甲状腺疾患(バセドウ病、橋本病)の薬一覧

分類 成分名 商品名 規格・剤形・補足
抗甲状腺薬 チアマゾール メルカゾール 規格:錠2.5mg/5mg、注
適応:甲状腺機能亢進症
投与2か月以内の無顆粒球症に注
プロピルチオウラシル チウラジール
プロパジール
規格:錠50㎎
適応:甲状腺機能亢進症
ヨウ化カリウム ヨウ化カリウム 規格:末、丸50㎎
適応:甲状腺腫(甲状腺機能亢進症を伴うもの)、喀痰喀出困難(慢性気管支炎、喘息による)第三期梅毒、放射性ヨウ素による甲状腺の内部被曝の予防・低減
ヨウ化Na(131I) ヨウ化Na 規格:Cap1号/3号/5号/30号/50号
適応:甲状腺機能亢進症の治療、甲状腺癌及び転移巣の治療、シンチグラムによる甲状腺癌転移巣の発見
放射性医薬品
甲状腺刺激薬 レボチロキシンNa チラーヂンS 規格:散0.01%、錠12.5μg/25μg/50μg/75μg/100μg、静注
適応:粘液水腫、クレチン病、甲状腺機能低下症(原発性及び下垂体性)、甲状腺腫
合成T4製剤
リオチロニンNa チロナミン 規格:錠5μg/25μg
適応:粘液水腫、クレチン症、甲状腺機能低下症(原発性及び下垂体性)、慢性甲状腺炎、甲状腺腫
合成T3製剤
ヨウ素レシチン ヨウレチン 規格:散0.02%、錠100
適応:ヨード不足による甲状腺腫、ヨード不足による甲状腺機能低下症、中心性網膜炎、網膜出血、硝子体出血・混濁、網膜中心静脈閉塞症、小児気管支喘息、喘息様気管支炎

甲状腺機能亢進症(バセドウ病等)

抗甲状腺薬の種類

甲状腺のペルオキシダーゼを阻害し、甲状腺ホルモンの合成を抑制する。

メルカゾールとチウラジールの比較試験において、メルカゾールのほうが有効性が高く、副作用の発現頻度が低いことが示されている。

メルカゾールの甲状腺ホルモンを正常化する速さには15mg/日と30mg/日の間には差がなく、副作用の発現頻度は15mg/日のほうが明らかに少ないことが明らかになっているため、メルカゾールによる治療は、15mg/日から開始し、重症例に30mg/日を用いることが推奨されている。

  • メルカゾール(チアマゾール)・・・甲状腺外で免疫抑制作用示す。チウラジールより抗甲状腺効果が高い(約10倍)ので授乳中以外は第一選択。
  • チウラジール(プロピルチオウラシル)・・・メルカゾールより母乳中への移行が少ない
  • ヨウ化カリウム(ヨウ化カリウム)・・・作用機序は不明。短期間であれば甲状腺機能を強力に抑制するが、長期使用でエスケープ現象が起こる。
  • ヨウ化ナトリウム(ヨウ化ナトリウム)・・・放射性同位体131Iを含む放射性医薬品。服用後は母乳不可、服用1~2週間前からヨウ素含有うがい液の使用は避ける。服用後1週間は子供との長時間の接触(添い寝など)は避ける(洗濯やお風呂は区別しなくてよい)
    131I の壊変方式は β-(ベータマイナス)壊変であり、β- 線と γ(ガンマ)線を放出する。131Iの実行半減期は理学的半減期8日、生物学的半減期80日とすると、1/8+1/80で7.3日。非密封小線源として甲状腺機能亢進症や甲状腺癌の治療に用いられる。

これらの副作用として発現頻度が高いものが、蕁麻疹と軽度肝障害で、重大な副作用として無顆粒球症、多形性関節炎、重度肝障害が挙げられます。 発熱や咽頭痛などの症状がでた場合は、無顆粒球症の場合があるので注意する。

