女性・男性ホルモン関連薬

分類 成分名 商品名 規格・剤形・補足
アロマターゼ阻害 アナストロゾール アリミデックス 規格:錠1㎎
適応:閉経後乳がん
エキセメスタン アロマシン 規格:錠25㎎
適応:閉経後乳がん
レトロゾール フェマーラ 規格:錠2.5mg
適応:閉経後乳がん
エストロゲン受容体拮抗 タモキシフェン ノルバデックス 規格:錠10㎎/20㎎
適応:乳がん
子宮体がん(子宮内膜がん)のリスクが高まること があり、本剤投与中及び投与終了後の患者は定期的に検査を行う
補足:SERM
トレミフェン フェアストン 規格:錠40㎎/60mg
適応:閉経後乳がん
フルベストラント フェソロデックス 規格:筋注
適応:乳がん
黄体ホルモン メドロキシプロゲステロン ヒスロンH 規格:錠200㎎
適応:乳がん、子宮体がん
エストロゲン製剤 エチニルエストラジオール プロセキソール 規格:腸溶錠0.5mg
適応:前立腺がん、閉経後末期乳がん
GnRHアゴニスト ゴセレリン ゾラデックス
ゾラデックスLA
規格:デポ1.8mg/3.6mg、徐放デポ(LA)
適応:ダウンレギュレーション。子宮内膜症(1.8mg)、前立腺がん/閉経前乳がん(3.6mg/LA)
リュープロレリン リュープリン
リュープリンSR
リュープリンPRO
規格:注射用、徐放注射用(SR)
適応:中枢性思春期早発症、過多月経、子宮筋腫、子宮内膜症、前立腺がん、閉経前乳がん、球脊髄性筋萎縮症
乳酸・グリコール酸共重合体が使用されており、マトリックスを形成している高分子が分解することにより薬物を放出する。
プセレリン スプレキュア 規格:MP皮下注用、点鼻液
適応:子宮内膜症、子宮筋腫に基づく過多月経・下腹部痛・腹痛・貧血
ナファレリン ナサニール 規格:点鼻液
適応:子宮内膜症、子宮筋腫
ゴセレリン ゾラデックス 規格:デポ
適応:子宮内膜症
GnRHアンタゴニスト セトロレリクス セトロタイド 規格:注射用
適応:調節卵巣刺激下における早発排卵の防止
ガニレリクス ガニレスト 規格:皮下注
適応:調節卵巣刺激下における早発排卵の防止
レルゴリクス レルミナ 規格:錠40㎎
適応:子宮筋腫に基づく過多月経・下腹痛・腹痛・貧血の改善
性腺刺激ホルモン製剤 ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(HCG) HCGモチダ
ゴナトロピン
規格:筋注、注
適応:胎盤性GnRH(LH作用+弱いFSH作用)排卵誘発、精子形成誘導等
ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン(HMG) HMG 規格:筋注、注射
適応:(FSH活性)。排卵誘発
精製下垂体性性腺刺激ホルモン uFSH「あすか」 規格:注
適応:排卵誘発
ヒト卵胞刺激ホルモン(FSH) フォリスチム 規格:注
適応:排卵誘発
ホリトロピンアルファ ゴナールエフ 規格:皮下注、皮下注ペン
適応:精子形成誘導、排卵誘発
コリオゴナドトロピンアルファ オビドレル 規格:皮下注
適応:排卵誘発及び卵胞成熟等
抗ゴナドトロピン ダナゾール ボンゾール 規格:錠100mg/200mg
適応:子宮内膜症、乳腺症(100mgのみ)
卵胞ホルモン
(エストロゲン)
エストラジオール エストラーナ 規格:テープ0.09mg/0.18mg/0.36mg/0.72mg
