腎臓の機能とレニン-アンジオテンシン系

腎臓の構造

腎臓は腎実質(皮質髄質)と腎杯腎盂により構成されていて、腎杯は腎実質から突出した腎乳頭に連絡して、腎実質で生成された尿を受ける。腎杯へ移動した尿は腎盂を通り尿管へと流れ、排泄される。

腹部大動脈から腎臓へと入った血液は、腎動脈→葉間動脈→弓状動脈→小葉間動脈→輸入細動脈→糸球体と移動し、糸球体によってろ過を受ける。ろ過を受けた血液は、輸出細動脈から毛細血管網を経由する間に動脈から静脈へと切り替わって、腎静脈→下大静脈へと流れる。糸球体を流れる血管網は全て動脈であることに注意したい。

腎臓に流れる血液をろ過する機構が、ネフロンと呼ばれ、ネフロンは腎小体(ボーマン嚢+糸球体)と尿細管から構成される。腎臓には100万個以上のネフロンが腎皮質と腎髄質をまたいで存在している。

腎皮質の糸球体で濾過された尿は原尿として尿細管へ放出されたあと数々の再吸収を受けて、集合管から腎杯→腎盂へと排泄される。

ネフロンの構造

上図の腎実質にあるオレンジ色のネフロン1本を抜き出したのが下図である。

腎小体は糸球体とそれを覆うボーマン嚢から構成され、レニンを分泌する傍糸球体細胞は輸入細動脈血管壁に、電解質や尿量を感知して傍糸球体細胞にレニン分泌の指示を送る密集斑は遠位尿細管の腎小体に最も接近する部位に存在し、傍糸球体細胞と密集班、糸球体外メサンギウム(メサンギウム細胞とは違う)を合わせて傍糸球体装置と呼ぶ。

輸入細動脈から糸球体へと入った血液は糸球体でろ過を受けて、分子量の大きなタンパク質のような分子は濾し取られて血液に乗っかり、輸出細動脈へと流れる。水や電解質(カリウムイオンとかナトリウムイオン)、糖質は濾過膜を容易に通過して原尿とともに、近位尿細管→ヘンレループ→遠位尿細管→集合管と移動する過程で血液中へ再吸収される(水は99%、電解質や糖質もほぼ100%再吸収されて血液に戻される)。

ネフロンの各部位における電解質等輸送

ネフロンにおける電解質等の移動方法には、

糸球体ろ過 分子量40000以下の物質が濾しとられる。
尿細管分泌 糸球体でろ過されなかった物質の一部が尿細管へ移動(能動輸送)
尿細管再吸収 Na、水(H2O)らが再び血管内へ戻される(能動輸送、受動輸送)

の3つがあります。

能動輸送とはエネルギー(ATP)を利用した輸送系、受動輸送とは浸透圧を利用した輸送系をさします。

能動輸送 再吸収 グルコース
ガラクトース
タンパク質
アミノ酸
ジペプチド
Naイオンとの共輸送系
受動輸送 フルクトース 促進拡散
マンノース
アラビノース
脂質
単純拡散
能動輸送 分泌
(近位)
有機アニオン 酸性薬物の分泌(プロベネシド)

近位尿細管ではH2OとCO2から水素イオンと重炭酸イオンの反応が炭酸脱水酵素の存在下で起こり、H+と交換でNa+が細胞内へと再吸収され、そのNa+はHCO3-共輸送体により血中へ分泌される。糖やアミノ酸もここで再吸収を受ける。Na/K交換機構はNa/K-ATPaseの存在下に能動的にNa+を血中へ、K+を細胞内へと移動させる。

ヘンレループ下行脚では主としてH2Oの大部分が再吸収される。上行脚ではNa/K/Cl共輸送体を介してこれらのイオンが再吸収される。

遠位尿細管では近位尿細管と同じNa/H交換機構やNa/HCO3-共輸送が存在しているが、近位尿細管とは異なり、H+はNH3とともにNH4+となって尿細管側へと排泄される。

集合管のNa/K交換機構は、アルドステロンの存在下にNa/K-ATPaseが活性化されることで活性化される。カリウム保持性利尿薬であるスピロノラクトンらはアルドステロンを阻害することでNa+の再吸収を抑制して血圧を下げるとともにK+の排泄を抑制する。 ここで交換に使用されるNa+はNa+チャネルにて尿細管側から、K+はK+チャネルにて細胞側から供給されている。

