慢性腎臓病(CKD=Chronic Kidney Disease)

定義

  • 尿異常、画像診断、血液検査、病理診断で腎障害の存在が明らか、特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要
  • GFR<60mL/分/1.73㎡

以上2つの内のいずれか、または両方が3ヵ月を超えて持続すること。

ステージ分類

原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3
糖尿病性腎臓病 尿アルブミン定量
(mg/日)
尿アルブミン/Cr比
(mg/gCr)
正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿
30未満 30~299 300以上
高血圧性腎硬化症
腎炎
多発性嚢胞腎
移植腎
不明
その他
尿蛋白定量
(g/日)
尿蛋白/Cr比
(g/gCr)
正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿
0.15未満 0.15~0.49 0.5以上
GFR区分
(mL/分/1.73㎡)
G1 正常または高値 ≧90
G2 正常または軽度低下 60~89
G3a 軽度~中等度低下 45~59
G3b 中等度~高度低下 30~44
G4 高度低下 15~29
G5 高度低下~末期腎不全 <15

死亡、末期腎不全、CVD死亡発症のリスクを緑のステージを基準に、黄、オレンジ、赤の順にステージが上昇する。(CKDガイドラインより)

  • CCr、eGFRの計算方法
  • eGFR(mL/分/1.73㎡)重症度別症状
    • G1:≧90:自覚症状なし
    • G2:60-89:自覚症状なし、尿たんぱく、血尿
    • G3:30-59:夜間頻尿、血圧上昇、貧血、電解質異常(代謝性アシドーシス、低カルシウム結晶、高リン血症、高カリウム血症
    • G4:15-29:浮腫、尿毒症(食欲不振、悪心、嘔吐、掻痒感)
    • G5:15以下:全身浮腫、不整脈、尿毒症(痙攣、意識障害)
  • 日本の保険診療では、アルブミン尿の定量測定は、糖尿病または糖尿病性早期腎症であって微量アルブミン尿を疑う患者に対し、3か月に1回に限り認められている。顕性アルブミン尿を伴う場合は保険適用外。
  • 糖尿病において、尿定性で1+以上の明らかな尿蛋白を認める場合は尿アルブミン測定は保険で認められていないため、治療効果を評価するために定量検査を行う場合は尿蛋白定量を検討する。
  • 尿中アルブミンと尿中Cr濃度の測定を行い、尿中アルブミン/Cr比(g/gCr)を算出する。あるいは、24時間蓄尿を行い、1日当たりのアルブミンの尿中排泄量を定量する(1日の尿中Cr量を1とした場合、尿中アルブミン/Cr比と等しくなる)。
  • 血尿を伴う場合(特に赤血球の大小不同や小さい赤血球が不均一にみられる場合等)は糸球体(尿細管ではなく)に原因がある可能性があるため、腎生検を含めた検査を検討する。血尿とは尿に赤血球が混在した状態のこと。
  • CKD重症度分類ヒートマップが黄色では6-12か月に1回以上、オレンジでは3-6か月に1回以上、赤では少なくとも3か月に1回以上定期的に蛋白尿・アルブミン尿の評価を行う。
  • 蛋白尿・アルブミン尿の評価方法として、試験紙法、尿蛋白定量、尿中アルブミン定量がある。
    • 試験紙法・・・最も簡便で低侵襲な反面、試薬により数値に差が出ることや濃縮尿や希釈尿の影響を強く受けて過小評価もしくは過大評価となる可能性がある。日本においては尿蛋白(1+)では30mg/dL、尿蛋白(2+)では100㎎/dLに統一されている。
    • 尿蛋白定量・・・尿蛋白量が0.05g/gCr未満といった尿蛋白レベルが低い場合(正常~軽度)には尿中アルブミン定量に劣るが、高度蛋白尿の場合は互いに相関する。
    • 尿中アルブミン定量・・・尿蛋白レベルが低い場合に尿蛋白定量よりも正確なので、尿蛋白が±や-の糖尿病患者で保険適用になっている(-の約10%、±の約60%が微量アルブミン尿(A2)相当以上の蛋白尿であったとされているので±はA2と同等と考えてよい。ただし生活習慣病を合併していない40歳未満の若年者では±を-と同等に取り扱ってよい)。国際標準。
  • 専門医療機関紹介基準
    • G1、G2:血尿あり(A2,A3)、血尿無し(A3)
    • G3a:40歳以上(A2,A3)、40歳未満
    • G3b~G5:全て
    • eGFR低下が3か月以内に30%以上であった場合
  • 尿蛋白漏出の機序として上皮細胞足突起表面に存在する陰性電荷の減少により陰性電荷をもつアルブミンが係蹄壁を透過しやすくなることが知られている。