適応:更年期障害、閉経後骨粗鬆症、卵巣欠落症状等
下腹部or臀部に2日ごとに貼り換え。8分割OK
ル・エストロジェル
ディビゲル
規格:ゲル
適応:更年期障害
ジュリナ 規格:錠0.5mg
適応:更年期障害、閉経後骨粗鬆症
エストラジオール吉草酸エステル プロギノン・デポー
ペラニンデポー
規格:筋注
適応:月経異常、更年期障害、不妊症等
エストリオール ホーリン 規格:錠1㎎、V膣用錠1㎎
適応:更年期障害/老人性骨粗鬆症(内服のみ)、膣炎等
結合型エストロゲン プレマリン 規格:錠0.625mg
適応:更年期障害、卵巣欠落症状、膣炎等
黄体ホルモン
(プロゲステロン)
プロゲステロン プロゲホルモン 規格:筋注
適応:月経困難、子宮出血、切迫性早産、習慣性早産
ルティナス
ウトロゲスタン
ワンクリノン
ルテウム
規格:順に膣錠、膣カプセル、膣ゲル、膣坐剤
適応:黄体補充
ジドロゲステロン デュファストン 規格:錠5㎎
適応:プロゲホルモン+子宮内膜症、子宮周期異常
ヒドロキシプロゲステロン プロゲデポー 規格:筋注
適応:月経周期異常、子宮出血、不妊症、切迫性/習慣性早産等
メドロキシプロゲステロン ヒスロン
プロベラ
規格:錠5mg(ヒスロン)、錠2.5mg(プロベラ)
適応:適応:プロゲデポーと同じ
クロルマジノン ルトラール 規格:錠2㎎
適応:月経周期異常、月経困難症、不妊症等
補足:プロスタールは前立腺肥大や前立腺がんへの適応のみ
ノルエチステロン ノアルテン 規格:錠5㎎
適応:クロルマジノン+月経周期変更
ジエノゲスト ディナゲスト 規格:錠0.5mg/1mg、OD錠1㎎
適応:子宮内膜症、子宮腺筋症に伴う疼痛、月経困難症
人工黄体ホルモン
(OC)
ドロスピレノン スリンダ 規格:錠28
適応:避妊
補足:1日1錠を毎日一定の時刻に白色錠から開始し、指定された順番に従い28日間連続経口投与→以後繰り返し。(保険外
卵胞・黄体ホルモン配合剤 ヒドロキシプロゲステロン・エストラジオール ルテスデポー 規格:注
適応:機能性子宮出血
ノルゲストレル・エチニルエストラジオール プラノバール 規格:配合錠
適応:機能性子宮出血、月経困難、月経周期異常、子宮内膜症等
補足:ヤッペ法が緊急避妊で使用されるが妊娠阻止率がノルレボに比べて30%位低い
エストラジオール・酢酸ノルエチステロン メノエイド 規格:コンビパッチ
適応:更年期障害、卵巣欠落症状、
補足:3~4日毎に1回1枚下腹部貼付
エストラジオール・レボノルゲストレル ウェールナラ 規格:配合錠
閉経後骨粗鬆症
卵胞・黄体ホルモン配合剤(LEP) エチニルエストラジオール・ドロスピレノン ヤーズ
ドロエチ
規格:配合錠、フレックス配合錠
適応:子宮内膜症
(血栓症のBL
補足:配合錠:28錠(1日1錠、ラスト4日は偽薬)、フレックス錠:24錠(1日1錠で服用後4日休薬)or最大120日連続服用(1日1錠で服用後4日休薬)
エチニルエストラジオール・ノルエチステロン ルナベル
フリウェル
規格:配合錠LD、配合錠ULD
適応:月経困難症
補足:LD(E:0.035mg、N:1㎎/錠)、ULD(E:0.02mg、N:1㎎/錠)、1日1錠で21日間服用後7日間休薬を繰り返す
エチニルエストラジオール・レボノルゲストレル ジェミーナ 規格:配合錠
適応:月経困難症
補足:周期(21日間内服、7日間休薬)or連続(77日間内服、7日間休薬)
