水・電解質輸液について
細胞内液と細胞外液
体液は、細胞膜を介して「細胞内液」と「細胞外液」に大別され、細胞外液はさらに毛細血管壁を介して「細胞間液」と「血漿」に分けられる。ここで言う細胞は、各組織の細胞だけでなく、赤血球等血球成分も含まれる。
細胞膜は、水は自由に通すが、電解質などほとんどの物質の出入りを制御している。(細胞内にK+が多く、細胞外にNa+が多い状態)
一方、毛細血管壁は、水・電解質・アミノ酸のような低分子物質は自由に通すが、血漿蛋白(アルブミン等)のような高分子物質は通さない。通常、このアルブミンのお陰で浸透圧が上昇し、血管内の水分が保持されているが、肝機能障害で肝臓におけるアルブミン合成が阻害されると、血中アルブミン濃度が低下して細胞内の水分貯留が起こり、結果として腹水が引き起こされる。
水の移動と浸透圧
大前提:水は浸透圧の低い方から高い方へ移動する。
血漿浸透圧よりも高い浸透圧の液(例えば塩水とか)を飲むと、細胞内から細胞外(血管内)へ水分が移動し、細胞内が脱水症状に陥って喉が渇く。
種類 | 浸透圧 | 例 | 作用 |
---|---|---|---|
等張液 | =血漿 | 生理食塩水 乳酸リンゲル液 5%ブドウ糖液 |
水移動なし |
低張液 | <血漿 | 蒸留水 | 細胞内へ水移動有 |
高張液 | >血漿 | 10%食塩液 20%ブドウ糖液 10%アミノ酸液 |
細胞外へ水移動有 |
低張電解質液 | =血漿 | 維持液類 | 低張液と同じ |
等張電解質輸液(細胞外補充液)
浸透圧が血漿と同じであり、水の移動が起こらないことから、細胞外液が失われる病態、ケガや手術による出血、嘔吐や下痢時において、細胞外液を補充するのに使用する。
嘔吐では胃液(Na+、Cl-、K+)が失われるので、Cl-を多く含む生理食塩水を主に投与する。
下痢では腸液(胃液よりも濃いNa+、Cl-、K+、HCO3-)が失われるため、アシドーシスを防ぐためにも、HCO3-を含む重炭酸リンゲル液や、HCO3-の代用となる乳酸や酢酸イオンを含む乳酸(酢酸)リンゲル液を投与する。
消化液 | 分泌量(ml/日) | 電解質(mEq/L) | |||
---|---|---|---|---|---|
Na+ | K+ | Cl- | HCO3- | ||
唾液 | 1,500 | 9 | 25 | 10 | 10~15 |
胃液 | 2,500 | 60 | 9 | 85 | 0~14 |
膵液 | 700 | 140 | 5 | 75 | 121 |
胆汁 | 500 | 145 | 5 | 100 | 40 |
小腸液 | 3,000 | 110 | 5 | 100 | 31 |
下痢便 | 500~8,000 | 50~100 | 20~40 | 40~80 |
リンゲル液にはCa2+が入っているため、重炭酸イオンを配合すると不溶性の炭酸カルシウムを生じ、また、重炭酸イオンは水溶液中で不安定であるため、主として代わりに体内代謝されてアルカリ作用を発揮する乳酸(酢酸)Naを使用する。
リンゲル液のCa2+は血液との混和により凝固(フィブリンの析出)が起こる可能性があるため、血液製剤とは混注しない。血液製剤は生理食塩水以外の薬剤と混注しないのが原則である。
