エシェリキア属 (Eshericha)
大腸菌(E.coli=イーコーライ)
- エシェリキア属のグラム陰性通性嫌気性桿菌
- 人間や動物の腸内に普通に存在する細菌の一種です。多くのE. coli株は無害であり、健康な腸内細菌叢の一部を構成しています。しかし、一部の株は病原性を持ち、食中毒やその他の疾患を引き起こすことがあります。
- 腸管病原性大腸菌 (Enteropathogenic E. coli, EPEC): これらの株が経口的に摂取されると菌が小腸で定着・増殖し、主に乳幼児に下痢・嘔吐引き起こします。EPECは腸上皮細胞に付着し、細胞の構造を変化させることで病原性を示します。
- 腸管毒素原性大腸菌 (Enterotoxigenic E. coli, ETEC): ETEC株は、主に旅行者の下痢・嘔吐の原因となります。これらは、腸内で毒素(熱安定性毒素(ST)と熱可塑性毒素(LT))を産生し、水分の分泌を増加させて下痢を引き起こします。
- 腸管出血性大腸菌 (Enterohemorrhagic E. coli, EHEC): 最も有名なEHEC株はO157:H7です。
EHECはShiga毒素(ベロ毒素Ⅰ・Ⅱ)を産生し、腸上皮細胞と腎臓にダメージを与えます。これにより激しい腹痛と血便、血尿や浮腫を生じます。
また、Shiga毒素の影響により溶血性尿毒症症候群(HUS)が引き起こされます。HUSの特徴は以下の3つです。
- 溶血性貧血・・・シガ毒素によって内皮細胞が傷害を受けると、血管の損傷が発生します。これにより赤血球が物理的に破壊される(溶血)ことがあり、結果として溶血性貧血が起こります。(網赤血球上昇、間接ビリルビン上昇)
- 血小板数の減少・・・血管損傷の修復には血小板が消費されるため、血小板数が減少します。また、血小板が血栓形成に関与するため、この消費は血栓の形成にもつながります。
- 急性腎障害・・・血管の損傷と血栓の形成により、腎臓の血流が障害され、急性腎障害が起こることがあります。
- 腸管組織侵入性大腸菌 (Enteroinvasive E. coli, EIEC): EIEC株は、大腸に感染し、腸壁細胞に侵入して細胞内で増殖します。これにより、出血を伴う、赤痢様の症状(発熱、腹痛、下痢)を引き起こすことがあります。
- 大腸菌(Escherichia coli)は鞭毛を持ち液体中を移動でき、多くの株が莢膜を形成して外部環境から身を守ります。
- 乳糖を分解して酸を産生する能力を持っています。これは乳糖発酵テストで使用される特徴で、大腸菌の同定に役立ちます。
- 特定微生物試験の対象(サルモネラ、緑膿菌、黄色ブドウ球菌)
- 腸内細菌の原因菌(PEK)のEで、膀胱炎や尿路感染にも関わっている。PEKの第一選択は第一世代セフェム、尿路感染ではアモキシシリン/クラブラン酸かST合剤、全身感染では第三世代セフェム系。
細菌の種類一覧
グラム陽性球菌
- グラム陽性球菌(GPC:Gram-Positive Cocci)
- ブドウ球菌属(Staphylococcus)
- 黄色ブドウ球菌(S.aurens)
- 表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)
- 腐生ブドウ球菌(S.saprophyticus)
- レンサ球菌属(Streptococcus)・・・腸内常在菌。ホモ
- A群溶血性レンサ球菌(S.pyogenes)・・・溶連菌
- B群溶血性レンサ球菌(S.agalactiae)
- C, G群溶血性レンサ球菌(S.dysgalactiae ssp.equisimilis)
- アンギノサス(S.anginosus)
- コンステラータス(S.constellatus)
- インターメディウス(S.intermedius)
- 肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)・・・呼吸器
- ミティス(S.mitis)
- サングイニス(S.sangulnis)
- サリバリアス(S.salivarius)
- ウシレンサ球菌(S.bovis)
- ミュータンス(S.mutans)
- サーモフィルス菌(S.thermophilus)・・・乳酸菌
- フェカリス菌(S.faecalis)・・・乳酸菌
- 腸球菌属(Enterococcus)
- フェカリス菌(E.faecalis)・・・ホモ(乳酸)
- フェシウム菌(E.faecium)
- ラクトコッカス属 (Lactococcus)
- ラクトコッカス・ラクティス(L.lactis)・・・ホモ(乳酸)
- ペディオコッカス属(Pediococcus)・・・ホモ(乳酸)
- リューコノストック属 (Leuconostoc)・・・ヘテロ
グラム陽性桿菌
- グラム陽性有芽胞(通性)嫌気性桿菌
- バシラスorバチルス属(Bacillus)
- 炭疽菌(B.anthracis)
- セレウス菌(B.cereus)
- ポリファーメンチカス菌(B.polyfermenticus)・・・糖化菌
- 枯草菌(B.subtilis)・・・糖化菌。ビオフェルミン、ビオスリー
- 納豆菌(B.natto)・・・糖化菌
- ジャガイモ菌(B.mesentericus)
- グラム陽性有芽胞(偏性)嫌気性桿菌
- クロストリジウム属(Clostridium)・・・腸内常在菌
- ボツリヌス菌(C.botulinum)
- ウェルシュ菌(C.perfringens)
- 破傷風菌(C.tetani)
- クロストリジウム・デフィシル(C.dificile)・・・菌交代症
- 酪酸菌(C.butyricum)・・・ミヤBM、ビオスリー
- グラム陽性無芽胞(通性)嫌気性桿菌
- ラクトバシラスorラクトバチルス属(Lactobacillus)・・・乳酸菌
- アシドフィルス菌(L.acidophilus)・・・カルピスのL29乳酸菌、レベニン
- カゼイ菌(L.casei)・・・ヤクルト菌(シロタ株)
- ガセリ菌(L.gasseri)・・・雪印のLG乳酸菌
- デルブリュッキ菌(L.delbrueckii)
- ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)
- ラクトバチルス・ヘルベティカス(L.helveticus)
- ラクトバチルス・ライヒマニ(L.leichmannii)
- ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)・・・キリンのKW乳酸菌
- ラクトバチルス・プランタルム(L.plantarum)
- ラクトバチルス・ラムノサス(L.rhamnosus)
- ファーメンタム菌(L.fermentum)
- ブルガリクス菌(L.bulgaricus)・・・明治ブルガリアLB81
- ロイテリ菌(L.reuteri)
- プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)
- キューティバクテリウム属(Cutibacterium)・・・アクネ菌
グラム陽性無芽胞(偏性)嫌気性桿菌
グラム陰性球菌
グラム陰性桿菌
- グラム陰性好気性桿菌(GNR:Gram-Negative Rods)
- グラム陰性(通性)嫌気性桿菌(GNR)
- グラム陰性(偏性)嫌気性桿菌
その他
- 抗酸菌
- 放線菌
- スピリルム
- スピロヘータ
- 非定型菌
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