エステトロール・ドロスピレノン アリッサ 規格:配合錠
適応:月経困難症
補足:周期(28日間内服(24日間実薬、4日間は偽薬)
天然型エストロゲンのエステトロールを使用
卵胞・黄体ホルモン配合剤
(低用量ピル=OC)
エチニルエストラジオール・ノルエチステロン シンフェーズT28 規格:錠
適応:避妊、鎮痛薬無効の機能性月経困難症(保険外
補足:14歳~閉経まで投与可。
エチニルエストラジオール・レボノルゲストレル アンジュ21
アンジュ28
トリキュラー21
トリキュラー28
規格:錠
適応:上に同じ
デソゲストレル・エチニルエストラジオール マーベロン21
マーベロン28
規格:錠
適応:上に同じ
緊急避妊薬
(アフターピル)
(ECP)
レボノルゲストレル(LNG) ノルレボ
レボノルゲストレル錠1.5mg「F」
規格:錠1.5mg
適応:緊急避妊(性交後72時間以内に1T服用)
補足:ノルゲストレルの光学異性体で排卵を抑制。服用時間が遅れるほど阻止率低下
妊娠中は禁忌だが有害ではない。悪心の副作用があり、服用後2時間以内に嘔吐→処方医へ連絡→1錠追加OK。妊娠阻止率90.8%。
保険外(相場は7000~8000円)
子宮内黄体ホルモン放出システム レボノルゲストレル ミレーナ 規格:システム(1個を子宮内に5年装着)
適応:避妊、月経過多、月経困難症
女性・男性ホルモン配合 エストラジオール・テストステロン プロモジアン・デポー 規格:筋注
適応:更年期障害、卵巣欠落症状、骨粗鬆症
排卵誘発薬 シクロフェニル セキソビット 規格:錠100㎎
適応:第一度無月経、無排卵性月経、排卵誘発
クロミフェン クロミッド 規格:錠50㎎
適応:排卵障害に基づく不妊症の排卵誘発
補足:SERM。男性不妊(適応外)
麦角アルカロイド エルゴメトリン エルゴメトリンマレイン酸塩「F」 販売中止
メチルエルゴメトリン メチルエルゴメトリン 規格:錠0.125mg、注
適応:子宮収縮(胎盤娩出後等)
PGF2α ジノプロスト プロスタルモン・F 規格:注射液
適応:妊娠末期における陣痛誘発・促進・分娩促進、腸管運動促進
PGE2 ジノプロストン プロスタグランジンE2 規格:錠0.5mg
適応:妊娠末期における陣痛誘発・陣痛促進
プロウペス 規格:膣用剤
適応:妊娠37週以降の子宮頚管熟化不全における熟化の促進
PGE1 ゲメプロスト プレグランディン 規格:膣坐剤
適応:妊娠中期における治療的流産
β2刺激薬 リトドリン ウテメリン 規格:錠5㎎、注
適応:切迫流・早産(内服)、緊急切迫流・早産(注)
Mg剤 硫酸Mg・ブドウ糖配合 マグネゾール 規格:静注
適応:重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療
マグセント 規格:注
適応:切迫早産における子宮収縮の抑制、重症妊娠高血圧症候群における子癇の発症抑制及び治療
下垂体後葉ホルモン
(バソプレシン作動)
デスモプレシン デスモプレシン 規格:注、スプレー2.5/10、点鼻液
適応:中枢性尿崩症、夜尿症
ミニリンメルト 規格:OD錠25μg/50μg/60μg/120μg/240μg
適応:中枢性尿崩症、夜尿症。食直後の投与は避ける→就寝前服用
オキシトシン アトニン-O 規格:注
適応:分娩誘発、微弱陣痛、弛緩出血、流産など
漢方薬 当帰芍薬散
加味逍遥散
桂枝茯苓丸
桃核承気湯
女神散
規格:更年期障害、月経不順