低張電解質輸液(維持液類1~4号)
低張電解質輸液は、血漿よりも浸透圧が低い低張液と区別される。低張電解質輸液は体液よりも電解質濃度は低いものの、ブドウ糖を配合することで浸透圧は同じくしているものです。
低張電解質輸液は、ブドウ糖を配合して浸透圧を等張にしているが、ブドウ糖は代謝されると水になるので、結果的には体液より浸透圧の低い液(低張液)を投与したことになる。
水分補給に低張液である蒸留水ではなく、5%ブドウ糖液を用いるのは、蒸留水をそのまま血中へ投与すると赤血球の中に水が入り、溶血(赤血球が壊れる)を起こす危険があるためである。
低張電解質輸液にはその生理食塩液と5%ブドウ糖液の配合割合により、1号液~4号液までに分類できる。
ブドウ糖液の割合が増えるほど低張液の特性に近づくので、細胞内への水分補給効果が高くなる。
液分類 | 特性 |
---|---|
1号液(開始液) | 緊急時の水分、電解質の補充。K+を含んでいないことが特徴。 |
2号液(脱水補給液) | 脱水時の電解質補充。細胞内に多い電解質(K+,Mg2+,HPO42-)を含む。K+が含有のため急速投与できない。 |
3号液(維持液) | 経口摂取不能or不十分な患者の電解質補給。 |
4号液(術後回復液) | 電解質濃度は低く、水分補給目的。腎機能の低く水分保持能が低い乳幼児や高齢者に用いる。 |
低張電解質輸液1号~4号であり、カロリー補給の意味合いは薄い。
低張電解質輸液(高濃度糖加維持液)
1号~4号液の糖質は2~5%程度と低カロリーのため、エネルギー補給液としては力不足である。
そこで、ある程度長期に渡るエネルギー補給を目的として、糖質を10%程度配合した高濃度糖加維持液がしばしば使用される。
末梢静脈から補給できる糖質(ブドウ糖、果糖、キシリトール他)濃度は、10%程度が限度であり、それ以上投与する際は、高カロリー輸液として中心静脈より投与しなければならない。
そのため高濃度糖加維持液は末梢静脈栄養(PPN)の基本液として専ら使用される。
高カロリー輸液
末梢静脈栄養で用いる輸液のみでは糖質含量が低く、糖質として1日必要量の50%程度、エネルギー量として1日必要量の65%程度しか補給できない。
そこで、中心静脈栄養用高カロリー輸液キットが販売されている。
TPN用の高カロリー輸液は糖質含量が20%以上あるため、1日の必要エネルギーを摂取できる。
普通の点滴 | 末梢静脈栄養 | 中心静脈栄養 | |
---|---|---|---|
投与熱量 | 400~500kcal | 600~1,200kcal | 1,200~2,500kcal |
輸液剤 | 水・電解質輸液 5~7.5%糖液 ビタミン剤 |
水・電解質輸液 5~10%糖液 電解質補正液 10~20%脂肪乳剤 アミノ酸製剤 ビタミン剤 |
TPN用基本液 20~50%糖液 高濃度アミノ酸製剤 10~20%脂肪乳剤 ビタミン剤 微量元素製剤 |
投与期間 | 短期 | 1週間~10日程度 | 1週間以上 |
混注後の輸液を6時間以内に投与開始すべき理由のグラフ??
— 薬剤師オータム (@pharma_autumn) March 31, 2022
6時間以内に開始しないのであれば冷所保存のうえ48時間以内の使用が推奨されているようです??
