潰瘍性大腸炎(IBD)とクローン病の薬一覧

分類 成分名 商品名 規格・剤形・補足
5-ASA サラゾスルファピリジン サラゾピリン 錠500mg、坐剤500mg、潰瘍性大腸炎
メサラジン ペンタサ 顆粒94%、錠250mg/500mg、注射液、坐剤、潰瘍性大腸炎(重症除く)、内服のみクローン病適応も有
メサラジン 顆粒50%、錠250mg/500mg、注腸、内服のみクローン病適応も有
アサコール 錠400mg、潰瘍性大腸炎(重症除く)
リアルダ 錠1200mg、冷所保存、潰瘍性大腸炎(重症除く)
ステロイド プレドニゾロン プレドニゾロン 散1%、錠1㎎/2.5mg/5mg
プレドニン 錠5mg
プレドネマ 注腸60mL
ベタメタゾン リンデロン 散0.1%、錠0.5mg、シロップ、注、懸濁注、坐剤0.5mg/1mg
ステロネマ 注腸50mL/100mL
ブデソニド コレチメント 錠9mg、活動期潰瘍性大腸炎(重症除く)
ゼンタコート Cap3㎎、軽症~中等度のクローン病のみ
レクタブル 注腸フォーム、潰瘍性大腸炎(重症除く)
ヒドロコルチゾン ソル・コーテフ 注射、静注
プリン代謝拮抗薬 アザチオプリン イムラン
アザニン
錠50㎎、ステロイド依存性のクローン病or潰瘍性大腸炎の寛解導入及び寛解維持
カルシニューリン阻害薬 タクロリムス プログラフ 錠0.5mg;1mg/1.5mg/2mg/3mg/5mg、Cap0.5mg/1mg/5mg、ステロイド依存・抵抗性の活動期潰瘍性大腸炎(中等度~重症のみ)、グラセプターは移植の適応のみ
α4インテグリン遮断薬 カロテグラスト カログラ 錠120mg、中等症の潰瘍性大腸炎(5-ASA効果不十分な場合)
JAK阻害薬 ゼルヤンツ トファシチニブ 錠5㎎、中等度~重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法
生物学的製剤(抗TNF-α製剤) インフリキシマブ レミケード 点滴静注、中等度~のクローン病or潰瘍性大腸炎
アダリムマブ ヒュミラ 皮下注シリンジ/ペン、中等度~のクローン病or潰瘍性大腸炎
ゴリムマブ シンポニー 皮下注シリンジ/オートインジェクター、中等度~の潰瘍性大腸炎
生物学的製剤(α4β7インテグリン阻害薬) ベドリズマブ エンタイビオ 点滴静注、中等度~のクローン病or潰瘍性大腸炎
生物学的製剤(IL-12/23阻害薬) ウステキヌマブ ステラーラ 点滴静注、皮下注、中等度~のクローン病潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とクローン病の薬の使い方

潰瘍性大腸炎(IBD)

軽症~中等度の潰瘍性大腸炎の治療では、5-ASA(ペンタサ、アサコール、サラゾピリン、リアルダ)が第一選択で、炎症が改善しない場合はステロイドを使用する(ステロイド注腸(レクタブルなど)→炎症反応が強い場合はプレドニゾロン内服、重症はプレドニゾロンの点滴静注)。

ステロイド依存性の場合は、免疫調整薬のアザチオプリン(イムラン、アザニン)等を使用し、ステロイドでも改善しない場合は、免疫抑制薬(タクロリムス等)や生物学的製剤(レミケード、シンポニー等)を使用する。

基本的に寛解維持療法は5-ASA(5-アミノアセチル酸)製剤。5-ASA製剤は抗炎症作用を持つが、正確な作用機序は不明とされる。

潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針より)

既に治療中にもかかわらず、効果不十分な活動期潰瘍性大腸炎患者の75%は直腸よりも口側に炎症が見られる「全大腸炎型(40%)」・「左側大腸炎型(35%)」であったことが報告されている。

クローン病とは

軽症~中等度のクローン病の治療では、5-ASA、経腸栄養療法が使われ、炎症反応が強い場合、ステロイドの内服や生物学的製剤が使用される。

それでも効果が不十分な場合、血液中の白血球を除去する血液成分除去療法を併用する。血液成分除去療法は白血球除去療法(LCAP:リンパ球+単球+顆粒球)と顆粒球除去療法(GCAP;単球+顆粒球)に分けられ、現在はGCAPが主流。血球成分除去の方法としては透析と同じような形で静脈血をろ過する。中等症~重症の患者に対してステロイドと併用すると6~7割の患者で寛解導入が可能になる。