女性ホルモンの作用

視床下部から分泌されるGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)は脳下垂体前葉のゴナドトロピン受容体(LH-RH受容体)に結合して、ゴナドトロピン(FSHとLH)を放出させる。LH-RH(Luteinizing Hormone-Releasing Hormone)とGnRH(Gonadotropin-Releasing Hormone)は同じものを指す。

GnRHは下垂体前葉を刺激してFSHとLHを、CRHはACTHを放出させるわけだが、FSHとLHの比率は月経周期で変化する。

(調剤と情報2025.5より)

FSH(卵胞刺激ホルモン)

FSHは下垂体前葉ホルモンで、男性と女性とでは標的部位が異なる。

  • 女性・・・FSHは卵巣内の卵胞細胞の発育を促し、卵胞はエストロゲン(主としてエストラジオール、他エストロン、エストリオール)を分泌する。
    低~中程度の量では視床下部弓状核・下垂体前葉に対してFSH・LHを抑制するネガティブフィードバックをかけてエストロゲンレベルを低下させるが、高濃度が持続するとLHのみに対してポジティブフィードバック(LHサージ)を起こす。
    卵巣にはインヒビンB分泌細胞(顆粒膜細胞)があり、インヒビンによってもFSHは抑制される。
  • 男性・・・卵巣を持たない男性に対して、FSHは精巣内のセルトリ細胞からのインヒビンBの分泌を促したり、精子の形成を促進する。
    インヒビンは下垂体前葉にネガティブフィードバックをかけてFSHのみの放出を抑制する。

LH(黄体形成ホルモン)

LHは下垂体前葉ホルモンで、男性と女性とでは標的部位が異なる。

  • 女性・・・LHは卵胞内からの卵子の放出(排卵)を促し、卵子がなくなった卵胞は黄体へと変わり、黄体はプロゲステロンを分泌する。黄体は卵巣・精巣や副腎とは違って、プロゲステロンをテストステロンやエストロゲンに変換する作用は有していないのでプロゲステロンを分泌するのみ。
  • 男性・・・LHは精巣内のライディッヒ細胞を刺激してコレステロール→プレグネノロン→プロゲステロン→17α-ヒドロキシプロゲステロン→アンドロステンジオン→テストステロンのように合成・分泌される。
    アンドロゲンにはDHEA、アンドロステンジオン、テストステロン、DHTがあるが、精巣で作られるアンドロゲンは、主としてテストステロン。
    テストステロンは標的細胞で5α還元酵素により活性の強いDHT(ジヒドロテストステロン)へ合成される。
    テストステロンも視床下部と下垂体に対してネガティブフィードバックをかけてFSHやLHを抑制する。

ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)

ACTHは下垂体前葉ホルモンで、副腎皮質から少量のプロゲステロンやアンドロゲン(主としてテストステロン)を分泌させる

合成経路は精巣と少し異なり、コレステロール→プレグネノロン→プロゲステロン→DHEA→アンドロステンジオン→テストステロンのようになる。

DHEAは副腎皮質で作られる前駆体で、血中のDHEA値は20歳前後をピークに高齢になるにしたがって直線的に低下する。この変動がLOH(男性更年期障害)の要因の一つといわれている。

女性の場合、閉経により卵巣からのエストロゲンやプロゲステロンの分泌が出来なくなると、副腎皮質からの少量のプロゲステロン、プロゲステロンから作られるテストステロンが末梢組織(主に脂肪組織)に存在するアロマターゼという酵素によって合成される少量のエストロゲンらが、唯一の女性ホルモン供与源となる。

副腎は原料(前駆体)のアンドロゲンを供給する場所であり、アロマターゼを使用したエストロゲンの産生場所は脂肪組織であることに注意する。(※卵巣はそれ自体がエストロゲンを産生する)