腎臓の機能

腎小体と傍糸球体装置を拡大させたのが下図である。

腎糸球体には心拍出量の約1/4の血流が流れ、血漿成分が血漿の膠質浸透圧(25mmHg)とボーマン嚢の内圧(15mmHg)に抗う形で濾過される。輸出細動脈が輸入細動脈よりも細くなっていることから、糸球体動脈の血管内圧は60mmHgと、抗う圧力の合計(40mmHg)に比して高いため、有効浸透圧約20mmHgの圧力により濾過されることになる。

糸球体血管の内皮細胞はろ過できるよう通常の血管内皮の構造と異なり、無数の穴があき、血漿成分を濾過しやすくなっているが、内皮細胞外側の基底膜が陰性荷電することで、同じく陰性荷電している蛋白アルブミンや血球成分を反発により通過させない。(ただし、腎機能障害による血管壁の損傷で穴が広がると分子量の大きい物質も容易に通過します。)

血管内皮を通過した水や電解質等の成分はさらにその外の基底膜→タコ足細胞間隙の薄いスリット膜を通過して尿細管へと濾過される。

糸球体毛細血管網同士の隙間にはメサンギウム細胞とメサンギウム細胞から産生されたメサンギウム基質が存在し、毛細血管同士を繋ぎ止めるとともに腎血流を一定に維持させるための調節を行っている。

メサンギウム細胞は糖を取り込んで糖タンパク質(フィブロネクチン等)を合成するため、糖が有り過ぎるとメサンギウム基質が異常増殖し、糸球体毛細血管を圧迫するため腎血流の悪化、いわゆる糖尿病性腎症を引き起こす。

糸球体の輸入細動脈への血圧低下すなわち腎血流量の減少や、密集班にかかるNaイオンとClイオンの負荷量の低下や、交感神経の興奮が発生すると、血管極付近の輸入細動脈の一部、膨れている傍糸球体細胞と呼ばれる部分から血管収縮物質であるレニンが放出される。

また、それ以外の腎臓の機能として、ビタミンD産生、エリスロポエチンの産生がある。

レニン-アンジオテンシン系

腎臓の生理物質で最も重要なのがレニンという物質です。レニンは腎傍糸球体装置で産生され、肝臓に存在するアンジオテンシノーゲンに作用することで、アンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに変え、アンジオテンシン変換酵素(ACE=キニナーゼⅡ)の作用によりアンジオテンシンⅡ(ATⅡ)となって、血管のAT1受容体を介した血管収縮作用と副腎のAT1受容体を介したアルドステロン分泌を示す。

アルドステロンはNa-K交換機構を活性化して、Naイオンと水を血管内へと取り込み血圧を上げ、急な血圧低下等による腎血流の減少を抑制する。

ACEは気道血管内皮、ことに毛細血管内皮に豊富に存在する。ACEは内因性生理活性物質であるSPとBKをC末端から2番目と3番目のペプチド結合間を加水分解し切断する。

したがって、ACE阻害薬は、SPとBKの分解も抑制し、気道平滑筋収縮、カプサイシン誘発咳反射亢進などSPとBKの生理活性を高めることが明らかにされている。

ACE阻害薬服用の10~20%の人に咳が生じるとされているし、それは中高年の女性に多いとされている。SPがなくなると咳が起こりにくくなる。

高齢者の腎機能

腎機能は時間当たりに糸球体でろ過される原尿の量(Glomerular filtration rate;GFR=一分間の血漿ろ過量)で表される。

日本人の腎臓の大きさは40歳以下では両側で平均320gあるが、80歳以上では平均183gへと減少すると報告されている。

糸球体内の細胞数も加齢と共に減少するが、日本人では40歳以下の137個から97個まで減少する。

加齢により腎動脈や細動脈の動脈硬化も見られ、虚血による糸球体の変化やその糸球体の輸出動脈の支配下にある尿細管の虚血性変化が認められる。虚血により尿細管機能が失われるとその周囲は線維化し、やがて尿細管のあったところは瘢痕化する。

腎臓の血流は加齢によって減少する。この原因の一つは血管拡張能の低下にあり、高齢者では心房性利尿ペプチドやアセチルコリンによる腎動脈拡張能は低下している。また、腎血管抵抗が高く、高齢者では血管拡張作用を持つPGE2の産生量も低下している。

糸球体だけでなく尿細管も加齢による影響を受けるため、水・電解質代謝も加齢と共に変化する。

加齢によりレニンアンジオテンシンアルドステロン系の活性は低下する。原因は遠位尿細管におけるアルドステロン反応性の減弱とNa保持へのRAA系の反応性の低下

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