ヘリコバクター・ピロリの原因と治療
分類 | 成分名 | 商品名 | 規格・剤形・補足 |
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除菌薬 | パリエット・サワシリン・クラリス | 販売中止。パック400(P10㎎*2+S250mg*6+K200mg*2)、パック800(P10㎎*2+S250mg*6+K200mg*4) | |
タケキャブ・アモリン・クラリス | ボノサップ | パック400(T20㎎*2+A250mg*6+K200mg*2)、パック800(T20㎎*2+A250mg*6+K200mg*4) | |
パリエット・サワシリン・フラジール | 販売中止。パック(P10㎎*2+S250mg*6+F250mg*2) | ||
タケキャブ・アモリン・フラジール | ボノピオン | パック(T20㎎*2+A250mg*6+F250mg*4) |
ヘリコバクター・ピロリは胃内に生息するグラム陰性桿菌であり、通常正常な人の胃内には存在しておりませんが、感染すると炎症反応を胃内に引き起こし、以下に羅列する疾患の要因となる。
- 萎縮性胃炎・・・大部分がヘリコバクター・ピロリに由来する。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍・・・NSAIDsが関与していない胃潰瘍・十二指腸潰瘍はヘリコバクター・ピロリ除菌によって再発が抑制される。
- 胃がん・・・除菌後の胃がん発生リスクは低下する。
- 胃MALTリンパ腫・・・MALTリンパ腫は慢性炎症により消化管、甲状腺、肺、唾液腺などのリンパ節以外の臓器(節外臓器)に形成される低悪性度リンパ腫であるが、除菌によりリンパ腫の退縮が見られる。
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)・・・ITPは血小板減少をきたす後天性血液疾患であるが、除菌によって血小板数が増加する。
- 胃過形成性ポリープ・・・除菌によって消失もしくは縮小が期待できる。
もちろん、ピロリが胃内に存在していても必ずしも上記の疾患が引き起こされるわけではないが、その予防(特に胃がんの予防)のために早い段階で除菌しておく必要がある。
ヘリコバクター・ピロリという名称は、らせん状(helical)している細菌(bacteria)、胃の幽門部(pylorus)に由来し、このピロリ菌は、胃潰瘍患者の70~80%、十二指腸潰瘍患者の90~100%で見られます。ヘリコバクターピロリの特徴は、大きく分けて以下の3点です。
- ウレアーゼ(尿素分解酵素)を分泌し、胃酸を中和。胃の中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に中和
- 鞭毛で自由に移動、胃の粘膜表面にある粘液中に存在している。胃酸の少ない粘液中へ移動する。
- 体の形を変える、環境が悪化すると、らせん状から球状に形を変えて身を守る。
ヘリコバクター・ピロリの感染経路
ヘリコバクター・ピロリは経口にて感染する。井戸水の直接摂取が減ったことから、口移し、特に小児期に感染している親や祖父母から食事を口移しされたりすることで感染するケースが多い。
経口的に進入したピロリは、強いウレアーゼ活性により強酸性の胃内で身を守り、尻尾のように長い鞭毛で胃酸の少ない粘液の中にもぐりこみます。
胃粘膜に定着して感染が成立すると、CagA(空胞化毒素)、VacAなどのサイトトキシン、アンモニアなどにより、胃粘膜が傷害されます。
また定着により、IL-1、IL-6、IL-8、TNF-αなどの炎症サイトカインが放出され、炎症反応が起こります。
ヘリコバクター・ピロリの診断・検査方法
内視鏡検査を必要とする侵襲的検査法と内視鏡検査を必要としない非侵襲的検査法がある。
うち、精度の高い除菌判定ができる検査法として、UBTとモノクロナール抗体を用いた便中抗原測定が推奨されている。
侵襲的検査法
- 迅速ウレアーゼ試験(RUT)・・・内視鏡で採取した胃生検組織を尿素を含む試薬と反応させて、発生したアンモニアによりアルカリ性と変化するかどうかを調べる試験
- 鏡検法・・・内視鏡で採取した胃生検組織を顕微鏡で調べる検査。ピロリの存在診断に加えて炎症、腸上皮化生、萎縮の程度など組織学的な診断も行うことができる。
- 培養法・・・内視鏡で採取した胃生検組織から分離培養する検査。結果の判定まで1週間ほどの時間を要する。
非侵襲的検査法
- 尿素呼気試験(UBT)・・・ウレアーゼによりCO2が呼気中に多く排出されることを利用。検査薬(13C-炭素)を用いて呼気中の13CO2の割合を測定する。
- 抗体測定法・・・血液や尿を用いて抗ヘリコバクター・ピロリ抗体を測定する検査。除菌の成否を早く知りたい場合には適さない。
- 便中ヘリコバクター・ピロリ抗原測定法・・・便中のヘリコバクター・ピロリ抗原の有無を判定する検査。簡便で感度、特異度ともに高い。
通常、除菌後6~8週で除菌判定を行う。
ヘリコバクター・ピロリの治療薬
一次除菌ではPPIとアモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤を1日2回で1週間内服する。
- PPI(タケプロン30mg分2、オメプラール20mg分2、パリエット10mg分2、ネキシウム20mg分2、タケキャブ20mg分2)
- サワシリン750mg分2
- クラリスロマイシン200mg分2 or 400mg分2
PPIは好きなものを選択できる。クラリスロマイシンは200mg分2と400mg分2で除菌率に影響がないと言われる。パック製剤としてラベキュア、ランサップ(販売中止)、ボノサップがある。
一次除菌五6-8週で除菌判定を行い、不成立の場合、二次除菌の適応となる。二次除菌ではクラリスロマイシンに変えてメトロニダゾールを使用する。
- PPI(タケプロン30mg分2、オメプラール20mg分2、パリエット10mg分2、ネキシウム20mg分2、タケキャブ20mg分2)
- サワシリン750mg分2
- フラジール250mg分2
一次除菌五6-8週で除菌判定を行い、不成立の場合、二次除菌の適応となる。二次除菌ではクラリスロマイシンに変えてメトロニダゾールを使用する。パック製剤はラベファイン、ランピオン(販売中止)、ボノピオンがある。
フラジールは飲酒により腹痛や嘔吐が生じる場合があるため、飲酒は控える。(メトロニダゾールがALDHを阻害するため)
ペニシリンアレルギーの患者については、
- PPI(タケプロン30mg分2、オメプラール20mg分2、パリエット10mg分2、ネキシウム20mg分2、タケキャブ20mg分2)
- クラリスロマイシン200mg分2 or 400mg分2
- フラジール250mg分2
または、
- PPI(タケプロン30mg分2、オメプラール20mg分2、パリエット10mg分2、ネキシウム20mg分2、タケキャブ20mg分2)
- シタフロキサシン(グレースビット)100mg分2
- フラジール250mg分2
または、
- PPI(タケプロン30mg分2、オメプラール20mg分2、パリエット10mg分2、ネキシウム20mg分2、タケキャブ20mg分2)
- ミノサイクリン250mg分2
- フラジール250mg分2
が推奨される。
二次除菌で失敗した場合の三次除菌以降は保険適用とはならないが、自費で行うことが出来る。薬の組み合わせは一次と二次とは異なる組み合わせ(上の例では抗生物質がグレースビットやミノマイ)で行う事になる。
(参考・引用:PharmaTribune2014.8)
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