アロマターゼ阻害薬はエストロゲンが減っても問題のない閉経後に使用する。

月経周期

月1回左右のいずれかの卵巣から各月交互に1個の卵胞が排卵される。この後約2週間後に月経が始まる。

月経周期は通常21日から35日の範囲で、平均して約28日間続きます。

卵巣の機能が衰えて12か月以上無月経になることを閉経と呼び、閉経(平均50歳)の前後5年間を合わせた10年間を更年期と呼ぶ。

  • 月経期・・・期間:約3~7日。周期の最初の日(月経の最初の日)から始まり、子宮内膜(子宮の内側の層)が血液とともに体外に排出されます。これが月経出血(生理)です。この期間は、新しい月経周期の開始を意味します。
  • 卵胞期・・・期間:月経開始後約1週間から14日間。月経出血が終了すると、脳の下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)が増加し、卵巣内の卵胞の成熟を促します。この期間中に卵胞はエストロゲンを分泌し、子宮内膜を再び厚く、柔らかく、血管を豊富にするために再構築します。このフェーズは排卵に向けて体を準備します。(この時点は低温期)
  • 排卵期・・・期間:周期の中間(通常は最終月経開始後約14日)。FSHのレベルが比較的高くなり、大量のエストロゲンが約48時間以上持続することによる視床下部前腹側室周囲核への正のフィードバック(ポジティブフィードバックはこの時のみ)が起こり、下垂体からのLH(と一定程度FSHも)の急激な上昇が引き起こされ(これを「LHサージ」と呼ぶ)、LHサージが排卵の主要なトリガーとなり、約36時間後に成熟した卵胞から卵子が放出され、放出された卵子は卵管を通って子宮へ移動します。
  • 黄体期・・・期間:排卵後約14日。排卵した卵胞は黄体に変わり、プロゲステロン(およびエストロゲンを少量)を分泌します(この時点は高温期で0.3度上昇)。プロゲステロンは子宮内膜を維持し、受精卵が着床するための準備をするとともに、後続の排卵を抑制し、連続した排卵が起こらない様にします(緊急避妊薬の機序)

その後、エストロゲンやインヒビンによるネガティブフィードバックによってFSHの分泌が抑制され、エストロゲンレベルが下がる。

受精が起こらない場合、黄体は退化し、プロゲステロンもネガティブフィードバックをかけてLHサージを抑制し、プロゲステロンレベルを下げ、体温を再度下げ、これにより、子宮内膜がはがれ、新たな月経周期が始まる。

妊娠していればプロゲステロンが維持され高温期が持続する。。

つまり、エストロゲンは子宮内で子宮内膜の肥厚、プロゲステロンは肥厚後の子宮内膜の着床環境を整える等、妊娠準備を行うホルモンであり、着床しなかった場合、生理(子宮内膜の剥離)が起こる。

エストロゲンの作用

  • エストロゲンには閉経後に主要となるエストロン(E1)、閉経前に主要となるエストラジオール(E2)、妊娠時に主に胎児副腎と胎盤で産生されるエストリル(E3)がある。20~40歳ではE2の比率が高いが、更年期に差し掛かるとE2は急激に低下し、E1は緩やかに低下していくため、高齢になるとE1の比率が高くなる。
  • エストロゲンは破骨細胞の働きを抑制することで骨量の低下を防ぐ。
  • エストロゲンは血中遊離脂肪酸の上昇を抑える(ホルモン感受性リパーゼ↑、リポ蛋白リパーゼ↓)
  • エストロゲンは凝固因子(VII, VIII, X, フィブリノーゲン)を上昇させ、抗凝固因子を減少させて線溶系を抑制するため、血栓症(特に静脈血栓塞栓症:VTE)が起きやすい(LEPのヤーズでは血栓症のブルーレターあり)。40歳以上でリスク上昇。血栓予防にアスピリンを使うことも。

女性ホルモンの検査値

脳下垂体・視床下部ホルモンのページを参照。

女性ホルモン関連疾患

再度ホルモン分泌の流れを整理すると、

視床下部からGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)分泌→脳下垂体前葉のGnRH受容体に結合→ゴナドトロピン(FSHとLH)が下垂体から分泌→FSHは卵胞からエストロゲン分泌、精巣で精子形成→LHは排卵誘発と黄体からプロゲステロンを分泌、精巣でテストステロン分泌のような流れ。

エストロゲン受容体は、

  • 乳がんの原因となる乳腺細胞や子宮がんの原因となる子宮(ERα)
  • 骨粗鬆症の原因の破骨細胞や前立腺がんの原因となる前立腺、視床下部・下垂体(ERβ)

等に発現している。

プロゲステロン受容体(PR)は、エストロゲンにより発現が促される事が多く、乳腺細胞や子宮内膜、卵巣、視床下部・下垂体などに存在している。

テストステロン受容体(AR)は、精巣や前立腺を中心に色々な臓器に発現していているが、DHTよりは受容体親和性が低い。

月経困難症(生理痛)