ちなみに高カロリー輸液は7日間まで保存可とのこと(配合変化的なところは個別に考える必要があるとは思いますが…??) pic.twitter.com/fvasT0LADR
栄養療法について
低栄養状態に陥っている患者に栄養補給を行う方法として、以下の3つが知られている。
- 経腸栄養(EN:Enteral Nutrition)・・・消化管機能○
- 末梢静脈栄養(PPN:Peripheral Parenteral Nutrition)・・・消化管機能×、短期
- 中心静脈栄養(TPN:Total Parenteral Nutrition)・・・消化管機能×、長期・水分制限
消化管機能がない場合とは、腸閉塞や重症嘔吐、重症下痢、イレウス、消化管虚血、熱傷等の場合が該当する。
経腸栄養(EN)
経腸栄養は、栄養素を口から補給する「経口栄養法」と、チューブを用いて投与する「経管栄養法」がある。
経腸栄養剤は、組成により、成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤に分類される。
胃の中で分解された食物は、小腸へと運ばれ、膵臓から分泌される各種酵素(糖質・タンパク・脂肪分解酵素)により、多糖類は単糖へ、タンパク質はアミノ酸へ、脂肪は脂肪酸とグリセリンに分解され、小腸粘膜から吸収され、血液の取り込まれ、全身に運ばれる。分解される際に出る食べ物の残りカスは大腸へと移動して便として排泄される。
タンパク質や脂肪、タンパク分解酵素はそれ自体が炎症のもとになるので、クローン病等の腸肝疾患を持っている患者には、すべてが完全に吸収されて残渣を出さないことを目的として作られた成分栄養剤が適している。(宇宙食として糞便=主に食物繊維量を減らす目的で作られた)
成分栄養剤 | 消化態栄養剤 | 半消化態栄養剤 | ||
---|---|---|---|---|
組成 | 窒素源 | アミノ酸 | アミノ酸、ペプチド | タンパク質 |
糖質 | デキストリン | デキストリン | デキストリン | |
脂質 | 極めて少ない1~2% | 25% | 20-30% | |
繊維成分 | - | - | ± | |
味・香り | 不良 | 不良 | 比較的良好 | |
消化 | 一部不要 | 一部不要 | 必要 | |
残渣 | 極めて少ない | 極めて少ない | あり | |
浸透圧 | 高い | 高い | 比較的低い | |
主な薬剤 | エレンタール、へパンED | ツインラインNF | ラコールNF、エンシュア、イノラス |
※NFはフィトナジオン(ビタミンK1)を1/10に減量した際に、ニューフォーミュラ(新しい組成)となったときにつけられた。
窒素源はタンパク質→ペプチド→アミノ酸の順に細かくなる。アミノ酸とペプチドは炎症のもとにはならない。
脂肪は、消化による腸管の負担に加えて、炎症を起こしやすくする。
糖質のデキストリンはでんぷんを加水分解して作られる物質で、でんぷんよりも浸透圧が低く、アミラーゼで容易に分解される。
- ラコールNF・・・200mlと400mlの規格。1mlが1kcal。ミルク、コーヒー、バナナ、コーン、抹茶味(400はミルクのみ)。エンシュアと違いセレンが含有しているのでエンシュアよりは長期投与に向く。
ラコールNF半固形剤は経管投与の時間が短いため、胃瘻患者等で使用される。
ただし、ラコールNF半固形剤を経管投与するためには、胃瘻チューブに接続するアダプター類や加圧バッグが必要となるため、それらも同時に用意しておく必要がある。(通常は医療機関に用意してもらい購入してもらうが、薬局で販売する場合は特定保険医療材料ではないので自費になる)
具体的には、以下のどちらかの組み合わせで投与する。- ラコールNF半固形剤専用アダプタ+加圧バッグ・・・半固形剤パウチ袋を経管チューブに接続するアダプタとパウチ袋を手の代わりに楽な力で押してくれる加圧バッグ。アダプタはアマゾンで20個入り税込2100円、加圧バッグは大塚製薬(JMS製)のものは東邦で1セット6800円(税抜)、アルフレが6435円(税込)、アマゾンでニュートリー(旧テルモ)のが6346円(税込)
