大脳皮質、辺縁系、基底核

大脳は、「大脳皮質」と「髄質」から構成されていて、大脳皮質は新皮質(前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉)、古皮質(海馬、脳弓、歯状回)、旧皮質(嗅葉、梨状葉)に分類される。髄質の深部には大脳基底核が存在しています。

大脳皮質(新皮質)

新皮質は帯状回よりも上の部分で、左右の大脳は脳梁によって連絡されています。

前頭葉

前頭葉には前頭連合野、前頭眼野、運動連合野、運動野、ブローカ野が存在している。

前頭連合野は、他の中枢と言われる場所たち(各種連合野、言語中枢)から送られて来る情報を元に、どうするべきかを判断し、実行する総合中枢です。

認知力・思考力・注意力・集中力等に関わると共に、ワーキングメモリーというパソコンで言うメモリに相当する作業記憶領域が存在します。

ワーキングメモリーは、「今どうするか」という数分間だけの記憶を保持するスペースで、テスト直前1分前までノートを見て暗記→始まったと同時にテストの脇にメモみたいなときに?使いますね。洗濯しなきゃいけなかったわみたいな記憶でも良いでしょう。こういう記憶は5分で忘れますね。(記憶については他にもあるので後述します。)

運動連合野は、運動神経の中枢です。ここで指定された運動を行うのが運動野ということになります。

ブローカ野は、話したり、書いたりといったアウトプットの言語中枢です。逆に聞いたり、読んだりというインプットの言語中枢が側頭葉にあるウェルニッケ野となります。

頭頂葉

頭頂葉には体性感覚野、頭頂連合野、味覚野が存在しています。

体性感覚野は、触圧覚や温痛覚を知覚神経を通じて判断します。

頭頂連合野は、主として空間認識の中枢です。距離感とか上下感覚とか、日頃の生活でなんとなくしている行動ですね。暗い中でも歩けるのであればそれは頭頂連合野が働いているからです。 体性感覚の情報等を処理して前頭連合野へと送っています。

側頭葉

側頭葉には聴覚野、側頭連合野、ウェルニッケ野が存在しています。

側頭連合野は、音、形、色といった聴覚野や視覚連合野から送られてくる情報を処理して、前頭連合野へ送っています。

後頭葉

後頭葉には視覚野、視覚連合野が存在しています。

大脳辺縁系

大脳辺縁系は、古皮質(海馬、脳弓、歯状回)、旧皮質(嗅葉、梨状葉)、中間皮質(帯状回、海馬回)、皮質下核(扁桃体、中隔、乳頭体)の総称です。側坐核は腹側線条体の一部とされているため大脳辺縁系には含めません。

大脳辺縁系の大きな役割は、記憶(短期記憶と長期記憶)と情動(やる気、怒り、喜び、悲しみ等の快不快)です。ワーキングメモリはこの場合の記憶とは全く別物です。

この中でも特に重要なのが、海馬と扁桃体です

海馬

海馬の役割は、短期記憶の保持と長期記憶の固定。今日食べたものを覚えているとかアルツハイマーの診断に使うような記憶情報は海馬に短期記憶として蓄えられています。 この短期記憶の中でも重要だと判断されたものは各連合野へと移動して、例えば空間感覚情報は頭頂連合野、色とか形情報は側頭連合野と言った具合に各部位にそれぞれ長期記憶として蓄えられることになります。

記憶の回路としてはpapez回路(海馬から始まって、脳弓→乳頭体→視床の前核群→帯状回後部と進み、必要な記憶は大脳皮質連合野へ、そうでなければまた海馬に戻り繰り返す)が有名です。

長期記憶は、10年前のあの時に、こんな感覚で歩いたり(頭頂連合野)、こんな景色や音(側頭連合野)だったなぁと古い記憶を呼び起こして、イメージ化する(前頭連合野)ような感じです。

海馬と脳波

海馬の記憶にθ波が重要である。

θリズムで海馬の主細胞 (錐体細胞, 顆粒細胞) が周期的に興奮すると, 長期増強反応 (LTP) が最も効率よく発生するので, 海馬θ波は記憶情報の固定に最適の条件を提供する。

