OS-1とポカリスエットの違い

下痢・嘔吐・発汗による脱水に良いとされるOS-1。アクアソリタ、アクアサポート、ポカリスエットや他のスポーツドリンクとどう違うのかについて簡単に解説。

静止時や軽い運動では水分が失われるだけだが、強い運動や下痢や嘔吐時では、水分とともに汗や胃液、腸液の塩分(Na+,Cl-)やカリウム(K+)、重炭酸イオン(HCO3-)が多量に失われる。前者を水分欠乏性脱水、後者をNa欠乏性脱水と呼んでいる。

水分欠乏性脱水時は血漿浸透圧が上昇し、喉の渇きや尿量の減少、不安・興奮等の症状が起こる。対処として細胞へ水分を補給するためにNaやKの濃度の薄い低浸透圧の飲料を服用する。

Na欠乏性脱水時は循環血液量が減少し、頭痛や立ちくらみ、血圧低下、悪心・嘔吐等の症状が起こる。対処として細胞外液と同じつまり、血漿に近い浸透圧の塩分多めの飲料を服用する。(嘔吐下痢はこのケース)

水分の吸収メカニズム

水分の腸管からの吸収尿細管での再吸収には、電解質(特にNa+)や糖が必要になってくる。水分は基本Na+と一緒に血液中へと移動する。水分単独で吸収されるということはない。

この時水分の吸収に関与する輸送担体がSGLT(Na-糖共輸送担体)であり、Na+と糖(ブドウ糖。ショ糖だと吸収遅延)と水分を一緒に吸収して血液内へと移動させる。

SGLTには1と2のサブタイプがあって小腸からの吸収にはSGLT1が主に関与している。SGLT2は糖尿病の治療薬のSGLT2阻害薬の標的部位で、主に腎の近位尿細管起始部に存在している。

要するに、脱水時には水分だけではなく、水分に塩分や糖分が混ざっているドリンクを摂るほうが水分の吸収はよいという話。

こちらのサイトに腸管からの吸収率は、経口補液>水>生理的食塩水>スポーツドリンク という実験データが示されています(コメントより)。ただし、脱水の種類によっては単純に水のほうがスポーツドリンクよりも吸収が良いからと言って水をがぶがぶ飲めばいいというわけではなく、スポーツによる多量の汗で水分と塩分を、カロリー消費で糖分を失っているのであれば、スポーツドリンクを補給したほうがいい場合もあります。もしくは、水+塩分タブレットなど。

100mlあたりの成分比較

OS-1やアクアサポート、アクアソリタ等は他のスポーツドリンクに比べてナトリウムやカリウムといった電解質の量が多く、クエン酸やアミノ酸を含まず、かつ低カロリー(糖分を抑えてある)である。

そのため、下痢嘔吐発熱や過度の発汗による脱水は、電解質の失われる量が多いため、OS-1やアクアサポート、アクアソリタ等が適している。

他のスポーツドリンクに含まれるクエン酸やアミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン他)はTCAサイクルを回してATP(エネルギー)産生を促進し、エネルギーを効率的に改善するため、スポーツ時の脱水に適している。

経口補水液・スポーツドリンク一覧表

血漿中の電解質濃度は約0.9g/dl(=900mg/100ml)、100mlに含まれる電解質をすべて足し合わせると約900mgになる計算。

食塩水(NaCl)だけで同じ浸透圧に調整したものが生理食塩水であり、900mgの食塩(Na+の分子量23、Cl-の分子量35.5。353.85mgのNa+と546.15mgのCl-)を100mlの水に溶かせば出来上がる。
これは、「9gの食塩を1Lの水に溶かせばできあがる」と言い換えることもできる。

血漿中では重炭酸イオン(HCO3-)も存在するため、血漿中Cl-濃度は生理食塩水に比べて低い値になると思われる。

OS-1(大塚)の電解質濃度は血漿浸透圧の1/3と、等張ではない(等張よりもやや低張の方が結果として小腸からの吸収が良い)ものの、他のドリンク類に比べれば大分高いため、電解質吸収率もそれなりに高いと思われる。

2016.3.2にリニューアルされ、一部原材料と充填方法の見直し、ボトル形状の変更、賞味期限の延長が行われた。これにより酸味料が乳酸からクエン酸へと変更され(ゼリーは引き続き乳酸)、風味を乳幼児へ飲みやすいようにしたとのこと。

2022.7.4にアップル風味(無果汁)が発売されました。

大塚製薬工場 経口補水液 オーエスワン 500mL丸PETx24本(ケース)

