貧血の薬(鉄剤)一覧

分類 成分名 商品名 規格・剤形・補足
無機鉄 乾燥硫酸鉄 フェロ・グラデュメット 錠105mg(徐放性剤
適応:鉄欠乏性貧血
黒色便
スローフィー 販売中止
有機鉄 溶性ピロリン酸第二鉄 インクレミン シロップ5%
適応:鉄欠乏性貧血
黒色便
フマル酸第一鉄 フェルム カプセル100mg
適応:鉄欠乏性貧血
黒色便
クエン酸第一鉄 フェロミア 顆粒8.3%、錠50㎎
適応:鉄欠乏性貧血
黒色便
クエン酸第ニ鉄 リオナ 錠250㎎
適応:鉄欠乏性貧血、慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
黒色便
注射用鉄剤 含糖酸化鉄 フェジン 静注
適応:鉄欠乏性貧血
カルボキシマルトース第二鉄 フェインジェクト 静注
適応:鉄欠乏性貧血
エリスロポエチン エポエチンアルファ エスポー 注射液、注射液シリンジ、皮下用シリンジ
適応:【注射】透析施行中の腎性貧血、未熟児貧血、【皮下用】腎性貧血
エポエチンベータ エポジン 注シリンジ、皮下注シリンジ
適応:透析施行中の腎性貧血、等積導入前の腎性貧血、未熟児貧血
ダルベポエチンアルファ ネスプ 注射液プラシリンジ
適応:腎性貧血、骨髄異形成症候群に伴う貧血
エポエチンベータペゴル ミルセラ 注シリンジ
適応:腎性貧血
HIF-PH阻害薬 ロキサデュスタット エベレンゾ 錠20㎎/50mg/100mg
適応:腎性貧血
警告:脳梗塞等の重篤な血栓塞栓症リスク
ダプロデュスタット ダーブロック 1mg/2mg/4mg/6mg
適応:腎性貧血
警告:脳梗塞等の重篤な血栓塞栓症リスク
バダデュスタット バフセオ 錠150mg/300mg
適応:腎性貧血
警告:脳梗塞等の重篤な血栓塞栓症リスク
エナロデュスタット エナロイ 錠2㎎/4mg
適応:腎性貧血
警告:脳梗塞等の重篤な血栓塞栓症リスク

Cmaxを比べると、フェロミア100mg分1=フェロ・グラデュメット105mg分1=フェルム100mg分1がほぼ同じく血清鉄を50~70μg/dL上昇させる。

Tmaxを比べると、フェロミア=フェルムでその2倍がフェロ・グラデュメットとなっている。

鉄剤は全般、タンニン酸を含有するもの(緑茶、コーヒー、紅茶)、一部の医薬品(セフジニル、ニューキノロン、テトラサイクリン、甲状腺ホルモン、レボドパ、エルトロボパグ等)とキレートを形成し効果が減弱する。

フェロミア(クエン酸第一鉄)

1日100~200mg 1~2回 食後 顆粒有り フィルムコーティング錠

有機鉄なのでpHに影響されにくく食後服用、胃酸分泌低下、胃切除等の条件下でも吸収率を低下させない。非イオン型鉄剤であり鉄イオンを遊離しにくいが、空腹時は胃に負担がかかるので食後の適応か。

胃溶性コートにより口の中で溶けず鉄の味をマスクできるとともに、食後の高いpHでもイオン鉄のような吸収されにくい不溶性高分子ポリマーを形成しないためきちんと吸収される。

顆粒剤は、矯味剤によって鉄味をマスキングした。コーティング剤を使用していないので水に溶けやすく服用がしやすい。

鉄イオン単独では人体にとって有害作用を及ぼすため基本何かと結合した状態で存在する。すなわち血清鉄は主にトランスフェリン内のFe3+ということになる。

フェロミア経口投与後のTmaxは約4時間、12時間後にはほぼ血清鉄増加分は0となり、24時間後では生理的な日内変動の変動内にあり、血清中の鉄の貯蔵鉄プールへの移行が高まったために投与前よりも低下している。

リオナ(クエン酸第二鉄)

1回500㎎を1日1回食直後に服用。第一鉄と違って食後ではないのは、高リン血症治療において食事由来のリンを吸着する必要があるためで、貧血の治療だけであれば食後でもよさそうですが。

Fe3+なので、Fe2+の第一鉄に比べると胃腸障害が少ないことが特徴。

リンと結合して高リン血症の治療に用いられるが、鉄欠乏性貧血に用いる際にリンが吸着されてリン不足に陥ることは考えなくていい。

フェロ・グラデュメット(乾燥硫酸鉄)

1日105~210mg 1~2回 空腹時、副作用が強い場合は食直後 徐放、粉砕×。pHが高いと効果が薄いので胃切除で胃酸が少ないと効果↓。

錠剤を構成する多孔性のプラスチック格子(グラデュメット)の間隙に硫酸鉄を含有し、内服後、消化管内で物理的拡散により鉄を徐々に放出する徐放製剤。

Tmaxは約12時間と長く、24時間後に血清鉄増加分が0となる。

胃の中で急速に鉄を放出することがないので,胃粘膜に対する刺激が少なく、鉄吸収効率の高い空腹時にも投与することができる。

フェルム(フマル酸第一鉄)