抗甲状腺薬の使い方

甲状腺の機能を抑える、抗甲状腺薬が第一選択として用いられます。初期は大量に投与し、以降はTSH値を見ながら減らしていきます。すでに合成された甲状腺ホルモンが4週間位備蓄があるため、効果の発現は遅く4~6週を要します。そして、機能が正常化しても1年間は維持療法を行います。

メルカゾールのような抗甲状腺薬は無顆粒球症だの発熱だのよく添付文書改定情報が届くほど注意が必要ということで、これを使えない人に、ヨード剤(ヨウ化カリウム丸)を使用するケースもある。

ヨード剤と言えば原発事故の時に話題になったあれで、甲状腺ホルモンの原料となるので、摂取すると甲状腺に取り込まれて甲状腺ホルモン不足のときは甲状腺ホルモンを補う作用、満タンの時は逆にホルモンの合成・放出を抑制する作用があることから甲状腺機能亢進症の治療薬として用いる。

原発のは、予めヨード剤で甲状腺を満たしておけば、たとえ放射性元素を体内に摂取しても甲状腺に取り込まれずにすむという機序。

症状がひどい場合はステロイドの内服、頻脈がひどい場合はβ遮断薬を併用(βは甲状腺機能亢進症の様々な症状を改善してくれる)する。重症例には、放射線治療、外科手術を行うこともあります。

放射線治療に用いられるのはI131アイソトープで、これを経口(カプセル剤)で摂取することで標的(甲状腺)に取り込まれたI131が甲状腺の細胞を破壊するというもの。用量に注意しなければ、破壊のし過ぎで低下症を引き起こす危険もある。もちろん妊娠とか乳児の近くは避けるべきだが、一般の人との接触は問題ないレベルという。しかしなるべく避けるのはいうまでもない。

ブロック補充療法

また、甲状腺機能亢進症に限り、メルカゾールのような抗甲状腺薬だけでは不安定な患者に対して、チラーヂンを投与して安定化させるブロック補充療法というものがある。詳しくはよくわからないが、メルカゾール減量だけでは下がりすぎてしまったり安定しない場合に、あえて拮抗するチラーヂンを必要量だけ併用すると安定するらしい。デメリットは単独治療の場合はやがて寛解するが、併用すると寛解の可能性がなくなるという点。そのため、一生にわたり薬を継続するような人への投与。

甲状腺機能低下症(橋本病等)

甲状腺刺激薬の種類

甲状腺ホルモン製剤

  • チラーヂンS(レボチロキシンNa)・・・T4製剤。末梢で大部分がT3に変換され作用を発現。半減期:6~7日。
    金属イオン(Fe、Al、Ca、Znなど)に吸着され効果が減弱する。麻黄を含む漢方薬と一緒に服用すると、チラーヂンが成分等のカテコラミンレセプターの感受性を増大するために漢方薬の作用が増強されて冠動脈疾患が増悪する可能性がある。また、漢方薬は全てチラーヂンの吸収遅延を引き起こす。骨粗鬆症治療薬(SERM)チラーヂンの吸収を阻害するばかりではなく遊離型の甲状腺ホルモンも低下させる(長崎甲状腺クリニック
  • チロナミン(リオチロニンNa)・・・T3製剤。即効性があるが持続性が短い。

ヨウ素製剤

  • ヨウレチン(ヨウ化レシチン)・・・大豆レシチンが原料。消化管により血中にヨウ素イオンの形で取り込まれ、ヨードとしてヨウ素不足に夜甲状腺機能を改善する。

甲状腺ホルモン製剤の使い方

補充療法には、T3は強すぎるので、T4を選択する。少量(1日25μg)から開始し2~3ヶ月かけてゆっくりと1日の維持量の100μgにもっていく。T4は半減期が6~7日と長いので1日1回投与する。

妊娠と甲状腺疾患

妊娠中に甲状腺ホルモンの値を調整することは、母体のリスク(妊娠高血圧、早産、流産等)や胎児のリスク(低体重、発達遅延等)を減らすことにつながる。

妊娠中では甲状腺ホルモンの需要が増加するため、今まで落ち着いていて休薬していた方も再開する必要がある。

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