月経困難症には、

  • 機能性月経困難症(原発性)・・・初経から2~3年より始まり、10~20代前半に多。原因となる病気はなく、支給経管の狭小や、子宮内膜で産生されるPGなどの内因性生理活性物質による子宮筋の過収縮の影響。NSAIDsが効きやすいので第一選択。
  • 器質性月経困難症(続発性)・・・子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症等に伴うもの。NSAIDsが効きにくい場合があるので使う場合は月経開始と同時に予防使用推奨。

の2種類があり、いずれも激しい痛みを伴う。子宮内膜症は器質性月経困難症の原因の一つである。

NSAIDs以外の治療薬としては、卵胞・黄体ホルモン配合剤(LEP)のルナベル(=フリウェル)がよく使用される。少量のエストロゲンがネガティブフィードバックを使った症状緩和に使われるが、血栓症を引き起こす可能性がある。そのため、さほどではない場合は黄体ホルモン単体であるディナゲスト(ジエノゲスト)がよく使用される。

子宮内膜症

原因は不明だが、月経血が再度逆流するのが原因?卵巣にできると卵巣チョコレート嚢胞、直腸と子宮の間の腹膜腔にできるとダグラス窩。子宮内膜の組織が増殖(一般的に良性だが、ガンににてる)。

卵巣、腹膜、腸管らで増殖し出血を伴う。毎回月経のために出血が起こり、痛みを伴う。

1%が卵巣がんへ悪性化(Fe2+→Fe3+への酸化が原因?)。40歳以上、4mm以上はがん化の可能性のため手術。閉経前は、ホルモンで閉経に追い込む。LEP製剤、排卵抑制。

子宮内膜症では重度はヤーズ(ドロエチ)、軽度はディナゲスト(ジエノゲスト)あたりがよく使用されるイメージ。卵胞・黄体ホルモン配合剤(LEP)でブルーレターが出ていることから血栓症には十分注意する。子宮内膜症は月経困難症の一つなので、月経困難症の薬を使うことも可能かと思われる。

更年期障害

更年期障害の治療は、閉経や卵巣摘出後に起こるエストロゲンの不足を補うホルモン補充療法(HRT)や漢方薬(23~25番等)が使われる。

具体的には卵胞ホルモン製剤であるエストラーナテープ、ホーリン、プレマリン等である。

なお、月経困難症や子宮内膜症の治療によりエストロゲンが減っても同じような症状がでる。

HRT(ホルモン補充療法)

エストロゲン欠乏による血管作動性の症状(ほてり、発汗、性交痛、骨粗鬆症、集中力低下、コレステロール上昇等)を抑える。エストロゲンの投与は子宮内膜症や乳がんのリスクが高まるので注意(特に乳がん既往は禁忌)。

HRT(Hormone Replacement Therapy:ホルモン補充療法)は一般的には閉経後の女性に対して行うエストロゲンやプロゲステロンの補充を指し、男性更年期障害へのテストステロン補充療法やHCG投与は通常HRTとは呼ばれない。

HRTにはET(エストロゲン単独投与)とEPT(エストロゲン・黄体ホルモン併用投与)があり、

  • 子宮を摘出後の場合・・・ET
  • 子宮を有する場合・・・EPT

が選択される。

子宮がある場合、エストロゲンだけだと子宮内膜が厚くなる上、子宮体がんの発生率が高まるので黄体ホルモンを併用する。

内服、塗り薬(ル・エストロジェル等)、貼り薬がある。これらの治療は閉経後10年以上立ってからやっても、逆に心筋梗塞などの可能性が上がるためだめ。

避妊

緊急避妊薬の調剤の項参照

避妊に用いる薬はOC(低用量ピル)と呼ばれる経口避妊薬で、緊急避妊に用いる薬はECPと呼ばれる緊急避妊薬である。

OCは月経困難症(子宮内膜症含む)の治療にも使われる卵胞・黄体ホルモン配合剤を使用する。成分が同じでも月経困難症等に使用するLEPとは医薬品名が異なり(例:ルナベルとシンフェーズ)。OCは自費、LEPは保険適用となっている。

