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腎臓病(AKIとCKD)の薬
急性腎障害(AKI=Acute Kidney Injury)も慢性腎臓病(CKD=Chronic Kidney Disease)もそれ自体を治療する薬はなく、それらを引き起こす原疾患の治療薬と、腎障害により引き起こされる症状に対する治療薬がメインとなります。
AKI治療薬
急性腎障害(AKI)とはを参照
CKD治療薬(高血圧全般)
CKD患者への降圧目標はステージによらず以下。75歳以上の高血圧を伴うCKD患者にはCKD進展及び発症抑制のため診察室血圧150/90mmHg未満が推奨される。
75歳未満 | 75歳以上 | ||
---|---|---|---|
糖尿病(-) | 蛋白尿(-) | 140/90mmHg未満 | 150/90mmHg未満 |
蛋白尿(+) | 130/80mmHg未満 | ||
糖尿病(+) |
- ※尿蛋白(-)はA1区分で、尿蛋白(+)はA2,A3区分
- ※尿蛋白レベルが低い場合、尿蛋白定量よりも微量アルブミン定量の方が正確なので、微量アルブミン定量が糖尿病患者で保険適用になっている。
降圧剤の選択についてはステージよらず以下(ただしステージG4、G5の75歳以上は75歳未満と同じではなく、Ca拮抗薬が推奨→降圧不十分な場合は副作用に十分注意しながらACE阻害、ARB、利尿薬を併用する))
75歳未満 | 75歳以上 | ||
---|---|---|---|
蛋白尿(+) | 蛋白尿(-) | ||
第一選択薬 | ACE阻害薬、ARB | ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬(体液貯留)から選択 | 75歳未満と同じ |
第二選択薬(併用薬) | Ca拮抗薬(CVDハイリスク) サイアザイド利尿薬(体液貯留) |
- 降圧薬の選択は、DMの有無にかかわらず、蛋白尿の有無を参考に検討する
- 蛋白尿(+)の第三選択薬として、利尿薬またはCa拮抗薬を考慮する。
- 蛋白尿(-)の第二選択薬は、ACE阻害薬とARBの併用を除く2剤または3剤を組み合わせる
CKD治療薬(高血圧・CVD(心不全))
- ACE阻害薬/ARB・・・G4、G5においても使用を提案するが、薬物療法開始初期にeGFRが低下することが知られているため、腎機能低下(eGFR30%以上低下は紹介)やアルドステロン拮抗による高カリウム血症に十分留意する。RA系阻害薬は腎血流が低下してレニン分泌が亢進することで血圧が上がることを抑え、腎保護に働く。
- β遮断薬・・・心不全の生命予後に関してエビデンスのあるのはカルベジロール、ビソプロロール、メトプロロールの3種類のみで、ビソプロロールの消失経路として肝代謝・腎排泄ともに重要であり、腎機能高度低下例では使用量に注意する。腎保護効果に関してはいずれのβ遮断薬でも有用なエビデンスはない。
- MRA・・・高カリウム血症のリスクを勘案するとG4,G5ではMRA使用の有益性は明らかではない。益と害のバランスを考慮して使用を判断する
- SGLT2阻害薬・・・DMの有無に関わらず有益な効果が示されている。eGFR20mL/分/1.73㎡以下でのエビデンスがないので、G4までの患者を中心に積極的に使用。こちらも初期にeGFRが低下することが知られている。
- ARNI・・・心不全患者に対するエビデンスは言わずもがな。G4,G5に関してはわからないがARNIの腎保護作用の可能性に対しては報告されているため、ARBと同様に腎機能低下や高カリウム血症に注意して使用
- イバブラジン・・・G4,G5の心不全に対するイバブラジンの有用性は不明。消失経路は8割が肝臓、2割が腎臓であるので腎不全患者でも使用は可能である。
CKD治療薬(高血圧・腎硬化症・腎動脈狭窄症)