海馬θ波を発現させるのが, 内側中隔核・対角帯核ACh神経、GABA神経からの入力であり、θ波を発現する状況としては、注意行動の時かレム睡眠時である。

セロトニンやノルアドレナリンはレム睡眠を抑制する、すなわち、レム睡眠を誘発するアセチルコリン神経を活性化するためには、5-HTやNA神経が抑制されている、むしろ活動自体が停止されている必要があるということで、この状態はθ波の出現はない。

扁桃体

扁桃体の役割は、海馬からの視覚だったり味覚だったりそういう記憶情報をまとめて、それが快か不快か(好き嫌い)を判断し、

  • 視床下部の室傍核に自律神経活性化
  • 視床網様体核に反射亢進
  • 三叉神経と顔面神経に恐怖感情表現
  • 腹側被蓋野(A10ドパミンニューロンの細胞体)と青斑核(A6ノルアドレナリンニューロン細胞体)、外背側被蓋核にドパミン、NE、アドレナリン放出

等の信号を送る

もちろん、何かの行動が快不快感情を生んで、その情報を海馬へと送るというように、海馬と扁桃体は常に情報が行き来しています。この行き来に関しては海馬傍回がその中間として働いています。

海馬の構造

海馬傍回前部にある嗅内野を介してすべての大脳皮質連合野からの情報を海馬(CA3、CA4、※CA3は海馬の錐体細胞層の一部、CA4は歯状回の顆粒細胞層にあたる)に投射している。

顆粒細胞(CA4)の軸索でCA2に達していて、錐体細胞(CA2,CA3)の軸索の枝で、CA1に結合している。

海馬からは、CA1および海馬台から嗅内野を介して大脳皮質連合野に投射、CA1~3(主にCA3)から海馬采・脳弓を介して乳頭体や中隔核に投射する。

嗅神経→嗅球→嗅索→後端で内側嗅条・外側嗅条に分かれて嗅三角(嗅球・嗅索・嗅三角を合わせて嗅葉という。)から投射される嗅覚野はこの嗅内野付近に存在している。

情動の回路としてはYakovlev回路(扁桃体から始まって、視床背内側核→帯状回前部、前頭前野→扁桃体に戻る)が有名。

側坐核

側坐核(腹側線条体)は帯状回前部に存在していて、前頭連合野と連絡を取りあっている。

海馬や扁桃体は側坐核へも投射していて、側坐核からは腹側淡蒼球にGABA出力して、腹側淡蒼球からは視床背内側核へ→Yakovlev回路に入る。扁桃体の興奮(快反応)が引き金となって起こる中脳腹側被蓋野(A10)からのドパミン入力も側坐核へ投射していて、前頭前野→快楽、嗜癖行動を引き起こす。

側坐核からの出力先は黒質や橋網様体がある。

大脳基底核

大脳基底核は大脳髄質内の核群で、尾状核、被殻、淡蒼球から構成され、主に錐体外路運動(不随意運動の調節、筋の緊張の維持等)に関わっている。

尾状核と被殻をまとめて線条体、被殻と淡蒼球をまとめてレンズ核と呼んでいる。線条体は新線条体と腹側線条体に分けられるが、この場合の線条体は新線条体を指す。

中脳に存在する黒質は、メラニン色素を多く含有する緻密部とその外部の網様部から成っている。

黒質緻密部からの新線条体へのニューロンはA9ドパミンニューロンであり、黒質緻密部の変性(パーキンソン病=ドパミンが少ない)は、新線条体へのドパミン入力の低下を招き、直接路(淡蒼球内節ニューロンの活性化→視床の抑制)と間接路(淡蒼球外節の抑制→視床下核の活性化→淡蒼球内節ニューロンの活性化→視床の抑制)を経て大脳皮質の運動野の活動を低下させる。

コリン作動性神経は新線条体にて抑制性の介在ニューロンとして働いている(黒質ドパミン神経→線条体介在性コリン神経→線条体GABA神経→淡蒼球内節・外節)ため、線条体シナプス後膜のムスカリン受容体を阻害する抗コリン薬は、介在ニューロンの作用を抑えて(抑制の抑制)、GABA神経を活性化させ、D2刺激薬と同じようにドパミン低下による運動障害を改善する。

大脳辺縁系と組み合わせると以下の様な形になる。扁桃体は大脳辺縁系の方に含める。

大脳全体として描画すると以下の様な形になる。


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