アクアソリタ(味の素)はOS-1に対抗すべく、OS-1の塩分濃度をやや減らし、ブドウ糖ではなくショ糖(砂糖)を混ぜたり、風味(リンゴ風味、ゆず風味)をつけて飲みやすくしたものである。

NaCl濃度を減らした分、Caイオン、Mgイオン、Pイオンの濃度を高めてあるが、OS-1の総電解質濃度の約7割ということで、OS-1よりも吸収率はやや劣る。

経口補水液 味の素 アクアソリタ 500ml×24本

さらに、H27.7月頃発売になったアクアサポート(明治)は、OS-1とほぼ同じ電解質組成(MgとP濃度だけ違う)なので、吸収率も同等。リンゴ風味が付いているのでOS-1よりは飲みやすい。

明治 アクアサポート 【経口補水液】 500ml×24本

飲みやすさは、アクアソリタ>アクアサポート>OS-1。効果は、OS-1=アクアサポート>アクアソリタ。といった所。

H29.6月にコカ・コーラからアクエリアス経口補水液が発売された。柑橘フレーバーが入っていて、味はアクエリアスに近いので、アクエリアスが好きな方にはよいかもしれません。

コカ・コーラ アクエリアス 経口補水液 PET 500ml×24本

有限会社未来研究所(ANZEN MALL)が発売している「塩JOYサポート PETタイプ TB-8001」という商品もあります。(詳しくは下記コメントNo1073)

スポーツドリンクを脱水症対策として使う際は、0.1%の食塩(ナトリウム40mg/100mg)以上含まれているものが目安。

水やお茶では、電解質がほとんどなく、体液が薄まるため、飲んだ水を尿として出してしまいやすくなりますし、スポーツ飲料では糖分が多く、摂取カロリー、口腔衛生の面で細かなケアが必要になります。

経口補水液とは

経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)は、体内での効率のよい水分吸収には砂糖と塩が必要であるという発見を元に、発展途上国における乳幼児の嘔吐・下痢症に対して、効率的・勘弁・安全な水分補給飲料として用いられたのが始まりです。

経口補水液は、水1リットルに対して食塩3g、砂糖40g、さっぱりしたいならレモンやグレープフルーツ等の柑橘類を加えて作ることも出来ます。

1日の必要水分量

  • 1日に必要な水分量(ml)=体重(kg)×体重1kg当たりの必要水分量(ml)

※体重1kg当たりの必要水分量=幼児:100~200ml、小児:50~100ml、成人:50ml、高齢者:40ml

※必要水分量には食事中の水分も含む。

例)体重60kgの成人であれば、3リットルの水分が必要。

OS-1服用時の注意点

1日の服用量の目安は、1歳未満が300~500ml/10kg/日、1歳以上7歳未満が300~600ml/日、7歳以上が500~1000ml/日となっている。

3ヶ月未満の乳児や、下痢、嘔吐が激しい時の飲用は医師等の専門家に相談するよう記載がある。

OS-1の各電解質濃度比はおおよそ血漿電解質に合わせてあるため、食塩を加えたり、カリウムの多いジュースで割って飲むことはおすすめしない。

500ml中の食塩量は約1.5g(梅干し1個分)、カリウム量は390mg(バナナ1本分)であるので、高血圧の人の塩分摂りすぎに、心臓病、不整脈、腎疾患を持つ人は多量摂取は避けること。

高血圧の薬と電解質について

脱水の症状

脱水には下記の3パターンが有る。

  • 高張性脱水・・・水分の不足。→口渇、発熱
  • 低張性脱水・・・電解質の不足。→全身倦怠感、眠気、嘔気、手足の冷え、徐脈
  • 等張性脱水・・・水分と電解質の不足。→通常水分のみ摂取により低張性脱水へ移行

発汗・下痢・嘔吐による脱水は、水分不足により水分のみを補い電解質が足りなくなるので低張性脱水が多く、単純に自分で水分を摂取できない(もしくはしづらい)乳幼児や高齢者に多いのが高張性脱水である。

日射病は過度の発汗により水分と電解質(塩分)が失われることにより上記の低張性脱水の症状が現れる疾患である。

Na+、K+といった電解質が不足すると、それらが関与する生理作用(主に神経伝達、心筋や血管収縮)に影響が出てくる。もちろん取りすぎれば逆の影響がでてくるので、推奨量を摂取することが望ましい。

自分でできる脱水の確認方法としては、

  • 皮膚の張りの確認・・・爪を立てずに皮膚(主に上腕、手背)をつまみ上げたあとに離してから正常な皮膚の張りに2秒以内に戻らなければ体液不足の疑い。
  • 爪毛細血管の最重点時間の遅延・・・爪を圧迫し白色に変化した後、ピンク色に回復するのに3秒以上かかる場合、体液不足の疑い。
  • 腋窩の乾燥・・・高齢者で腋窩の乾燥を認めた場合は体液不足を疑う。