- ENシリンジ+半固形剤吸引用コネクタ・・・容器に一度出してから吸引するのであれば吸引用コネクタは不要。値段は不明
前者のアダプタ+加圧バッグで行う場合、加圧バッグが破裂して半年以内に買い替えるケースが多い。加圧バッグのメーカーはどこでもいいので、安くて丈夫なものを選びたい。ニュートリーは定期便が存在するということはそれだけ壊れやすいのかな。 - イノソリッド・・・配合経腸用半固形剤(300kcal/300g)。900kcalの摂取で1日に必要なビタミン、微量元素の推奨量または目安量をほぼ充足でき、脂質代謝に必要なL-カルニチンや食物繊維減としてイヌリンも配合している。
ラコールNF半固形剤との大きな違いは、1日に必要な栄養素あたりのカロリー。ラコール半固形剤は1600kcalの摂取で1日に必要な栄養素を充足できるように設計されているため、維持エネルギー量の低い患者には使いにくかった。 エンシュアリキッド、エンシュアH・・・250mlの規格。リキッドは1mlが1kcal、Hは1mlが1.5kcal。バニラ、コーヒー、ストリベリー。長期投与でセレン欠乏症。- イノラス・・・187.5mlの規格。1mlが1.5kcal。ヨーグルト、りんご、コーヒー、いちご。セレン、モリブデン、クロム等の微量元素も含有。コリン(細胞膜等の構成成分)、カルニチン(脂質代謝)も含有。イヌリン(水溶性食物繊維)が入っているのがエネーボとの違い。下痢の頻度も低く、水分含有量が少ないので腎機能障害患者に適する。長期も問題ない。
- エネーボ・・・250mlの規格。1mlが1.2kcal。セレン、モリブデン、クロム等の微量元素とコリン、クロム、モリブデンも含有。
- ツインラインNF・・・A液(200mL)とB液(200mL)の2液からなり、用時等量混合して使用する。400mL(400kcal)。バニラ風味
- エレンタール、エレンタールP:80gの粉末単品か、80gの粉末入ボトル。250mlの常水又は微温湯を入れて300mlに精製すると、300kcal/300mlが出来上がる。流動性に優れており、5Frの細いチューブでも容易に投与可能。
長期服用の場合、必須微量元素のセレン不足に陥るので、別に補う必要がある。
長期投与かつ、少ない量で効率的に栄養を補給するならイノラスもしくはエンシュアH。水分量が少ないからイノラスだけイヌリンを入れて便を出しやすくしているのかな?
水分量を多くするのであれば、ラコールかエンシュアリキッド。味も選べるし、フレーバーもラコールにはあるのがいい。
経口栄養法
経腸栄養剤を用いて、口から栄養を摂取する方法。
患者の状態により使い分けるが、一般的には炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)、急性膵炎では成分栄養剤、ツインラインは術後の栄養保持、器質的な問題がない場合の栄養管理にはラコールやエンシュアが用いられる。
経管栄養法
経管栄養法には、鼻からカテーテルを胃あるいは十二指腸、空腸まで挿入する経鼻法と、頸部や腹部に作った小さな穴(瘻孔)にカテーテルを通して栄養剤を注入する経瘻孔法がある。
一般に、短期間の栄養管理には経鼻法が、長期(4週間以上目安)にわたると予想される場合は経瘻孔法が選択される。
経菅投与の場合、投与時間が圧倒的に短くなる半固形タイプが使われることが多い。
中でも胃瘻法のPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)と呼ばれる、開腹術を必要とせず、内視鏡で胃の内側を確認しながら瘻孔を造り、チューブを経皮的に胃内に挿入する方法(経皮内視鏡的胃瘻造設術)がよく使用される。