維持療法は、小腸型・小腸大腸型にはメサラジン(ペンタサ)、大腸型にはサラゾピリンが主として使用される。寛解維持にエレンタールが有効である。

5-ASA(5-アミノアセチル酸)製剤

サラゾピリン(サラゾスルファピリジン)

5-ASA製剤。活動期の寛解導入と、寛解期の再燃予防に使用される。

サラゾスルファピリジンは大腸で腸内細菌によりアゾ結合が開裂して、5-ASAとスルファピリジンに分解される、

生じた5-ASAは数々の作用にて腸の炎症を抑制する。スルファピリジンによる男性不妊や薬疹に注意する。

同じ成分のアザルフィジンは関節リウマチの適応であり、潰瘍性大腸炎等に適応があるのはサラゾピリン。

クローン病に対する効果は潰瘍性大腸炎に対する効果よりは低い。

ペンタサ、アサコール、リアルダ(メサラジン)

5-ASA製剤。メサラジンは、

  • ①活性酸素種産生の抑制
  • ②活性酸素種による組織/細胞傷害の抑制
  • ③ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR-γ)活性化
  • ④核内因子κB(NF-κB)活性化の抑制
  • ⑤アラキドン酸代謝物産生の抑制
  • ⑥ホスホリパーゼD活性化
  • ⑦ロイコトリエンB4(LTB4)生合成抑制

を示し、これらの作用機序により有効性を示すと考えられている。

ペンタサは時間依存性製剤であり、小腸から大腸という広い範囲でエチルセルロース皮膜の5-ASAが広がるため、クローン病にも効果がある。

アサコールはpH依存性徐放剤(pH7以上で溶解して5-ASAを放出)であり、小腸のなかでも終末回腸~直腸を含めた大腸全域にかけて放出。

リアルダはpH依存性徐放剤であり、小腸下部(pH7付近)でpH応答性コーティングがはがれて、直腸を含めた大腸全域へメサラジンを届ける。
大腸においては、マルチマトリックスシステム(MMX)で有効成分のメサラジンが他の製剤よりもゆるやかに長く放出される。
冷所保存の理由は、高温下でリアルダの溶出性が高まるため(1週間程度であれば常温は可)
添付文書上は食後服用のものの、食事の影響はほとんどないとなっている。

メサラジン錠「トーワ」(販売中止)とメサラジン徐放錠「トーワ」は同じもの。委託されて作っている日医工が作っている工場を富山→岐阜へ移し、社名を変えた関係で名称も変えたとのこと。東和薬品には資料無し。

ステロイド

  • プレドニゾロン(プレドニン、プレドネマ)
  • ベタメタゾン(ステロネマ、リンデロン)
  • ブデソニド(コレチメント、レクタブル、ゼンタコート)
  • ヒドロコルチゾン(ソル・コーテフ)

抗炎症作用により、潰瘍性大腸炎とクローン病ともに寛解導入に使用される。

長期投与により骨粗しょう症等の副作用が出る恐れがあるため注意する。
直腸に対してはレクタブルやプレドネマなどの外用剤が使用されいたが、 コレチメントはリアルダの技術(MMX:multi matrix system)を使って、腸溶性徐放錠(pH応答性コーティングにより小腸下部で溶解)にすることで、有効成分が直腸を含めた大腸全体で持続的に放出されるように設計されている。1日1回朝服用。8週間で効果判定。禁忌薬剤はミニリンメルト。

免疫調整薬

  • アザチオプリン(イムラン、アザニン)

寛解期の再燃予防に使用される。アロプリノールやフェブキソスタットとの併用で6-MPの血中濃度が上昇し、骨髄抑制が起きる可能性(禁忌)があるため注意。

免疫抑制薬

  • タクロリムス(プログラフ)

