黄色ブドウ球菌(Staphylococus aurens)
- ブドウ状に配列するグラム陽性の球菌
- 毒素を産生することがある。産生する毒素としては、δ毒素、コアグラーゼ、エンテロトキシン、表皮剥離毒素(exfoliative toxin:ET)、ヒアルロニダーゼ、ホスファターゼなどがあり、食中毒、中毒性表皮壊死融解症(SSSS)、毒素性ショック症候群(TSS)などを引き起こす。
- コアグラーゼ試験は、ブドウ球菌を特定するために使用される一般的な実験室テストです。このテストは、菌がコアグラーゼ酵素を産生するかどうかを検出します。
- コアグラーゼは血漿中のプロトロンビンと結合した後、coagulase-reacting factorの存在下にフィブリノーゲンに作用しフィブリンを生じて血液を凝固させ、黄色ブドウ球菌では陽性でが表皮ブドウ球菌など常在菌では陰性です。
- エンテロトキシンは食中毒の原因毒素として知られ、耐熱性のこの毒素は微量で嘔吐中枢を刺激して嘔吐を生じさせる。
- 表皮剥離毒素は伝染性膿痂疹の原因毒素として知られ、アトピー性皮膚炎に対しても発赤、水庖、浮腫の原因となる。
- MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)・・・抗生物質に対して感受性がある黄色ブドウ球菌。メチシリンは現在販売されていないので抗生物質と読み替える。
- MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症(4類感染症)・・・院内、術後感染による腸炎、肺炎、心内膜炎、骨髄炎、敗血症。胃酸分泌を抑制するH2ブロッカーはPPI服用中の場合、胃酸で不活化されずらいので症状が悪化しやすい。
- MSSA(の第一選択は第一世代セフェム(セファゾリン等)、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の第一選択はバンコマイシンorテイコプラミン。初期はどちらか不明なので二つ両方投与し後で一つに
黄色ブドウ球菌耐性機構
- CHIPS(chemotaxis inhibitory protein of Staphylococcus aurens):食細胞の走化性に関与する表層受容体への競合的結合により走化性を阻害する。
- Eap(extracellular adherence protein):血管内皮細胞上に存在するICAM1に結合し、好中球の遊走を抑制。
- ProteinA:IgGのFc部分との結合により好中球のFc部分による認識機構を阻害
- Capsule:細菌表層に存在することで、食細胞の細菌認識を抑制し、抗食作用効果を発揮
- SCIN(Staphylococcus complement inhibitor):C3bの形成を阻害し、補体活性化を阻害する。
- スタフィロキナーゼ:ディフェンシンとの結合により本来の標的部位への到達を阻害する。
- aureolysin:メタロプロテアーゼであり、抗菌ペプチドのLL-37を切断し、抗菌活性を阻害する。
- γ-ヘモリシン、Panton-Valentine Leukocidin:標的細胞の細胞質膜に小孔を形成し殺傷する。
- リゾチーム抵抗性:細胞壁ペプチドグリカンの構造変化(O-アセチル化)により非感受性となる。
表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
- 黄色ブドウ球菌よりは病原性は低い
- コアグラーゼ試験陰性。
- ヒトの皮膚や粘膜の常在菌であり、通常は非病原性。
- バイオフィルムを形成しやすく、カテーテルや人工関節などの医療機器関連感染の原因となる。
- 免疫が低下している患者では、敗血症や感染性心内膜炎の原因となることがある。
腐生ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)
- 他の2種よりは病原性が低い。
- 主に若い女性における尿路感染症の原因菌(特に膀胱炎)として知られている。ただし、腐生ブドウ球菌が尿路感染症の原因となることは比較的一般的ではなく、多くの尿路感染症は大腸菌(Escherichia coli)などの他の細菌によって引き起こされます。
- 比較的多くの抗生物質に対して感受性を示すが、一部の株では耐性が報告されている。
- 治療はアモキシシリン/クラブラン酸やセフェム系
細菌の種類一覧
グラム陽性球菌
