ケモカインの種類

白血球やリンパ球など細胞を組織へ遊走させるのに必要な物質をケモカインと呼び、システイン配列の違いによりCC、CXC、C、CX3Cの4種類に分類される。
(Cの位置がシステイン→CX3Cはシステインの間に3つのアミノ酸があるということ)。
(CケモカインにはLymphotacinやSCMが属し、T細胞、NK細胞遊走に関わり、CX3CケモカインにはFractalkineが属し、NK細胞やアストロサイト遊走に関わっている。)

ケモカインファミリーは現在のところ50種以上同定されているが、ここでは免疫とアトピーにかかわりの深いものだけを取り上げる。

ケモカイン産生細胞 分類 ケモカイン名 受容体 受容体発現細胞
単球 CXC GROα,β,γ CXCR2 好中球、CD8+T細胞、NK細胞
IL-8 CXCR1/2
IP-10 CXCR3 単球、Th1
CC MCP-1 CCR2 単球、T細胞、好塩基球
MIP-1α CCR1/5 単球、Th1細胞、Tc細胞
RANTES CCR1/3/5 好酸球、好塩基球、単球、Th1細胞
MCP-2/3 CCR1/2/3
TRAC CCR4 Th2細胞
肥満細胞 CXC IL-8 CXCR1/2 好中球、CD8+T細胞、NK細胞
CC I-309 CCR8 CD4+T細胞、B細胞
MIP-1α CCR1/5 単球、Th1細胞、CD8+T細胞
T細胞 CC I-309 CCR8 CD4+T細胞、B細胞
MIP-1α CCR1/5 単球、Th1細胞、CD8+T細胞
MIP-1β CCR5/8 単球、Th1細胞
RANTES CCR1/3/5 好酸球、好塩基球、単球、Th1細胞
Eotaxin CCR3 好酸球、好塩基球
線維芽細胞 CXC IL-8 CXCR1/2 好中球、CD8+T細胞、NK細胞
IP-10 CXCR3 単球、Th1
CC MCP-1 CCR2 単球、T細胞、好塩基球
RANTES CCR1/3/5 好酸球、好塩基球、単球、Th1細胞
MCP-2/3 CCR1/2/3 単球、Th1細胞、好酸球、好塩基球
濾胞樹状細胞 CXC BCA-1 CXCR5 B細胞
CC TRAC CCR4 Th2細胞
ケラチノサイト CXC IL-8 CXCR1/2 好中球、CD8+T細胞、NK細胞
CC Eotaxin-3 CCR3 好酸球、好塩基球
胸腺樹状細胞
腸管上皮細胞
CC Eotaxin-2 CCR3 好酸球、好塩基球
LPS活性化単球 CC ELC/MIP-3β/exodus-3 CCR7 樹状細胞、メモリーT細胞
樹状細胞
マクロファージ
CC SLC/6Ckine/exodus-2 CCR7 樹状細胞、メモリーT細胞

CXCケモカイン

CXCケモカインの代表であるIL-8は、その産生細胞に、LPS、IL-1、TNFらの刺激が加わると、シグナル伝達が進んで最終的にNF-κBが活性化される。

NF-κBは、AP-1、NF-IL-6と協調してIL-8遺伝子の転写を促進すると言われている。

そのため、NF-κBらを阻害する物質であるステロイドやタクロリムスはIL-8も同時に阻害して、好中球やNK細胞が主役の細胞性免疫を抑制する(免疫抑制作用の一つ)。

また、CXCR3はマクロファージらが産生するIFN-γにより誘導されるケモカインIP-10(Interferonγ-inducible protein 10)、Mig(Monokine induced by interferonγ)、I-TAC(Interferon-inducible T-cell α-chemoattractant)の共有レセプターで、Th1細胞の遊走にかかわる。

なお、IP-10,Mig,I-TACはCXCR3のアゴニストである反面、CCR3のアンタゴニストでもあるという。

CCケモカイン

一般的に、Th1細胞はCCR5/CXCR3を、Th2細胞はCCR3/4/8を、樹状細胞はCCR7を、好酸球はCCR1/2/3をその細胞表面に発現していると言われている。

Th1細胞遊走に関わる、すなわちCCR5を刺激するケモカインとしてはRANTES (Regulated on activation, normal T cell expressed and secreted) とMIP-1α(Macrophage inflammatory protein 1α)がある。

Th2細胞遊走に関わるCCR4を刺激するケモカインは、TARC(Thymus and activation-regulated chemokine)とMDC(Macrophage-derived chemokine)が代表である。 これらは、Th2細胞や肥満細胞からのIL-4、IL-13の刺激を受けて、単球や濾胞樹状細胞から産生される。

CCR8もTh2細胞に選択的に発現しており,これを刺激するI-309(肥満細胞、胸腺内T細胞が産生)はTh2サイトカイン産生や好酸球増多に関わっている。

好酸球遊走に関わり、CCR3を刺激するケモカインとしては、eotaxin、eotaxin-2、extaxin-3、RANTES、MCP-2/3/4らが知られている。

これらのケモカインは好酸球だけでなく、好塩基球にも作用して好酸球性炎症とケミカルメディエータ遊離促進に加担する。

また、RANTESやeotaxinは,遊走としての役割以外に、細胞間接着の増強、血管新生、好酸球自体の作用の増強などにも関与しているという。

例えば、eotaxin刺激によるEGFR(epidermal growth factor receptor)の活性化を介してIL-8などのサイトカイン産生を促す。

樹状細胞(DC)は、その成熟段階により表面に発現するケモカイン受容体が異なる。

未熟DCは、CCR1,CCR2,CCR5,CCR6,CCR9,CXCR4などのケモカインレセプターを発現しているが、成熟DCになるとこれらのケモカインの発現に変わってCCR7が発現するようになる。

従って、未熟DCはLARC(Liver and activation-regulated chemokine)らにより組織への遊走能を高めて、抗原の貪食能を活性化し、成熟DCはCCR7を刺激するケモカインELC(EBI1-ligand chemokine)、SLC(Secondary lymphoid tissue chemokine)の作用で所属リンパ節へと移動し、ナイーブT細胞への抗原提示へと至る。

HIVとケモカイン

CXCR4とCCR5は人免疫不全ウイルス(HIV)が感染する際のco-receptor(第二の感染抗原)として働いている。

この事は、HIVが細胞内に侵入するのに必要なレセプターとして、CD4の他にケモカインが重要であることを示唆している。

T-tropic strain(T細胞に感染するHIV)はCD4に加えて、CXCR4をco-receptorとして利用して細胞内へと侵入する。

一方、M-tropic strain(マクロファージ、活性化T細胞に感染するHIV)はCD4とCCR5に結合して細胞内へと侵入する。


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