OCの機序はLEPと同じだが、近年出たスリンダ(ドロスピレノン)は黄体ホルモン単剤であり、既存のものより安全に使えるのが売り。

ECPは主として黄体ホルモン剤であるLNGが使われ、排卵を抑制する効果がある。

乳がん

乳がんの項参照。、

乳がんの治療の際は、閉経前の女性の場合、乳がん細胞のエストロゲン受容体に拮抗する薬(ノルバデックス=タモキシフェン等)を使用する。

閉経後の女性の場合は、副腎皮質由来のテストステロンからの経路で産生されるエストロゲンを抑える目的で、主としてアロマターゼ阻害薬(アリミデックス、アロマシン、フェマーラ)を用いる。

その他、FSH分泌の大本になっているGnRHが下垂体前葉の受容体へと結合するのを抑える、GnRHアゴニスト(リュープリン等)とGnRHアンタゴニスト(レルミナ等)も用いられる。

アンタゴニストは単純に受容体拮抗薬であるが、アゴニストの方は継続的な受容体刺激によるダウンレギュレーションによって、FSHやLHの分泌が抑制されるという機序である。これらの中ではGnRHアゴニストが最も強いイメージ。

黄体ホルモン製剤のヒスロンHは、プロゲステロンレベルを維持してエストロゲンレベルを下げて乳がんを抑える。

女性ホルモン関連薬の特徴

アロマターゼ阻害薬

副腎においてテストステロンからエストロゲンを作るのに必要な酵素であるアロマターゼ阻害薬を阻害してエストロゲンを抑制する薬。卵巣の機能が低下した閉経後の乳がんの治療に使われる。

エストロゲン受容体拮抗薬

乳がんの治療に使われる。エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)のタモキシフェンは広く使われている。閉経後のみ使える物はエストロゲン受容体を分解する薬。

GnRHアゴニスト/アンタゴニスト

GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)受容体アゴニストとアンタゴニストは以下のように下垂体前葉のGnRH受容体に結合してFSHやLHの分泌を調節する薬剤

項目 GnRHアゴニスト GnRHアンタゴニスト
機序 視床下部を刺激→一時的にFSH・LH分泌急増→そのまま持続投与→GnRH受容体脱感作・ダウンレギュレーション→FSH・LH分泌抑制→卵巣のエストロゲン分泌低下(偽閉経) 直接GnRH受容体をブロックして即時に抑制
効果発現 数週間 投与後すぐ効果発現
エストロゲン抑制 強く、長時間 調節しやすく、可逆性
副作用(更年期) 出やすい 用量依存
代表薬 リュープロレリン、ナファレリン レルゴリクス

性腺刺激ホルモン

性腺刺激ホルモンはLH・FSHの代わりに直接性腺に作用して、性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)等の分泌を調節する薬剤

性腺刺激ホルモンの中でhCG製剤(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤)と呼ばれるものは、LH様のホルモンであり、プロゲステロンを増加させて、テストステロンを増加させる。

卵胞ホルモン

エストロゲン製剤はHRT(ホルモン補充療法)による更年期障害の治療に主として使われる。

黄体ホルモン

黄体ホルモンにはプロゲステロンやプロゲスチンがあり、ジエノゲストはプロゲステロン、緊急避妊薬や子宮内避妊器具のレボノルゲストレルは合成プロゲスチン、OCやLEPに含まれる黄体ホルモンも合成プロゲスチンである。

  • ディナゲスト(ジエノゲスト)・・・LEPに含まれるプロゲスチンの5~10倍のホルモン活性を有する。排卵や卵巣機能の抑制作用だけでなく、病巣への直接作用を有し、慢性深部痛に対する効果も高い。エストロゲンにはほとんど作用しないので長期投与も可能。
    副作用として高頻度に月経を上回るような内服中の不正出血が起こるが、継続投与で出現頻度は徐々に減少することが多い。

卵胞・黄体ホルモン配合剤

  • ※「OC」は「Oral Contraceptive(オーラル・コントラセプティブ)」の略で、日本語では一般に経口避妊薬やピルと呼ばれる。配合剤ではない人工黄体ホルモン製剤(ドロスピレノン)も含む。
  • ※「LEP」は「Low-dose Estrogen Progestin(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤)」の略。
  • ※「ECP」は Emergency Contraceptive Pill(緊急避妊薬) の略