慢性腎臓病(CKD)の原因疾患

  • 糖尿病性腎症(43.8%)・・・糖化終産物(AGEs)は、炎症反応の誘導や、活性酸素種の生成を促進する可能性があり、これが結果として腎細胞の損傷や、腎糸球体のスカラーゼ(硬化)を引き起こす可能性があります。
  • 慢性糸球体腎炎(18.8%)・・・糸球体の慢性的炎症でIgA腎症が最も頻度が高い。血尿、蛋白尿、、風を機にIgaが糸球体のメサンギウムに沈着、治療はステロイド。
  • (良性)腎硬化症(13.0%)・・・長期間の高血圧、糖尿病、加齢などにより腎血管の壁が硬化し、狭窄(縮小)し、最終的には閉塞することで、腎実質の虚血を引き起こします。臨床的には血尿を認めず尿蛋白が高度ではない。
  • 多発性嚢胞腎(PKD)・・・尿細管や尿細管の周りの間質に複数の嚢胞が進行性に発生・増大し、高血圧や肝嚢胞、脳動脈瘤などを合併する。加齢とともに進行性に腎機能が低下する。サムスカの腎機能低下抑制効果が示されているため、TKV750ml以上かつ年間増大率5%以上、かつeGFR>15mL/分/1.73㎡であればサムスカ治療をが推奨される。
  • 薬剤性腎障害・・・慢性の場合鎮痛剤、リチウム、シスプラチン、シクロスポリン
  • ANCA関連血管炎(ANCA-associated vasculitis、AAV)・・・ANCAは抗好中球細胞質抗体の略で、好中球細胞質に対する抗体を持つ疾患の総称。顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に分類。全身性の小血管炎であり、血管の壁が炎症し、それによって組織や器官への血流が減少または遮断される状態。腎生検にて診断し、治療はステロイドやシクロホスファミド、プラズマ交換療法
  • 抗糸球体基底膜抗体型糸球体腎炎(Goodpasture症候群)・・・急速進行性糸球体腎炎を呈する疾患のうち、抗糸球体基底膜抗体が陽性となる疾患。肺にも肺胞出血を呈することがある。腎機能は急激に悪化し、短期間に末期腎不全に至ることが多い。
  • 紫斑病性腎炎・・・IgA血管炎の腎障害で、血尿、蛋白尿を伴う。IgA血管炎の症状は、紫斑が必ず出現し、腹痛や関節痛を伴うことがあります。診断には腎生検が必要です。組織所見として、IgA腎症と同様の所見を呈します。ステロイド剤を使用することが多いです。
  • コレステロール塞栓症・・・動脈硬化が強い症例で、血管内カテーテルの操作や血管手術により、動脈壁にあるプラークの成分であるコレステロール結晶がはがれ、末梢の小動脈に塞栓症を引き起こす病態です。腎臓に障害がきますと、腎機能が比較的急速に悪化することがあります。抗凝固療法の中止を行う場合もあります。状況によりステロイド剤を使用する場合もあります。
  • IgG4関連腎臓病・・・IgG4関連疾患に伴い発症する腎障害です。尿細管間質にIgG4陽性の形質細胞が著明に浸潤し、特徴的な線維化を起こします。比較的高齢者に多く、ステロイド剤が著効することが多いです。
  • 微小変化病・・・特に子供に多く、ネフローゼ症候群の主な原因となります。光顕鏡で腎組織を見ても異常は見られないことが特徴で、電子顕微鏡での検査でのみ腎臓の細胞内での異常が確認できます。治療としては、ステロイドが一般的に使用される。

(参考・引用元:日経DI 2015.12、日本腎臓学会、CKDガイドライン2023、腎機能低下時に最も中の必要な薬剤投与量一覧(日本腎臓病薬物療法学会)、クレデンシャル2014.10、高リン血症(https://www.ne.jp/asahi/akira/imakura/hyperphosphatemia.htm))

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