高血圧の原因とメカニズム

高血圧の原因やメカニズムを知ることで、自分なりの高血圧対策を行うことができるようになります。メカニズムは少し難しいですが、簡単にいえばストレスを溜めないことが大切ですということです。

高血圧の原因

高血圧は大きく本能性高血圧(90%)と二次性高血圧(10%)に分けられます。本能性高血圧は、体質、塩分、ストレス、喫煙 などがおそらく原因となっていると思われますが、はっきりした原因はわかりません。 遺伝的要因も否定できず、高血圧の人の30~70%がそれが起因の一つとなっているとされています。血圧を規定する遺伝子(高血圧感受性遺伝子) としては、レニン-アンジオテンシン系 (ACE遺伝子のDD型、アンジオテンシノーゲンのTT型など)、β受容体、G蛋白β3サブユニット・アデュシンなどの交感神経系、食塩感受性らに関わる遺伝子 があげられるため、ACE阻害薬、ARBの投与や減塩は効果的な治療法といえる。

二次性高血圧は、腎実質性高血圧 (腎不全、腎炎、腎機能低下により糸球体ろ過量が低下することで、循環血液量が増加し血圧が上がる)が主となります。

一般に収縮期血圧が10mmHg上昇すると、脳疾患のリスクが男性で約20%、女性で約10%高まるとされる。

高血圧の診断は、基本的にはまず二次性高血圧を除外したあと、生活指導を行い、それでも適正値に戻らない場合は 薬物療法へと進みます。

  • 食塩制限 6g/日未満
  • 野菜・果物の積極的摂取
  • 体重コントロール
  • 運動療法(毎日30分を目安に)
  • 禁煙
  • 減酒

食塩の過剰摂取は、血液中の電解質量(NaCl)を増やしますので、浸透圧があがり、細胞から水を引き抜くことで血液中水分量が増えて、 血圧が上昇します。

喫煙は脈拍を上昇させ、血管を収縮し、血圧を上げます。

アルコールは少量では血管を拡張して血流をよくしますが、 大量では交感神経が興奮して逆に血圧を上昇させます。

高血圧の状態が長く続くと、

  1. 血管壁に強い圧力がかかり、この圧力に対応するために血管が次第に硬くなり、動脈硬化が進行する。
  2. 圧負荷に適応しようと心筋が厚くなって心肥大を引き起こし、冠状動脈硬化を促進する。
  3. 細い血管(脳、網膜、腎臓)が詰まり、脳梗塞などを進行させる。

高齢者は収縮期血圧のみ高く、動脈硬化が進展して大動脈壁の伸展性が低下するため、拡張期血圧はむしろ低下する傾向があります。

血圧が上がるメカニズム

血圧を上げるには血管平滑筋を収縮させる、血管平滑筋を収縮させるには交感神経を活性化させる、交感神経が活性化すると神経終末からノルアドレナリンが放出されて血管平滑筋のα受容体に結合し、PLC→IP3→CaストアからのCaの放出と、受容体刺激により惹起される電位依存性L型Caチャネルの活性化(脱分極だけでも起こる)によるCa流入が合わさってミオシン軽鎖キナーゼの活性化→リン酸化→血管平滑筋収縮(血圧上昇)という流れになる。

では交感神経を活性化させるということはどういうことか。

交感神経は広義のストレス(喫煙、生活環境、温痛覚刺激までなんでも)にて活性化される。

ストレスには、(トラウマ的な)記憶が原因で脳から直接起こるものと、肌から感じる刺激のような知覚神経を介して脳へ入力してから脳が過去の記憶と照らし合わせたりして判断するものに大別できる。

前者のように海馬→扁桃体から起こる記憶を介したストレスは、視床下部の室傍核(自律神経の高位中枢)を刺激し、脊髄神経を延髄から脊髄へと下行(脊髄下行路)して、交感神経の細胞体がある腰髄・胸髄の側角へと投射する。(なお、側角は腰髄と胸髄にのみ存在する)

脊髄

後者のような求心性の感覚刺激は、DRGの感覚受容器にて活動電位を引き起こし、その活動電位が軸索をNaチャネル開口→Na流入→脱分極→活動電位発生→Naチャネル開口・・・とドミノ倒しのように伝っていって、最終的に電位依存性N型・P/Q型Caチャネルを開口しCa2+の神経終末内への流入を起こす。(脱分極がNaチャネルを開くスイッチになっている)

流入したCa2+によって、グルタミン酸、SP(サブスタンスP)、CGRPなどの神経伝達物質が放出されて、温痛覚は脊髄後角で、触圧覚は脊髄後索を通って延髄後索核で二次ニューロンに接続、ついで視床で三次ニューロン接続し、大脳皮質感覚野へと投射され認知された後、は前者と同じ経路にて側角の交感神経の細胞体へ投射する。

感覚神経の伝達

なお、橋・延髄網様体にある血管運動中枢は反射中枢として自発的な血管収縮・拡張ではなく、反射的に調節している。

交感神経の細胞体からは節前ニューロンが伸びていて、交感神経神経節で節後ニューロンに(アセチルコリンを神経伝達物質として)接続したら、最初に述べた通り神経終末からのノルアドレナリン放出→α受容体の刺激と脱分極→電位依存性Caチャネル開口の2つの機序にて血管が収縮する。

交感神経と副交感神経
交感神経と副交感神経

高血圧の薬と電解質

カルシウムやナトリウム、カリウムを摂り過ぎると、Ca拮抗薬(血圧の薬)やNaチャネル遮断薬(不整脈薬)、Kチャネル遮断薬(不整脈薬)に影響があるのだろうか。

主としてカルシウムとナトリウムは細胞外に、カリウムは細胞内に多く存在していて、これらのイオンの細胞内外への移動が血管収縮や心筋収縮のみならず記憶の形成に至るまで様々な生理反応を引き起こす。

簡単にいえば、神経伝達には主としてNaイオンが、細胞内での生理反応の発現や神経伝達物質の放出にはCaイオンが、KイオンはNaイオンと交換で移動するから、Naイオンが神経伝達を引き起こすならKイオンは神経伝達を止める作用を担う。

何らかの原因でNaチャネルが異常開口し、Naイオンの細胞内への流入が増えれば神経の異常興奮が起こるために、てんかんになったり、不整脈(頻脈)になったりするわけで、逆にKイオンが多ければ神経が上手く働かず不整脈(徐脈)、しびれ、筋力低下が起こります。(Naの流入の遮断=活動電位の立ち上がり速度低下、Kの流出の遮断=活動電位の再分極時間延長)

CaイオンはNaイオンによる神経伝達、活動電位の発生があって初めて、Caチャネルの開口ともに細胞内へと流入して様々な効果を示します。ただし、多量のCaの流入は細胞傷害を引き起こします(例:適度な流入は記憶の形成を促すが、大量の流入はノイズを発生させ余計記憶障害を引き起こす)。

結論として、薬の作用機序は、イオンが通る穴であるチャネルを阻害するのであって、直接イオンにくっついて阻害するわけではないため、薬の作用に影響が出るということはないです。

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