストレス刺激は、室傍核からCRHを分泌させて、それがCRH1型受容体に結合すると下部消化管(結腸)の機能が亢進する。これが過敏性腸症候群(下痢型IBS)による下痢症状の原因。
一方、CRHがCRH2型受容体に結合した場合は、上部消化管(胃や十二指腸)の機能が抑制される。これが機能性ディスペプシアの原因。
下痢の治療法
軽症には乳酸菌製剤、抗コリン薬が用いられる。
中等度以上には乳酸菌製剤に加えて、収斂薬、吸着薬、ロペラミドを併用する。
下痢も本来有害物質を排除するための自己防御反応なので、できる限り無理に下痢を止めないようにする。
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