ステロイドが効かない重症潰瘍性大腸炎に使用。タクロリムスはクローン病には適応外。

α4インテグリン遮断薬

  • カロテグラスト(カログラ)・・・腸に炎症が残っている活動期にのみ使用。血中濃度維持のため1回8錠を1日3回服用。飲み忘れたら1回分飛ばす。
    血管内のリンパ球、単球が炎症が起こっている部位付近での大腸への遊走を抑制する。炎症時には大腸近くの血管にはVCAM-1/MAdCAM-1が、リンパ球や単球にはα4インテグリンが発現し、大腸での炎症反応が進みやすい状態となっているが、カログラはリンパ球や単球側のα4インテグリンをブロックすることで炎症を鎮める。
    服用期間は最長6か月まで。服用期間が長くなるに伴い、免疫機能低下によって多くの人の体の中に存在しているJCウイルスが脳の中で活性化して進行性多巣性白質脳症(PML)という様々な神経症状(けいれん、しゃべりにくい、手足のまひ、意識の低下、物忘れ)を引き起こす病気を発症する恐れがある。そのため、6か月服用後は8週間以上休薬し免疫機能が回復してから再度服薬する。また、便意を催しやすくなるのが難点。
    ミダゾラム、アトルアスタチン併用でそれらの薬剤の作用増強、リファンピシン併用でカログラの作用増強。

JAK阻害薬

  • トファシチニブ(ゼルヤンツ)・・・JAK1・3阻害、帯状疱疹に注意
  • ウパダシチニブ(リンヴォック)・・・JAK1・2・3及びTyk2酵素活性を阻害

サイトカインのシグナル伝達を抑制する薬。

ステロイドの効果が不十分、免疫調整役や生物学的製剤が無効な症例に有効。血栓症や帯状疱疹に注意。

生物学的製剤

いずれの薬剤についても免疫を抑制する薬剤のため、感染症には十分注意すること。また妊婦には有益性が上回る場合のみの投与。

  • インフリキシマブ(レミケード)・・・抗TNF-α抗体製剤
  • アダリムマブ(ヒュミラ)・・・抗TNF-α抗体製剤
  • ゴリムマブ(シンポニー)・・・抗TNF-α抗体製剤
  • ベドリズマブ(エンタイビオ)・・・抗α4β7インテグリン抗体
  • ウステキヌマブ(ステラーラ)・・・抗IL-12/23P40抗体製剤。IL12及び IL23の p40サブユニットに結合することで、ヘルパー T 細胞の活性化を抑制する。
  • リサンキズマブ(スキリージ)・・・抗IL-23抗体製剤
  • 未発売(オザニモド)・・・スフィンゴシン1リン酸(S1P)受容体調節剤

特定のサイトカインをブロックするもの。

ステロイド抵抗(若しくは依存)の中等症~重症の症例の寛解導入に用いる。

潰瘍性大腸炎(IBD)とクローン病について

炎症性腸疾患(IBD)は、腸管粘膜に炎症が生じる疾患で、潰瘍性大腸炎とクローン病に分けることができる。

いずれも腹痛や頻回の下痢、血便等が見られる。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる炎症性疾患で、直腸から結腸全体に生じる。初期は直腸のみに炎症がある直腸炎型(2割)から始まり、左側大腸炎型(4割)→全大腸炎型(3割)と進行していく。

腹痛や頻回の下痢、血便等が見られる。

潰瘍性大腸炎の手術患者の11%弱に肺塞栓血栓症を合併する。

炎症病変が10数年続いていると大腸がんのリスクが増える。大腸がんの手術は大腸全摘後に小腸を人工肛門につなぐ。

潰瘍性大腸炎で難病医療(54)の申請が通るのは、軽症・中等度・高度とあって、中等症以上になります。

潰瘍性大腸炎の重症度

重症 中等症 軽症
1、排便回数 6回以上 重症と軽症の中間 4回以下
2、顕血便 +++ +~-
3、発熱 37.5℃以上
4、頻脈 90/分以上
5、貧血 Hb10g/dl以下
6、赤沈 30mm/時以上 正常
  • 重症:1と2、3または4、および6項目中4項目を満たすもの
  • 軽症:6項目すべてをみたすもの

クローン病

クローン病は、口腔から肛門までの消化管の全てに生じる可能性があり、主に小腸・大腸に好発する(小腸のみが3割、小腸+大腸が4割、大腸のみが3割、口腔・食道・胃・十二指腸はいずれも1%以内)。

典型的な臨床初見としては、口の中のアフタ、不整形潰瘍、縦走潰瘍、敷石像などです。

クローン病の4大症状として、潰瘍性大腸炎と共通の腹痛や頻回の下痢に加えて、発熱、体重減少がある。

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