OCとLEPはいずれも合成エストロゲンとプロゲスチンの配合剤であるが、避妊にもいるものをOC、月経困難症や子宮内膜症等に用いるものをLEPと称して区別している

同じ成分であっても、OC(適応が避妊のもの)は保険外で自費、LEP(適応が月経困難症等のもの)は保険適用となっている。

内服開始直後に頭痛や嘔気、不正出血が発現することがあるが、開始後3週間以内に改善することが多い。卵胞ホルモン入りは血栓症リスクに注意する。

排卵誘発薬/精子形成促進薬

クロミフェン(SERM)は、視床下部や下垂体のエストロゲン受容体を阻害して、ネガティブフィードバック(FSH・LH分泌抑制)を抑制する。

これにより、FSHが増加して精子形成が促進されるとともに、エストロゲンの合成が高まって排卵が促進される。

同じSERM(エストロゲンモジュレーター)でも、タモキシフェンは性腺のエストロゲン受容体に拮抗して抗がん作用、バゼドキシフェンは破骨細胞のエストロゲン受容体を刺激してアポトーシスを誘導し骨吸収を抑制する。

エクエル(エクオール含有健康食品)

  • エクオール:エクオールはエストロゲン類似物質(クロミッドとかと同じ)であり1/500程度の作用。エストロゲン様作用、抗アンドロゲン作用、抗酸化作用(アンチエイジング効果)。不要な部分は尿へ、蓄積性がない。これから閉経を迎える女性に良い。やめるとまた戻る。12wでも効果実感(肩こり、ホットフラッシュ、シワ、コレステロール低下)。血中のホルモン濃度に変化なし。40代50代が適齢。1日量(エクエル4粒)は、納豆1パック、豆腐2/3換算だが、大豆イソフラボンと知られる3種(ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン)のうちダイゼインが腸内でエクオールを産生する腸内細菌によって代謝されてエクオールとなってその作用を示すため、エクオール産生菌が少ない人は、大豆イソフラボンを摂ったとしてもそのまま体内に吸収されてしまう。大塚製薬のエクエルは大豆のダイゼイン類を、エクオール産生乳酸菌(ラクトコッカス20-92)で代謝させてエクオールにし、エクオールを直接摂取できるようにしたもの。

男性更年期障害(LOH症候群)

加齢やストレス等に伴うテストステロン低下による男性の更年期障害のことを加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群と呼ぶ。

身体症状では、疲労感、倦怠感、筋力低下、肥満・内臓脂肪増加、発汗異常(のぼせは異常な発汗)、関節や筋肉の痛み等がみられ、精神症状では抑うつ、不安感、集中力低下、性機能異常がみられることがある。

血中のテストステロンは朝高く、夕方低くなるため、なるべく午前中に採血し、テストステロン値が250ng/dL以下で、性欲低下や筋力低下、気分の落ち込み等のLOHに関連する症状が認められる場合はテストステロン補充療法(TRT:Testosterone Replacement Therapy)の適応を検討し、フリーテストステロン値が7.5pg/mL以下であればTRTを検討することになっている。

  • テストステロンエナント酸エステル・・・TRT注射薬。125~250mgを2~4週間ごとに筋注
  • ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)・・・TRT注射薬。1回3000~5000単位を週2~3回or1~2週ごとに筋注(適応外)、LH様ホルモン製剤であり、テストステロンを増加させる。
  • クロミフェン(SERM)・・・TRT(内服)。エストロゲン受容体を阻害して上記の機序によりLHとFSHを増やすため、精子形成とテストステロン分泌を高める(自費)
  • グローミン・・・TRT軟膏。第一類医薬品
  • 漢方薬・・・疲労に補中益気湯、前立腺肥大やEDに八味地黄丸、ホットフラッシュに桂枝茯苓丸、精神に柴胡加竜骨牡蛎湯、自律神経に加味逍遙散等
  • PDE阻害薬・・・ED治療として

(参考・引用元:クレデンシャル2017.10、調剤と情報2025.5)

コメントor補足情報orご指摘あればをお願いします。

(件名or本文内でキーワード検索できます)



  • << 前のページ
  • 次のページ >>
ページトップへ