基底層

表皮の基底層はケラチノサイトメラノサイトから構成され、ケラチノサイトは未分化基底細胞として新しい表皮細胞の合成に関わるとともに、神経成長因子であるNGFを分泌して、自由神経終末の感受性を高めます(痒みの増強)。

ケラチノサイトはToll-like受容体を発現(ケラチノサイトにはTLR1,2,3,5,6が存在することは確定的であるが、TLR4,9,10の存在については報告により異なり確定していない。)していて、TLR1,2,6を介してグラム陽性菌の構成成分であるリポペプチドを認識し、抗菌ペプチド、サイトカインを産生する。

デフェンシンはその疎水性と親水性を持つ構造を利用して細胞膜に穴を開け、例えば、HBD-2(human beta-defensin-2)は 主として大腸菌を、HBD-3は黄色ブドウ球菌を破滅させるという。

また、ケラチノサイトはケモカインを産生することで白血球やリンパ球を遊走させる。

ケモカインの産生はサイトカインの種類に依存するため、Th1サイトカイン(IL-2、IFN-γなど)に刺激されればTh1ケモカインが、Th2サイトカイン(IL-4,5,6,13など)に刺激されればTh2ケモカインが産生されることになり、その効果が倍増する。

Th1サイトカインは、好中球、NK細胞、Th1リンパ球を呼びよせて細胞性免疫を賦活させるとともにB細胞に対しIgG型の抗体を産生させるが、Th2サイトカインは、肥満細胞、好酸球らを活性化し、B細胞に対してはIgE抗体を産生させアレルギーを引き起こすほか、角質細胞膜のレセプターに結合してHBD-2などの抗菌ペプチド遺伝子に作用してこれらを阻害する。

アトピー性皮膚炎患者のようにTh2優位であることは、細菌、ウイルスなどに対する免疫機構が正常の人に比べて弱いことを意味する。

一方、メラノサイトは、フェニルアラニン→チロシン→ドパ→メラニンという過程を経てメラニンを合成し、真皮を紫外線から保護します。メラニン分泌は紫外線以外に、副腎皮質ホルモンで促進されるという。

基底層の細胞は、細胞小器官(オルガネラ)、中間径フィラメント(ケラチン)、アクチンフィラメントらにて維持されています。細胞小器官は大まかに分けると以下の図のようなものがあり、どれも細胞が生きるためには欠かすことのできない器官です。

細胞小器官についての説明はこちら→細胞小器官

中間径フィラメントとは、アクチンとミオシンの中間の太さであることからこう呼ばれ、TypeⅠ:酸性ケラチンTypeⅡ:塩基性ケラチン、TypeⅢ:ビメンチン、デスミン、TypeⅣ:ニューロフィラメント、TypeⅤ:ラミン、TypeⅥ:ネスチン、という風に6つのタイプに分類されます。

皮膚細胞で最も重要なのがTypeⅠとTypeⅡに属するケラチン線維で、このケラチン線維があることで細胞の骨格が保たれます (細胞が崩れない)。

ケラチンの説明にはよくパーマの例が出されます。髪はケラチン線維で できていて、パーマネントウェーブ剤にてケラチンを切断してくっつけると髪の形を変えることができます。どれくらいケラチンによる細胞骨格が大切であるかが分かると思います。

アクチンフィラメントは細胞同士の接着に大きく関わります。下の図を見てもらえば分かるとおり、細胞同士の接着方法には、密着結合、接着結合、デスモゾーム結合(ヘミデスモゾーム結合)、ギャップ結合があります。

密着結合(タイトジャンクション)は二つの細胞同士が密着し合い、細胞膜が融合しているように見える結合です。この結合のおかげで細胞外の溶質の細胞間隙への侵入を防ぐことができます。接着はある種のタンパク質により成されています。

接着結合(アドヘレンスジャンクション)はタイトジャンクションの下部にある結合の一つで、 カドヘリンというタンパク質、もしくはネクチンと呼ばれるタンパク質により成されています。

デスモゾーム結合は接着結合と比べて、カドヘリンによる結合という形式は同じですが、細胞膜外側と内側に円盤状のタンパク質を挟み込んでいる構造がある点が異なります。細胞膜内側の円盤状タンパク質はケラチンフィラメントが結合していて、細胞骨格の強度に深く関わります。

ヘミデスモゾームというのは細胞膜内側のみに円盤状のタンパク質が存在している構造のことで、基底層との接合面のみ見られます。ヘミデスモゾームの場合、基底層との結合はカドヘリンではなくインテグリン分子によって成されています。

ギャップ結合は小孔をもつタンパク分子同士が細胞間を貫通するようにして連結している結合で、Ca2+などのイオンの細胞間移動を行い、細胞間の同調をとっています。

アクチンフィラメントが関与する接着はカドヘリンやネクチンが絡む、接着結合とデスモゾーム結合の2つです。カドヘリンは EC1~EC5という5つの部位から構成されています。EC1は、異なる細胞同士が接着をする連結部位として、EC2はCa2+の結合部位として機能していています。Ca2+がEC2部位に結合すると、細胞膜内のカテニンと呼ばれるタンパク質 を介して膜外カドヘリンと膜内アクチンフィラメントが結合されます。
ネクチンは細胞内でアファディンと結合し、アファディンはアクチン繊維と結合しています。

接着斑では、細胞内ではインテグリンがビンキュリン、テーリンなどのタンパク質を介してアクチン繊維に結合していて、細胞外ではフィブロネクチンがインテグリンと コラーゲンの橋として機能しています。

基底層の未分化角化細胞にはケラチン5(TypeⅡ)ケラチン14(TypeⅠ)がヘテロダイマー(4量体)を形成した状態で存在しています。 ケラチン14はT細胞の刺激、IL-6、TNF-α、IFN-γによって発現が促進されます。


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