胃腸炎について

ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎に分類され、いずれも下痢、嘔吐、発熱、腹痛が主な症状。細菌性胃腸炎では赤痢に代表される40℃以上の高熱、血便、強い腹痛、めまいなどが起こる。

急性胃腸炎の重症度が、軽度、中等度と判断される場合は、経口補水療法(ORT)のみで脱水補正が可能であるが、重度(ショック症状)又は症状の緩和が見られない場合は経静脈輸液療法(IVT)を考慮する。意識があるようなら基本ORTでOK。

現在主として用いられている低浸透圧の経口補水液(ORS)はIVTと同等の効果がある。

嘔吐症状がある急性胃腸炎に対してもORTは有効な治療法であり、嘔吐症例に対しては5mlのORSを5分毎に投与する。

急性胃腸炎の乳児に対して、母乳栄養は継続して良い。ORSによる脱水補正中であっても母乳は中止するべきではない。食事とミルクは脱水補正後に開始する。またミルクは希釈しないことが推奨。希釈しても治癒までの経過に利点はない。

ロペラミド(下痢止め)は乳児でイレウスの発症が報告され、6ヶ月未満は禁忌、2歳未満は原則禁忌であるので使用すべきではない。タンナルビン、アドソルビンもエビデンスレベルはあまり高くない。

(参考:各メーカー商品概要ページ、Wikipedia、アクアソリタ製品紹介、はじめての補水療法:村上こどもクリニック、小児急性胃腸炎診療ガイドブック2017)

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記事No2201 題名:Re:指摘マン様 投稿者:管理人tera 投稿日:2022-07-06 08:14:23

ご指摘ありがとうございます。
ご指摘を受けて修正しました。
mg単位をg単位に完全に直すと、各飲料水の電解質成分がmg表記なので、実際に足し合わせてどれだけ生理食塩水に近いのかを確かめたりする際にわかりにくくなりそうなのでこのまましばらく残します。
またほかの方でそんな情報いらないという方がおりましたらコメントお願いいたします。


記事No2200 題名:文章が分かりにくい 投稿者:指摘マン  投稿日:2022-07-06 03:32:49

「食塩水(NaCl)だけで同じ浸透圧に調整したものが生理食塩水であり、900mgの食塩(Na+の分子量23、Cl-の分子量35.5。353.85mgのNa+と546.15mgのCl-)を100mlの水に溶かせば出来上がる。」

この部分、900mgとか100mlとか単位が紛らわしいので、「9gの食塩を1Lの水に溶かせばできあがる。」にしたほうが良いのではないだろうか。成分の説明はその後ろに追加すれば内容も変わらずに読みやすい文章になると思う。


記事No1075 題名:Re:百瀬博文様 投稿者:管理人tera 投稿日:2019-09-12 20:06:48

情報ありがとうございます。
確かに興味深い商品ではありますね。
表に載せたいのはやまやまなんですが、品数が多すぎると逆に見にくくなってしまうので、途中から比較的メーカー含めメジャーなもの以外は追加しなくなってしまいました。
なので、PDFには載せませんが、折角なので文面で紹介させていただきますね。


記事No1073 題名:塩JOYサポートはどうですか? 投稿者:百瀬博文 投稿日:2019-09-11 20:50:36

外作業で大量に発汗したとき、ミネラル補給のためにどんな飲料が良いか探していました。
主な市販品の比較ができて助かります。
ところで、通常流通には乗っていないのだと思いますが、有限会社未来研究所(ANZEN MALL)が発売している「塩JOYサポート PETタイプ TB-8001」も興味深いです。夏季限定商品なのが残念です。
https://www.anzen.ne.jp/product-060059.html
成分表示は
エネルギー0kcal、たんぱく質0g、脂質0g、炭水化物0.7g、ナトリウム80mg、カリウム26mg、カルシウム88mg、マグネシウム30mg、リン1mg未満、クエン酸3000mg
ということです。
pdfの表に加えていただけるとありがたいです。


記事No880 題名:有難うございました 投稿者:渡辺真知子 投稿日:2019-02-28 10:21:35

お忙しい中、教えて下さって本当に有難うございました。
食事が少量でも取れる間は普通のお茶を頑張って飲ませるように致します。
食事が取れなくて脱水から発熱した時は、もう看取りだと思うのですが、ポカリスエットの4分の1の電解質ドリンクでもまた高血糖で意識朦朧となりそうなので、最後もお茶のほうがよろしいでしょうか?


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