- ACE阻害薬/ARB・・・片側性腎動脈狭窄を伴うCKDに対し、RA系阻害薬は他の抗活躍に比して末期腎不全への進展及び死亡リスクを抑制する可能性があり推奨。AKI発症リスクがあるため少量より開始し血清CrとK値を確認しつつ注意深く用量を調節する。ただし両側性腎動脈狭窄が疑われる際は使用しない。
- 血行再建術は、腎障害進行抑制やCVD発症、死亡のリスクを減少させないため、一般的にはおこわないが、治療抵抗性高血圧などを伴う場合には考慮してもよい。
- 腎動脈エコーを行い、次のステップとしてMRアンギオグラフィを行う。
CKD治療薬(糖尿病関連腎臓病(DKD))
DKD(糖尿病関連腎臓病)は典型的な蛋白尿を伴う糖尿病性腎症に加え、顕性アルブミン尿を伴わないままeGFRが低下する非典型的な糖尿病関連腎疾患(腎硬化症、肥満関連腎臓病、心不全、加齢等)を含む概念である。
- 利尿薬
- サイアザイド系・・・十分なエビデンスがなく推奨されない
- ループ利尿薬・・・体液過剰が示唆される場合にのみ使用を提案。心不全を合併する場合はサムスカの有用性。
- MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)・・・尿アルブミンの改善を示す可能性があるため使用を勘案。腎保護に作用するかは不明。セララは高血圧と慢性心不全の適応、ミネブロは高血圧の適応のみ、ケレンディアは2型糖尿病を合併する慢性腎臓病の適応。
セララは微量アルブミン尿又は蛋白尿を伴うDM患者、及びCCr50mL/分未満の患者には禁忌、ミネブロは血清K値が5.0mEq/Lを超えた場合、eGFR30mL/分/1.73㎡未満が禁忌、ケレンディアは血清K値が5.5mEq/Lを超えた場合、eGFR25mL/分/1.73㎡未満ではリスクとベネフィットを考慮して慎重に投与。
- 顕性アルブミン尿を呈するDKD患者には、目標値の目安としてHbA1c7.0未満が提案。ただし、腎機能低下例では赤血球寿命の短縮やエリスロポエチン製剤の影響でHbA1cが適切な血糖値を反映しない場合がある。
- SGLT2阻害薬・・・腎機能が低下すると血糖降下作用は落ちるが、腎保護効果は維持されるため使用が推奨される。
すなわち腎保護作用は独立した機序として尿細管糸球体フィードバック機構による糸球体過剰ろ過の適正化(輸入細動脈の拡張が是正)が指摘されている。
薬物療法開始初期は糸球体内圧を低下させるため、eGFRが低下する(今まで代償機構で増加していたeGFRが内圧低下とともに正常化されたためで、腎機能は低下しない)が、その後は安定した推移をたどることが知られているが、そのeGFR低下が3か月以内に30%以上であった場合は専門医療機関へ紹介。
eGFR15ml/分/1.73㎡未満では新規に開始しない、継続投与して15mL/分/1.73㎡未満となった場合には、副作用に注意しながら継続する。
eGFR15ml/分/1.73㎡未満未満で蛋白尿無しの場合は、ベネフィットを勘案し慎重検討。蛋白尿がなく、eGFR20mL/分/1.73㎡未満での開始についてはエビデンスなし。
糖尿病非合併のCKD患者に対するSGLT2阻害薬の投与は、タンパク尿を有する場合、腎機能進展抑制及びCVDイベントと死亡の発生抑制が期待されるため投与を推奨する。
高カリウム血症治療薬
高カリウム血症を参照
腎性貧血治療薬
腎性貧血を参照
高リン血症、低カルシウム血症治療薬
尿毒症治療薬
尿毒症を参照
(参考・引用元:日経DI 2015.12、日本腎臓学会、CKDガイドライン2023、腎機能低下時に最も中の必要な薬剤投与量一覧(日本腎臓病薬物療法学会)、クレデンシャル2014.10、高リン血症(https://www.ne.jp/asahi/akira/imakura/hyperphosphatemia.htm))
関連ページ
- 腎臓の機能
- 急性腎障害(AKI)とは
- 慢性腎臓病(CKD)とステージ分類
- 腎臓病(AKIやCKD)の悪化で引き起こされる病態
- 腎臓病の人が気を付ける生活習慣
- 腎機能検査値(CCr、eGFRの計算式)
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