PEGが施行できない場合には、頸部食道からカテーテルを挿入する経皮食道胃管挿入術(PTEG)などの方法を用いる。
- 口から内視鏡を挿入し、胃壁まで送る
- 内視鏡で見ながら、腹部に針を挿してワイヤーを胃の中に挿入
- 挿入したワイヤーを内視鏡で引っ張って口の外へ送る
- 今度はワイヤーとカテーテルを結び、カテーテルを口側から胃へと送る
- 再度、内視鏡を挿入しカテーテルがきちんと留置されているかを確認する
胃瘻造形術は上記のPull/Push法以外に、introducer法、direct法がある。
Pull/Push法 | Introducer法 | Direct法 | |
---|---|---|---|
利点 | 穿刺針(せんししん)が細い、カテーテルの内径が太い、カテーテル逸脱の危険性が少ない | 清潔手術である、内視鏡挿入が1回で良い | 清潔手術である、内視鏡挿入が1回で良い、穿刺針が細い、カテーテルの内径が太い、カテーテル逸脱の危険性が少ない |
欠点 | 内視鏡を2回挿入する必要がある、不潔手術である | 穿刺針が太い、カテーテル内径が細い、カテーテル逸脱の危険性がある、胃壁固定が望ましい | 胃壁固定が必須 |
末梢静脈栄養(PPN)
末梢の細い血管から栄養素を補給するPPNは、高濃度の糖質やアミノ酸が含有する栄養を投与することができず、長期間で糖質不足を引き起こすため、施行期間は1週間~10日程度とされている。
糖質濃度が7.5%前後でアミノ酸を含む糖加低濃度アミノ酸液類と、糖質濃度が10%前後でアミノ酸は含まない高濃度糖加維持液がある。
いくら糖質濃度を高めた高濃度糖加維持液でも、1日の糖質必要量の50%程度しか満たすことができないため、やはり長期の栄養補給としては用いることがでいない。これ以上の糖質濃度の輸液を用いれば浸透圧の上昇による静脈炎や血管痛から血管閉塞のリスクを伴うことになる。
1日分のエネルギーを補うことができる糖質濃度20%を超える輸液は高カロリー輸液と呼ばれ、末梢からではなく、中心静脈栄養として投与されることになる。
末梢静脈栄養の穿刺部位は、前腕の皮静脈である。中でも肘正中皮静脈は太くて採血には適するが、肘関節にかかり針が屈曲するため、留置針には不向きである。
- 糖加低濃度アミノ酸液(VB1含)・・・ビーフリード、アミグランド、パレセーフ
- 糖加低濃度アミノ酸液(VB1無)・・・アミノフリード、プラスアミノ、アミカリック
- 高濃度糖加維持液・・・トリフリード、フィジオ35、KNMG3号、フィジオゾール3号、ソリタT3号G、ソリタックスH
※ビタミンB1はウェルニッケ脳症の予防として食事が不十分な場合に投与される。
※高濃度糖加維持液はアミノ酸を含有していないため、別にアミパレン等のアミノ酸液を投与する必要がある。
※糖加低濃度アミノ酸液及び高濃度糖加維持液には脂肪乳剤を併用することができるが、混注せずに側管から投与する。脂肪乳剤は等張液であるため併用により浸透圧を低くすることができることと、エネルギーを補うことができるというメリットが有る。
中心静脈栄養(TPN)
高カロリー輸液はIVH(intravenous hyperralimentation:静脈に多量の栄養を与える)とも呼ばれるが、最近ではTPNと呼ぶほうが主流となっている。
TPNでは、鎖骨下静脈からカテーテルを挿入し、先端部を上大静脈(中心静脈)に留置する。上大静脈は心臓に近い血管で、血液量が多くて血流も早いため、糖濃度の高い輸液も投与できる。
TNPは導入期が必要で、血糖値などを見ながら2~3日かけて徐々に投与量を上げていく。離脱機も同様に、投与量を徐々に落としていく。
糖質からのエネルギー産生にはビタミンB1が必須の補酵素であり、ビタミンB1が不足すると解糖系が進まず、ウェルニッケ脳症や脚気、そして重篤な乳酸アシドーシスが引き起こされる。
乳酸アシドーシスの対処法には、ビタミンB1の投与やアルカリ化剤(メイロン7%、8.4%)が投与される。