- グラム陽性球菌(GPC:Gram-Positive Cocci)
- ブドウ球菌属(Staphylococcus)
- 黄色ブドウ球菌(S.aurens)
- 表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)
- 腐生ブドウ球菌(S.saprophyticus)
- レンサ球菌属(Streptococcus)・・・腸内常在菌。ホモ
- A群溶血性レンサ球菌(S.pyogenes)・・・溶連菌
- B群溶血性レンサ球菌(S.agalactiae)
- C, G群溶血性レンサ球菌(S.dysgalactiae ssp.equisimilis)
- アンギノサス(S.anginosus)
- コンステラータス(S.constellatus)
- インターメディウス(S.intermedius)
- 肺炎レンサ球菌(S.pneumoniae)・・・呼吸器
- ミティス(S.mitis)
- サングイニス(S.sangulnis)
- サリバリアス(S.salivarius)
- ウシレンサ球菌(S.bovis)
- ミュータンス(S.mutans)
- サーモフィルス菌(S.thermophilus)・・・乳酸菌
- フェカリス菌(S.faecalis)・・・乳酸菌
- 腸球菌属(Enterococcus)
- フェカリス菌(E.faecalis)・・・ホモ(乳酸)
- フェシウム菌(E.faecium)
- ラクトコッカス属 (Lactococcus)
- ラクトコッカス・ラクティス(L.lactis)・・・ホモ(乳酸)
- ペディオコッカス属(Pediococcus)・・・ホモ(乳酸)
- リューコノストック属 (Leuconostoc)・・・ヘテロ
グラム陽性桿菌
- グラム陽性有芽胞(通性)嫌気性桿菌
- バシラスorバチルス属(Bacillus)
- 炭疽菌(B.anthracis)
- セレウス菌(B.cereus)
- ポリファーメンチカス菌(B.polyfermenticus)・・・糖化菌
- 枯草菌(B.subtilis)・・・糖化菌。ビオフェルミン、ビオスリー
- 納豆菌(B.natto)・・・糖化菌
- ジャガイモ菌(B.mesentericus)
- グラム陽性有芽胞(偏性)嫌気性桿菌
- クロストリジウム属(Clostridium)・・・腸内常在菌
- ボツリヌス菌(C.botulinum)
- ウェルシュ菌(C.perfringens)
- 破傷風菌(C.tetani)
- クロストリジウム・デフィシル(C.dificile)・・・菌交代症
- 酪酸菌(C.butyricum)・・・ミヤBM、ビオスリー
- グラム陽性無芽胞(通性)嫌気性桿菌
- ラクトバシラスorラクトバチルス属(Lactobacillus)・・・乳酸菌
- アシドフィルス菌(L.acidophilus)・・・カルピスのL29乳酸菌、レベニン
- カゼイ菌(L.casei)・・・ヤクルト菌(シロタ株)
- ガセリ菌(L.gasseri)・・・雪印のLG乳酸菌
- デルブリュッキ菌(L.delbrueckii)
- ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)
- ラクトバチルス・ヘルベティカス(L.helveticus)
- ラクトバチルス・ライヒマニ(L.leichmannii)
- ラクトバチルス・パラカゼイ(L.paracasei)・・・キリンのKW乳酸菌
- ラクトバチルス・プランタルム(L.plantarum)
- ラクトバチルス・ラムノサス(L.rhamnosus)
- ファーメンタム菌(L.fermentum)
- ブルガリクス菌(L.bulgaricus)・・・明治ブルガリアLB81
- ロイテリ菌(L.reuteri)
- プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)
- キューティバクテリウム属(Cutibacterium)・・・アクネ菌
グラム陽性無芽胞(偏性)嫌気性桿菌
グラム陰性球菌
グラム陰性桿菌
- グラム陰性好気性桿菌(GNR:Gram-Negative Rods)
- グラム陰性(通性)嫌気性桿菌(GNR)
- グラム陰性(偏性)嫌気性桿菌
その他
- 抗酸菌
- 放線菌
- スピリルム
- スピロヘータ
- 非定型菌
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