抗菌ペプチド(defensin,Cathelicidin,dermcidin)

表皮基底層のケラチノサイトはTLR1,2,6を介してグラム陽性菌の構成成分であるリポペプチドを認識し、AP-1やNF-κBを活性化、それら依存性に抗菌ペプチドやサイトカイン産生を誘導する。

ウイルス感染に関して表皮ケラチノサイトが発現するTLR3がウイルス由来の二重鎖RNAを認識し、IFN-β産生を介してMIP-1αを産生する。産生されたMIP-1αは免疫細胞を皮膚に遊走させる。MIP-1α産生経路はSTAT1/SOCS1により制御されている。

抗菌ペプチドは30数個前後のアミノ酸からなる抗菌活性を持つペプチドで、人が産生する抗菌ペプチドとしてはdefensin、cathelicidinが知られている。defencinファミリーの特徴は6つのシステインがジスルフィド結合により高次構造を形成している点である。

特徴 種類 名称 産生細胞
陽性荷電 α-defensin HNP-1~4 好中球、バネート細胞
β-defensin hBD-1~4 好中球、上皮(表皮、呼吸器、尿路)
Cathelicidin hCAP18/LL-37 好中球、マスト細胞、上皮(表皮、呼吸器、消化器、尿路)
陰性荷電 dermcidin   エクリン汗腺

defensinは6個のシステイン残基と3箇所の分子内S-S結合を持ち、強く陽性荷電しているため、陰性に荷電した菌体膜に挿入されて小孔を形成し、殺菌作用を発揮する。 human-β-defensin(hBD)は皮膚、呼吸器系、尿路系の上皮細胞から産生される。

また、上皮、好中球から産生されたhuman-cathelicidin(hCAP18)はプロテアーゼにより切断され 、C末端の37アミノ酸残基が抗菌活性を持つペプチドLL-37が遊離される。 LL-37によるケラチノサイト遊走促進作用は、再上皮化を促進し、創傷を積極的に治癒させる。 LL-37の創傷治癒作用にはEGFRのtransactivationが関与している。さらに、LL-37には血管新生促進作用がある。

エクリン腺、唾液、母乳中にもhCAP18/LL-37が存在している。 人正常表皮においてhBD-1~3、LL-37はいずれも上層に存在しており、皮膚細菌感染防御にはCathelicidinファミリーのCathelicidn-related-antimicrobial peptide(CRAMP) が必須であることが示されている。

表皮の抗菌ペプチドの発現はhBD-1を除いて通常低くが細菌接触、創傷などの刺激により亢進する。 比較的抗菌活性の弱いhBD-1は常時抗菌作用を発揮しており、比較的強い抗菌活性を持つhBD-3,LL-37の発現が創傷、細菌感染などの非常時に増強する。

dermcidin(ダームシジン)は汗に存在する抗菌ペプチドとして同定され、グラム陽性・陰性菌に効く。

ADにおいては、表皮の分化異常のため、抗菌ペプチドの発現が低下しているばかりか、炎症があっても抗菌ペプチドがうまく誘導されない。

活性型ビタミンD3はケラチノサイトのhBD-2及びhCAP18/LL-37の発現を亢進させる。

レチノイン酸はケラチノサイトのhBD-2,3,4の発現誘導を阻害する。また、レチノイン酸は単球上のTLR2の発現を抑制することにより炎症反応を抑制し、治癒を高める。



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