TPN基本液だけでは不足分を補うことができないため、ビタミンだけでなく脂肪乳剤(イントラリポス他)や微量元素(Zn,Fe,Cu,I,Mn他)を合わせて投与する必要もある。
脂肪を投与しない場合、成人では28日で必須脂肪酸欠乏状態になったとの報告がある。微量元素の中でもZn欠乏が開始から2週間近くという早期に見られる。そのため、TPN基本液にZnだけは含まれる
- TPNキット製剤(基本液)・・・エルネオパ、ネオパレン、フルカリック、アミノトリパ、ミキシッド、ピーエヌツイン
在宅IVH処方例と手順
処方例)
(1日分)
・ピーエヌツイン-1号輸液(TPN基本液) 1000ml
・マルタミン注射用(総合ビタミン) 1V
・ガスター注射液20mg(H2ブロッカー) 1A
・エレメンミック注(微量元素) 1A
×(4日分)
1バックに無調剤混合
・ヘパフラッシュ100単位/mlシリンジ5ml (2本)
【特定保健医療材料】
・カフティーポンプ輸液用チューブセット (2本)
ほか必要なものとして、
- シリンジ3本(マルタミン用10ml、ガスター用5ml、エレミンミック用5ml)
- 針3本(18G)
- 注射用水1本(マルタミン用)
- ワンショットプラス4枚位
- ペーパータオル数枚
- 消毒用スプレー
輸液調整手順)
- マスクとガウン、帽子を装着する。
- 手袋をはめる。折りたたんである場所は素手で触れるがそれ以外の部位を触らないようにする。はじめに片方の手袋を完全にはめて、もう片方の手袋の折りたたんでいる部分に手を入れてもう片方の手袋をはめる。
- クリーンベンチ内を消毒スプレーで濡らしたペーパータオルで拭く。
- 輸液類やシリンジ、針、ゴミ箱、ワンショットプラス等すべてをとにかく消毒ペーパータオルで拭いてクリーンベンチに入れる。この時ピーエヌツインの袋は押して広げておく。
- 中に入れたら、ピーエヌツインの針刺す側のフィルムを剥がし、バイアル(マルタミン)の蓋を外し、注射用水の蓋をちぎってその部分をワンショットプラス拭く。
- アンプル(ガスターとエレメンミック)の頭の部分にある薬液を下に落とすため、頭を持って回転させて遠心力の力で下に落とす。落としたら頭~首をワンショットプラス拭き、●印を手前にした状態で奥にポキっと折りしばらく静置しておく。(ガラス片を下に沈めるため)
- 上記理由で先に静置の必要のないマルタミンを調剤する。10mlのシリンジに18gの注射針を両手の小指をくっつけながらはめ込み、そのまま回転とかはさせずにキャップを引けば注射針を裸にできる。
- 10mlの注射針付シリンジで注射用水を5ml程度採取し、空気を抜く。この時少し注射の押すとこを引いてから押すとよい。
- 採取した注射用水をバイアルへ注ぐ。この際、注いだ注射用水と同じ量の空気を抜く。
- シリンジを抜いた状態、若しくは刺した状態でバイアルを撹拌し薬剤が溶けたことが確認できたら、抜いておいた空気を注入すると同時に薬剤を採取する。ちょっと押して引くを繰り返す。シリンジを抜いた場合、再度刺す場所は同じ場所ではなく別の場所にすること(コアリング防止)
- 採取した薬剤を、ピーエヌツインの針をさすところから注入する。
- 次にどちらかのアンプルから、5mlのシリンジを用いて薬剤を採取する。アンプルは斜めにしても薬剤はこぼれないのでなるべくガラス片が沈んでいない口側部分に針を当てながら採取する。
- 採取した薬液を、ピーエヌツインの針をさすところ(未使用の穴)から注入する。
- もう片方のアンプルについても同様の操作を繰り返す。
- 最後に薬液3種が注入されたピーエヌツインを混ぜ、中に異物がないかを確認し、キャップをつけたら終了。
関連ページ・参考文献他
参考・引用:輸液・栄養読本[水・電解質輸液編]、輸液栄養読本[静脈・経腸栄養編](大塚製薬工場)、埼玉県薬剤師会無緊張材ステップアップ講習資料
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