梅毒トレポネーマ(Treponema palidum)
- STD(性感染症)の一つである梅毒の原因菌。普通の細菌とは性状が異なるため、非定型菌と呼ばれる。
- 人工培地で増殖できないため培養不可
- 梅毒トレポネーマは治療しない場合、数年にわたって徐々に異なる症状が表れてきます。
- 1期(3週間~3ヵ月)・・・性器に硬結(こうけつ=できもの)や硬性下疳(こうせいげかん=潰瘍)ができる。
- 2期(3か月~3年)・・・全身の発疹(バラ疹)と扁平コンジローマ(皮膚にできるイボ。尖圭コンジローマはHPVで痛み有り)
- 3期(3週~3年)・・・ゴム腫(慢性の腫瘍)
- 4期(10年~)・・・全身の発疹、大動脈炎、神経梅毒(進行性マヒや脊髄障害)
- 梅毒トレポネーマが妊娠中に母親から胎児へ垂直感染することで出生時または出生後に様々な症状を引き起こすことがあり、これを先天梅毒と呼ぶ。
先天梅毒は、症状の発現時期によって「早発期先天梅毒」と「遅発性(学童期)先天梅毒」の2つに分けられます。
- 早発期先天梅毒:このタイプは通常、生後数週間から数か月の間に症状が現れます。症状には、皮膚の発疹、発熱、肝脾腫、黄疸、鼻水(梅毒性鼻炎)などがあります。また、骨変化や肺炎、神経梅毒などの重篤な合併症を伴うこともあります。
- 遅発性(学童期)先天梅毒:このタイプは子供が数年から十年以上の年齢になった後に症状が現れることが特徴です。症状には、歯の異常(ハッチンソン歯)、角膜炎、聴覚障害、骨の変形などがあります。これらの症状は、梅毒感染の長期的な影響によるものです。
- 検査は血清反応で抗体を調べる方法がとられる。梅毒血清反応には以下の二つがある。
- STS(脂質抗原法)・・・リン脂質に対する抗体。感度は高いが他の疾患にも反応するので陰性=梅毒ではないの判断
- TRHA(梅毒トレポネーマ抗原法)・・・トレポネーマ抗原に対する抗体。感度は低いが特異度が高いので陽性=梅毒の判断
STSにはRPR(Rapid Plasma Reagin)、ガラス板法、凝集法等があるがいずれも体内で産生される特異抗体を検出する検査。RPRは、STSの中で最も簡便で迅速な検査法で、最も偽陽性率が低いためよく用いられる。RPR抗体が治療前の半量であれば治療終了。
- 第一選択薬はペニシリンの筋注(ステルイズ)。梅毒トレポネーマは細胞壁を持ち、耐性化しにくい細菌なので単剤(βラクタマーゼ未配合)でも使用可能。第二選択がアモキシシリン、ドキシサイクリン。
- ペニシリンGは、成人には、ベンジルペニシリンとして1回300~400万単位を1日6回4時間ごと、14日間点滴静注する(入院)。
- ステルイズ水性懸濁筋注は、早期梅毒であれば通常、ベンジルペニシリンとして240万単位を単回、筋肉内に注射する。後期は1回240万単位を週に1回、計3回、筋肉内に注射する。
- アモキシシリンは1回500㎎、1日3回、28日間が推奨
- ドキシサイクリン(orミノサイクリン)は1回100㎎、1日2かい、28日間が推奨
- スピラマイシンは1回200㎎、1日6回、28日間
- セフトリアキソンは1回2gを24時間ごとに点滴静注、14日間(入院)
- ペニシリンで溶菌するため、予後は良好だが、放置すると徐々に症状が進行していく。
細菌の種類一覧
グラム陽性球菌
- グラム陽性球菌(GPC:Gram-Positive Cocci)
- ブドウ球菌属(Staphylococcus)
- 黄色ブドウ球菌(S.aurens)
- 表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)
- 腐生ブドウ球菌(S.saprophyticus)
- レンサ球菌属(Streptococcus)・・・腸内常在菌。ホモ
- A群溶血性レンサ球菌(S.pyogenes)・・・溶連菌
- B群溶血性レンサ球菌(S.agalactiae)
- C, G群溶血性レンサ球菌(S.dysgalactiae ssp.equisimilis)
- アンギノサス(S.anginosus)
- コンステラータス(S.constellatus)
- インターメディウス(S.intermedius)
- 肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)・・・呼吸器
- ミティス(S.mitis)
- サングイニス(S.sangulnis)
- サリバリアス(S.salivarius)
- ウシレンサ球菌(S.bovis)
- ミュータンス(S.mutans)
- サーモフィルス菌(S.thermophilus)・・・乳酸菌
- フェカリス菌(S.faecalis)・・・乳酸菌
- 腸球菌属(Enterococcus)
- フェカリス菌(E.faecalis)・・・ホモ(乳酸)
- フェシウム菌(E.faecium)
- ラクトコッカス属 (Lactococcus)
- ラクトコッカス・ラクティス(L.lactis)・・・ホモ(乳酸)
- ペディオコッカス属(Pediococcus)・・・ホモ(乳酸)
- リューコノストック属 (Leuconostoc)・・・ヘテロ
グラム陽性桿菌
- グラム陽性有芽胞(通性)嫌気性桿菌
- バシラスorバチルス属(Bacillus)
- 炭疽菌(B.anthracis)
- セレウス菌(B.cereus)
- ポリファーメンチカス菌(B.polyfermenticus)・・・糖化菌
- 枯草菌(B.subtilis)・・・糖化菌。ビオフェルミン、ビオスリー
- 納豆菌(B.natto)・・・糖化菌
- ジャガイモ菌(B.mesentericus)
- グラム陽性有芽胞(偏性)嫌気性桿菌
- クロストリジウム属(Clostridium)・・・腸内常在菌
- ボツリヌス菌(C.botulinum)
- ウェルシュ菌(C.perfringens)
- 破傷風菌(C.tetani)
- クロストリジウム・デフィシル(C.dificile)・・・菌交代症
- 酪酸菌(C.butyricum)・・・ミヤBM、ビオスリー
- グラム陽性無芽胞(通性)嫌気性桿菌
- ラクトバシラスorラクトバチルス属(Lactobacillus)・・・乳酸菌
- アシドフィルス菌(L.acidophilus)・・・カルピスのL29乳酸菌、レベニン
- カゼイ菌(L.casei)・・・ヤクルト菌(シロタ株)
- ガセリ菌(L.gasseri)・・・雪印のLG乳酸菌
- デルブリュッキ菌(L.delbrueckii)
- ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)
- ラクトバチルス・ヘルベティカス(L.helveticus)
- ラクトバチルス・ライヒマニ(L.leichmannii)
- ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)・・・キリンのKW乳酸菌
- ラクトバチルス・プランタルム(L.plantarum)
- ラクトバチルス・ラムノサス(L.rhamnosus)
- ファーメンタム菌(L.fermentum)
- ブルガリクス菌(L.bulgaricus)・・・明治ブルガリアLB81
- ロイテリ菌(L.reuteri)
- プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)
- キューティバクテリウム属(Cutibacterium)・・・アクネ菌
グラム陽性無芽胞(偏性)嫌気性桿菌
グラム陰性球菌
グラム陰性桿菌
- グラム陰性好気性桿菌(GNR:Gram-Negative Rods)
- グラム陰性(通性)嫌気性桿菌(GNR)
- グラム陰性(偏性)嫌気性桿菌
その他
- 抗酸菌
- 放線菌
- スピリルム
- スピロヘータ
- 非定型菌
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