1日1回1カプセル 徐放 粉砕×。pHが高いと効果が薄いので胃切除で胃酸が少ないと効果↓。

カプセル中に直径約1mmの特殊コーティングを施した徐放性顆粒を含む。カプセルのため匂いがない。

本剤の有効成分であるフマル酸第一鉄は、種々の鉄剤の中で最も単位重量当たりの鉄含量が高いので1日1カプセルの服用で血色素量増加が認められる。

Tmaxは4~6時間で、12時間後にはほぼ投与前値に戻る。

フェロミアとほぼ同じ立場にある薬。フェロミア2錠飲むよりはこれ1カプセルの方がいいって使い方もできるし、徐放だからか胃腸障害の副作用がフェロミアよりも少ないようで、食前でもOKなのが特徴。

インクレミン(溶性ピロリン酸第二鉄)

1日3~4回。シロップ剤。

水に不溶性のピロリン酸第二鉄にクエン酸Naを加えて可溶性にしたもの。サクランボの香りがあるが鉄のにおいもある。

HIF-PH阻害剤

HIF-PH阻害剤は正常酸素濃度下において、HIF-PH(低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素=HIF安定化因子)or単にPH or PHDを不活性化して、HIF-αの水酸化および分解を抑制する。HIF-αに2つのOHがくっつく(水酸化)されていると核内に移行できずユビキチン化によるアポトーシスが起こる。

そのため、HIF-αの水酸化を抑制する(PH=プロリン水酸化酵素を阻害する)ことが、HIF-αの安定化につながり、結果エリスロポエチンの産生を増加させる。山上の低酸素状態を平地で作るようなイメージ(低酸素状態ではHIF-PHは働かず、EPOが作られるため)。

安定化HIF-αが増加すれば、核内に移行するHIF-α量が増え、HIF-αとHIF-βのヘテロダイマーの形成が進み、HIFによる遺伝子制御の活性化が起こり、エリスロポエチン(EPO)の産生が高まる。

低酸素状態ではPHの活性が低下するため、HIF-αは常時安定化しており(水酸化されていない)、エリスロポエチン産生が高まる。

腎機能が低いのにもかかわらず無理にエリスロポエチンの産生をさせて良いのかという疑問が出るが、エリスロポエチンの産生は腎臓だけでなく肝臓でもされていることや、エリスロポエチン産生細胞は腎機能に影響しない腎臓部位で作られるようなので大丈夫とのこと。

EPO産生細胞は、腎障害が起こるとEPO産生能を失い、筋繊維芽細胞に変化するが、一度産生能を失っても適切な介入により産生能は復活する可能性がある。

HIF-αはEPO産生以外にも様々なシグナル伝達を引き起こすので、がん患者の予後を悪化させたり、脂肪肝が引き起こされたり、デメリットも指摘されている。

貧血症状(易疲労感、息切れなど)を引き起こすヘモグロビン(Hb)の数値は主に以下。

  • 成人男性<13g/dl
  • 成人女性<12g/dl
  • 妊婦・乳幼児<11g/dl

Hb11-13g/dlとHb9-11g/dlで治療した人の予後を比較したデータでは、Hb12前後で治療した場合の方が予後が良い(心不全では左室肥大を改善する等)というデータがある。ただしBb13以上は血栓症のリスク。

腎性貧血は十分な鉄補充のあと、ESAもしくはHIF-PH阻害薬を用いて管理する。ESAは投与初期に血圧が上昇することがあるので注意。HIF-PH阻害薬は肝臓や脾臓にフェリチンとして蓄えられている鉄を結果的に引き出してしまうため、フェリチンの量は減少する。そのため鉄補充が場合により必要となる。

ESAもHIF-PH阻害薬も効果はほとんど変わらないが、HIF-PH阻害薬(例:ダーブロック)のほうがヘプシジンが低下し、鉄代謝が亢進する。

  • ダーブロック(ダプロデュスタット)・・・PHD(HIFプロリン水酸化酵素)1~3のすべてを阻害することにより、HIF-α(低酸素誘導因子)を安定化して赤血球産生を誘導する。
    ESA未治療:開始用量:Hb9以上1回2㎎、Hb9未満4㎎、1日1回
    ESA製剤からの切り替え:開始用量1回4㎎、1日1回
    48週試験において、6割の患者は4㎎以下でコントロールできていることが示されている。
  • エナロイ(エナロデュスタット)・・・
    開始用量1回2㎎、1日1回、食前又は就寝前(保存期or腹膜透析期)、開始用量1回4㎎、1日1回、食前または就寝前(血液透析期)
  • バフセオ(バダデュスタット)・・・
    開始用量1回300㎎、1日1回
  • エベレンゾ(ロキサデュスタット)・・・
    ESA未治療:1回50㎎週3回
    ESA製剤からの切り替え:1回70㎎又は100㎎週3回
    飲み忘れたときは24時間以上間隔があく場合は直ちに服用し、以後はあらかじめ定められた日に服用。24時間以上間隔があかない場合は服用せず、次から服用。

注射剤

注射用の鉄剤には、含糖酸化鉄(フェジン)、カルボキシマルトース第二鉄(フェインジェクト)、デルイソマルトース第二鉄(モノヴァー)らがある。

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